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(平20.5.29、裁決事例集No.75 546頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)の相続税について、原処分庁が、請求人以外の共同相続人が相続開始前3年以内に被相続人から贈与により取得した財産の価額を加算して相続税額を計算すべきであること及び上場株式の端株が申告漏れとなっていたことを理由とし、当該端株のうちに未分割のものがあるため、各共同相続人の課税価格の計算に当たり、被相続人から受けた贈与財産を持ち戻し、未分割財産について、いわゆる穴埋方式により計算して更正処分等をしたのに対し、請求人が、当該共同相続人は被相続人から贈与を受けた事実はないこと及び未分割財産については、共同相続人各々に法定相続分の割合で単純に配分するいわゆる積上方式により計算すべきであることを理由として、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成17年7月○日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡したH(以下「本件被相続人」という。)の共同相続人の一人であり、この相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税について、別表1の「当初申告」欄のとおり記載した申告書を法定申告期限までに原処分庁へ提出した(以下、この提出した申告書を「本件申告書」という。)。
ロ 原処分庁は、これに対し、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、平成19年2月27日付で別表1の「更正処分等」欄のとおりの更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として、平成19年4月20日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年7月9日付で別表1の「異議決定」欄のとおり、上記ロの更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分の一部を取り消す異議決定をした(以下、この異議決定後の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をそれぞれ「本件更正処分」及び「本件賦課決定処分」という。)。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成19年8月3日に審査請求をした。

(3) 関係法令

 関係法令の要旨は、別紙のとおりである。

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(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁の間に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 本件相続に係る共同相続人は、本件被相続人の長男であるJ、二男である請求人及び長女であるKの3名(以下、これら3名の者を併せて「本件相続人ら」という。)である。
ロ 本件申告書に添付された本件相続に係る平成18年4月19日付の遺産分割協議書(以下「本件遺産分割協議書」という。)には、J及び請求人は、Kが同人の寄与分としてP市p町○○番地所在の居宅(以下「本件居宅」という。)及びその敷地(以下「本件土地」という。)並びに現金20,000,000円を取得することを承認し、当該現金についてはJ及び請求人が本件相続により取得する株式を売却した代金により各10,000,000円をKに支払う旨記載がある(以下、本件遺産分割協議書に係る協議を「本件遺産分割協議」という。)。
ハ 本件申告書に記載された本件居宅の財産評価基本通達(昭和39年4月25日直資56ほか国税庁長官通達)に基づき評価した価額(以下「相続税評価額」という。)は325,484円、本件土地の相続税評価額は31,262,603円である。
ニ 本件申告書に記載された上場株式の銘柄には、本件遺産分割協議書に記載がある上場株式のうち請求人が取得したL社の株式85株の記載がなく、その他の上場株式の銘柄及び株数は、本件遺産分割協議書に記載された銘柄及び株数と一致する。
ホ 平成18年7月2日付の「確認書」と題する書面には、要旨次の記載があり、本件相続人ら全員の署名、押印がある(以下、当該確認書によってされた遺産分割協議を「本件追加分割協議」といい、本件追加分割協議の対象となった株式及び本件遺産分割協議書に記載があるL社の株式を併せて「本件追加分割等株式」という。)。本件追加分割等株式の銘柄、数量及び相続税評価額等の明細は、別表2のとおりである。
(イ) 本件遺産分割協議書に記載があるL社の株式85株については、その名義がKとなっていることから、名義変更を行わず同人が請求人から買い受ける。
 本日、Kが請求人に対してその代価○○○○円を支払うことにより、当該株式の所有権はKに帰属するものとする。
(ロ) 本件遺産分割協議書に記載がないM社の株式859株及びN社の株式60株については、それらの名義がK(当審判所の調査によれば、M社の株式859株はKの長男R名義である。)となっているが、これらを本件相続人らで三分割することとする。
 当該株式については名義変更を行わず、本日、KがJ及び請求人に対してその代価○○○○円をそれぞれに支払うことにより、当該株式の所有権はKに帰属するものとする。
(ハ) 上記(イ)及び(ロ)の各株式の単価は、S証券取引所における平成18年6月30日の終値とする。
ヘ 原処分庁は、本件相続に係る相続税について、1別表2の本件追加分割等株式並びに本件遺産分割協議及び本件追加分割協議の対象とされなかった株式(以下「本件未分割株式」という。)がいずれも相続財産として申告漏れであり、また、2請求人以外の共同相続人が、本件被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けた財産○○○○円が当該共同相続人の相続税の課税価格に加算漏れであるとして、平成19年2月27日付で請求人に対し更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。本件未分割株式の銘柄、数量及び相続税評価額等の明細は、別表3のとおりである。

