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(平21.6.3、裁決事例集No.77 42頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、税理士業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、その妻を青色事業専従者として、事業所得の金額の計算上必要経費に算入した青色事業専従者給与の金額について、原処分庁が、妻の労務の対価として相当であると認められる金額を超える部分の金額は必要経費に算入できないとして更正処分等を行ったのに対し、請求人が、当該青色事業専従者給与の金額は妻の労務の対価として相当であるとして、同処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

 平成16年分、平成17年分及び平成18年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税について、審査請求(平成20年9月3日請求)に至る経緯及び内容は、別表1のとおりである。
 なお、以下、平成20年3月14日付でされた本件各年分の所得税の各更正処分を「本件各更正処分」という。

(3) 関係法令

 所得税法第57条《事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等》第1項及び所得税法施行令第164条《青色事業専従者給与の判定基準等》第1項は、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者(以下「青色申告者」という。)と生計を一にする配偶者その他の親族で専らその居住者の営む事業に従事するもの(以下「青色事業専従者」という。)が当該事業から所得税法第57条第2項の規定に基づく「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載されている方法に従いその記載されている金額の範囲内において給与の支払を受けた場合には、その給与の金額でその労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、その事業に従事する他の使用人が支払を受ける給与の状況及びその事業と同種の事業でその規模が類似するものに従事する者が支払を受ける給与の状況、その事業の種類及び規模並びにその収益の状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるものは、その居住者のその給与の支給に係る年分の当該事業に係る事業所得の金額の計算上必要経費に算入する旨規定している。

(4) 基礎事実

イ 請求人は、昭和58年○月○日に税理士の登録を受けて以来、P市内において税理士業を営んでいる。
ロ 請求人は、昭和59年分以後の所得税について青色申告の承認を受け、請求人と生計を一にする妻Gを青色事業専従者として、昭和59年2月9日に「青色専従者給与に関する届出書」並びに平成5年2月1日及び平成9年9月1日に「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を原処分庁にそれぞれ提出した。
 なお、請求人が平成9年9月1日に原処分庁に対し提出した「青色事業専従者給与に関する変更届出書」(以下「本件変更届出書」という。)の内容は、別表2のとおりである。
ハ 妻Gは、本件各年分において、いずれの年分も年間を通じて請求人の事業に従事していた。
 なお、妻Gは、税理士となる資格を有していない。
ニ 妻Gが、本件各年分において、請求人の事業から支払を受けた給与の金額は、平成16年分が12,400,000円、平成17年分及び平成18年分が各12,800,000円であり(以下、上記各年分の給与の金額を併せて「本件各専従者給与額」という。)、請求人は、本件各専従者給与額について、それぞれその全額を本件各年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入した。

