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(平21.5.20、裁決事例集No.77 320頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、みなし外国税額控除を適用して確定申告を行った後、確定申告書に記載した税額等の計算に誤り等があったとして更正の請求をしたところ、原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、請求人が、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成16年4月1日から平成17年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税について、別表1の「確定申告」欄のとおり記載した青色の確定申告書(以下「本件申告書」という。)を、提出期限(法人税法第75条の2《確定申告書の提出期限の延長の特例》第1項の規定により1月間延長されたもの)までにA税務署長へ提出した。
ロ 請求人は、平成18年6月30日に本件事業年度の法人税について、別表1の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をした。
ハ A税務署長は、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、本件事業年度の法人税について、平成18年7月31日付で別表1の「更正処分等」欄のとおりとする更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分をした。
ニ A税務署長は、本件更正の請求に対し、平成18年10月31日付で更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
ホ 請求人は、本件通知処分を不服として、平成18年12月28日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成19年3月15日付で異議申立てを棄却するとの異議決定をした。
ヘ 請求人は、上記ホの異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成19年4月13日に審査請求をした。
ト A税務署長は、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、本件事業年度の法人税について、平成19年7月31日付で別表1の「再更正処分等」欄のとおりとする再更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分をした。
チ 上記ハの更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分並びに上記トの再更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分についてあわせ審理する。

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(3) 関係法令

イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第23条《更正の請求》第1項は、納税申告書を提出した者は、当該申告書に記載した課税標準等若しくは納税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと(以下「1号事由」という。)により納付すべき税額が過大であるときに該当する場合には、当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額につき更正をすべき旨の請求をすることができる旨規定している。
ロ 法人税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)第69条《外国税額の控除》第1項は、内国法人が各事業年度において外国法人税(外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるものをいう。)を納付することとなる場合には、当該事業年度の所得の金額につき法人税法第66条《各事業年度の所得に対する法人税の税率》第1項から第3項までの規定を適用して計算した金額のうち、当該事業年度の所得でその源泉が国外にあるものに対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額(以下「控除限度額」という。)を限度として、その外国法人税の額(その所得に対する負担が高率な部分として政令で定める金額を除く。以下「控除対象外国法人税の額」という。)を当該事業年度の所得に対する法人税の額から控除する(以下、「外国税額控除」といい、当該内国法人が外国に直接納付した外国法人税の控除を「直接外国税額控除」という。)旨規定している。
ハ 法人税法第69条第8項は、内国法人が外国子会社(その発行済株式の総数又は出資金額の100分の25以上に相当する数又は金額の株式又は出資がその内国法人により所有されていることその他の政令で定める要件を備えている外国法人をいう。以下同じ。)から受ける利益の配当又は剰余金の分配の額(以下「配当等の額」という。)がある場合には、その外国子会社の所得に対して課される外国法人税の額のうちその配当等の額に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額を、政令で定めるところにより、その内国法人が納付する控除対象外国法人税の額とみなして、同条第1項から第3項までの規定を適用する(以下「間接外国税額控除」という。)旨規定している。
ニ 法人税法第69条第16項は、同条第1項の規定は、確定申告書に同項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載があり、かつ、控除対象外国法人税の額を課されたことを証する書類その他財務省令で定める書類(以下「法令で定める書類」という。)の添付がある場合に限り適用される旨規定し、また、この場合において、同項の規定による控除をされるべき金額は、当該金額として記載された金額を限度とする旨規定している。
ホ 法人税法第69条第18項は、税務署長が、控除をされるべきこととなる金額又は控除限度額等の全部又は一部につき同条第1項の規定する確定申告書の記載又は書類の添付がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その記載又は書類の添付がなかった金額について外国税額控除を適用することができる旨規定している。
ヘ 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とB国との間の条約(以下「日○租税条約」という。)第10条第1項は、一方の締結国の居住者である法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる旨規定している。
ト 日○租税条約第10条第2項は、同条第1項の配当に対しては、これを支払う法人が居住者とされる締約国においても、当該締約国の法令に従って租税を課することができる旨規定している。
チ 日○租税条約第21条第2項は、日本国以外の国において納付される租税を日本国の租税から控除することに関する日本国の法令に従い、(a)日本国の居住者が同条約の規定に従ってB国において租税を課される所得をB国において取得する場合には、当該所得について納付されるB国の租税の額は、当該居住者に対して課される日本国の租税の額から控除し、(b)B国において取得される所得が、B国の居住者である法人によりその議決権のある株式又はその発行済株式の少なくとも25%を所有する日本国の居住者である法人に対して支払われる配当である場合には、日本国の租税からの控除を行うに当たり、当該配当を支払う法人によりその所得について納付されるB国の租税を考慮に入れるものとする旨規定している。
リ 日○租税条約第21条第4項(a)(i)は、同条第2項に規定する「納付されるB国の租税」には、B国のC法第34条の規定に従って軽減又は免除が行われないとしたならばB国の法令に基づき納付されたとみられるB国の租税の額を含むものとみなす(以下「みなし納付」という。)旨規定している。
ヌ 日○租税条約第21条第5項は、同条第4項の規定の適用がある場合には、同条約第10条第2項の規定が適用される配当については、同条約第21条第2項(a)及び第4項(a)の規定に従って与えられる日本国の租税からのいかなる控除も、当該配当の額の25%を超えないものとする旨規定している。