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2 主張

(1) 原処分庁

イ 本件更正処分について
(イ) 相続開始前3年以内の贈与加算について
 Kは、相続開始前3年以内に本件被相続人から贈与により○○○○円の財産を取得していると認められる。
 また、請求人は、本件更正処分が相続税法に基づかない相続税の推計課税である旨主張しているが、請求人の主張は独自の見解によるものである。
(ロ) 未分割財産がある場合の相続税の課税価格の計算方法について
 相続税法第55条の規定によれば、相続税の課税価格の算定に当たり、本件未分割株式については、本件相続人らが同条に規定する民法の規定による相続分の割合に従って取得したものとして計算することとなる。
 ところで、民法上、各共同相続人は、他の共同相続人に対し、遺産全体に対する自己の相続分に応じた価格相当分から、既に分割を受けた遺産の価格を控除した価格相当分について、その権利を主張することができるものと解されている。このため、相続税法第55条の規定は、上記のような実体上の権利関係に従って計算が行われるように規定されたものと解されることから、同条にいう「相続分の割合」とは、「共同相続人が他の共同相続人に対してその権利を主張することができる持分的な権利の割合」をいうと解される。
 そうすると、一部未分割財産がある場合において相続税の課税価格を計算する際には、具体的には、分割済財産額と未分割財産額との合計額を基礎とし、これに民法の規定による相続分を乗じ、各人の分割取得済財産額を控除した残額をもってその者の相続分として、未分割財産額を各相続人に配分することにより、各人の相続税の課税価格を算出する方法(以下「穴埋方式」という。)によるのが相当と解される。
 また、民法第903条第1項は、共同相続人中に、被相続人から贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、同法第900条から第902条の規定により算定した相続分の中からその贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする旨規定している。
 したがって、本件においては、本件相続人らの中に本件被相続人から贈与を受けた者がいることから、民法第903条の規定に従って当該贈与の額を持ち戻して相続分を計算し、また、本件未分割株式については、穴埋方式により計算すべきである。
(ハ) 本件更正処分について
 以上により、請求人の相続税の納付すべき税額を計算すると、別表1の「異議決定」欄の金額と同額になるので、本件更正処分は適法である。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分は適法であり、また、国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき行った本件賦課決定処分は適法である。