(5) 争点

 本件各専従者給与額は、その全額が労務の対価として相当であると認められるか否か。

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2 主張

原処分庁 請求人
 本件各専従者給与額は、以下のとおり、妻Gの労務の性質及びその提供の程度、請求人の事業に従事する他の使用人(H、J、K及びLの4名。以下、これらの者を併せて「本件各使用人」という。)が支払を受ける給与の状況、請求人の事業と同種の事業でその規模が類似する同業者の青色事業専従者(以下「比較専従者」という。)が支払を受ける給与の状況に照らし、著しく高額であり、妻Gの労務の対価として相当であるとは認められない。  本件各専従者給与額は、以下のとおり、妻Gの労務の性質及びその提供の程度に照らし、その全額がその労務の対価として相当であると認められる。
 そして、妻Gの労務の対価として相当であると認められる給与の金額(以下「本件適正給与額」という。)は、本件各年分において本件各使用人が支払を受けた給与の状況に基づき設定した別表3の条件を基準として、妻Gが請求人の事業に従事した年数等を考慮して別表4のとおり算定した金額(平成16年分が6,099,000円、平成17年分が6,011,000円、平成18年分が6,123,000円)を超えるものではなく、当該各金額を超える金額(平成16年分が6,301,000円、平成17年分が6,789,000円、平成18年分が6,677,000円)は、妻Gの労務の対価として相当であるとは認められない。  なお、原処分庁が本件適正給与額として主張する各金額は、別表3の条件で採用された者が22年後から24年後までの間に支払を受ける給与の金額は幾らになるかという程度のものにすぎず、これにより算定される金額をもって、妻Gの労務の対価として相当と認める理由はない。
(1) 労務の性質
 妻Gは、税理士となる資格を有していないため、その労務の性質は、税理士の補助事務の域を出るものではなく、本件各使用人の労務の性質と同様なものと認められる。
(1) 労務の性質
イ 妻Gは、昭和52年から他の税理士事務所に勤務し、昭和58年に請求人が税理士業を開始すると、同年○月から請求人の事業に従事し、一貫して会計業務及び税理士補助業務に従事しており、その経験年数は、平成16年の時点で27年になる。
ロ 妻Gは、専門的な知識を要するため本件各使用人では対応できない医療法人・学校法人等を担当し、また、会計業務の責任者として本件各使用人が作成した会計帳簿の内容を最終的に検討して完成させ、税務書類の作成に関する事務も行っている。
ハ 請求人の事業所得の申告のための会計帳簿の作成及び決算手続に関する事務、本件各使用人に対する給与の支払及び社会保険手続等の労務管理は、専ら妻Gが行っている。
(2) 労務の提供の程度
 妻Gが請求人の事業に従事した時間を証するものはなく、妻Gの労務の提供の程度は、本件各使用人と比較して大きな差異はなかったものと認められる。
(2) 労務の提供の程度
 妻Gは、本件各使用人に比して、請求人の事業に従事した時間が長く、休日出勤の日数も多い。
(3) 本件各使用人が支払を受ける給与の状況
 本件各使用人のうち、年間を通じて従事した者に対して支給された給与の金額は、平成16年分が3,135,500円から4,301,500円(平均額3,579,167円)、平成17年分が3,227,000円から4,457,500円(平均額3,842,250円)、平成18年分が3,143,500円から4,518,000円(平均額3,608,375円)である。
(3) 本件各使用人が支払を受ける給与の状況
 妻Gの労務の性質及びその提供の程度を考慮すれば、本件各専従者給与額が本件各使用人の給与の最高額に比して高いとしても、不相当に高額なものではなく、妻Gの労務の対価として相当である。
(4) 比較専従者が支払を受ける給与の状況
 比較専従者のうち、1事業主の妻であること、2税理士となる資格を有していないこと及び3本件各年分において、いずれの年分も年間を通じて税理士の補助事務に従事していたことの各条件を満たす7件の給与の金額は、平成16年分が2,854,490円から6,630,000円(平均額4,659,213円)、平成17年分が2,964,160円から6,630,000円(平均額4,736,309円)、平成18年分が3,017,320円から6,630,000円(平均額4,763,903円)である。
(4) 比較専従者が支払を受ける給与の状況
 原処分庁が選定した比較専従者の給与の金額は、その最高額が最低額の2倍を超えており、このような開差が存する比較専従者の給与の金額を基準として、本件各専従者給与額が妻Gの労務の対価として相当でないと認める理由はない。

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3 判断

(1) 認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
イ 本件各使用人は、いずれの者も税理士となる資格を有していない。
ロ 妻G及び本件各使用人は、請求人が関与先から依頼を受ける税務又は会計に関する事務(以下「税務会計事務」という。)をその関与先ごとに分担して行っており、妻Gが担当する関与先の件数は、本件各使用人がそれぞれ担当する関与先の件数と比べておおむね同程度又は若干上回る程度であった。
ハ 妻G及び本件各使用人が請求人の事業に従事した時間及びその記録
(イ) 請求人の事務所においては、所得税の確定申告期間等の業務繁忙期を除き、就業時間は午前9時から午後5時まで、休日は土曜日、日曜日、祝日並びに盆及び年末年始の各一定期間とされている。
(ロ) 妻Gは、通常、午前7時30分ころに出勤し、午後6時ころまでは退勤せず、請求人の事業に従事していた。
(ハ) 妻Gは、本件各年分において、同人が、請求人の事業に従事して行った又は行う事務の内容とともに、各日の午前8時30分ころから午後8時30分ころまでの間に請求人の事業に従事した時間帯をおおむね30分単位で「税務日誌」(以下「本件税務日誌」という。)に日々継続的に記録していた。
(ニ) 本件各年分において、本件各使用人の出勤及び欠勤の状況は、妻Gによって出勤簿(以下「本件出勤簿」という。)に記録されているが、本件各使用人の日々の出勤時刻及び退勤時刻については、直接記録されたものがない。
ニ 妻G及び本件各使用人による請求人の事務所のパソコンの使用状況
(イ) 妻G及び本件各使用人は、本件各年分において、専らパソコンを使用して、請求人が関与先から依頼を受ける税務会計事務を行っていた。
(ロ) 妻G及び本件各使用人は、請求人の事務所において、通常、各人の専用パソコンを使用し、各自が、請求人の事務所に出勤したときにその電源を入れ、請求人の事務所を退勤するときにその電源を切っていた。
(ハ) 妻G及び本件各使用人の各専用パソコンには、オペレーティング・システムの起動又は停止の都度その起動時刻及び停止時刻が記録され、一定期間保存されているところ(以下、この起動時刻及び停止時刻の記録を「ログ記録」という。)、妻G及び本件各使用人の各専用パソコンに保存されていた、平成17年2月22日から平成18年12月31日までのログ記録から、各専用パソコンについて日々の最初の起動時刻から最終の停止時刻までの時間が30分以上のもの(以下「稼働時間」という。)をそれぞれ集計すると、各専用パソコンの稼働時間の状況は、別表5のとおりとなる。
ホ 本件各使用人が、本件各年分において、それぞれ請求人の事業に従事した月数及び支払を受けた給与の状況は、別表6のとおりである。
 なお、請求人は、請求人の事業に従事する使用人に支払う給与の決定、計算の方法及び昇給に関する事項等を定めた、明文の給与規定を作成していない。

