(平22.12.16裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、原処分庁が、鉄鋼製品の輸出業を営んでいた審査請求人(以下「請求人」という。)に対し、清算結了登記後に消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分を行い、その約3か月後に当該各更正処分等を取り消し、更にその約2か月後に、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第7項に規定する帳簿及び請求書等を保存しない場合に該当するため同条第1項に規定する課税仕入れに係る消費税額の控除(以下「仕入税額控除」という。)を適用することは認められないとして、消費税等について再度各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、仕入税額控除の適用要件が存在しないことについては争わないものの、原処分庁は消費税等の更正処分等を自ら取り消した処分の効力に拘束されるので、再度更正処分等をすることはできないなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案であり、争点は次の2点である。

争点1 原処分庁は、消費税等の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分を自ら取り消した処分の効力に拘束されずに原処分を行うことができるか否か。

争点2 清算結了登記後にされた原処分は、無効であるか否か。

(2) 審査請求に至る経緯

 審査請求(平成22年2月27日請求)に至る経緯は次のとおりである。
イ 請求人は、原処分庁に対して、平成18年7月1日から平成19年6月30日まで及び平成19年7月1日から平成20年6月30日までの各課税期間(以下、順次「平成19年6月課税期間」、「平成20年6月課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税等について、別表の「確定申告欄」のとおりの各確定申告書を法定申告期限内にそれぞれ提出した(以下、当該各確定申告書に係る申告を「本件各申告」という。)。
ロ 原処分庁は、所属の職員の調査に基づき平成21年6月24日付で本件各課税期間の消費税等について、別表の「更正処分等1」の各「控除不足還付税額」欄及び各「譲渡割額(還付額)」のとおり、還付税額を減少させる旨の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分(以上の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分を併せて、以下「第1次更正処分等」という。)をした。
ハ 請求人は、平成21年8月10日に第1次更正処分等を不服として異議申立てをした。
ニ 原処分庁は、平成21年10月1日付で第1次更正処分等を取り消す処分(以下「本件取消処分」という。)を行い、同月7日付で上記ハの異議申立てを却下する旨の異議決定をした。
ホ 原処分庁は、請求人に対し、平成21年12月7日付で本件各課税期間の消費税等について、別表の「更正処分等2」の各「控除不足還付税額」欄及び各「譲渡割額(還付額)」のとおり、還付税額を○○○○円とする旨の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以上の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を併せて、以下「第2次更正処分等」という。)をした。
ヘ 請求人は、平成21年12月25日に第2次更正処分等を不服として異議申立てをしたが、原処分庁は平成22年2月5日付で当該異議申立てを棄却する旨の異議決定をした。

