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(平20.12.18、裁決事例集No.76 42頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、給与所得者である審査請求人(以下「請求人」という。)が平成17年分及び平成18年分(以下「本件各年分」という。)の所得税の確定申告において、外国為替証拠金取引(以下「FX取引」という。)に係る所得金額を含めないで申告したことについて、原処分庁が隠ぺい・仮装の行為があったとして重加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)を行ったのに対し、請求人が、申告しなかったことにつき隠ぺい・仮装の行為をした事実はないとして、過少申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めるとともに、請求人が、FX取引における売買注文を出す時の売値と買値の価格差に相当する金額(以下「本件スプレッド相当額」という。)は、FX取引の必要経費として差し引くべきであるとして、平成18年分の所得税に係る更正の請求を行ったことに対し、原処分庁が行った、更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、本件各年分の所得税の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
ロ 次いで、請求人は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「調査担当者」という。)の調査(以下「本件調査」という。)を受け、本件各年分の所得税について、別表1の「修正申告」欄のとおりとする修正申告書(以下「本件各修正申告書」という。)をいずれも平成19年6月8日に提出した。
ハ これに対して、原処分庁は、別表1の「賦課決定処分」欄のとおり、平成19年8月13日付で、本件各年分の所得税に係る本件各賦課決定処分をした。
ニ 請求人は、本件各賦課決定処分を不服として、平成19年9月10日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年12月5日付で、別表1の「異議決定」欄のとおり、棄却の異議決定をした。
ホ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成19年12月26日に審査請求をした。
ヘ また、請求人は、平成19年10月17日に、平成18年分の雑所得の金額及び納付すべき金額を別表1の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の更正の請求をしたところ、原処分庁は、これに対し、平成19年12月5日付で本件通知処分をした。
ト 請求人は、本件通知処分を不服として、平成20年2月4日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年4月25日付で棄却の異議決定をした。
チ 請求人は、異議決定を経た後の本件通知処分に不服があるとして、平成20年5月23日に審査請求をしたので、本件各賦課決定処分に対する審査請求と併合審理をする。

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(3) 関係法令

イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、同法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。
ロ 所得税法第35条《雑所得》第1項は、雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいうとし、そして、第2項で、雑所得の金額は、第1号のその年中の公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を控除した残額と、第2号のその年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く。)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額の合計額とする旨規定している。
ハ 所得税法第37条《必要経費》第1項は、その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする旨規定している。

(4) 基礎事実

イ 請求人は、平成17年分の所得税の確定申告書に、給与所得の金額○○○○円、住宅借入金等特別控除の金額○○○○円と記載して申告した。
ロ 請求人は、平成18年分の給与所得者に係る年末調整に際し、平成18年分給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書の「年間所得の見積額」欄を空欄のまま勤務先に提出した。
ハ また、請求人は、平成18年分の所得税の確定申告書に、給与所得の金額○○○○円、分離課税となる株式等に係る源泉徴収税額○○○○円、分離課税となる先物取引に係る雑所得の繰越損失の金額○○○○円及び住宅借入金等特別控除の金額○○○○円と記載して申告した。
ニ 請求人は、平成16年10月14日からD社、平成17年3月23日からE社及び平成18年6月22日からF社(以下、D社及びE社と併せて「本件各FX取引先」という。)を通じて、FX取引(以下「本件FX取引」という。)を開始した。
 なお、FX取引は、電話等による対面取引又は電子取引のいずれかの方法により行うが、請求人は、本件FX取引において電子取引による方法を採っていた。
ホ 本件FX取引の内容は、本件各FX取引先の「ご利用マニュアル」、「約款・規程集」、「外国為替保証金取引説明書」及びホームページ等によると、次のとおりであり、この範囲では、本件各FX取引先の間に差異はない。
(イ) 本件FX取引の仕組みは、本件各FX取引先と顧客(以下「委託者」という。)との相対取引で、実際の通貨の売買を伴わない、買った外国通貨を転売又は売った外国通貨を買い戻すという一対の売買形態で差損益だけを決済する差金決済方法によるもので、外国通貨の買い注文又は売り注文(以下「新規注文」という。)と、この新規注文を清算する一対の外国通貨の売戻し注文又は買戻し注文(以下「反対注文」という。)をもって一取引となる。
(ロ) 本件各FX取引先は、外国為替市場で業務を行う金融先物取引業者等と契約し、委託者との間で成立した注文により取引を行っている。
(ハ) 委託者が、本件FX取引を行う場合は、まず本件各FX取引先に外国為替証拠金取引口座を開設しなければならない。
 そして、委託者が、本件FX取引において、証拠金、外貨や代金の受渡し、あるいは転売若しくは買戻しによる決済を行った場合に授受する差損益金及び金利その他の金銭は、外国為替証拠金取引口座で処理されることとなる。

