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(平20.9.25、裁決事例集No.76 244頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が土地等の譲渡人に対して支払った対価について、原処分庁が、当該譲渡人は日本国の非居住者に該当するので、所得税を源泉徴収すべき国内源泉所得に当たるとして、源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を行ったところ、請求人が、当該譲渡人は日本国の居住者であるから上記各処分は違法であるとして、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 原処分庁は、平成19年6月27日付で、平成16年10月分の源泉所得税について、別表1の「納税告知処分及び賦課決定処分」欄のとおり、納税告知処分(以下「本件納税告知処分」という。)及び不納付加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ロ 請求人は、上記イの各処分を不服として、平成19年8月1日に異議申立てをしたところ、異議審理庁が同年11月1日付で棄却の異議決定をしたので、異議決定を経た後の本件納税告知処分及び本件賦課決定処分に不服があるとして、同月29日に審査請求をした。

(3) 関係法令等

 別紙のとおりである。

(4) 基礎事実

イ 請求人は、昭和57年12月1日以降、原処分庁所管の所得税法第6条《源泉徴収義務者》に規定する源泉徴収義務者である。
ロ 請求人は、平成16年9月30日、H(以下「本件譲渡人」という。)との間で、同人所有のP市Q町○○番、同所○○番及び同所○○番○の土地(以下、これらを併せて「本件土地」という。)、P市Q町○○番地及び同所○○番地に所在する建物(以下、これらを併せて「本件建物」という。)並びにそれらに附属する樹木、庭石、門及び塀その他建物の造作一切(以下、これらと本件土地及び本件建物を併せて「本件土地等」という。)を買い受ける旨の不動産売買契約(以下「本件不動産売買契約」という。)を締結し、本件不動産売買契約に係る契約書(以下「本件不動産売買契約書」という。)を取り交わした。
ハ 本件不動産売買契約書には、要旨次のとおり記載されているほか、本件譲渡人の印鑑登録証明書(「住所」欄にP市Q町○○番地(以下「本件登録地」という。)が記載されている。以下「本件印鑑登録証明書」という。)が添付されている。
(イ) 第1条(売買の目的)
 本件譲渡人は、所有する本件土地等を請求人に売り渡し、請求人はこれを分譲マンションの用地として買い受けた。
(ロ) 第2条(売買代金)
 売買代金の総額は○○○○円(以下「本件売買代金」という。)とし、その内訳は本件土地○○○○円、本件建物を○○○○円とする。本件土地の実測面積と登記簿面積との間に増減が生じたときは、1平方メートル当たり○○○○円をもって代金決済の際に売買代金を精算する(以下「本件実測精算金」という。)が、本件建物については、その構造又は実測面積が登記簿面積と相違することがあっても建物代金の増減請求等の異議は申し出ないものとする。
(ハ) 第3条(売買代金の決済)
 請求人は、本件売買代金を平成16年10月○日に本件譲渡人に支払う。
(ニ) 第4条(所有権移転の時期)
 本件土地等の所有権は、前条の本件売買代金の授受と同時に本件譲渡人から請求人に移転する。
(ホ) 第6条(本件土地等の引渡し)
 本件譲渡人は、自己の責任と負担において、第3条に定める本件売買代金の決済と同時に本件土地等を本件不動産売買契約の締結時の現状有姿のまま請求人に引き渡さなければならない。
(ヘ) 第11条(公租公課の負担等)
 本件土地等に係る公租公課及びその他の賦課金等は、第4条の所有権移転の日をもって区分し、その前日までに相当する部分は本件譲渡人の負担又は帰属とし、その日以降に相当する部分は請求人の負担又は帰属とする。
ニ 本件土地に係る全部事項証明書の「所有権に関する事項」欄によれば、登記の内容は要旨次のとおりである。
(イ) 平成12年2月○日の受付で、平成11年11月○日に本件土地の所有者である本件譲渡人の住所を本件登録地からR国T市(以下「本件国外住所」という。)に移転する旨の登記名義人表示変更の登記がされ、平成16年10月○日の受付で、同年8月○日に本件譲渡人の住所を本件国外住所から本件登録地に移転する旨の登記名義人表示変更の登記がされた。
(ロ) 平成16年10月○日の受付で、同日の売買を原因とする本件譲渡人から請求人に対する所有権移転登記がされた。
ホ 請求人において作成された、本件土地等をマンションの用地として購入することについての決裁書類である「Aマンション用地購入の件(実施稟議)」と題する稟議回議書(以下「本件稟議回議書」という。)には、平成16年9月22日付で、○○室長の意見・指示として、「売主の住所はR国、手続に遺漏なきよう事前に関係書類を手配確認のこと」との記載がある。
ヘ 請求人は、平成16年10月○日、本件譲渡人に対し、日本国内において次の金員を支払った。

