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(平20.1.11、裁決事例集No.75 93頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が課税期間中に完了していない工事を消費税法第2条《定義》第1項第12号に規定する課税仕入れとして処理したことについて、原処分庁が、この処理には隠ぺい・仮装の行為があったとして重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、仮装経理した事実はないとして、当該賦課決定処分のうち、過少申告加算税の額を超える部分の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成16年4月1日から平成17年3月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という
。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、下表の「確定申告」欄のとおり記載して法定申告期限までに所轄E税務署長へ申告した(以下、この申告に係る申告書を「本件確定申告書」という。)。

(単位:円)
区分
項目
確定申告 更正処分等
課税標準額 ○○○○ ○○○○
消費税額 ○○○○ ○○○○
控除対象仕入税額 ○○○○ ○○○○
納付すべき消費税額 ○○○○ ○○○○
納付すべき地方消費税額 ○○○○ ○○○○
過少申告加算税の額 - ○○○○
重加算税の額 - ○○○○

ロ E税務署長は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「原処分担当職員」という。)の調査に基づき、本件課税期間の消費税等について、平成18年5月31日付で上記イの表の「更正処分等」欄のとおりとする更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(以下、この重加算税の賦課決定処分を「本件賦課決定処分」という。)をした。
 なお、本件賦課決定処分の基礎となる税額は、○○○○円である。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として、平成18年7月31日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年12月25日付で棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の本件賦課決定処分に不服があるとして、平成19年1月25日に審査請求をした。

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(3) 関係法令

イ 国税通則法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第1項は、期限内申告書が提出された場合において、更正があったときは、当該納税者に対し、その更正に基づき同法第35条《申告納税方式による国税等の納付》第2項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨規定している。
ロ 通則法第68条《重加算税》第1項は、同法第65条第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。
ハ 消費税法第2条第1項第12号は、課税仕入れとは、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(所得税法第28条《給与所得》第1項に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるものに限る。)をいう旨規定している。
 消費税法第2条第1項第9号は、課税資産の譲渡等とは、資産の譲渡等のうち、同法第6条《非課税》第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう旨規定し、同法第2条第8号は、資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう旨規定している。
ニ 消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項は、事業者が、国内において行う課税仕入れについては、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の同法第45条《課税資産の譲渡等についての確定申告》第1項第2号に掲げる課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに対する支払対価の額に105分の4を乗じて算出した金額をいう。)を控除する旨規定している。

(4) 基礎事実

 次の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
 請求人が下表の番号1ないし5の各工事業者(以下「本件各工事業者」という。)に発注した下表の番号1ないし5の各工事(以下、下表の番号1の工事を「本件工事1」、番号2の工事を「本件工事2」、番号3の工事を「本件工事3」、番号4の工事を「本件工事4」、番号5の工事を「本件工事5」といい、これらを併せて「本件各工事」という。)の内容等はそれぞれ下表のとおりであり、請求人は、本件各工事のいずれについても、請求書の日付の属する本件課税期間中に行った課税仕入れとして処理した(以下、本件各工事に係る各請求書を「本件各請求書」という。)。

番号 工事業者名 工事内容 対価の額 (消費税等込み) 工事完了日
請求書の日付
1 F社 ○○○○の塗装工事 ○○○○円 平成17年4月19日
平成17年3月31日
2 G社 ○○○○の吸収冷凍機の整備工事 ○○○○円 平成17年4月8日
平成17年3月31日
3 H社
○○支店
○○○○の鋼製扉交換工事 ○○○○円 平成17年4月13日
平成17年3月31日
4 J社 ○○○○の3階の防火扉交換工事 ○○○○円 平成17年4月8日
平成17年3月31日
5 K社 ○○○○の外壁面用階段取替工事 ○○○○円 平成17年4月2日
平成17年3月30日