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2 主張

 別紙「当事者の主張」のとおりである。

3 判断

(1) 所得税に係る重加算税の賦課決定処分の適否について

イ 法令解釈
 通則法第68条第1項は、上記1の(3)のイのとおり、過少申告した納税者が、その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、その納税者に重加算税を課す旨規定している。
 この重加算税の制度は、納税者が過少申告をしたことについて隠ぺい、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。
 したがって、重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要するものである。しかし、上記の重加算税制度の趣旨にかんがみれば、架空名義の預金口座等の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上で、その意図に基づいて過少申告をしたような場合には、重加算税の上記課税要件が満たされたものと解するのが相当である。
ロ 認定事実
 原処分関係資料、請求人の提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人は、平成19年5月30日に、調査担当者から本件FX取引の有無について電話により質問され、本件FX取引を行っていることを認めた。
(ロ) 請求人は、本件各FX取引先のホームページ上で電子的に閲覧できる請求人のFX取引事績が記録されたD社の「月次報告書」、E社の「口座明細」及びF社の「取引残高報告書」(以下「本件各FX取引事績報告書」という。)を請求人のパソコンから出力し、平成19年6月5日に原処分庁に出向き調査担当者に提出したところ、調査担当者から修正申告を行う必要があること、また、加算税も賦課される旨の説明を受けた。
(ハ) 請求人は、平成19年6月8日に再度原処分庁に出向き、請求人作成の本件FX取引に係る必要経費等の明細を提示したところ、原処分庁の調査担当者が、これらに基づいて本件FX取引に係る所得金額を計算し、申告漏れを指摘したので、請求人は、当初の申告額に本件FX取引に係る所得金額等を加算した本件各修正申告書を同日付で提出した。
 なお、同日提示された必要経費等の明細には、本件スプレッド相当額は含まれていない。
(ニ) 同日、調査担当者は、請求人を納付相談のために特別国税徴収官へ案内する際、本件各修正申告書における本税額、過少申告加算税額及び住民税額を記載したメモを請求人に交付している。
 なお、本件調査の全過程において、請求人が虚偽の答弁や資料の隠匿等の行為を行ったという事実はない。
(ホ) 本件FX取引の税務上の取扱いについて、本件各FX取引先は、FX取引の取引申込者等に対し、次のとおり周知している。
A D社では、取引申込み時に「ご利用マニュアル」を取引申込者に対して交付しており、その中に税務上の取扱いが掲載されている。また、平成19年○月○日から、同社のホームページ上でも、同様の内容が掲載されている。
B E社では、取引申込み時に「約款・規程集」を取引申込者に対して交付しているが、平成17年当時の約款・規程集には税務上の取扱いが掲載されていなかった。ただし、同社のホームページ上では、平成15年○月ころから税務上の取扱いが掲載されている。
C F社では、取引申込み時に「外国為替保証金取引説明書」を取引申込者に対して交付しており、その中に税務上の取扱いが掲載されている。また、平成15年○月ころから、同社のホームページ上でも、同様の内容が掲載されている。
ハ 請求人は、本件FX取引に係る所得の申告義務等について、当審判所に対し、要旨次のとおり答述している。
(イ) 本件各年分の所得税の確定申告において、本件FX取引に係る所得を申告しなかったのは、株式の売買等の申告については、源泉分離課税の場合、取引業者が行うことを知っていたことから、本件FX取引についても、本件各FX取引先がやるものだと思い込んでいたことによるものであり、また、重加算税の本件各賦課決定処分の通知を受けるまで、FX取引の税務上の取扱いについて税理士等に相談したことはなかった。