(3) 関係法令

イ 国税通則法関係
(イ) 国税通則法(以下「通則法」という。)第16条《国税についての納付すべき税額の確定の方式》第1項は、国税についての納付すべき税額の確定の手続については、次の各号に掲げるいずれかの方式によるものとし、これらの方式の内容は、当該各号に掲げるところによる旨規定している。
A 申告納税方式 納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とし、その申告がない場合又はその申告に係る税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかった場合その他当該税額が税務署長の調査したところと異なる場合に限り、税務署長の処分により確定する方式をいう。(第1号)
B 賦課課税方式 納付すべき税額がもっぱら税務署長の処分により確定する方式をいう。(第2号)
(ロ) 通則法第24条《更正》は、税務署長は、納税申告書の提出があった場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する旨規定している。
(ハ) 通則法第32条《賦課決定》第1項は、税務署長は、賦課課税方式による国税のうち、加算税については、その調査により、その計算の基礎となる税額及び納付すべき税額を決定する旨規定している。
ロ 消費税法関係
(イ) 消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項は、事業者が、国内において行う課税仕入れについては、課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額を控除する旨規定し、同条第7項は、同条第1項の規定する課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れの税額については、適用しない旨、ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかったことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない旨規定している。
(ロ) 消費税法第62条《当該職員の質問検査権》第1項は、事業者の納税地を所轄する税務署の当該職員は、消費税に関する調査について必要があるときは、次に掲げる者に質問し、又はその者の事業に関する帳簿書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。)その他の物件を検査することができる旨規定している。
A 納税義務がある者、納税義務があると認められる者又は同法第46条《還付を受けるための申告》第1項の規定による申告書を提出した者(第1号)
B 前号に掲げる者に金銭の支払若しくは資産の譲渡等をする義務があると認められる者又は同号に掲げる者から金銭の支払若しくは資産の譲渡等を受ける権利があると認められる者(第2号)
ハ 会社法関係
(イ) 会社法第475条《清算の開始原因》は、解散した場合は同法第9章の定めるところにより清算をしなければならない旨規定し、同法第476条《清算株式会社の能力》は、前条の規定により清算をする株式会社(以下「清算株式会社」という。)は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす旨規定している。
(ロ) 会社法第481条《清算人の職務》は、清算人は職務として、現務の結了、債権の取立て、債務の弁済及び残余財産の分配を行う旨規定している。
(ハ) 会社法第483条《清算株式会社の代表》第1項は、清算人は清算株式会社を代表するが、他に代表清算人その他清算株式会社を代表する者を定めた場合はこの限りではない旨規定している。
(ニ) 会社法第507条第1項は、清算株式会社は、清算事務が終了したときは、遅滞なく、法務省令で定めるところにより、決算報告を作成しなければならない旨規定し、同条第3項は、清算人は、決算報告を株主総会に提出し、又は提供し、その承認を受けなければならない旨規定している。
(ホ) 会社法第508条第1項は、清算人は清算株式会社の本店の所在地における清算結了の登記の時から10年間、清算株式会社の帳簿並びにその事業及び清算に関する重要な資料を保存しなければならない旨規定している。

(4) 基礎事実

 以下の事実については、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人について
 請求人は、鉄鋼製品の輸出を業とし、本件各課税期間の消費税につき、小規模事業者に係る納税義務の免除及び中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例(いわゆる簡易課税制度)の適用を受けない事業者であった。
ロ 請求人の解散及び清算結了に関する決議等について
(イ) 請求人の平成20年9月○日の臨時株主総会において、請求人を解散すること及び当時の代表取締役であったEのみを清算人として選任する旨決議された。なお、請求人について、同月○日付で解散並びにEを清算人及び代表清算人とする旨の登記がされた。
(ロ) 請求人の平成20年11月○日の臨時株主総会において、清算事務が終了したとして作成された同日付の清算事務報告書(以下「本件清算事務報告書」という。)及び清算貸借対照表(以下「本件清算貸借対照表」という。)の承認決議がされた。なお、当該臨時株主総会決議に基づき、請求人について、平成20年11月○日付で清算結了の登記がされた。
ハ 原処分である第2次更正処分等について
(イ) 原処分庁は、本件取消処分後、再度、本件各課税期間の消費税等に係る調査を行い、請求人の清算人に対して消費税の課税仕入れに係る帳簿及び請求書等の提示を求めたところ、同人は、これらの保存はない旨申述し、また、これらの提示もなかったことから、消費税法第30条第7項に規定する「帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当するものとして、同条第1項に規定する仕入税額控除の適用について、その全部を認めない旨の第2次更正処分等を行った。なお、第2次更正処分等は、いずれも通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第1項及び第4項に規定する更正及び加算税の賦課決定(以下、更正と併せて「更正等」という。)をすることができる期間内(以下、当該期間を「除斥期間」という。)にされている。
(ロ) 請求人は、本件審査請求において第2次更正処分等の全部の取消しを求めているが、消費税法第30条第7項に規定する「帳簿及び請求書等を保存しない」ことについては争っていない。