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(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、B国に、平成7年9月にD社を、また、平成8年2月にE社をそれぞれ設立した。
 なお、本件事業年度末における請求人のD社に対する出資割合は49%であり、E社に対する出資割合は48%である。
ロ 請求人は、平成13年4月1日から平成14年3月31日までの事業年度、平成14年4月1日から平成15年3月31日までの事業年度及び平成15年4月1日から平成16年3月31日までの事業年度(以下、順次「平成14年3月期」、「平成15年3月期」及び「平成16年3月期」という。)の法人税の確定申告書において、日○租税条約第21条の規定に基づき、みなし納付した金額について外国税額控除(以下、「みなし外国税額控除」といい、そのうち、直接外国税額控除に係るみなし外国税額控除を「みなし直接外国税額控除」、間接外国税額控除に係るみなし外国税額控除を「みなし間接外国税額控除」という。)を適用していた。
ハ 請求人は、本件事業年度の法人税の確定申告書において、D社から配当として受領した315,560,000B国通貨(円換算額○○○○円)及びE社から配当として受領した172,224,000B国通貨(円換算額○○○○円)を収益の額に計上するとともに、D社及びE社が納付したとみなされる外国法人税額について、日○租税条約第21条の規定に基づき、別表2から別表5−2までの各「確定申告」欄のとおり記載して、みなし外国税額控除を適用していた。

