別紙2

各争点に対する当事者双方の主張

1 争点イについて

請求人 原処分庁
 原処分調査は、原処分庁であるB税務署長の指示に基づいて行われた調査であり、原処分に係る納税告知書にC国税局の職員の調査に基づく旨の教示もないことからすれば、原処分庁所属の職員でもない本件国税局職員は、原処分調査において実地調査を行っておらず、実地調査のために質問検査権を行使したとは認められないので、本件国税局職員の質問検査権の行使は違法である。  原処分調査における質問検査権の行使は、所得税法第234条の規定に基づき、本件署職員及び本件国税局職員によって適法に行われている。
 また、納税告知書に、国税局の当該職員の調査に基づき行われた処分であることを附記しなければならない旨の法令の規定はない。

2 争点ロについて

原処分庁 請求人
 次の各事実から総合的に判断すると、Aは、国内に住所を有し居住者に当たる。  次に掲げる理由から、Aは、D国に住所を有し非居住者に当たる。
(1) Aは、国内の住所地に住民登録をしていた。
 さらに、各種の公的な書類に当該住所地を記載していた。
(1) 平成17年(行ウ)第396号贈与税決定処分取消等請求事件(以下「本件先例事件」という。)において、被告である国は、「住所がどこにあるかは、単に住民票の記載事項により判断するのではなく、(以下略)」というように、住民票の記載事項を否定して実態で判断すべきとしながら、本件において、住民票の記載事項を課税の根拠とするのは、租税正義に反し違法である。
(2) 国内に本店を置く請求人は、国内に複数の事業所を有し、国内外に複数の関連企業を有しているところ、Aは、請求人の代表取締役という要職にあり、内国法人であるG社及びH社の代表取締役でもある。 (2) Aは、昭和○年当時、D国Z市に住宅を購入し、生計を一にする配偶者等の家族と共に同所での居住を開始した。
 そして、Aは、D国での住所を有したまま、D国での勤務に加え日本での勤務も行うようになったので、D国と日本を行き来する生活を送るようになり、現在に至っている。
 また、Aは、D国において、居宅及び別荘、趣味の収集品等生活に密接に関係する多額の財産を所有し、企業年金及び医療保険に加入している。
(3) Aは、別表3及び別表4記載のとおり、年間を通して7割から9割に相当する期間を国内において居住していた。 (3) したがって、Aの場合、日本における勤務以外の通常滞在する地は、家族の居住するD国Z市であるから、所得税基本通達3−1に定める船舶又は航空機の乗組員の住所の判定と同様に、Aの住所は、「その者の配偶者その他生計を一にする親族の居住している地」、すなわちD国Z市であると判定すべきである。
(4) Aは、平成14年から平成17年において、長女と共に国内に居住し、生活を共にしていた。  
(5) Aは、国内に多大な資産を有し、同人が代表取締役であるG社も国内に多大な資産を有していた。
 また、Aは、国内の金融機関から多額の借入れをし、その返済をしていた。
 
(6) Aは、国民年金保険料を平成16年11月分まで納付し、国民年金受給資格者となっている。  

3 争点ハについて

請求人 原処分庁
 請求人は、非居住者であるとのAの申告に基づき源泉所得税を徴収したものである。
 これは、請求人が、原処分庁と違って質問検査権がないので、非居住者であるとのAの申告を否定する事実を把握する手段はなく、また、支払時点における事実をもって判断せざるを得ないからである。
 したがって、事務運営指針の第1の1の(2)に定める給与所得者の扶養控除等申告書等に基づいてした控除の場合と同様に、本件の場合も、源泉徴収義務者である請求人の責めに帰すべき事由がない場合に当たり、本件源泉所得税を法定納期限までに納付しなかったことについて、正当な理由がある。
 Aが居住者であるか非居住者であるかは、源泉徴収義務者である請求人において判断すべきものであるところ、その判定は、請求人の代表取締役としてのA自身が行っていると認められ、Aが行った判定がそのまま請求人の判定になることからすれば、Aは自身が居住者に該当する各事実を十分に認識していながら、自身を非居住者であると判断したと認められる。
 そうすると、本件の場合、請求人が、非居住者であるとのAの申告に基づき源泉所得税を徴収したことは、請求人の責めに帰すべき事由がない場合に当たらず、本件源泉所得税を法定納期限までに納付しなかったことについて、正当な理由はない。

トップに戻る