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2 主張及び判断等

(1) 争点1 原処分庁は、第1次更正処分等を自ら取り消した本件取消処分の効力に拘束されずに原処分である第2次更正処分等を行うことができるか否か。

イ 主張

原処分庁 請求人
 第1次更正処分等及び原処分である第2次更正処分等は、いずれも本件各課税期間に係る消費税等の処分であるが、それぞれ独立した処分である。また、原処分である第2次更正処分等は、本件取消処分の後、第1次更正処分等とは異なる理由で行った別の新たな処分であることなどから、違法又は不当な処分ではない。  第1次更正処分等と同一税目及び同一課税期間についてされた原処分である第2次更正処分等は、次の理由から違法又は不当であり、取り消すべきである。
 原処分庁は、調査を尽くした結果として、行政制裁の要素をも含む第1次更正処分等を、本件取消処分によって無効にし、その効力をそ及的に消滅させたのであるから、当事者である原処分庁を含む関係行政庁は、本件取消処分の効力に拘束され、その内容を尊重し、その趣旨に従って行動すべきことを義務付けられるものと解される。
 また、被処分者に対し、行政処分を取り消してもなお行政処分を何回も課すことができるとすれば、被処分者が際限なく不利な状況に追い込まれる危険にさらされることになるから、禁じられるべきである。

ロ 判断
(イ) 法令解釈
 通則法は更正等の処分について、同法第24条において、税務署長は納税申告書に記載された課税標準等又は税額等が調査したところと異なるときは、その調査により当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する旨規定し、同法第32条第1項は、税務署長は加算税については、その調査によりその計算の基礎となる税額及び納付すべき税額を決定する旨規定している。そして、原処分庁は、更正等の処分に瑕疵があると認めるときは、除斥期間内であれば、当該処分に対して相手方が不服申立てをしている場合であっても、当該処分を取り消して、再度更正等の処分をすることが許されると解される。
(ロ) 認定事実
A 原処分庁は、平成20年9月10日から請求人の本件各課税期間の消費税等に係る調査を開始し、その調査の結果、請求人の本件各申告書における仕入税額控除の適用について、仕入額の一部は架空仕入れに係るものであること及び当該架空仕入れに関して仮装があることなどを理由として、その一部を認めない旨の第1次更正処分等を行った。
B 原処分庁は、請求人から第1次更正処分等に係る異議申立てがされた後に、第1次更正処分等の内容を検討し、取消事由となる瑕疵があるとして本件取消処分を行った。
(ハ) 判断
 請求人は、取り消された第1次更正処分等と同一税目かつ同一課税期間についてされた原処分である第2次更正処分等は違法又は不当である旨主張するが、その法的根拠が明らかでないところ、上記イの請求人の主張の内容にかんがみると、請求人は、原処分庁は本件取消処分の効力に拘束されるのでその後の更正処分はできないこと、本件取消処分後に再度更正処分を行うことは処分権限の濫用であることを理由として、第2次更正処分等が違法又は不当であると主張していると解される。そこで、以下検討する。