2 主張

 争点に係る当事者の主張は、別紙のとおりである。

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3 判断

 本件は、確定申告書別表一(一)の「外国税額」欄に記載した金額を超えて外国税額控除が認められるか否かについて争いがあるので審理したところ、次のとおりである

(1) 認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、請求人が本件申告書に記載した税額等の計算の内容について、次の事実が認められる。
イ D社のみなし直接外国税額控除について
(イ) 本件申告書の別表の記載内容及び法令で定める書類の添付
 請求人は、本件申告書の提出に際し、別表六(四)のD社からの配当金に係る部分について、別表3−1の「確定申告」欄のとおり記載するとともに、みなし納付の基礎となるC法の根拠規定の写し及びD社からの配当金の受領を証する証ひょうを本件申告書に添付している。
 なお、請求人は、本件申告書の別表六(四)について、本来であれば「控除対象外国法人税額」の「みなし納付分(括弧書き)」欄を除き現地の通貨単位で記載するところ、誤って現地の通貨単位の「B国通貨」ではなく「円」で記載している(以下、請求人が誤って円と記載している部分を「円(B国通貨の記載誤り)」と記載する。)。
(ロ) 本件申告書に記載された控除対象外国法人税の額の計算過程
 請求人は、別表3−1のとおり、本件申告書の別表六(四)における「控除対象外国法人税額」の「みなし納付分(括弧書き)」欄に、本来であれば、配当の収益計上に用いる為替レートと同一の為替レート(1B国通貨当たり○○円)を乗じて計算した金額(○○○○円)を、円換算額として記載すべきところ、請求人は、誤った為替レートで換算した金額(○○○○円)を記載している。
 そして、これ以降の各別表間の転記、外国税額控除の計算及び各別表の記載は、この誤って過少に記載した金額に基づき行われている。
ロ D社の間接外国税額控除について
(イ) 本件申告書の別表の記載内容及び法令で定める書類の添付
 請求人は、本件申告書の提出に際し、D社からの配当金に係る別表六(五)及び別表六(五の三)について、別表4−1及び別表5−1の各「確定申告」欄のとおり記載するとともに、みなし納付の基礎となるC法の根拠規定の写し、B国においてD社に課された外国法人税が納付されたことを証する証ひょう及び同社がB国において納付したとみなされる外国法人税額の算定根拠となる金額を証明する証ひょうを本件申告書に添付している。
(ロ) 本件申告書に記載された控除対象外国法人税の額の計算過程
 請求人は、D社に課された外国法人税(1,166,060.18B国通貨)を、別表5−1のとおり、本件申告書の別表六(五の三)における「みなし納付の基礎となる相手国の法令の規定を適用した場合の外国法人税額」の「納付すべき税額」欄に記載しているが、別表4−1のとおり、本件申告書の別表六(五)における「外国子会社の外国法人税額」の「外国法人税額」欄には転記せず、同欄を空欄としている。そのため、同欄の金額から計算される、1「間接納付した控除対象外国法人税額等の計算」の「納付外国法人税分」欄、及び2「間接納付した控除対象外国法人税額」欄も空欄となっており、その円換算額を記載する「間接納付した控除対象外国法人税額の円換算額」欄も、空欄(正当に計算した場合の金額は○○○○円)となっている。
ハ D社のみなし間接外国税額控除について
(イ) 本件申告書の別表の記載内容及び法令で定める書類の添付
 本件申告書のD社からの配当金に係る別表六(五)及び別表六(五の三)の記載内容及び法令で定める書類の添付は、上記ロの(イ)のとおりである。
(ロ) 本件申告書に記載された控除対象外国法人税の額の計算過程