(イ) 本件売買代金
(ロ) 本件実測精算金
(ハ) 固定資産税精算金
(ニ) 都市計画税精算金
(以下、固定資産税精算金と併せて「本件固定資産税等負担金」という。)

○○○○円
○○○○円
○○○○円

○○○○円



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2 争点

 本件譲渡人は、所得税法第2条第1項第5号(別紙の1)に規定する非居住者に該当するか否か。

3 争点に対する当事者の主張

(1) 原処分庁

 本件譲渡人は、次のとおり、本件土地等の譲渡による対価の支払時である平成16年10月○日において、生活の本拠が国内にあるとは認められず、同日において居住者とは認められないので、所得税法第2条第1項第5号に規定する居住者以外の個人となり非居住者に該当する。
イ 本件土地に係る全部事項証明書によれば、本件譲渡人の住所は、平成16年8月○日に本件登録地に移転するまで本件国外住所が記載されている。
ロ 本件譲渡人は、平成16年中において8月○日から9月○日までの16日間(以下「本件滞在期間」という。)しか日本国に入国しておらず、その期間中はホテルに宿泊していた。
ハ 本件譲渡人の代理人であるBは、本件譲渡人は、以前からR国に一人で居住していた旨申述している。
ニ 本件不動産売買契約の立会業者である、P市U町○−○に所在するC社の代表取締役Dは、本件滞在期間は今回の不動産売買交渉に当たり、住民票などの異動手続を行うために本件譲渡人に一時帰国してもらったもので、日本国内での永住を目的としたものではない旨申述している。
ホ 本件譲渡人は、平成16年中において本件滞在期間しか日本国に入国していないことから、本件土地等の譲渡による対価の支払時である平成16年10月○日時点において所得税法第2条第1項第3号(別紙の1)に規定する居所を有していたとする事実は認められない。
ヘ 請求人は、本件譲渡人との取引の過程において、本件譲渡人の生活の本拠が本件国外住所にあることを了知していたと認められる。
ト 本件建物に家財道具がそのままになっていたのは、Bの申述のとおり、本件土地等の管理を任されていたが室内の清掃までは行き届かない状況であったからであり、また、本件譲渡人が本件滞在期間に本件建物に居住した事実はない。
チ 生活の本拠であるかどうかは、所得税基本通達2−1(別紙の6)において、客観的事実によって判定する旨定められており、本件譲渡人の生活の本拠についての原処分庁の判断は、上記のとおりであり、請求人の○○部○○課のEの申述、Dの申述及び本件稟議回議書の記載内容のみによって判断したものではない。
リ 請求人が主張する本件譲渡人がF社の会社更生法の適用を申請するための更生計画の作成中であることを理由として、日本国内に一時的に住めない事情があったとする事実は認められず、仮に、そのような事実があったとしても、そのことは、本件譲渡人が非居住者に該当するか否かの判断に影響を与えるものではない。
ヌ 本件売買代金から国外への支払がないとしても、そのことは、本件譲渡人が本件売買代金に係る金員をどう処分するかのことであって、本件譲渡人が非居住者に該当するか否かの判断に影響を与えるものではない。
ル 仮に、請求人が主張するように、所得税法第161条第1号の2(別紙の3)の趣旨が外国人による日本国内の土地等の売り逃げをさせないことであり、本件譲渡人に売り逃げをする目的がなかったとしても、そのことは、本件譲渡人が非居住者であるか否かの判断に影響を与えるものではない。