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2 主張

(1) 原処分庁

 本件賦課決定処分は次のとおり適法であることから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
 昭和62年5月8日最高裁判所第2小法廷判決は、「通則法第68条に規定する重加算税を課し得るためには、納税者が故意に課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい、仮装行為を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に、申告に際し、納税者において過少申告を行うことの認識を有していることまでを必要とするものではない。」と判示する。
 これを本件についてみると、本件各工事はいずれも本件課税期間の終了の日までに完了していないにもかかわらず、請求人の担当者が、本件課税期間内の日付を記載した本件各工事に係る納品書を兼ねた請求書を発行するよう本件各工事業者に依頼し、それを受領することにより、本件各工事を本件課税期間中に行った課税仕入れであるとして消費税等の納付すべき税額を計算していたものと認められる。
 そうすると、請求人は故意に課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい、仮装行為を原因として過少申告しており、このことは、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たすものである。

(2) 請求人

 請求人は、本件課税期間の消費税等の納付すべき税額を算出するに当たって、隠ぺい又は仮装の行為はしていないことから、本件賦課決定処分のうち、過少申告加算税の額を超える部分の取消しを求める。
 原処分庁は、本件課税期間中に本件各工事が完了したかのごとく当該課税期間中に本件各請求書を発行するよう請求人が本件各工事業者に依頼し、それを受領することにより、修繕費に仮装経理していると主張するが、請求人の担当者が本件各請求書を発行するよう本件各工事業者に依頼したのは、請求人の事情によるもので、過少申告を目的としたものではない。
 また、本件各請求書は請求した日の日付で発行されており、請求金額にも誤りがなく、本件各請求書を受けて支払っているのであるから、本件各請求書には虚偽の記載はなく、真実の請求書である。
 したがって、本件確定申告書の提出に至った事実経緯には、事実の仮装と評価し得る行為はなく、請求人の場合、通則法第68条の規定の適用はない。