 請求人は、D社に課された外国法人税(1,166,060.18B国通貨)を、別表4−1のとおり、本件申告書の別表六(五)における「外国子会社の外国法人税額」の「外国法人税額」欄に転記せず、同欄を空欄としている。また、請求人は、D社がB国において二重に控除されている輸送費、電力費及び水道費相当額を「配当事業年度等の所得金額の計算」欄の金額を算出する際に加算して計算していなかったため、別表4−1のとおり、同欄を誤って2,126,601,627B国通貨(正当金額は2,135,278,143B国通貨)と記載している。そのため、当該各欄の金額を計算要素として算出される「間接納付した控除対象外国法人税額等の計算」の「みなし納付外国法人税分」欄を94,608,232B国通貨(正当に計算した場合の金額は94,275,283.48B国通貨)と誤って計算し、その結果、同金額を「間接納付したとみなされる控除対象外国法人税額」欄へ転記するに当たっても誤った金額で転記している。
 さらに、請求人は、日○租税条約の配当に係るみなし外国税額控除の控除限度額は、みなし直接外国税額控除の額についてのみ受取配当等の額の25%を上限とする旨規定しているにもかかわらず、みなし直接外国税額控除の額とみなし間接外国税額控除の額との合計額に対して、受取配当等の額の25%を上限とする旨規定しているものと誤って解釈していた(以下、この解釈誤りを「日○租税条約の解釈誤り」という。)。そのため、本来であれば、みなし間接外国税額控除の控除限度額については、受取配当等の額に応じた上限額がないことから、「間接納付したとみなされる控除対象外国法人税額」欄(正当に計算した場合の金額は94,275,283.48B国通貨)の円換算額(○○○○円)を、本件申告書の別表六(五)における「間接納付したとみなされる控除対象外国法人税額の円換算額」欄に記載すべきところ、請求人は、日○租税条約の解釈誤りにより、受取配当等の額(○○○○円)の25%の金額(○○○○円)を限度として、当該金額から誤った為替レートで換算したみなし直接外国税額控除の額(○○○○円)を差し引いた金額(○○○○円)を、別表4−1のとおり、「間接納付したとみなされる控除対象外国法人税額の円換算額」欄に記載している。
 そして、これ以降の各別表間の転記、外国税額控除の計算及び各別表の記載は、この誤った認識の金額に基づき行われている。
ニ E社のみなし間接外国税額控除について
(イ) 本件申告書別表の記載内容及び法令で定める書類の添付
 請求人は、本件申告書の提出に際し、E社からの配当金に係る別表六(五)及び別表六(五の三)について、別表4−2及び別表5−2の各「確定申告」欄のとおり記載するとともに、みなし納付の基礎となるC法の根拠規定の写し及びE社がB国において納付したとみなされる外国法人税額の算定根拠となる金額を証明する証ひょうを本件申告書に添付している。
(ロ) 本件申告書に記載された控除対象外国法人税の額の計算過程
 請求人は、別表4−2のとおり、本来であれば、みなし間接外国税額控除の控除限度額については、受取配当等の額に応じた上限額がないことから、「間接納付したとみなされる控除対象外国法人税額」欄(43,744,176B国通貨)の円換算額(○○○○円)を、本件申告書の別表六(五)における「間接納付したとみなされる控除対象外国法人税額の円換算額」欄に記載すべきところ、日○租税条約の解釈誤りにより、受取配当等の額(○○○○円)の25%の金額(○○○○円)を限度として、当該金額からみなし直接外国税額控除の額(○○○○円)を差し引いた金額(○○○○円)を、別表4−2のとおり、「間接納付したとみなされる控除対象外国法人税額の円換算額」欄に記載している。
 そして、これ以降の各別表間の転記、外国税額控除の計算及び各別表の記載は、この誤った認識の金額に基づき行われている。
ホ 上記イからニまでをまとめると、請求人は外国税額控除の適用において、次表のとおりの誤りが認められる。