(2) 請求人

イ 請求人は、本件不動産売買契約を締結する際に、本件土地に係る全部事項証明書及び本件不動産売買契約書に添付された本件印鑑登録証明書により本件譲渡人が本人であることを確認していることから、請求人には本件土地等の取引に関し何ら手落ちはなく、請求人が本件譲渡人を居住者であると判断したことは正当である。
ロ 外国人に対する給与、報酬のように定期的に発生するものと異なり、単発の取引である土地の売買については、表見している官公署が発行している文書等の内容に基づいて判断するのが妥当であり、本件土地等の譲渡についてはそれ以外に本件譲渡人が非居住者か否かの判断材料がなかったのも事実である。
ハ 請求人としては、本件売買代金の支払時に支払先である本件譲渡人の確認調査ができずにいた事実はあるが、請求人には、国税職員と違い何らの権限もなく、克明に調査する時間的余裕もない段階では、表見上知りうることができた情報のみで判断せざるを得なかったものである。
ニ 原処分庁は、本件稟議回議書の記載内容並びにE及びDの申述のうち、本件譲渡人がR国に在住していたという事実を中心に採用して本件譲渡人が非居住者であると判断しているが、非居住者か否かの判断についてはE及びDの職務外であることから、彼らの一方的申述等を採用した原処分庁の判断に正当性はない。
ホ 平成16年9月27日付の請求人の社内文書である土地購入実施伺い(以下「本件土地購入実施伺い」という。)によれば、本件建物の内部には、本件譲渡人の家具等が未整理のままで、その整理のため引渡し決済日が同年10月○日から同月○日へと24日間も変更になった旨の記載があり、本件譲渡人の家具調度品等の生活用品は、本件建物の内部にそのままとなっていたことから、本件譲渡人の生活の本拠は日本国内にあったと解釈される。
ヘ 本件土地購入実施伺いによれば、本件譲渡人は、F社の元オーナーであり、同社は平成15年11月に会社更生法の適用を申請しており、更生計画の作成中であることから、本件譲渡人には一時的に日本国内に在住できない事情があったことが推定され、日本国内に住所がなかったからといって直ちに非居住者と判断するのは早計である。
ト 本件土地に係る全部事項証明書及び本件売買代金の決済内容からみると、本件売買代金のほとんどは、会社更生法の適用を申請したF社に対する個人保証に係る日本国内への支払であり、国外への支払はないに等しい。
チ 所得税法第161条第1号の2に規定する国内にある土地等の譲渡による対価が国内源泉所得として源泉徴収の対象と定められた趣旨は、外国人に日本国内の土地等の売り逃げをさせないことを目的とするものであるところ、本件譲渡人には、そのような売り逃げをする目的はなかった。

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4 判断

(1) 認定事実

 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件譲渡人の住民票(除票)によると、本件譲渡人は、平成16年8月○日の届出により同月○日にR国から本件登録地に転入し、平成17年1月○日の届出により平成16年9月○日に本件登録地からR国に転出している。
ロ 本件譲渡人の出入(帰)国記録によると、本件譲渡人は、平成15年9月○日に日本国を出国した後平成16年8月○日に帰国し、同年9月○日に再び出国しており、日本国に入国していた期間は、本件滞在期間と一致している。
ハ P市V町○−○に所在するGホテルの回答書によると、本件譲渡人は、本件滞在期間中、Gホテルに宿泊していた。
ニ Dの申述によれば、本件譲渡人が平成16年8月○日に帰国したのは、本件不動産売買契約の手続に際し、住民票などの異動手続を行うためであり、一時的なものであって永住を目的としたものではなく、また、本件譲渡人の住所が本件国外住所のままだと、R国でのサイン証明取得手続に時間がかかるなどするため、本件譲渡人の住所を日本国内の住所として売買取引を行うために本件登録地を住所として届け出たと認められる。

(2) 法令等解釈

イ 所得税基本通達2−1の取扱いは、住所の定義と判定方法を明らかにしたものとして、当審判所においても相当であると認められる。
ロ 所得税法第2条第1項第3号でいう「居所」とは、人が多少の期間継続して居住しているものの、その者の生活の本拠であるというまでには至らない場所をいうものと解される。
ハ 通則法第67条第1項(別紙の7)でいう不納付加算税を賦課しない場合の「正当な理由があると認められる場合」とは、法定納期限内に納付しなかったことについて、源泉徴収義務者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、そのためかかる源泉徴収義務者にこのような制裁を課することは、かえって不当又は酷と評されるような場合であって、法定納期限内に完納した者との間の公平を損ねることになってもなおその制裁を免除するのが相当である場合をいうものと解される。