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(2) 請求人

イ 本件更正処分について
(イ) 相続開始前3年以内の贈与加算について
A 原処分庁は、相続開始前3年以内に本件被相続人がKに対して本件被相続人名義の預金の引出額○○○○円の現金(以下「本件現金」という。)を贈与したと認定して、本件相続に係る相続税の課税価格に当該贈与財産の価額を加算しているが、本件被相続人の厳しい性格、生前の経歴、分け隔てなく本件相続人ら3人の子供を育て見守ってくれた人生観からして、本件被相続人が多額の本件現金をKに贈与することは絶対あり得ない。
 また、本件現金が財産と認識できるものであれば、それは本件被相続人の財産、すなわち相続財産そのものである。
B 贈与とは、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思表示をし、相手方がこれを受諾することによって成立する契約をいうとされているところ(民法第549条)、原処分庁が贈与を受諾したと認定したK自身も、贈与を受けていない旨の異議申立てをしており、贈与契約の要件を全く具備していない。
C また、原処分庁が、Kに対する贈与税の課税を相続税法第9条《贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合》の規定を根拠としてするのであれば、同人に対する財産の増加又は債務の減少といった客観的な事実を明らかにしなければならないところ、それが明らかになっていない以上、同条に規定するみなし贈与の課税要件も具備していない。
D さらに、原処分庁が中途半端で未熟な調査手法により本件被相続人の預金の引出額に対応する資産が発見できなかったからといって、本件現金をKに対する贈与であると認定することは、公権力の濫用であり、相続税法に規定されていない相続税の推計課税を行ったものである。
(ロ) 未分割財産がある場合の相続税の課税価格の計算方法について
 相続税法第55条は、財産の全部又は一部が共同相続人によって分割されていないときは、その分割されていない財産については、民法の規定による相続分によって取得したものとして課税価格を計算する旨規定している。
 ところで、原処分庁は、Kが本件相続により取得した分割済財産の価額が同人の法定相続分による取得価額を超えているため、本件未分割株式については同人には相続分がないものとして穴埋方式で計算しているが、法的紛争で解決するのであればともかく、そのような計算方法は、世の中の実態に合わないものである。
 したがって、本件未分割株式については、本件相続人らが均等に取得したものとして、相続税額の計算をすべきである。
(ハ) 本件更正処分について
 以上により、請求人の相続税の納付すべき税額を計算すると、別表1の「請求人主張額」のとおり○○○○円となり、この金額を上回る本件更正処分は違法であるから、その一部を取り消すべきである。
 なお、原処分のその他の部分については争わない。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分はその一部を取り消すべきであるから、本件賦課決定処分もその一部を取り消すべきである。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、1相続開始前3年以内の贈与加算の適否及び2未分割財産がある場合の相続税の課税価格の計算方法にあるので、審理したところ、以下のとおりである。