項目 誤りの内容 参考別表
D社のみなし直接外国税額控除 「控除対象外国法人税額」の「みなし納付分」欄の円換算に適用する為替レートの誤り 別表3−1
D社の間接外国税額控除 D社に課された外国法人税の「外国子会社の外国法人税額」の「外国法人税額」欄への転記誤り 別表4−1
D社のみなし間接外国税額控除 1D社に課された外国法人税の「外国子会社の外国法人税額」の「外国法人税額」欄への転記誤り
2「配当事業年度等の所得金額の計算」欄の計算誤り
3日○租税条約の解釈誤りによる「間接納付したとみなされる控除対象外国法人税額の円換算額」欄の記載誤り
別表4−1
E社のみなし間接外国税額控除 日○租税条約の解釈誤りによる「間接納付したとみなされる控除対象外国法人税額の円換算額」欄の記載誤り 別表4−2

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(2) 法人税法第69条第16項に規定する「控除をされるべき金額」について

イ 法人税法第69条第16項に規定する「控除をされるべき金額」の解釈
 外国税額控除を定めた法人税法第69条は、同条第16項後段において、上記1の(3)のニのとおり、同項(第1項)の規定による控除をされるべき金額は、当該金額として記載された金額を限度とする旨規定している(以下「記載金額限度要件」という。)。
 そもそも、外国税額控除は、企業が国外に進出して投資その他の国際的経済活動を行う場合、自国と外国とがそれぞれ課税することによって生じる国際的二重課税を排除するための制度であるところ、外国税額控除の適用については、確定申告書に控除を受けるべき金額を記載する等の手続的要件があり、かつ、これにより控除をされるべき金額については、記載金額限度要件が付されている。そして、このような要件が設けられた趣旨は、外国税額控除の適用を受けることを選択するかどうか、又はその適用を受ける範囲をどうするかについては、申告段階において内国法人の選択にゆだねているところから、その選択の内容及び控除金額の計算過程の透明性と適法性を確定申告における申告記載を通じて当該内国法人に担保させるとともに、いったん選択して申告した以上は、後日の修正申告や更正の請求に際して、請求人が改めてその選択の内容を見直してその範囲を拡大し、追加的な控除を主張することが生じないようにすることにより制度の適正な運用を図るためと解される。
 したがって、外国税額控除の制度上、外国税額控除の対象とするかどうかを内国法人の選択にゆだねている事項について、内国法人が当初申告においてこれを選択しなかったとしても、その選択しなかったこと自体は税法上適法な行為ということになるから、たとえ選択しなかったことにより、その選択をした場合に比して結果的に納付税額が過大になっているとしても、これについて更正の請求をして納付税額の減額(すなわち外国税額控除額の増額)を求める理由はないと解すべきである。
 これに対して、当初申告において外国税額控除の対象に選択して申告記載した事項については、外国税額控除制度が納税者の選択により国際的二重課税を排除するために設けられた趣旨を考慮すると、たまたまその記載金額又は計算に誤りがあったため、結果的にその申告記載した控除金額が過少になっているような場合には、上記の内国法人が当初申告においてこれを選択しなかった場合とは事情が異なり、基本的には外国税額控除額の増額(すなわち納付税額の減額)を認めるべきであると解するのが相当である。
 すなわち、法人税法第69条第16項に規定する「控除をされるべき金額」とは、内国法人が外国税額控除の適用を選択した場合において、申告記載金額誤り又は計算誤りにより結果的に申告記載した控除金額が過少になっているときには、内国法人が外国税額控除の適用を選択したと認められる範囲内において、これらの誤りを法令に基づき是正した上で正当に算定される金額であると解するのが相当である。
ロ 上記イの解釈を本件に当てはめると、次のとおりである。
(イ) D社のみなし直接外国税額控除について
 請求人は、別表3−1のとおり、本件申告書の別表六(四)における「みなし納付外国法人税額」の「みなし納付の基礎となる相手方の法令の根拠規定の適用がないものとした場合の外国法人税額」の「課税標準」欄に315,560,000円(B国通貨の記載誤り)と、また、「控除対象外国法人税額」の「みなし納付分(本書き)」欄に31,556,000円(B国通貨の記載誤り)と記載していること、また、上記(1)のイの(イ)のとおり、法令で定める書類を添付していることからすると、D社からの配当金については、日○租税条約第21条第4項に基づき、みなし直接外国税額控除を選択する意思があったものと認められる。