(ロ) また、FX取引に係る所得について、申告の認識がなかったので、本件各FX取引先のホームページや書類による案内等は見ていなかった。
ニ そこで、上記1の(4)の基礎事実、上記(1)のロの認定事実及び上記ハの請求人の答述を上記イに照らして判断すると、次のとおりである。
(イ) 原処分庁は、FX取引に係る所得の申告義務等については、本件各FX取引先の周知状況からみて、請求人は、同所得に係る申告義務等について認識し得る状況にあったこと、本件FX取引に係る雑所得の金額が、請求人の各年分の給与所得の金額の約14倍から16倍と請求人にとって多額の金額となること、及び請求人は、平成18年分の給与所得者に係る年末調整に際し、住宅借入金等特別控除申告書の「年間所得の見積額」欄を空欄のまま勤務先に提出していることなどの一連の行為をもって、請求人が、本件FX取引に係る真実の所得金額を隠ぺいすることを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をし、その意図に基づいた過少申告をしたとし、これらの行為を総合勘案すれば、重加算税の課税要件を充足している旨主張する。
(ロ) 上記イのとおり、重加算税の課税要件として、1当初から所得を過少に申告する意図の存在、2その意図を外部からもうかがい得る特段の行為、及び3その意図に基づいた過少申告があることが必要と解されるところ、請求人は、本件FX取引に係る所得の申告義務について、上記ロの(ホ)のとおり、D社の「ご利用マニュアル」及びE社のホームページ上において知ることが可能であったこと、また、上記ロの(ロ)のとおり、請求人のパソコンでFX取引事績を確認すれば売買損益を知ることができたことから、本件FX取引に係る所得の申告義務及び多額の所得があったことについては認識していたのではないかという疑いも存する。
 しかしながら、上記ハの請求人の答述からすれば、本件FX取引に係る税務上の取扱いについて、請求人が税理士等の専門家に相談したといった事実は認められず、また、当初申告当時、請求人は、本件FX取引に係る所得について、株式の売買等の場合と同様に、源泉分離課税であると誤解していた可能性も否定できず、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を明らかに有していたことまでは認められない。
 また、請求人が、平成18年分の給与所得者に係る年末調整に際し、住宅借入金等特別控除申告書の「年間所得の見積額」欄を空欄のまま勤務先に提出した行為についても、仮に請求人が本件FX取引に係る所得が源泉分離課税であると誤解していたとすれば、同欄を空欄にして提出する可能性もあり得るのであり、そのような事実をもって、当初から所得を過少に申告するとの意図を外部からうかがい得るような特段の行為をしたとまでいうことはできない。
 そのほか、上記ロの(ニ)のとおり、原始資料等をあえて散逸したり、虚偽の答弁、虚偽資料を提出するなど本件調査に非協力であったという事実もないことからすれば、原処分庁が主張する事実をもって、直ちに、請求人が当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上で、その意図に基づいて過少申告をしたものということはできない。
 さらに、当審判所の調査その他本件に関する資料をもってしても、請求人に真実の所得を隠ぺい又は仮装したものと評価すべき行為や事実の存在があったものと認めることはできず、他にこれと異なる認定をするに足る証拠もない。
 したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
(ハ) また、請求人は、別紙「当事者の主張」争点1−2において、他の取消事由を主張するところ、上記(ロ)のとおり争点1−1についての原処分庁の主張自体に理由がないことから、争点1−2の違法理由とする請求人の主張について検討する必要はない。
 したがって、請求人が、通則法第68条第1項に規定する「国税の課税標準等又は税額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出」した場合には該当しないというべきである。

