(平22.6.18、裁決事例集No.79)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、原処分庁が、審査請求人Eほか3名(以下「請求人ら」といい、個々の請求人を「請求人E」などという。)に対し、平成18年分の所得税の確定申告において、国外で支払を受けた銀行の預金利子に係る利子所得の申告漏れがあり、また、確定申告書に外国税額控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載並びに外国所得税を課されたことを証する書類の添付がないことから外国税額控除は適用できないとして、所得税の更正処分等をしたことについて、請求人らが、当該記載及び書類の添付がともになかったことについて「やむを得ない事情」があるので、外国税額控除の適用を認めるべきであるなどとして、違法を理由に原処分の一部の取消しを求めた事案であり、争点は次の2点である。
争点1 確定申告書に外国税額控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載並びに外国所得税を課されたことを証する書類の添付(以下「外国税額控除を受けるための記載及び書類の添付」という。)がともになかったことについて、所得税法(平成21年法律第13号による改正前のもの。以下同じ。)第95条《外国税額控除》第7項に規定する「やむを得ない事情」があるか否か。
争点2 国外で支払を受けた銀行の預金利子は、雑所得に該当するか否か。また、当該預金利子について外国税額控除を受けることができない場合に、納付した外国所得税を、国外で支払を受けた預金の利子に係る所得の金額の計算上、必要経費に算入することができるか否か。

(2) 審査請求に至る経緯

 請求人らの審査請求(平成21年10月28日請求)に至る経緯は、別表1及び別表2のとおりである。なお、別表2記載の更正処分等については、平成19年3月15日に平成18年分の所得税の確定申告を行ったF(以下「被相続人F」という。)が、平成19年6月○日に死亡したことに伴い、被相続人Fの妻である請求人G並びに被相続人Fと請求人Gの子である請求人H及び請求人J(以下「請求人Gら3名」という。)が、国税通則法第5条《相続による国税の納付義務の承継》第1項及び第2項の規定により、被相続人Fの平成18年分の所得税に係る納付義務を承継したことから、同人の平成18年分の所得税に係る更正処分等が、請求人Gら3名に対してされたものである。
 また、請求人らは、被相続人Fの兄である請求人Eを総代として選任し、平成21年10月28日に総代の選任届出書を当審判所へ提出した。

(3) 関係法令等

 別紙のとおりである。

(4) 基礎事実

 次の事実については、請求人らと原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 外国所得税の納付
 請求人E及び被相続人F(以下「請求人Eら2名」という。)は、平成18年中にP国内に所在するK銀行に有する預金から生じた利子に係る外国所得税をP国に対し納付した。請求人Eら2名の利子収入金額及び納付した外国所得税の額は、別表3のとおりである(以下、各利子収入金額を併せて「本件収入」といい、各外国所得税を併せて「本件外国所得税」という。)。
ロ 確定申告書の記載等
 請求人Eら2名が、原処分庁に対して平成19年3月15日に提出した平成18年分の所得税の各確定申告書(以下「本件各確定申告書」という。)には、いずれも利子所得の金額の記載はなく、外国税額控除を受けるための記載及び書類の添付はなかった。
ハ 原処分における本件収入に係る所得区分及び所得金額
 原処分庁は、平成21年6月30日付でした原処分において、請求人Eら2名の平成18年分の各利子所得の金額を別表4の「利子所得の金額」欄のとおりとしているところ、これは同表の「利子収入金額」欄のとおり、平成18年分の利子収入の金額と同額である。

2 主張

(1) 争点1 確定申告書に外国税額控除を受けるための記載及び書類の添付がともになかったことについて、所得税法第95条第7項に規定する「やむを得ない事情」があるか否か。