A 本件取消処分と第2次更正処分等について
 上記(ロ)及び上記1の(4)のハの(イ)によれば、原処分庁は請求人に対し、架空仕入れに係る仕入税額控除の適用を認めないとする第1次更正処分等を行ったものの、その後、本件取消処分を行い、消費税の課税仕入れに係る帳簿及び請求書等の保存がないという、第1次更正処分等とは別の理由の下、仕入税額控除の全部が適用できないとする第2次更正処分等を行ったことが認められる。
 そして、更正等の処分を行った原処分庁が、当該処分を自ら取り消すという取消処分は、法律関係を元に戻すという行政処分にすぎないのであるから、当該取消処分の効力はその後の更正等の処分をできないとする拘束力を有するものではなく、また、原処分庁が更正等の処分を取り消して再度更正等の処分をすることができないとする法令上の規定もない。したがって、上記(イ)のとおり、請求人が不服申立てをし、その手続中であっても、原処分庁は、更正等の処分に取消事由となる瑕疵があると認めるときは、当該処分を取り消し、また、除斥期間内は再度更正等の処分をすることが許されるのであるから、本件取消処分を理由に第2次更正処分等が違法又は不当であるとはいえない。
 さらに、請求人は、行政処分を取り消してもなお行政処分を何回も課すことができるとすれば、被処分者が際限なく不利な状況に追い込まれる危険にさらされることになるから禁じられるべきである旨主張するが、更正等の処分に関しては除斥期間が法定されていることから、原処分庁が同一の税目及び課税期間において再度更正等の処分を行っても、それによって納税者が際限なく不利な状況に追い込まれるとは認められない上、除斥期間内においても適法な処分をすることができないとすると課税の公平の見地にもとることになるから、請求人の上記主張は相当ではない。
B 第2次更正処分等の適法性について
 第2次更正処分等は、上記1の(4)のハの(イ)のとおり、原処分庁が消費税の課税仕入れに係る帳簿及び請求書等の提示を求めたところ、請求人の清算人はこれらの保存がない旨申述し、これらの提示も行わなかったため、消費税法第30条第7項に規定する「帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当するものとして、同条第1項に規定する仕入税額控除の適用についてその全部が認められなかったものである。
 そして、請求人の清算人は、上記1の(4)のハの(ロ)のとおり、当審査請求においても、仕入税額控除の適用要件については争わず、帳簿及び請求書等の保存があること又は当該保存がない特段の事情などについての主張・立証を全くしない。
 そうすると、除斥期間内になされた第2次更正処分等は、その処分内容に違法性は認められず、通則法及び消費税法の規定に照らして適正な処分である。
C 結論
 上記A及びBのとおり、本件取消処分は、第1次更正処分等を取り消して法律関係を元に戻したにすぎず、第2次更正処分等ができないとする拘束力を有するものではなく、また、第2次更正処分等は、除斥期間内になされた適正な処分であると認められる。したがって、第2次更正処分等は、本件取消処分後になされたことをもって違法又は不当であるとは認められず、また、処分権限の濫用に当たるとも認めることはできないので、請求人の主張はいずれも採用することができない。