(1) 本件更正処分について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人は、現在居住しているマンションを取得するための資金の一部として、平成12年の5月から6月にかけて、本件被相続人から○○○○円の現金の贈与を受けた。
(ロ) 原処分庁が相続税の課税価格に加算した贈与財産は、本件現金である。
(ハ) 原処分庁は、上記1の(4)のヘの更正処分において、本件相続人らの相続税の課税価格の計算をするに当たり、Kが取得した分割済財産の価額が法定相続分相当額を超過しており、J及び請求人が取得した分割済財産の価額が法定相続分相当額に満たないため、本件未分割株式の相続税評価額をJ及び請求人に均等に配分する穴埋方式により計算している。
(ニ) 異議審理庁は、上記1の(4)のヘの更正処分について、穴埋方式の計算の内容に誤りが認められたため、これを是正して請求人の納付すべき相続税額を計算したところ○○○○円となり、この金額は当該更正処分の金額を下回ることから、当該更正処分の一部を取り消すとともに、他の共同相続人が本件相続の開始前3年以内に本件被相続人から贈与を受けていたことを請求人が本件申告書の提出後に了知した事実は、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」に該当するとして、当該事実に基づく相続税額に対応する過少申告加算税の額及び穴埋方式の計算の誤りにより取り消された相続税額に対応する過少申告加算税の額について、上記1の(4)のヘの賦課決定処分の一部を取り消した。
(ホ) 請求人及び請求人の妻であるT並びにJの妻であるUは、平成19年11月16日、当審判所に対し要旨次のとおり答述した。
A 本件被相続人とKは同居していたが、二人は仲が良くないように見えた。
B 本件被相続人は、○○○病のため、視力の低下、色覚異常を伴い、視野が狭くなってきていた。平成10年ころまでは、1万円札と5千円札の区別ができていたようだが、死亡の5、6年前になると、ほとんど見えていない状態だった。
C 本件被相続人とUは仲が良かったので、本件被相続人が大金を使うときは、必ずUに相談があった。
D 本件被相続人の預金通帳は、Kから見せてもらっていないので、取引状況は全く分からない。Kは、通帳は捨ててしまったと言っていた
E 本件被相続人は金銭感覚はしっかりしていた。生前に贈与を受けたのは、請求人のマンション取得資金の○○○○円のみであり、それ以外にJと請求人はその家族を含め、本件被相続人から贈与を受けたことはない。
F 三人の子供を平等に育ててきた性格からみて、本件被相続人がKにだけ贈与することは考えられない。
G 多額の現金が消えたとされているが、いくら消えたか分からない。もし現金を持っていったとすれば、Kの仕業としか考えられない。どこかに隠しているのではないか。
ロ 相続開始前3年以内の贈与加算について
 相続税法第19条第1項の規定によれば、相続又は遺贈により財産を取得した者が、その相続開始前3年以内にその相続に係る被相続人から、贈与により財産を取得している場合には、その贈与により取得した財産の価額をその贈与を受けた者の相続税の課税価格に加算することとされているところ、この場合における贈与の意義については、相続税法上明確な定義はないものの、民法第549条に規定する贈与及び相続税法の規定により贈与があったものとみなされる場合における当該贈与をいうものと解するのが相当である。
 この点に関し、原処分庁は、Kが本件相続の開始前3年以内に本件被相続人から贈与により本件現金を取得していると認められる旨主張している。しかしながら、原処分関係書類によれば、本件被相続人名義の預金からの多額な出金の事実は認められるものの、原処分庁から提出された全資料を総合し、さらには、当審判所において調査した結果によっても、Kが本件現金を取得ないしは費消したとか、本件現金が本件相続開始日に存在したと認めるには足りないことからすれば、同人が本件被相続人から贈与により本件現金を取得したものとは認められず、原処分庁の主張には理由がないものと判断せざるを得ない。
 したがって、本件現金について相続開始前3年以内に贈与がなされたものとして相続税の課税価格に加算するのは相当ではない。
ハ 未分割財産がある場合の相続税の課税価格の計算方法について
 請求人は、本件未分割株式に対応する相続税額については、本件未分割株式を本件相続人らが均等に取得したものとして計算すべきである旨主張する。
 ところで、相続税法第55条の規定によれば、相続により取得した財産の全部又は一部が共同相続人によってまだ分割されていないときは、その未分割財産については、各共同相続人が民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分の割合に従って財産を取得したものとして相続税の課税価格を計算することとされている。
 この「民法の規定による相続分」とは、民法第900条から第903条までに規定する相続分をいうから、共同相続人の中に被相続人から贈与を受けた者がいる場合には、同法第903条の規定により、相続財産の価額に贈与財産の価額を加えるいわゆる持戻計算を行うこととなる。