 すなわち、上記(1)のイの(ロ)の誤りを是正して計算した金額が、D社のみなし直接外国税額控除として控除されるべき金額であり、D社からの配当金に係る本件申告書の別表六(四)を正当に計算すると、別表3−1の「正当額等」欄のとおりとなる。
 そうすると、請求人は、別表3−1の「確定申告」欄のとおり、本件申告書の別表六(四)における「控除対象外国法人税額」の「みなし納付分(括弧書き)」欄に円換算額を○○○○円と記載しているが、D社のみなし直接外国税額控除として控除されるべき金額は、同別表の「正当額等」欄のとおり、適正な円換算を行って計算した○○○○円であると認められる。
(ロ) D社の間接外国税額控除について
 請求人は、別表5−1のとおり、本件申告書の別表六(五の三)の「みなし納付の基礎となる相手国の法令の規定を適用した場合の外国法人税額」の「納付すべき税額」欄に1,166,060.18B国通貨と記載していること、また、上記(1)のロの(イ)のとおり、法令で定める書類を添付していることからすると、D社からの配当金について、間接外国税額控除の適用を受けることを選択する意思があったものと認められる。
 すなわち、上記(1)のロの(ロ)の誤りを是正して計算した金額が、D社の間接外国税額控除として控除されるべき金額であり、D社からの配当金に係る本件申告書の別表六(五)を正当に計算すると、別表4−1の「正当額等」欄のとおりとなる。
 そうすると、請求人は、別表4−1の「確定申告」欄のとおり、D社に課された外国法人税1,166,060.18B国通貨を、本件申告書の別表六(五)における「外国子会社の外国法人税額」の「外国法人税額」欄に転記せず、その結果「間接納付した控除対象外国法人税額の円換算額」欄を何ら計算していないが、D社の間接外国税額控除として控除されるべき金額は、同別表の「正当額等」欄のとおり、上記外国法人税を乗じて正当に計算した○○○○円であると認められる。
(ハ) D社のみなし間接外国税額控除について
 請求人は、別表5−1のとおり、本件申告書の別表六(五の三)における「納付したとみなされる外国法人税額」欄及び別表4−1の本件申告書の別表六(五)における「外国子会社の外国法人税額」の「納付したとみなされる外国法人税額」欄にそれぞれ637,577,708.22B国通貨と記載し、別表六(五)の「間接納付したとみなされる控除対象外国法人税額」欄に94,608,232B国通貨と記載していること、並びに、上記(1)のハの(イ)のとおり、法令で定める書類を添付していることからすると、D社からの配当金に係るみなし間接外国税額控除について、適用を受けることを選択する意思があったものと認められる。
 すなわち、上記(1)のハの(ロ)の誤りを是正して計算した金額が、D社のみなし間接外国税額控除として控除されるべき金額であり、D社からの配当金に係る本件申告書の別表六(五)を正当に計算すると、別表4−1の「正当額等」欄のとおりとなる。
 そうすると、請求人は、別表4−1の「確定申告」欄のとおり、本件申告書の別表六(五)における「間接納付したとみなされる控除対象外国法人税額の円換算額」欄に○○○○円と誤って記載しているが、D社のみなし間接外国税額控除として控除されるべき金額は、同別表の「正当額等」欄のとおり、D社に課された外国法人税1,166,060.18B国通貨を、本件申告書の別表六(五)における「外国子会社の外国法人税額」の「外国法人税額」欄に正当に転記し、さらに「配当事業年度等の所得金額の計算」欄を正当金額の2,135,278,143B国通貨として計算した、「間接納付した控除対象外国法人税額等の計算」の「みなし納付外国法人税分」欄の正当額94,275,283.48B国通貨に、日○租税条約の解釈誤りを是正して、受取配当等の額の25%を上限とせずに換算した金額、すなわち、D社が間接納付したとみなされる控除対象外国法人税額94,275,283.48B国通貨の円換算額○○○○円であると認められる。
(ニ) E社のみなし間接外国税額控除について