(2) 争点2 清算結了登記後にされた原処分である第2次更正処分等は、無効であるか否か。

イ 主張

原処分庁 請求人
 清算結了の登記は、その事実を公示する効力を有するのみであり、法人格を消滅させる効力はないため、納税義務を履行しておらず租税債務がある等の事実上の清算結了がなされていない法人は、清算結了の登記がなされていたとしても、清算のために必要な範囲において存続する。
 したがって、請求人については、清算結了の登記後においても、原処分である第2次更正処分等に係る租税債務が存在していることから、事実上の清算結了がなされておらず、租税債務の納付に係る清算のために必要な範囲において、請求人は存続していると認められる。
 原処分である第2次更正処分等は、清算結了登記が行われ、法人格が消滅した実在しない清算株式会社を対象としたものであり、税務調査に責任を持って対応できる者がいない状況で調査がなされ、公平公正の観点からみても調査自体に疑問があるので無効である。
 原処分庁の主張は一般論にとどまるものにすぎず、当該争点に対する適切な主張になっていない。

ロ 判断
(イ) 法令解釈
 株式会社は、その解散決議によって直ちに法人格を失って消滅するものでないことはもとより、会社法第476条《清算株式会社の能力》は、清算株式会社は清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす旨規定している。また、清算結了の登記は清算結了の事実を公示する効力を有しているにすぎず創設的効力はない。したがって、清算株式会社が会社法第507条の規定するところに従い清算事務が終了したとして決算報告を作成し、清算人がこれを株主総会に提出してその承認決議を得、あるいは清算結了の登記がなされても、清算株式会社の全資産を処分するとともにすべての負債を支払い、残余財産があるときはこれを株主に分配し終わるなどして、その清算事務が終了しない限り、清算株式会社は、清算の目的の範囲内においてはなお存続し、その法人格は消滅しないものというべきである。なお、上記負債の中には、清算株式会社に課されるべき国税又は納付すべき国税債務などの租税債務が含まれるものと解される。
(ロ) 判断
 請求人は、原処分である第2次更正処分等は清算結了登記が行われ、法人格が消滅した実在しない清算株式会社を対象としたものであり、税務調査に責任を持って対応できる者がいない状況で調査がなされ、公平公正の観点からみても調査自体に疑問があり、よって、第2次更正処分等は無効である旨を主張するので、以下検討する。
A 請求人の法人格の存否について
 上記(イ)のとおり、清算株式会社に課されるべき国税又は納付すべき国税債務などの租税債務が存在する場合は、清算事務はいまだ終了しておらず、清算の目的の範囲内において清算株式会社はなお存続し、法人格は消滅していないことになる。そして、通則法第16条第1項は、申告納税方式を採る国税は、納付すべき税額あるいは還付される税額が納税者のする申告によって確定することを原則とし、その申告に係る税額の計算が国税に関する法律に従っていなかった場合その他当該税額が税務署長等の調査したところと異なる場合には、税務署長等の処分(更正、決定、再更正)によって確定する旨規定している。また、上記1の(4)のハの(イ)のとおり、原処分庁は請求人に対し、本件各課税期間の消費税等に係る仕入税額控除を適用することができないとして第2次更正処分等を行っていること、及び、上記(1)のロの(ハ)のBで判断したとおり、第2次更正処分等自体に違法又は不当は認められないことからすると、請求人の本件各申告に係る税額については、第2次更正処分等がされたことにより確定したことになり、本件各申告において確定したものとはいえなくなったというべきである。
 そうすると、請求人には、清算結了登記が経由された後においても、第2次更正処分等によって課されるべき国税又は納付すべき国税債務などの租税債務が存在し、その結果、請求人の清算事務は清算事務報告書が臨時株主総会で承認され清算結了登記がされた時点ではいまだ終了していないことになり、これらのことを上記(イ)の法令解釈、すなわち、清算結了登記は清算結了の事実を公示する効力を有しているに過ぎず、法人格を消滅させる効力を有しているものではないこと及び清算株式会社は清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなされることに照らしてみると、清算結了登記後も清算株式会社である請求人はその清算の目的の範囲内においてなお存続していると認めるのが相当である。
 したがって、請求人の主張は採用することができない。
B 税務調査に対応できる責任者の存在について
 請求人は、請求人が清算結了登記が行われ、法人格が消滅した実在しない清算株式会社であり、税務調査に責任を持って対応できる者がいない状況で調査がなされ、公平公正の観点からみても調査自体に疑問があると主張する。
 しかしながら、上記Aのとおり、請求人は清算結了登記後においても清算の目的の範囲内においてなお存続し、その法人格は消滅していないと認められること、上記1の(3)のハの(ロ)のとおり、清算人の職務は現務の完了、債権の取立て、債務の弁済及び残余財産の分配とされ、清算事務が終了していない以上請求人の清算人の職務も完了していないと認められること、上記1の(3)のハの(ホ)のとおり、清算人は清算結了登記の時から10年間は清算株式会社の帳簿並びにその事業及び清算に関する重要な資料を保存しなければならないとされていること、上記1の(3)のハの(ハ)及び上記1の(4)のロの(イ)のとおり、請求人の清算人は代表清算人として登記されており清算株式会社を代表する地位にあることを併せ考えると、請求人の清算人は請求人に対する税務調査にも責任を持って対応できる者であると認められる。そして、原処分庁は、上記1の(4)のハの(イ)のとおり、請求人の清算人に対して消費税法第62条第1項に規定する質問検査権を行使して調査を行い第2次更正処分等をしたのであるから、請求人の主張は採用することができない。
C 結論
 以上、第2次更正処分等の処分時において、請求人の法人格は存在していたと認められ、他の全証拠によっても、第2次更正処分等が無効であるとは認められない。

(3) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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