請求人ら 原処分庁
 以下のとおり、本件各確定申告書に外国税額控除を受けるための記載及び書類の添付がともになかったことについて、「やむを得ない事情」があるから、請求人らは、外国税額控除を受けることができる。  以下のとおり、本件各確定申告書に外国税額控除を受けるための記載及び書類の添付がともになかったことについて、「やむを得ない事情」があるとは認められないから、請求人らは、外国税額控除を受けることはできない。
イ 外国税額控除の制度は、国際的二重課税を排除し公平負担を実現する趣旨と目的から設けられた制度であり、国が居住者の国外所得についても課税権を行使する以上、外国税額控除は義務的な規定であることから、所得税法第95条第5項における手続規定は、厳格に適用されるべきではない。
 「やむを得ない事情」の解釈については、規定の内容等によって裁量の幅や余地を考慮し判断すべきものであり、本来手続をしていれば負担しなくてよい租税を、単純な手続の暇疵を責めて負担させ、国際的二重課税を強いるのは過酷であるから、本件については「やむを得ない事情」があると解すべきである。
イ 所得税法第95条第7項の規定は、同条第5項の規定の例外を認めるものであるから、「やむを得ない事情」の意義は厳格に解釈し、天災、交通途絶その他納税者の責めに帰することのできない客観的な事情をいい、納税者本人の法の不知や事実の誤認などの主観的な事情は、「やむを得ない事情」には当たらないと解される。
 よって、請求人らの主張は、同人らの税法の不知や誤解による主観的な事情及び独自の見解にすぎないから、「やむを得ない事情」には当たらない。
ロ 本件において、請求人Eら2名は、利子所得は一般的に源泉分離課税で確定申告が不要だと認識して、所得税法第95条第5項所定の手続をしなかったにすぎず、また、税務当局としても居住者に国外で受け取る利子がある場合には、申告が必要であることや適正な申告をするよう申告指導すべきであった。しかし、請求人Eら2名は、平成17年分の所得税についての税務調査時、原処分庁所属の調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)に平成18年分の国外利子所得の取扱いについて質問したにもかかわらず、回答を保留されたまま平成18年分の法定申告期限が経過したものであり、このことは「やむを得ない事情」に当たる。 ロ 納税申告については、納税者の判断と責任に任されているものであるから、法定申告期限までに申告指導がなかったことをもって、「やむを得ない事情」に該当するということはできない。

(2) 争点2 国外で支払を受けた銀行の預金利子は、雑所得に該当するか否か。また、当該預金利子について外国税額控除を受けることができない場合に、納付した外国所得税を、国外で支払を受けた預金の利子に係る所得の金額の計算上、必要経費に算入することができるか否か

請求人ら 原処分庁
 以下のとおり、本件収入に係る所得は雑所得に該当し、本件外国所得税につき、外国税額控除を受けることが認められない場合は、本件外国所得税を雑所得の金額の計算上、必要経費に算入すべきである。  以下のとおり、本件収入に係る所得は利子所得に該当し、本件外国所得税につき、外国税額控除を受けることが認められない場合であっても、本件外国所得税を利子所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
イ 所得税基本通達2−12は、所得税法施行令第2条本文に規定する「銀行その他の金融機関」とは、法律の規定により預金又は貯金の受入れの業務を行うことが認められている銀行等をいう旨定めているところ、「法律の規定」とは、日本国内法を指すことから、国内に存在するK銀行の支店等のみが銀行その他の金融機関に該当し、P国内に存在するK銀行は銀行その他の金融機関に該当しない。
 また、所得税基本通達2−12の注書によると、金融機関以外のものに対する寄託金につき受ける利子は、預貯金の範囲について規定する所得税法施行令第2条各号に掲げるものにつき受けるものを除き、雑所得に該当するとしている。
 以上によれば、所得税法第23条の規定は、飽くまでも法律の施行地内にある金融機関からの受取利子についてのみ利子所得としているものであるから、本件収入は預貯金の利子には該当せず、本件収入に係る所得は、利子所得ではなく、雑所得に該当する。
イ 所得税法第2条に規定する非永住者以外の居住者については、同法第7条の規定により、国外所得を含むすべての所得について所得税が課されるから、利子所得について定める同法第23条の規定は、所得の生じる場所が国内であるか否かにかかわらず適用されるので、我が国の法律の施行地外で受け取った銀行の預金利子も利子所得となる。
 また、K銀行は、日本国内に支店及び出張所を有する外国銀行として、銀行法の定める銀行業の免許を受けており、その前提として、P国内においてP国の法令に準拠して銀行業を営むことが認められていることが必要とされているので、K銀行は、所得税基本通達2−12に定める「銀行その他の金融機関」に該当することとなり、本件収入は、利子所得に該当する。
ロ 外国所得税については、外国税額控除を選択しない場合に、必要経費等として収入金額から控除することが認められなければ二重課税となってしまうため、必要経費等として控除すべきである。
 そうすると、外国税額控除の適用をしない場合の本件外国所得税は、雑所得の計算上、必要経費として控除されるべきである。
ロ 所得税法第23条の規定により、本件収入の金額が利子所得の金額として課税されることになり、本件外国所得税を利子所得の金額の計算上、必要経費として控除することはできない。