 請求人は、別表5−2のとおり、本件申告書の別表六(五の三)における「納付したとみなされる外国法人税額」欄及び別表4−2の本件申告書の別表六(五)における「外国子会社の外国法人税額」の「納付したとみなされる外国法人税額」欄にそれぞれ108,544,716B国通貨と記載し、「間接納付したとみなされる控除対象外国法人税額」欄に43,744,176B国通貨と記載していること、並びに上記(1)のニの(イ)のとおり、法令で定める書類を添付していることからすると、E社からの配当金に係るみなし間接外国税額控除について、みなし間接外国税額控除の適用を受けることを選択する意思があったことが認められる。
 すなわち、上記(1)のニの(ロ)の誤りを是正して計算した金額が、E社のみなし間接外国税額控除として控除されるべき金額であり、E社からの配当金に係る本件申告書の別表六(五)を正当に計算すると、別表4−2の「正当額等」欄のとおりとなる。
 そうすると、請求人は、別表4−2の「確定申告」欄のとおり、本件申告書の別表六(五)における「間接納付したとみなされる控除対象外国法人税額の円換算額」欄に○○○○円と誤って記載しているが、E社のみなし間接外国税額控除として控除されるべき金額は、同別表の「正当額等」欄のとおり、日○租税条約の解釈誤りを是正して、受取配当等の額の25%を上限とせずに計算した金額、すなわち、E社が間接納付したとみなされる控除対象外国法人税額43,744,176B国通貨の円換算額○○○○円であると認められる。
(ホ) 本件における「控除をされるべき金額」
 上記(イ)から(ニ)までのとおり、請求人は、外国税額控除の適用上、D社からの配当金に係るみなし直接外国税額控除、間接外国税額控除及びみなし間接外国税額控除の計算並びにE社からの配当金に係るみなし間接外国税額控除の計算について誤っており、請求人が外国税額控除の適用を選択したと認められる範囲内において、法令に基づき正当に算定される金額を計算すると別表6の「審判所認定額」欄のとおりとなり、本件における法人税法第69条第16項に規定する「控除をされるべき金額」は、別表6の審判所が認定した「外国税額控除額合計19」欄のとおり、○○○○円となる。
ハ 原処分庁の主張について
 原処分庁は、法人税法第69条第16項に規定する「控除をされるべき金額」の解釈について、納税者が外国税額控除の適用を選択した場合において、一定の控除対象外国法人税の額を「控除をされるべき金額」として確定申告書に記載することにより、その控除を受ける範囲について意思表示したときは、たとえ客観的にその記載額が同条第1項の規定により正当に算定される控除可能な外国法人税額の一部にすぎなかった場合でも、当該「記載された金額」こそが「控除をされるべき金額」である旨、及びここにいう「記載された金額」とは、法人税法第69条第16項及び法人税法施行規則第34条《確定申告書の記載事項》第2項の規定から、確定申告書別表六(二)の「当期に控除できる金額」欄と、その金額が転記された別表一(一)の「外国税額」欄に記載された具体的金額をいうと解される旨主張する。
 しかしながら、本件においては、上記(1)のイの(イ)、ロの(イ)、ハの(イ)及びニの(イ)のとおり、請求人は、外国税額控除の適用を受ける意思があり、その適用金額を本件申告書に記載するとともに、法令で定める書類を添付していることからすると、法令に基づき正当に計算した別表6の「審判所認定額」欄の金額について、外国税額控除の適用を選択していたと認められる。そして、請求人は、本件申告書別表六(二)の「当期に控除できる金額」欄にその一部しか記載していなかったところ、原処分庁の上記解釈によると、本件のような場合には、外国税額控除の適用を受ける意思があるにもかかわらず、同金額の一部しか控除できないことになる。
 そうすると、法人税法第69条第16項の趣旨が、外国税額控除の適用に当たり、納税者にその適用範囲について選択権を付与し、その意思を尊重することであり、また、更正の請求の趣旨が、過大な申告をした納税者については納税者の負担の公平を図る見地からこれを適正な税額に是正して納税者の権利を救済することであるにもかかわらず、確定申告書別表六(二)の「当期に控除できる金額」欄に記載すべき金額とその金額を転記する別表一(一)の「外国税額」欄に記載すべき金額を誤ったときは、たとえ外国税額控除の適用を選択していたと認められる範囲・金額が明らかな場合であったとしても、更正の請求の余地が全くないことになり、納税者の合理的意思による選択に反する不当な結果を生じることになるから、原処分庁の解釈は採用することができない。