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3 判断

 請求人が本件各工事を本件課税期間中に行った課税仕入れとして処理したことについて、隠ぺい・仮装の行為があったか否かに争いがあるので、判断する。

(1) 請求人の担当者等の原処分担当職員に対する申述

イ 本件工事1に関するLの申述要旨
(イ) 申述人は、請求人の○○○○保守担当である。
(ロ) 本件工事1は、平成17年3月末までに完了していなかった。
(ハ) 本件工事1に係る平成17年3月31日付の請求書については、本件工事1が ○○○○の塗装に係るデザインの変更のため工事着手が遅れたが、稟議書において平成17年3月までに完了させることとなっていたため、本件工事1に係るF社の工事責任者であるMさんに対して作成を依頼したものである。なお、当該請求書は平成17年3月末にMさんから受領したと思う。
(ニ) 本件工事1に係る納品書は受領していない。また、請求人は検収書を発行していない。
(ホ) 平成17年3月末現在の○○○○の責任者(副支配人)であるNに対し、本件工事1の進ちょく状況について報告していた。
ロ 本件工事2に関するPの申述要旨
(イ) 申述人は、請求人の施設管理担当である。
(ロ) 平成17年3月31日において、本件工事2の進ちょく割合は7割くらいであった。
(ハ) 本件工事2に係る平成17年3月31日付の請求書については、平成17年2月7日付で稟議書の決裁を受けていたため、G社のQさんに対し、平成17年3月31日に工事が終了したものとして作成を依頼したものである。なお、当該請求書は平成17年3月末に郵便にて受領したと記憶している。
(ニ) 平成17年3月末までに本件工事2が完了していないことについて、上司であるR常務取締役に報告し、了解を得ていた。
ハ 本件工事3及び4に関するSの申述要旨
(イ) 本件工事3に関する申述要旨
A 申述人は、請求人の施設管理担当である(下記(ロ)共通)。
B 本件工事3は、平成17年4月13日に完了した。
C 本件工事3に係る平成17年3月31日付の請求書については、本件工事3は平成17年3月26日に工事に着手しており、また、稟議書により平成17年2月15日に決裁を受けていたため、平成17年3月中に完了したとして処理する必要があったので、実際に工事を施工したT社の営業担当のUさんに対して作成を依頼した。なお、当該請求書を直接受領したか郵送にて受領したかは覚えていない。
D 本件工事3に係る納品書は受領していない。また、請求人は検収書を発行していない。
(ロ) 本件工事4に関する申述要旨
A 本件工事4は、平成17年4月8日に実施し、同日に完了した。
B 本件工事4に係る平成17年3月31日付の請求書については、J社のV社長に対して作成を依頼し、平成17年3月末に提出してもらった。なお、当該請求書を直接受領したか郵送にて受領したかは覚えていない。
C 本件工事4に係る納品書は受領していない。また、請求人は検収書を発行していない。
ニ 本件工事5に関するWの申述要旨
(イ) 申述人は、請求人の○○営業部○○担当である。
(ロ) 本件工事5は、平成17年4月2日に完了した。
(ハ) 本件工事5に係る平成17年3月30日付の請求書については、K社の営業担当のXさんに対して作成を依頼した。なお、当該請求書をいつ、どのように受領したかは記憶していない。
(ニ) 当該請求書の作成を依頼したことについては、○○担当という立場で私自身が判断し処理した。
ホ Mの申述要旨
 F社のMは、原処分担当職員に対して、要旨次のとおり申述した。
(イ) 申述人は、F社企画管理課に所属し、営業及び現場監理に従事している。
(ロ) 本件工事1について、F社の責任者は自分であり、請求人の担当者は保守担当のLさんであった。
(ハ) 本件工事1は平成17年3月上旬から同月末までの作業実施予定であったが、○○○○のデザインの変更に関する請求人の決定が遅延したことから、平成17年3月21日から本件工事1を行うこととなった。そのため、平成17年3月末には、本件工事1は完了していなかった。
(ニ) F社が請求人に交付した平成17年3月31日付の請求書には本件工事1についても登載されているが、これは、本件工事1も含めて請求書を出すよう、請求人の担当者であるLさんから依頼があったからである。なお、当該請求書については、平成17年3月31日に、自分がLさんに対して直接渡したと記憶している。
(ホ) 本件工事1の完了に当たって、平成17年4月19日にLさんが立ち会い、検収の了解をもらった。なお、検収書など書類のやりとりはしていない。F社の場合には、請求書が納品書を兼ねている。
ヘ 請求人の常務取締役管理部長であるRが原処分庁の調査担当部門の統括国税調査官に提出した平成18年3月19日付確認書(以下「本件確認書」という。)には、要旨次のとおり記載がある。
(イ) 本件各工事は、平成17年3月31日において未完成又は未着工であった。
(ロ) 本件各工事は、平成16年4月1日から平成17年3月31日までの事業年度の予算に計上していたことから、請求人が工事業者に依頼し請求書(納品書を兼ねる)を提出させ、その請求書に基づき当該事業年度の修繕費に繰上計上したことを確認する。
(ハ) このような不適切な会計処理について、深く反省するとともに、今後の再発防止を徹底する。
ト Rは、平成19年10月30日に当審判所に対し、要旨次のとおり答述した。
(イ) 本件確認書の記載内容に事実と異なることはない。
(ロ) 契約した工事に関しては、通常、完了する前にそれに係る請求書を受け取ることはない。

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(2) 法令解釈

 重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて隠ぺい、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い行政上の制裁を課することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。
 そして、重加算税を課すには、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい、仮装行為を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に、申告に際し、納税者において過少申告を行うことの認識を有していることまでを必要とするものではないと解するのが相当である。
 通則法第68条第1項の規定は、上記1の(3)のロのとおりであり、ここでいう「事実を隠ぺいする」とは、課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠ぺいしあるいは故意に脱漏することをいい、また、「事実を仮装する」とは、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかもそれが真実であるかのように装う等、故意に事実をわい曲することをいうものと解される。