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(2) 判断

イ 妻Gの労務の性質
(イ) 上記1の(4)のハ及び上記(1)のイのとおり、妻Gは、本件各使用人と同様に税理士となる資格を有していないこと、上記(1)のロのとおり、妻Gが担当する関与先の件数は、本件各使用人がそれぞれ担当する関与先の件数と比べておおむね同程度又は若干上回る程度であったことからすれば、妻Gの労務の性質は、本件各使用人のそれと比べて大きく異なるものではなかったと認められる。
(ロ) 請求人の主張について
A 請求人は、妻Gの労務の性質につき格別の評価をすべき事情として、1妻Gが会計業務及び税理士補助業務に従事した経験年数は、平成16年の時点で27年になる旨、2妻Gは、専門的な知識を要するため本件各使用人では対応できない医療法人・学校法人等を担当し、また、会計業務の責任者として本件各使用人が作成した会計帳簿の内容を最終的に検討して完成させ、税務書類の作成に関する事務も行っている旨、3請求人の事業所得の申告のための会計帳簿の作成及び決算手続に関する事務、本件各使用人に対する給与の支払及び社会保険手続等の労務管理は、専ら妻Gが行っている旨各主張する。
B この点について、当審判所の調査によれば、1妻Gが税務会計事務に従事した期間は、平成16年12月31日時点で27年を超えること、2請求人の関与先のうち、医療法人及び学校法人は、本件各年分において、本件各使用人が担当せず、妻Gが担当していたこと、3妻Gは、本件各年分において、自己が担当する関与先に係る税務会計事務を行うだけでなく、本件各使用人が担当する関与先に係る税務会計事務についても、本件各使用人がこれを行うのを補佐し、また、請求人の事務所における経理及び庶務も行っていたことが認められる。
C しかしながら、上記Bの2及び3の妻Gの労務の内容は、税理士の下で税務会計事務に従事する者にとって特異なものとは認められないから、これをもって、妻Gの労務の性質につき格別の評価をすることは相当でない。
 また、上記Bの1の妻Gが税務会計事務に従事した年数についても、妻Gの労務の内容(上記(1)のロ並びに上記Bの2及び3)からすれば、妻Gの労務の性質につき格別の評価をすることは相当でない。
 したがって、請求人の主張には理由がない。
ロ 妻Gの労務の提供の程度
(イ) 上記(1)のハの(ハ)及び(ニ)のとおり、本件各年分において、妻Gが請求人の事業に従事した時間は、妻Gによって本件税務日誌に記録されているものの、本件各使用人が請求人の事業に従事した時間については、直接記録されたものがない。
(ロ) ところで、上記(1)のニの(イ)のとおり、妻G及び本件各使用人は、専らパソコンを使用して税務会計事務を行っていたこと、また、上記(1)のニの(ロ)のとおり、妻G及び本件各使用人は、請求人の事務所において、通常、各人の専用パソコンを使用し、各自が、請求人の事務所に出勤したときにその電源を入れ、請求人の事務所を退勤するときにその電源を切っていたこと、さらに、当審判所の調査によれば、各専用パソコンに保存されていたログ記録の内容は、本件各使用人の就業時間及び休日の状況(上記(1)のハの(イ))、妻Gの通常の出勤及び退勤の状況(上記(1)のハの(ロ))、本件税務日誌に記録された妻Gの請求人の事業に従事した時間帯(上記(1)のハの(ハ))、本件出勤簿に記録された本件各使用人の出勤及び欠勤の状況(上記(1)のハの(ニ))とよく符合することからすれば、各専用パソコンの稼働時間は、当該各専用パソコンを専ら使用する者が請求人の事業に従事した時間を反映しているものと認められ、妻G及び本件各使用人がそれぞれ請求人の事業に従事した時間を相互に比較するための基準として、各専用パソコンの稼働時間を採用することには十分な合理性があると認められる。
(ハ) そうすると、別表5のとおり、平成17年2月22日から平成18年12月31日までの期間において、妻Gの専用パソコンの稼働時間は合計4,996.71時間であり、本件各使用人の各専用パソコンのうち、稼働時間が最も長いHの専用パソコンの稼働時間(合計4,128.93時間)よりも長く、その約1.21倍程度であるから、同期間において、妻Gが請求人の事業に従事した時間は、本件各使用人のうち、請求人の事業に従事した時間が最も長いHよりも長く、その約1.21倍程度であったものと認められる。
