別紙2

当事者の主張

争点1 請求人は、子を扶養親族とする扶養控除の適用を受けることができるか否か。

原処分庁 請求人
1 所得税法施行令第219条第2項第1号は、二以上の居住者がある場合における扶養親族につき、その年において既に一の居住者が申告書等の記載によりその扶養親族としている場合には、当該親族は当該居住者の扶養親族となる旨規定されているところ、本件各確定申告書の提出に先立ってAが提出した本件各年分の確定申告書の第二表には、子らの氏名、続柄、生年月日及び控除額が記載されており、さらに同人の平成15年分及び平成16年分の各確定申告書の第一表に扶養控除の額が記載されていることからすると、同人は、本件各年分において、子らを同人の扶養親族とすることを選択したということになる。そして、所得税基本通達83〜84−2《扶養親族等の所属の変更》によれば、Aは、所得税法施行令第219条第1項に基づき、同施行令第218条第1項に規定する申告書等の提出による扶養親族の所属の変更をすることはできないから、請求人は、本件各年分について子らを扶養親族とする扶養控除の適用を受けることはできない。
 なお、請求人の所得税法第84条に関する主張は、独自の解釈によるものであり、理由がない。
1 所得税法第84条は、飽くまで課税標準となる所得を有する居住者がその扶養している親族について扶養控除を受けるための規定であると解されるところ、居住者が所得金額を有しない場合には、課税標準となる所得金額が生じないこととなるため所得控除の必要はなく、したがって、同条の適用はないことから、同条第2項の適用があることを前提とする所得税法施行令第219条を適用する余地もないことになる。
 本件においては、Aは、本件各年分において所得を有していなかったのであるから、所得税法第84条の適用を受ける必要はなく、所得税法施行令第219条も適用されず、同人が本件各年分の確定申告書に所得控除を記載していたとしても、何らの記載もないものとみるべきである。
 したがって、請求人は、本件各確定申告書の提出により、子らを扶養親族とすることを選択したことになり、扶養控除の適用を受けることができる。
2 上記1のとおり、Aは、平成15年分及び平成16年分の各確定申告書において子らを同人の扶養親族とすることを選択したことになる。請求人の所得税法施行令第219条に関する主張は、独自の解釈によるものであり、理由がない。 2 少なくとも、平成15年分及び平成16年分については、Aは請求人の控除対象配偶者であり、請求人に養われていたのであって、養われている者が、子らを扶養していると解することはできない。したがって、Aの平成15年分及び平成16年分の所得税の確定申告については、子らを扶養親族とする所得税法第84条の規定は適用されないから、所得税法施行令第219条の規定を適用する余地もないはずであり、同条を根拠に子らを扶養親族としたものと取り扱うことはできない。
3 Aが提出した平成17年分の確定申告書の第一表には、扶養控除の額の記載はないものの、同申告書を含む本件各年分の確定申告書の第二表には、扶養控除に関して子らの氏名、続柄、生年月日及び控除額が記載されている。これらの記載は、意味のないものではなく、所得税法施行規則第48条に規定する確定損失申告書の記載事項に関する記載であり、同記載によってAは、子らを同人の扶養親族とすることを選択したことになる。 3 Aが提出した平成17年分の確定申告書の第一表には所得控除の金額を各欄に記載しておらず、同人は、所得税法第120条第1項各号に規定する申告書の記載事項に関する記載をしていないから、当該申告書の第二表の「所得から差し引かれる金額に関する事項」の各欄の記載は何らの意味もなく、同人が、子らを同人の扶養親族とすることを選択したことにはならない。

争点2 本件各賦課決定処分は不当か否か。

請求人 原処分庁
 以下のとおり、本件各賦課決定処分は不当である。  以下のとおり、本件各賦課決定処分は不当ではない。
1 給与所得者が年末調整に誤りがあり所得税額の還付を受ける場合は、還付等を受けるための確定申告書を提出することとされているのに対し、所得税法第120条により確定申告書を提出した者が、その納税額に誤りがあり過大であった場合は、国税通則法(以下「通則法」という。)第23条《更正の請求》により更正の請求をすることになるところ、両者は実質同じ性格のものである。そして、更正の請求の請求額が過大でその一部のみしか認められなかったとしても、認められなかった額に対して過少申告加算税は賦課されることはないにもかかわらず、本件における請求人のように、還付等を受けるための確定申告の誤りにより一部還付が認められなかった場合に過少申告加算税を賦課するのは、明らかに不当である。 1 更正の請求は、いわゆる納税者の権利救済制度の一環として、納税者から税務署長の減額更正という行政処分の発動を求める請求制度であると解されており、申告書を提出する申告行為と同一のものと解することはできないから、請求人の主張には理由がない。
2 「申告所得税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて」(事務運営指針)(以下「事務運営指針」という。)によれば、所得税の確定申告書に記載された税額(以下「申告税額」という。)につき、通則法第24条《更正》の規定による減額更正があった場合において、その後の修正申告又は通則法第26条《再更正》の規定による再更正による税額が申告税額に達しない場合の税額及び申告税額を超える場合であっても、申告税額に達するまでの税額に対しては正当な理由に該当するとして過少申告加算税を賦課しないこととしており、本件のように給与所得者の還付等を受けるための申告に対する更正の場合にも同様に取り扱うべきであるにもかかわらず、過少申告加算税を賦課したのは不当である。 2 請求人は法令解釈を誤って、本件各確定申告書を提出したにすぎず、本件各賦課決定処分は不当ではない。

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