(3) 本件賦課決定処分について

イ 本件各請求書について
 1上記(1)のイの(ニ)、同ハの(イ)のD及び同(ロ)のCの各申述のとおり、本件工事1、本件工事3及び本件工事4の各工事の完了に当たって、請求人は納品書を受領せず、また、検収書を発行していないこと、2上記(1)のホの(ホ)の申述のとおり、F社においては請求書が納品書を兼ねていること、3上記(1)のヘの(ロ)の本件確認書に記載のとおり、請求人が工事業者に依頼した請求書は納品書を兼ねていること、及び4上記(1)のトの(ロ)の答述のとおり、請求人において契約した工事は、通常、完了する前に当該工事に係る請求書を受け取ることはないことを併せ考えれば、本件各請求書については、請求人における経理処理上、単に工事業者に対する金銭の支出の基準となる書類であるのみならず、本件各工事が完了したかどうかの判定の基準となる書類、すなわち、消費税の課税仕入れの帰属時期を確定する際の必要かつ重要な証ひょう書類でもあったと認められる。
ロ 仮装又は隠ぺいの有無
(イ) 本件工事1の請求人の現場担当者であるLの上記(1)のイの申述内容は、本件工事1の工事業者の担当者であるMの上記(1)のホの申述内容にそうものであり、また、L、P、S及びW(以下、これらの4名を「本件各現場担当者」という。)の上記(1)のイないしニの申述内容は、上記(1)のヘの本件確認書の記載内容にそうものであることからすれば、本件各現場担当者が本件各工事の担当者に本件各請求書の発行を依頼した目的は、請求人における経理処理上、本件各工事の完了時期の判定基準となる書類でもある本件各請求書を平成17年3月31日までに徴することにより、同日までに本件各工事を完了したものとして処理し、請求人の平成16年4月1日から平成17年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)における本件各工事に係る予算を消化することにあったと容易に推認できる。
(ロ) これらのことからすると、本件各現場担当者が、本件各工事が明らかに完了していないことを認識していたにもかかわらず、本件各工事業者に対し、本件課税期間中の日付の請求書の発行を本件各工事に係る予算を本件事業年度内に消化させようとする明確な意図に基づいて依頼したことは、本件各工事が平成17年3月31日までに完了していなかった事実を同日までに完了したごとく仮装したものと認めるのが相当である。
 そして、請求人は、受領した本件各請求書が本件各工事の完了日を仮装したものであるとの認識のもと、これに基づき本件各工事について課税仕入れを行った日が本件課税期間中にあったものとして消費税等の納付すべき税額を算出し、過少申告となる本件確定申告書を提出したものと認められる。
ハ 重加算税の賦課決定の可否
 請求人は、上記ロのとおり、本件各請求書の発行依頼から本件確定申告書の提出までの行為について、税額の計算の基礎となる事実を仮装し、当該仮装行為を原因として過少申告の結果が発生しているものと認められるから、たとえその目的が予算の消化にあったとしても、上記(2)に照らせば、請求人の過少申告の意図の存否にかかわらず、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たすものである。
ニ 本件賦課決定処分の適否
 以上のとおり、請求人は、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実を仮装して本件確定申告書を提出しており、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしているから、その仮装された事実に係る部分の税額を基礎として原処分庁が行った本件賦課決定処分は適法である。
ホ 請求人の主張について
(イ) 請求人は、本件各現場担当者が本件課税期間内の日付を記載した本件各請求書を発行するよう本件各工事業者に依頼したのは、請求人の事情によるもので、過少申告を目的としたものではない旨主張する。
 しかしながら、仮に請求人の主張のとおり、請求人が本件各請求書を本件各工事業者に依頼したのは、請求人の予算消化等の事情によるものであり、過少申告の意図はなかったとしても、上記(2)に照らせば、請求人が本件各請求書を受領するに至った行為は、通則法第68条第1項に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実を仮装し」に該当することとなるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ロ) また、請求人は、本件各請求書は請求した日の日付で発行されており、請求金額にも誤りがなく、本件各請求書を受けて支払っているのであるから、本件各請求書には虚偽の記載はなく、真実の請求書である旨主張する。
 しかしながら、上記イのとおり、本件各請求書については、請求人における経理処理上、単に工事業者に対する金銭の支出の基準となる書類であるのみならず、本件各工事が完了したかどうかの判定の基準となる書類でもあったものと認められ、本件各工事の工事業者に対し平成17年3月31日現在において未完了の本件各工事に係る対価についても同日までに請求することを依頼し、本件各請求書を徴した上で、同日までに本件各工事が完了したものとして課税仕入れとして処理したことが通則法第68条第1項に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実を仮装し」に該当することは上記ロのとおりであるから、本件各請求書には虚偽の記載がないとする請求人の主張は採用できない。

(4) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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