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(2) 本件FX取引に係る本件スプレッド相当額は必要経費となるか否かについて

イ 法令解釈
 所得税法第37条第1項は、不動産所得、事業所得又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき費用の範囲等について規定するところ、同項は、必要経費に算入すべき金額を、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該収入金額を得るのに直接要した費用及びこれらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額と定めている。そして、「費用」は、企業会計における概念として、一般的に収益を獲得するための価値犠牲分を意味するとされている。
 他方、所得税法上の資産の取得価額に含まれるべき支出は、いまだその価値が犠牲にされたとはいえず、これらの所得の金額の計算上必要経費に算入されない。
ロ 認定事実
 原処分関係資料、請求人の提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件各FX取引先におけるスプレッドについては、次のとおりである。
A D社
 D社とのFX取引(商品名「○○○○」)においては、注文時にD社が委託者に提示する売値(委託者が買い注文を出すときの購入価格)は、同時期にD社が委託者に提示する買値(委託者が売り注文を出すときの売却価格)に比べて、常にスプレッド相当額だけ高く設定されており、更に一定の取引手数料を加味した、スプレッド及び取引手数料込みの価格を、委託者に対する売値及び買値の成立価格(取引価格)として取引が行われている。
 なお、委託者がFX取引を行うに当たって、D社に対し、それ以外に手数料等の負担をすることはない。
B E社
 E社とのFX取引(商品名「○○○○」)においては、注文時にE社が委託者に提示する売値は、同時期にE社が委託者に提示する買値に比べて、常にスプレッド相当額だけ高く設定されており、当該スプレッド込みの価格を、委託者に対する売値及び買値の成立価格(取引価格)として取引が行われている。
 なお、委託者がFX取引を行うに当たって、E社に対し、それ以外に手数料等の負担をすることはない。
C F社
 F社とのFX取引(商品名「○○○○」)においては、注文時にF社が委託者に提示する売値は、同時期にF社が委託者に提示する買値に比べて、常にスプレッド相当額だけ高く設定されており、当該スプレッド込みの価格を、委託者に対する売値及び買値の成立価格(取引価格)として取引が行われている。
 また、当該成立価格とは別に、委託者はF社に対し、取引金額に応じた取引手数料を負担することになる。
(ロ) 請求人の本件各FX取引事績報告書及び外国為替証拠金取引口座の入出金状況を見ても、請求人の主張する別表2の本件スプレッド相当額が、本件各FX取引先によって別途差し引かれているという事実はない。
ハ そこで、上記(2)のロの認定事実を上記イに照らして判断すると、次のとおりである。
(イ) 請求人は、本件スプレッド相当額は、本件FX取引に係る雑所得を計算する上での必要経費であるにもかかわらず、本件各FX取引事績報告書において計算された売買損益に反映されていないから、売買損益の金額から、別表2の本件スプレッド相当額を更に差し引くべきである旨主張する。
 しかしながら、上記ロのとおり、本件FX取引においては、本件スプレッド相当額を含めた価格を取引価格として取引が行われていることからすれば、本件スプレッド相当額は、資産の取得価額に含まれるべき性質のもの、すなわち、本件FX取引において購入した外国通貨を転売する、あるいは売った外国通貨を買い戻す時点において、購入した価額と売却した価額との間に利ざやが生じ売買損益が算定される際に、資産の取得価額に含まれるものであり、売買損益が算定される際に、その収益獲得のための価値犠牲としての費用として計算されるべきものであるから、本件FX取引に係る雑所得の計算において、本件スプレッド相当額を本件各FX取引事績報告書において計算された売買損益から再度必要経費として差し引くことはできず、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ロ) 雑所得の金額の計算
A 本件FX取引に係る売買損益の合計額
 原処分庁は、請求人の平成18年分における本件FX取引に係る売買損益の合計額を別表3の1「原処分庁主張額」の「合計」欄のとおり○○○○円と算定しているが、当審判所の調査によれば、同表の2「審判所認定額」の「合計」欄のとおり、○○○○円となる。
B 必要経費
 当審判所の調査によれば、請求人の平成18年分の本件FX取引に係る必要経費の額(交通費、通信費、パソコンに係る減価償却費、書籍購入費等)は、別表4の「必要経費」欄のとおり、原処分庁主張額○○○○円と同額である。
C 以上の結果、平成18年分の本件FX取引に係る雑所得の金額は、別表4の「審判所認定額」欄のとおり○○○○円となり、原処分庁主張の雑所得の金額○○○○円を○○○○円上回るから、平成18年分所得税の本件通知処分は適法である。

(3) 上記(2)のハのとおり本件通知処分は適法であるが、上記(1)のニの(ハ)のとおり、請求人には、通則法第68条第1項の適用はなく、また、請求人の本件各年分の修正申告により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が修正申告前の税額の計算の基礎となっていなかったことについて、同法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、本件各賦課決定処分は、過少申告加算税に相当する額を超える部分を取り消すのが相当である。

(4) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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