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(3) 通則法第23条第1項に規定する1号事由の存否

イ 通則法23条第1項に規定する1号事由の解釈
 通則法第23条第1項は、上記1の(3)のイのとおり、納税申告書を提出した者は、当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができる旨規定しており、納税者が自らの申告により確定させた税額が過大であることを法定申告期限後に気付いた場合には、納税者側からその変更、更正のための必要な手段を採ることを可能ならしめ、その権利救済に資することとしている。
 また、法人税法第69条第16項は、上記(2)のイのとおり、内国法人が確定申告において控除対象に選択して申告記載した事項については、たまたまその記載金額又は計算に誤りがあったため、結果的にその申告記載した控除金額が過少になっているようなときには、その内国法人が外国税額控除の適用を選択したと認められる範囲内において政令によって正当に計算される控除対象法人税の額を、当該事業年度の所得に対する法人税の額から基本的には控除すべきものとしていると解される。
 そうすると、内国法人が、直接納付した又は間接納付した外国法人税について、外国税額控除の適用を受けることを選択し、控除対象外国法人税の額の計算の基礎としている場合において、その控除税額の算出過程において誤った計算又は解釈をしたことにより控除対象外国法人税の額が過少となり支払うべき法人税の額が過大となったときは、通則法第23条第1項の「税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」に該当するものと解するのが相当である。
ロ 上記イの解釈を本件に当てはめると、次のとおりである。
 上記(2)のロのとおり、請求人の本件申告書各別表の記載内容及び法令で定める書類の添付状況からすれば、請求人は、D社からの配当金に係るみなし直接外国税額控除、間接外国税額控除及びみなし間接外国税額控除について、また、E社からの配当金に係るみなし間接外国税額控除についてその適用を受けることを選択していると認められる。そして、請求人は、外国税額控除の適用を受けることを選択した後の控除税額の算出過程において、上記(1)のホのとおり、記載金額又は計算に誤りがあったことから、上記(2)のロのとおり、外国税額控除が過少となり納付すべき法人税の額が過大となったと認められる。
 そうすると、請求人の本件申告書における税額等の計算は、通則法第23条第1項に規定する1号事由に該当し、更正の請求をすることができるものと認められる。
 なお、請求人は、本件申告書に記載された税額等の計算誤りは、法人税法第69条第18項に規定する「やむを得ない事情」に該当する事実がある旨主張するが、上記のとおり、本件は、直接納付した又は間接納付した外国法人税について、外国税額控除の適用を受けることを選択しており、控除対象外国法人税の額の算出過程において記載金額又は計算に誤りがあったことにより控除対象外国法人税の額が過少となり支払うべき法人税の額が過大となったものであるため、法人税法第69条第18項に規定する「やむを得ない事情」に該当する事実があるか否かを判断するまでもなく、通則法第23条第1項に規定する1号事由に該当し、更正の請求をすることができるものと解される。
ハ 原処分庁の主張について
 原処分庁は、通則法第23条第1項に規定する1号事由の存否については、租税実体法である法人税法の規定により判断されるべきであり、租税実体法上、一定事項の申告書への記載等が適用要件とされているにもかかわらず、その記載がされなかった場合には、単に当該規定の適用を受けることができなくなるだけで、1号事由には該当しない旨、及び本件申告書に記載した税額等の計算において、請求人は、自らの選択により、控除を受ける範囲の金額を○○○○円とし、他に控除できる分の金額について控除を受ける範囲の金額に含めなかったのであるから、請求人が主張するように、その選択が誤りだったとしても、1号事由に該当する事実は認められない旨主張する。
 しかしながら、請求人における外国税額控除の適用が通則法第23条第1項に規定する1号事由に該当するか否かに関する当審判所の判断は、上記ロのとおりであることから、原処分庁の主張は採用できない。

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(4) 再更正処分、更正処分及び本件通知処分について

 上記(2)及び(3)によれば、請求人の当期に控除できる外国税額は、別表6の審判所が認定した「外国税額控除額合計19」欄のとおり、○○○○円となり、請求人の本件事業年度における納付すべき税額は○○○○円となるので、再更正処分、更正処分及び本件通知処分は一部取り消すべきである。

(5) 過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分について

 上記(4)のとおり、再更正処分、更正処分及び本件通知処分は一部取り消すべきであるから、平成18年7月31日付及び平成19年7月31日付でされた過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分については、いずれもその全部を取り消すべきである。

(6) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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