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3 判断

(1) 争点1 確定申告書に外国税額控除を受けるための記載及び書類の添付がともになかったことについて、所得税法第95条第7項に規定する「やむを得ない事情」があるか否か。

イ 法令解釈
 所得税法第95条は、外国税額控除について規定するものであるが、外国税額控除制度の趣旨は、国際的二重課税の防止にある。すなわち、同一の納税者に対し、同一の課税物件について、同一の課税期間に、同一の性質の租税を、複数国によって課されることとなれば、国際的経済活動を阻害してしまうことから、我が国では、一定の国外所得に対して課された、日本の所得税に相当する外国の所得税を日本の所得税から税額控除することにより、結果として、国際的二重課税がない場合と同等の税負担になるようにすることによって、国際的二重課税を解消している。
 そして、上記のとおり、外国税額控除制度は、国際的二重課税を回避する目的から各主権国家がそれぞれ独自に有する課税権をどのように調整し、制限するかに係る対応策の一部であるが、そのため、他国の課税権の行使や主権国家の調査権が及びにくい分野から生ずる租税回避の防止等種々の配慮に基づいて課税要件が定められていること、外国税額控除が結果として我が国の課税権の行使に制限を加えるものであること、外国税額控除を受けるためには、条文上、確定申告書に控除を受けるべき金額を記載する等、一定の手続的要件が求められていること等に照らすと、かかる手続要件を履践することなく外国税額控除が受けられる「やむを得ない事情」については、厳格に解釈するのが相当である。
 よって、上記「やむを得ない事情」とは、天災、交通途絶その他客観的にみて納税者本人の責めに帰することができない事情をいうものと解して、納税者本人の法の不知や誤解、事実の誤認などの主観的な事情はこれに当たらないと解するのが相当である。
ロ 認定事実
 請求人らの提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 調査担当職員は、平成18年11月8日に請求人Eら2名の弟であるLに対して、平成17年に行ったP国内に所有していた土地の譲渡に係る売却代金について平成17年分の所得税調査を開始したところ、平成18年11月16日の同調査において、請求人Eら2名も上記土地の譲渡人に含まれている事実を把握し、その後、請求人Eら2名に対しても平成17年分の所得税調査を開始した。
(ロ) 請求人Eら2名は、上記(イ)のとおり開始された平成17年分の所得税調査を、更正処分等がされた平成19年7月9日まで受け、同調査中であった平成19年2月27日に原処分庁に対し、平成17年分の所得税について、P国内に所有していた土地の譲渡所得に係る外国税額控除を認めてもらいたい旨の嘆願書を提出したが、当該嘆願書には、本件収入に関する記載はなかった。
(ハ) 請求人らは、当審判所に対して、平成17年分の所得税の税務調査時、調査担当職員に平成18年分に支払を受けた本件収入の税務上の取扱いについて質問したことを証する書類として、平成22年1月20日に「M税務署からの調査」と題する書面(以下「本件調査経過表」という。)を、また、平成22年2月12日に業務日誌の写し(以下「本件業務日誌」という。)を提出した。なお、本件調査経過表及び本件業務日誌には、P国内に所有していた土地の譲渡に係る所得税調査の内容についてのみ記載されており、本件収入に係る調査内容及び本件収入の税務上の取扱いについて質問したことをうかがわせる記載はなかった。
(ニ) 請求人Eら2名の関与税理士であるN税理士の当審判所に対する答述によれば、次の事実が認められる。
A N税理士が、上記(ロ)の嘆願書を作成し、原処分庁に提出した。
B N税理士は、平成19年2月27日に嘆願書を提出する時点において、請求人Eら2名から本件収入の説明を受けていなかったため、嘆願書に本件収入について記載しなかった。
C N税理士は、平成19年3月15日に平成18年分の所得税の確定申告書を提出する時点で、請求人Eら2名から本件収入の説明を受けていない。