(ニ) また、上記(ハ)の期間の日数(678日)が本件各年分全体の日数(1,096日)のうち、61.8%を占めること、本件各年分のうち、上記(ハ)の期間と当該期間以外の期間との間で差異を認めるべき特殊事情等の存在はうかがえないことからすれば、本件各年分を通じて、妻Gが請求人の事業に従事した時間は、本件各使用人のうち、請求人の事業に従事した時間が最も長いHよりも長く、その約1.21倍程度であったものと認められる。
ハ 本件適正給与額の算定
(イ) 原処分庁の主張について
A 原処分庁は、妻Gの労務の性質及びその提供の程度が、本件各使用人のそれと同様なものであり、大きな差異はなかったものとした上で、本件適正給与額は、本件各年分において本件各使用人が支払を受けた給与の状況に基づき設定した別表3の条件を基準として、妻Gが請求人の事業に従事した年数等を考慮して別表4のとおり算定した金額を超えるものではないと主張する。
B しかしながら、上記ロの(ニ)のとおり、本件各年分を通じて、妻Gが請求人の事業に従事した時間は、本件各使用人のうち、請求人の事業に従事した時間が最も長いHよりも長く、その約1.21倍程度であったものと認められ、原処分庁が主張する本件適正給与額の算定方法は、妻Gと本件各使用人との労務の提供の程度の差異を考慮しない限り、採用し難い。
 また、上記(1)のホのとおり、請求人は明文の給与規定を作成していないところ、当審判所の調査によれば、1本件各使用人の初任給は、Lだけが170,000円であり、同人以外のHが180,000円、Jが150,000円、Kが160,000円であること、2本件各使用人のうち、年間を通じて請求人の事業に従事した者の年間の昇給額の平均は、平成17年分だけが8,000円であり、同年分以外の平成16年分が7,333円、平成18年分が6,000円であること、3本件各使用人が平成16年1月分から同年3月分までの給与に含めて支払を受けた休日手当の額は、休日出勤日数に関係なく、一律120,000円とされていることが認められ、これらのことからすれば、原処分庁が主張する本件適正給与額の算定条件(別表3)について、本件各使用人が支払を受けた給与の状況に基づき設定されたものと認めることは相当でない。
 したがって、原処分庁の主張には理由がない。
(ロ) 本件適正給与額の算定に当たっては、その金額が、妻Gの労務の対価として相当であると客観的に認識できるものでなければならないと解されるところ、請求人は、本件各専従者給与額について、その全額が妻Gの労務の対価として相当であると客観的に認識できる程度に主張、立証しなかった。
 そこで、当審判所においては、以下のとおり、本件各使用人が支払を受ける給与の状況及び比較専従者が支払を受ける給与の状況に基づき、本件適正給与額に相当する金額(以下「本件適正給与相当額」という。)をそれぞれ算定し、いずれか高い金額を本件適正給与額とする方法により、本件適正給与額を算定する。
(ハ) 本件各使用人が支払を受ける給与の状況に基づく本件適正給与相当額の算定
 上記(1)のホのとおり、本件各使用人が、本件各年分において、支払を受けた給与の金額は、それぞれ別表6のとおりであり、また、上記ロの(ニ)のとおり、本件各年分を通じて、妻Gが請求人の事業に従事した時間は、本件各使用人のうち、請求人の事業に従事した時間が最も長いHよりも長く、その約1.21倍程度であったものと認められるから、このような妻Gの労務の提供の程度を考慮し、Hが支払を受けた給与の金額(平成16年分が4,301,500円、平成17年分が4,457,500円、平成18年分が4,518,000円)を1.21倍して、本件各使用人が支払を受ける給与の状況に基づく本件適正給与相当額を算定すると、その金額は、平成16年分が5,204,815円、平成17年分が5,393,575円、平成18年分が5,466,780円となる。
(ニ) 比較専従者が支払を受ける給与の状況に基づく本件適正給与相当額の算定
A 比較専従者が支払を受ける給与の平均額をもって本件適正給与相当額とする算定方法は、業種の同一性、事業規模の類似性等の基礎的要件に欠けるところがない限り、各比較専従者の個別具体的事情等が捨象されて普遍性が高められる合理的な方法であると認められるから、当審判所においては、以下、この方法により、比較専従者が支払を受ける給与の状況に基づく本件適正給与相当額を算定する。
B 当審判所が、原処分庁の採用した比較専従者7件について、その選定方法、業種、業態、事業規模及び労務の内容等の適否を検討したところ、このうち1件は、その労務の内容が必ずしも妻Gと類似しているとは認められないので、この者を比較専従者から除外するのが相当である。