(3) これを本件についてみると、次のとおりである。

イ 本件譲渡人が非居住者に当たるか否かは、本件土地等の譲渡による対価が支払われた日に本件譲渡人が国内に住所を有するか否か、又は、本件土地等の譲渡による対価が支払われた日まで引き続き1年以上居所を有していたか否かであるので、その点について検討する。
(イ) 上記(1)のイの本件譲渡人の住民票(除票)の内容及び上記(1)のロの出入国状況によれば、本件譲渡人は、本件滞在期間の直前まで国外に住所を有していたと認められる。また、本件譲渡人の住民票(除票)及び本件印鑑登録証明書は、上記(1)のイ及び前記1の(4)のハのとおり、本件滞在期間における本件譲渡人の住所が本件登録地であったことを示す内容となっているが、上記(1)のハのとおり、実際には本件譲渡人は、本件滞在期間中、Gホテルにて宿泊しており、本件登録地において生活していたことをうかがわせる証拠はない上、上記(1)のニのとおり、本件譲渡人が本件滞在期間において帰国し、本件登録地を住所として届け出たことは、本件不動産売買契約の締結のための一時的な事情によるものであったと認められる。さらに、上記(1)のイ及びロのとおり、本件譲渡人は、平成16年9月○日に出国するとともに、住民票も本件登録地から国外に転出させている。
 したがって、これらの事実によれば、本件譲渡人の住所は国外にあったというべきであり、本件土地等の譲渡による対価が支払われた平成16年10月○日において、本件譲渡人が国内に住所を有していたとは認められない。
(ロ) また、本件譲渡人は、本件売買代金が支払われた平成16年10月○日以前1年以上の間には、上記(1)のロのとおり、平成15年9月○日に日本国を出国後、再び日本国に滞在した期間は本件滞在期間(16日間)のみであることから、本件土地等の譲渡による対価が支払われた日まで引き続いて1年以上居所を有していたとは認められない。
(ハ) 以上のとおり、本件譲渡人は、本件土地等の譲渡による対価が支払われた平成16年10月○日において国内に住所を有しておらず、また、同日まで引き続いて1年以上居所を有していたとは認められないことから、所得税法第2条第1項第5号に規定する非居住者に該当することとなる。
ロ 請求人の主張について
(イ) 請求人は、本件不動産売買契約を締結する際に、本件土地に係る全部事項証明書及び本件印鑑登録証明書により本件譲渡人が本人であることを確認していることから、請求人には本件土地等の取引に関し何ら手落ちはなく、請求人が本件譲渡人を居住者であると判断したことは正当である旨、外国人に対する給与、報酬のように定期的に発生するものと異なり、単発の取引である土地の売買については、表見している官公署が発行している文書等の内容に基づいて判断するのが妥当であり、本件土地等の譲渡についてはそれ以外に本件譲渡人が非居住者か否かの判断材料がなかったのも事実である旨、及び請求人には国税職員と違い何らの権限もなく、克明に調査する時間的余裕もない段階では、表見上知りうることができた情報のみで判断せざるを得なかったものである旨それぞれ主張する。
 しかしながら、これらの請求人の主張は、要するに、請求人が本件譲渡人を居住者と判断したことはやむを得なかった事情をるる述べている内容にとどまることから、本件譲渡人が非居住者に該当するとの上記イの(ハ)の判断に影響を与えるものではない。
 したがって、これらの請求人の主張にはいずれも理由がない。
(ロ) また、請求人は、非居住者か否かの判断についてはE及びDの職務外であることから、彼らの一方的申述等を採用した原処分庁の判断に正当性はない旨、本件土地購入実施伺いによれば、本件譲渡人の家具調度品等の生活用品は、本件建物の内部にそのままとなっていたことから、本件譲渡人の生活の本拠は日本国内にあったと解釈される旨、本件譲渡人は、F社の元オーナーであり、F社は平成15年11月に会社更生法の適用を申請しており、更生計画の作成中であることから、本件譲渡人には一時的に日本国内に在住できない事情があったことが推定され、日本国内に住所がなかったからといって直ちに非居住者と判断するのは早計である旨、及び本件売買代金の決済内容からみると、本件売買代金のほとんどは、会社更生法の適用を申請したF社に対する個人保証に係る日本国内への支払であり、国外への支払はないに等しい旨それぞれ主張する。
 しかしながら、本件譲渡人が非居住者に該当することは上記イの(ハ)のとおりであり、また、本件売買代金が国外ではなく日本国内の担保権者等への支払に充てられているとしても、そのことが、上記イの(ハ)の判断に影響を与えるものではないことから、これらの請求人の主張にはいずれも理由がない。