D N税理士が、請求人Eら2名に本件収入があることを知ったのは、調査担当職員から平成17年分の所得税の修正申告書のしょうようを受けた平成19年6月20日である。
ハ 判断 
(イ) 請求人らは、外国税額控除の制度は、国際的二重課税を排除し公平負担を実現する趣旨と目的から設けられた制度であり、国が居住者の国外所得についても課税権を行使する以上、外国税額控除は義務的な規定であることから、所得税法第95条第5項における手続規定は、厳格に適用されるべきではなく、また、「やむを得ない事情」の解釈については、規定の内容等によって裁量の幅や余地を考慮し判断すべきものであり、本来手続をしていれば負担しなくてよい租税を、単純な手続の暇疵を責めて負担させ、国際的二重課税を強いるのは過酷であるとして、請求人らには「やむを得ない事情」があると認められるべきである旨主張する。
 しかしながら、上記イのとおり、外国税額控除を受けるための記載及び書類の添付をしなかったことについての「やむを得ない事情」については厳格に解するべきであって、客観的にみて納税者本人の責めに帰することができない事情をいうものと解されるところ、請求人らの主張は、納税者本人の手続的な暇疵という主観的な事情に基づくものであり、採用することができない。
(ロ) さらに、請求人らは、利子所得は一般的に源泉分離課税で確定申告が不要だという認識の下で、所得税法第95条第5項における手続をしなかったにすぎず、また、税務当局としても居住者に国外で受け取る利子がある場合には、申告が必要であることや適正な申告をするよう申告指導すべきであるところ、請求人Eら2名が、平成17年分の所得税の税務調査時、調査担当職員に平成18年中に支払を受けた本件収入の税務上の取扱いについて質問したにもかかわらず回答を保留されたため、平成18年分の所得税の法定申告期限を経過したことを理由として、「やむを得ない事情」があるものと認められるべきである旨主張する。
 しかしながら、上記ロの(イ)ないし(ハ)のとおり、調査担当職員がP国内の土地の譲渡に係る売却代金について行った平成17年分の所得税調査の際に、請求人Eら2名が原処分庁に提出した嘆願書並びに請求人らが当審判所に対して提出した本件調査経過表及び本件業務日誌のいずれにおいても、本件収入に関する記載はなく、さらに、上記ロの(ニ)のとおり、N税理士も、平成18年分の所得税の確定申告までに請求人Eら2名から、本件収入について説明を受けていないことからすれば、本件の全証拠からうかがえる諸事情を考慮しても、請求人Eら2名が、平成18年分の法定申告期限までに調査担当職員に対し、本件収入の税務上の取扱いに係る質問をした事実及び当該事実を前提として調査担当職員が請求人Eら2名からの本件収入の税務上の取扱いに係る質問に対して回答を保留したという事実を認めることができない。
 なお、仮に、調査担当職員が法定申告期限までに申告指導をしなかったとしても、我が国が採用している申告納税制度の下においては、納税者には、所得税の確定申告に当たって、納税者自身の責任と判断において、自主的に課税標準、税額等を法令の規定に従って計算し、それに基づいて記載した確定申告書を提出することが求められている以上、請求人らの主張は、自らの所得税法の不知や誤解又は事実の誤認により、本件確定申告書に外国税額控除を受けるための記載及び書類の添付をしなかったという主観的な事情といわざるを得ず、上記イの所得税法第95条第7項の「やむを得ない事情」の解釈に照らし、当該「やむを得ない事情」に当たらないものである。
(ハ) 以上のとおり、請求人らの主張する各事情は所得税法第95条第7項の「やむを得ない事情」には当たらず、請求人らの主張はいずれも採用することができない。

(2) 争点2 国外で支払を受けた銀行の預金利子は、雑所得に該当するか否か。また、当該預金利子について外国税額控除を受けることができない場合に、納付した外国所得税を、国外で支払を受けた預金の利子に係る所得の金額の計算上、必要経費に算入することができるか否か。