 そして、原処分庁が採用した比較専従者7件から上記1件を除いた、比較専従者6件(以下「本件比較専従者」という。)については、その配偶者が、P税務署及びその近隣署管内で継続して事業を営む青色申告者で、業種、業態及び事業規模が請求人と類似し、かつ、当該専従者が、税理士となる資格を有しない者で、年間を通じて事業に従事し、その労務の内容が妻Gに類似するという一定の基準により合理的に選定されているから、比較専従者として相当であると認められる。
C 本件比較専従者が、本件各年分において、支払を受けた給与の金額は、それぞれ別表7のとおりであり、それらの金額を平均して、比較専従者が支払を受ける給与の状況に基づく本件適正給与相当額を算定すると、その金額は、平成16年分が4,652,415円、平成17年分が4,742,360円、平成18年分が4,774,554円となる。
D 請求人の主張について
 請求人は、原処分庁が選定した比較専従者の給与の金額は、その最高額が最低額の2倍を超えており、このような開差が存する比較専従者の給与の金額を基準とすることは相当でない旨主張するところ、本件比較専従者が支払を受けた給与の金額についても、別表7のとおり、その最高額が最低額の2倍を超えている。
 しかしながら、上記A及びBのとおり、業種の同一性、事業規模の類似性等の基礎的要件に欠けるところがない以上、比較専従者が支払を受ける給与の平均額を本件適正給与相当額とする算定方法は、各比較専従者の個別具体的事情等が捨象されて普遍性が高められる合理的な方法であると認められるから、上記程度の開差が存することをもって、上記算定方法に合理性がないというのは相当ではない。
 したがって、請求人の主張には理由がない。
(ホ) そうすると、上記(ハ)及び(ニ)のCのとおり、本件各年分のいずれの年分においても、本件各使用人が支払を受ける給与の状況に基づく本件適正給与相当額(平成16年分が5,204,815円、平成17年分が5,393,575円、平成18年分が5,466,780円)が、比較専従者が支払を受ける給与の状況に基づく本件適正給与相当額(平成16年分が4,652,415円、平成17年分が4,742,360円、平成18年分が4,774,554円)よりも高い金額となるから、本件適正給与額は、平成16年分が5,204,815円、平成17年分が5,393,575円、平成18年分が5,466,780円と認められる。
ニ 以上によれば、本件各専従者給与額(平成16年分が12,400,000円、平成17年分及び平成18年分が各12,800,000円)は、本件各年分のいずれの年分においても、本件適正給与額(平成16年分が5,204,815円、平成17年分が5,393,575円、平成18年分が5,466,780円)を上回るから、その上回る部分の金額(平成16年分が7,195,185円、平成17年分が7,406,425円、平成18年分が7,333,220円)は、妻Gの労務の対価として相当であるとは認められない。

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(3) 本件各更正処分

イ 事業所得の金額
 上記(2)のニのとおり、本件各専従者給与額のうち、平成16年分につき7,195,185円、平成17年分につき7,406,425円、平成18年分につき7,333,220円は、妻Gの労務の対価として相当であるとは認められないから、上記各金額は、本件各年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
 これを前提として、本件各年分の事業所得の金額を計算すると、平成16年分が○○○○円、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円となる。
ロ 総所得金額
 事業所得以外の本件各年分の不動産所得の金額については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によっても相当と認められる。
 そうすると、本件各年分の総所得金額は、平成16年分が○○○○円、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円となり、いずれも本件各更正処分のその額を上回るから、本件各更正処分はいずれも適法である。

(4) その他

 過少申告加算税の各賦課決定処分を含む原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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