別紙

当事者の主張


原処分庁 請求人
 原処分は、次のとおり適法である。
1 Hは、いわゆる非常勤役員である。
 請求人は、Hの具体的な職務の内容及び主張する職務と請求人の業務との関連性を明らかにしておらず、HがGとの話合い、商談等の職務を行ったことを単に主張するのみである。
 Hは、本件組織管理図に名前が記載されていないなど定められた職務が認められず、また、請求人が主張する本件勤務実態一覧表には、Hが行ったとする業務の日付、場所及び大まかな内容が記載されているのみで、Gとの話合い、商談等の内容といった具体的な職務の内容は記載されておらず、請求人の業務との関連性についても不明確である。
 また、請求人は、同族会社の役員の地位にあることのみをもって、Hが経営に常に深くかかわっており、請求人の収益等への貢献が多大であると主張するが、その主張は、根拠を欠く主観的なものであるといわざるを得ない。
 請求人も自認しているとおり、Hが本社に出社するのは月に1度か2度程度であり、本社の外においても請求人の業務に常時従事している事実は認められず、請求人の経営に深くかかわったことや業績に特に貢献した事実は認められない。
 以上により、Hの職務に照らすと、Hは非常勤役員と認定される。
 原処分は、次のとおり違法である。
1 Hは、常勤役員と認定されるべきである。
 Hは、請求人の本社に出社するのは、月に1回か2回ではあるが、株主総会及び取締役会には常に出席し、議事に加わり、議事録になつ印している。
 原処分庁は、本件組織管理図にHの名前がなく職務内容が明らかでない旨主張するが、本件組織管理図は、製造担当責任者が製造過程の一覧表として作成したものであり、Hは工場の中で仕事はしていないので、記載されていないのが当然である。また、原処分庁は、Hの具体的な職務内容が明らかでないと主張するが、原処分庁は、本件勤務実態一覧表を提出しているにもかかわらず、確認作業も検討も行っていない。
 なお、請求人は、創業から代表者の家族中心に○○製造を営んでおり、Hは、請求人の代表取締役の妻であることから、会社の経営方針や運営及び使用人の状況等に関して、常日ごろからGと話合いを持つなど、会社の経営に常に深くかかわっている。
 また、請求人は、商品の需要量が供給量を超えている状況にあることから、Hは、厳密にいう「商談」とは違うが取引先との取引が成立した後の接待に従事し、取引先の要望に応えられないことの理解を求めているが、これは、GかHでないと務まらない重要な仕事である。
 さらに、請求人の使用人の悩みや相談事に対応するという職務を行っている。
 したがって、Hは、上記職務の内容の状況から、役員としての職務を果たしているものであり、請求人の業績に大いに貢献している。
 また、Hの職務内容、貢献については、実態に基づき判断するべきであるが、仮に常勤・非常勤という概念を採用した場合、Hは、常勤役員と認定されるべきである。
2 本件適正報酬額について
 本件適正報酬額の算定方法は、適正である。
 本件役員報酬額は、Hの具体的な職務内容が不明確であること、また、請求人の使用人と比べて請求人の業績に著しく貢献している等の事実も認められないにもかかわらず、請求人の使用人の給与と比べて高額であること及び本件類似法人の非常勤役員の平均額の12倍以上であることを併せ考慮すると、本件役員報酬額が不相当に高額であることは明らかである。
2 本件適正報酬額について
  原処分庁は、請求人と同種の事業を営む法人で、売上規模が類似する5社ないし6社を類似法人とし、その類似法人が非常勤役員であると認識しているところの役員に対する支給額の平均額を本件適正報酬額としているが、収益の状況、職務の内容、経験年数及び使用人の給与の支給状況等に関して具体的な比較、検討を行っていない。
 また、類似法人における比較対象とした役員の職務の内容や職務に従事する程度が、Hの職務内容や職務に従事する程度と類似性をもっていることが当然の前提となると考えられるが、この点についても原処分庁が本件適正報酬額を認定するに当たって、何ら比較検討していない。
 さらに、原処分庁の類似法人の選定は、売上高の倍半基準を採用しているが、それでは請求人の持っているブランド力及び収益率の高さという他社と違う事情を反映することができないので、主力商品の販売価格(単価)の近い法人を選定すべきである。
 本件適正報酬額は、法人税法施行令第69条第1号に掲げる事項を総合して勘案し、本件類似法人の非常勤役員の平均報酬額をもって算定したものであり、比較対象役員の個々の職務内容等に多少の差異があったとしても、その平均値に吸収され、特殊性は捨象されるというべきである。  なお、原処分庁は、本件類似法人の非常勤役員の年間報酬額の平均額を本件適正報酬額としているが、本件類似法人の役員の職務内容、経験年数及び従業員の状況は、それぞれ内容が異なるので平均値が絶対的なものではない。

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