イ 法令解釈
(イ) 所得税法第7条第1項第1号の規定により、非永住者以外の居住者は、国内外の源泉地を問わず、すべての所得について所得税が課されるところ、利子所得について定める所得税法第23条第1項を含めた同法第23条ないし第35条に規定されている所得の定義規定において、各所得につき、国内源泉所得か国外源泉所得かによって異なった取扱いをするような定めはない。
 また、所得税法施行令第2条は、所得税法第2条第10号の預貯金とは、銀行その他の金融機関に対する預金及び貯金をいう旨規定し、他方でこの「銀行その他の金融機関」について国内のものに限定されるという定めもなく、同様の業務を行う機関は外国にも存在することからすると、「銀行その他の金融機関」には、国外の銀行その他の金融機関も含まれると解される。
(ロ) 所得税基本通達2−12は、所得税法施行令第2条に規定する「銀行その他の金融機関」の範囲を明らかにしたものであるところ、上記(イ)のとおり、所得税法施行令第2条に規定する「銀行その他の金融機関」には、国外の銀行その他の金融機関も含まれると解されることから、各金融機関の業務を定める「法律」にも、当然に外国の法律が含まれることとなる。したがって、当該通達に定める金融機関の具体的な範囲である「法律の規定により預金又は貯金の受入れの業務を行うことが認められている」金融機関であることにおけるその「法律」については、外国の法律も含まれると解するのが相当である。
 当審判所においても、上記解釈を踏まえた上で、金融機関の範囲を定めた当該通達は相当であると認める。
ロ 認定事実
 K銀行は、P国において、P国の銀行法の規定によりP国の金融監督委員会の認可を受けて銀行業を営む金融機関で、消費寄託契約に基づき、預金又は貯金の受入業務を行うことが認められている市中銀行である。
ハ 判断
(イ) 原処分庁は、本件収入に係る所得は利子所得に該当する旨主張し、これに対し、請求人らは、所得税基本通達2−12は、銀行その他の金融機関とは、法律の規定により預金又は貯金の受入れの業務を行うことが認められている銀行等をいう旨定めているところ、法律の規定とは日本国内法を指し、また、同通達の注書で、金融機関以外のものに対する寄託金につき受ける利子は、原則として雑所得に該当するとしていることから、我が国の法律の施行地外で受け取った銀行の預金利子に係る所得は、利子所得ではなく所得税法第35条に規定する雑所得に該当する旨主張するので検討する。
 上記イのとおり、所得税基本通達2−12の「法律」には外国の法律も含まれ、また、所得税法施行令第2条に規定する「銀行その他の金融機関」には国外の金融機関も含まれるところ、上記ロのとおり、K銀行は、P国において、P国の銀行法の規定により預金又は貯金の受入業務を行うことが認められている市中銀行である。そうすると、上記1の(4)のイのとおり、P国内に所在するK銀行に有する預金も、所得税法第2条第10号に規定する預貯金に該当し、当該預金の利子である本件収入は、同法第23条第1項に規定する預貯金の利子に該当することから、本件収入に係る所得は利子所得に該当する。
 よって、本件収入が雑所得に該当するとの請求人らの主張は採用することができない。
(ロ) さらに、請求人らは、外国所得税について、外国税額控除を選択しない場合に、必要経費等として収入金額から控除することが認められなければ二重課税となってしまうため、外国税額控除の適用をしない場合の本件外国所得税は、雑所得の計算上、必要経費として控除されるべきである旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)のとおり、本件収入は利子所得に該当し、所得税法第23条第2項の規定により、利子所得の金額は、その年中の利子等の収入金額とするとされており、所得税法上の利子所得の金額の計算上、そもそも必要経費を控除する旨の規定はなく、また、外国税額控除対象外の外国所得税額を必要経費の対象とする旨の規定もない。したがって、所得金額の計算に当たって、その減算を認めることには法令上の根拠がないから、請求人らの主張する諸点を考慮しても、本件外国所得税につき、必要経費等として控除することはできない。
 よって、請求人らの主張は採用することができない。

(3) 過少申告加算税の賦課決定処分を含め、原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない

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