ハ 本件納税告知処分の適法性について
(イ) 前記1の(4)のヘの(イ)の本件売買代金○○○○円及び(ロ)の本件実測精算金○○○○円が所得税法第161条第1号の2に規定する国内にある土地等の譲渡による対価であるのは明らかである。
 そして、前記1の(4)のヘの(ハ)及び(ニ)の本件固定資産税等負担金○○○○円についてみると、別紙の8ないし12の地方税法の各規定によれば、本件土地等に係る平成16年分の固定資産税及び都市計画税は、同年1月1日現在において、本件土地等の固定資産課税台帳に所有者として登録されていた本件譲渡人が納税義務を負い、請求人がこれらの納税義務を負うものではないにもかかわらず、前記1の(4)のハの(ヘ)の本件不動産売買契約第11条により、本件土地等に係る固定資産税及び都市計画税の本件土地等の所有権移転の日である平成16年10月○日以降の未経過分に相当するものとして、買主である請求人が負担したものであるから、本件土地等の譲渡による対価と認めるのが相当である。
 そうすると、本件固定資産税等負担金も、所得税法第161条第1号の2に規定する国内にある土地等の譲渡による対価に該当することとなる。
 したがって、請求人が本件譲渡人に支払った所得税法第161条第1号の2に規定する国内にある土地等の譲渡による対価の総額(以下「本件土地等対価総額」という。)は、上記金額を合計した○○○○円となり、そのすべてが国内源泉所得となる。
(ロ) また、本件譲渡人は、上記イの(ハ)のとおり、本件土地等対価総額の支払の時において非居住者に該当するので、本件譲渡人は本件土地等対価総額に係る国内源泉所得について所得税法第5条第2項(別紙の2)の規定により所得税を納める義務を負い、本件土地等対価総額の支払をした請求人は、所得税法第212条第1項(別紙の4)の規定により、その支払の際、所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までにこれを納付しなければならないこととなる。
(ハ) そして、本件土地等対価総額○○○○円に係る徴収すべき源泉所得税の額を所得税法第213条第1項第2号(別紙の5)の規定に基づいて計算すると、別表2の「審判所認定額」欄の「源泉所得税の額」欄のとおり○○○○円となり、本件納税告知処分の額を上回るので、原処分庁が行った本件納税告知処分は適法である。
(ニ) ところで、上記(イ)の判断に関し、請求人は、所得税法第161条第1号の2に規定する国内にある土地等の譲渡による対価が国内源泉所得として源泉徴収の対象と定められた趣旨は、外国人に日本国内の土地等の売り逃げをさせないことを目的とするものであるところ、本件譲渡人には、そのような売り逃げをする目的はなかった旨主張するが、土地等の譲渡者が売り逃げをする目的を有していたか否かは同規定の課税要件にはなっておらず、本件譲渡人における売り逃げ目的の有無は本件土地等の譲渡による対価の支払が国内源泉所得に該当するか否かの判断に影響を及ぼすものではないので、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ニ 本件賦課決定処分の適法性について
 請求人が本件納税告知処分を違法とした主張(前記3の(2)のイないしハ)には、本件賦課決定処分について通則法第67条第1項に規定する正当な理由があるとの主張が含まれているともみられることから、この点について検討すると、請求人が、本件納税告知処分により納付すべきこととなった源泉所得税の額を法定納期限までに納付しなかったことについて、上記ロの(イ)のとおり、請求人が本件譲渡人を居住者と判断したことにやむを得なかった事情が存するとしても、そのことは、上記(2)のハにより、源泉徴収義務者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、不納付加算税を課すことが不当又は酷と評されるような場合には当たらないので、同条に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そうすると、本件納税告知処分は、上記ハの(ハ)のとおり適法であり、不納付加算税の額は、本件納税告知処分に係る税額に基づき通則法第67条第1項の規定に従い正しく計算されているので、本件賦課決定処分は適法である。

(4) 原処分のその他の部分については、当審判所の調査の結果によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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