 また、相続税法第55条にいう「相続分の割合」とは、共同相続人が他の共同相続人に対してその権利を主張することができる持分的な権利の割合をいうものと解するのが相当であり、相続財産の一部が分割され、残余が未分割である場合には、各共同相続人は、他の共同相続人に対し、相続財産全体に対する自己の相続分に応じた価格相当分から、既に分割を受けた相続財産の価格を控除した価格相当分についてその権利を主張することができるものと解されている(平成5年5月29日最高裁判決(平成元年(行ツ)第162号)並びにその前審である平成元年8月30日東京高裁判決(昭和62年(行コ)第98号)及び昭和62年10月26日東京地裁判決(昭和55年(行ウ)第86号)参照)。
 したがって、相続税の課税価格の計算に当たっては、被相続人から贈与を受けた財産の価額については相続財産への持戻計算を行い、また、相続財産の一部が分割され、残余が未分割である場合には、上記判例の趣旨に照らせば、穴埋方式により計算するのが相当であるから、この点に関する請求人の主張には理由がないというべきである。
ニ 請求人に係る相続税の課税価格及び納付すべき税額(審判所認定額)
 請求人に係る相続税の計算においては、上記ロのとおり、本件現金について相続開始前3年以内に贈与がなされたものとして、Kの相続税の課税価格に加算するのは相当ではなく、また、請求人は上記イの(イ)のとおり、本件被相続人から現金○○○○円の贈与を受けていることから、当該現金について相続財産への持戻計算を行うとともに、本件未分割株式について穴埋方式による計算を行うのが相当である。
 ところで、上記1の(4)のロのとおり、Kは、本件遺産分割協議に基づき、本件被相続人に対するKの寄与分として、本件相続に係る相続財産のうちから具体的に本件居宅及び本件土地並びに現金20,000,000円を取得することが定まっており、それらの価額の合計は51,588,087円である。
 そして、相続税法第55条においては、民法の規定による相続分の割合について、同法第904条の2を除く旨規定しているが、その趣旨は、寄与分は、具体的には共同相続人間の協議又は家庭裁判所における審判によって初めて明らかになるのが一般的であることから、遺産が未分割である場合には寄与分も具体的に定まっていないことが多いことを踏まえ、相続税法第55条に規定する相続税の課税価格の計算ができなくなることを防ぐことにあることからすれば、同条の規定は、寄与分に応ずる取得財産が具体的に定められている場合について、これを相続分の算定に反映させることを排除する趣旨とまでは解することができない。また、同条にいう「相続分の割合」とは、上記ハのとおり、「共同相続人が他の共同相続人に対してその権利を主張できる持分的な権利の割合」をいうところ、先行する遺産分割により、寄与分に応ずる取得財産が具体的に定められている場合には、当該取得財産額については、穴埋方式による共同相続人の未分割遺産の取得可能額の計算の基礎となる財産の価額から除外される(ただし、当該除外された寄与分に応ずる取得財産額は、寄与相続人の課税価格に加算されて、同人の具体的な課税価格が算定されることになる。)と解しても、共同相続人が他の共同相続人に対してその権利を主張できる持分的な権利の割合を適正に計算することの妨げとはならないとともに、それは寄与分に関する民法の定めや共同相続人の意思にも沿うものであり、その解釈は、同条の趣旨に照らしても合理的なものというべきである。
 そうすると、本件相続においてKの寄与分として具体的に確定している財産の価額は、穴埋方式による未分割遺産に係る各共同相続人の取得可能財産額の計算の基礎となる財産の価額から除外して計算するのが相当であり、それにより本件未分割株式の取得割合の計算の基礎となる財産の価額を計算すると、別表4-1の「相続税評価額」欄の15のとおり○○○○円となる。そこで、同金額を基に穴埋方式により請求人に配分される本件未分割株式の割合を計算したところ、別表4-2の「請求人」欄の8のとおり、27,789,276分の9,052,608となり、当該割合を別表4-1の本件未分割株式の各銘柄の相続税評価額にそれぞれ乗じて計算したものを合計して請求人に配分される本件未分割株式の金額の合計額を算定すると、同表の「請求人」欄の14のとおり459,396円となる。
 そうすると、別表5のとおり、請求人の本件相続に係る相続税の課税価格は○○○○円、納付すべき税額は○○○○円となる。
ホ 本件更正処分について
 以上の結果、別表1の「審判所認定額」欄のとおり、請求人に係る相続税の納付すべき税額は本件更正処分の額を下回るから、本件更正処分はその一部を取り消すべきである。

(2) 本件賦課決定処分について

 本件更正処分は、上記(1)のホのとおり、その一部を取り消すべきであるところ、請求人の過少申告加算税の基礎となる税額は、審判所認定による納付すべき税額○○○○円と当初申告における納付すべき税額○○○○円との差額について、通則法第118条第3項の規定により10,000円未満の金額を切り捨てた金額である○○○○円となる。
 そして、上記(1)のニの納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに本件更正処分前の税額の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そこで、請求人の過少申告加算税の額を算定すると、別表1の「審判所認定額」欄のとおり○○○○円となり、この金額は本件賦課決定処分の金額を下回るから、本件賦課決定処分は、その一部を取り消すべきである。

(3) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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