(平成23年2月16日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が土地の所有権移転登記を受けるに当たり納付した登録免許税の額について、原処分庁が納付不足額があるとして納税告知処分を行ったのに対し、請求人が法令の規定に基づき算出した登録免許税の額を納付済みであることから納付不足額はないなどとしてその全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、別表1の順号1から14までの各土地(以下「本件各土地」という。)について、登記申請書に登記の目的を所有権移転、登記原因を平成21年6月1日売買、登記権利者を請求人、登記義務者をG社(所在地:d市e町○−○)、登録免許税の課税価格を○○○○円、登録免許税の額を○○○○円と記載し、その税額に相当する収入印紙をちょう付の上、これを同月○日にH法務局J出張所に提出し、同日付で所有権移転の各登記(以下「本件各登記」という。)を受けた。
ロ 原処分庁は、本件各登記に係る登録免許税の額に納付不足額が○○○○円あるとして、当該納付不足額を徴収するために、平成21年9月14日付で、請求人に対し、国税通則法第36条《納税の告知》第1項第4号の規定に基づき、登録免許税の納税の告知(以下「本件当初告知処分」という。)をした。
ハ 請求人は、本件当初告知処分に不服があるとして、平成21年11月13日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成22年1月21日付で棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の本件当初告知処分に不服があるとして、平成22年2月20日に審査請求をした。
ホ 原処分庁は、本件各登記に係る登録免許税の納付不足額は○○○○円であるとして、平成23年1月20日付で、登録免許税の納税告知書(訂正用)により、請求人に対し減額の通知をした(以下、減額された後の本件当初告知処分を「本件告知処分」という。)。

(3) 関係法令の要旨

イ 国税通則法第15条《納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定》第1項は、国税を納付する義務(以下「納税義務」という。)が成立する場合には、その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する国税を除き、国税に関する法律の定める手続により、その国税についての納付すべき税額が確定されるものとする旨規定し、登録免許税について、同条第2項第12号は、登記、登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定又は技能証明の時に納税義務が成立する旨、同条第3項第5号は、納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する旨それぞれ規定している。
ロ 国税通則法第36条第1項第4号は、税務署長は、国税に関する法律の規定により法定納期限までに納付されなかった登録免許税を徴収しようとするときは、納税の告知をしなければならない旨規定している。
ハ 登録免許税法第9条《課税標準及び税率》は、登録免許税の課税標準及び税率は、同法に別段の定めがある場合を除くほか、登記等の区分に応じ、それぞれ同法別表第一の課税標準欄に掲げる金額又は数量及び同表の税率欄に掲げる割合又は金額による旨規定し、同法別表第一第1号は、不動産の所有権の移転の登記について、課税標準は不動産の価額による旨規定している。
ニ 登録免許税法第10条《不動産等の価額》第1項は、同法別表第一第1号に掲げる不動産の登記の場合における登録免許税の課税標準たる不動産の価額は、当該登記の時における当該不動産の価額による旨規定している。
ホ 登録免許税法第28条《納付不足額の通知》第1項は、登記機関は、登録免許税の納期限後において登記等を受けた者が当該登記等につき納付すべき登録免許税の額の全部又は一部を納付していない事実を知ったときは、遅滞なく、当該登記等を受けた者の納税地の所轄税務署長に対し、その旨及び財務省令で定める事項を通知しなければならない旨規定している。
ヘ 登録免許税法第29条《税務署長による徴収》第1項は、税務署長は、同法第28条第1項の通知を受けた場合には、当該通知に係る納付していない登録免許税を当該通知に係る登記等を受けた者から徴収する旨規定している。
ト 登録免許税法第31条《過誤納金の還付等》第1項第3号は、登記機関は、登記等を受けた者が過大に登録免許税を納付したときは、遅滞なく、当該過大に納付した登録免許税の額その他政令で定める事項を登記等を受けた者の納税地の所轄税務署長に通知しなければならない旨規定している。
チ 登録免許税法附則第7条《不動産登記に係る不動産価額の特例》は、登録免許税法別表第一第1号に掲げる不動産の登記の場合における課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該登記の申請の日の属する年の前年12月31日現在又は当該申請の日の属する年の1月1日現在において地方税法第341条《固定資産税に関する用語の意義》第9号に掲げる固定資産課税台帳(以下「課税台帳」という。)に登録された当該不動産の価格(以下「台帳価格」という。)を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定している。
リ 登録免許税法附則第7条に規定する政令で定める価額について、登録免許税法施行令附則第3項前段は、台帳価格のある不動産の価額は、次に掲げる当該不動産の登記の申請の日の属する日の区分に応じて計算した金額に相当する価額とし、また、同項後段は、台帳価格のない不動産の価額は、当該不動産の登記の申請の日において当該不動産に類似する不動産で台帳価格のあるものの次に掲げる当該申請の日の区分に応じて計算した金額を基礎として当該登記に係る登記機関が認定した価額とする旨規定している。
(イ) 登記の申請の日がその年の1月1日から3月31日までの期間内であるものは、その年の前年12月31日現在において課税台帳に登録された当該不動産の価格に100分の100を乗じて計算した金額
(ロ) 登記の申請の日がその年の4月1日から12月31日までの期間内であるものは、その年の1月1日現在において課税台帳に登録された当該不動産の価格に100分の100を乗じて計算した金額

(4) 基礎事実

 次の事実については、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 本件各土地のうち、別表1の順号3、5、6及び14の各土地は、平成21年2月16日の分筆登記により分筆された土地であり、別表1の順号1、2、4及び7から13までの各土地は、平成21年2月16日の分筆登記により分筆された複数の土地が同年5月14日の合筆登記により合筆された土地である。そして、本件各土地の平成21年2月16日の分筆登記前の各土地(d市f町○−○、○−○、○−○、○−○、○−○、○−○、○−○、○−○及び○−○)の平成21年度の台帳価格(以下「本件分筆前台帳価格」という。)は、いずれも1平方メートル当たり4,235円で、課税地目は雑種地である。
ロ 本件各土地のうち、別表1の順号1、2、4から13までの各土地(以下、これらを併せて「本件12筆土地」といい、順号1の土地を「本件第1土地」、順号2の土地を「本件第2土地」と表記し、他の土地も同様に表記する。)については、平成21年3月9日に原野又は雑種地から宅地への地目変更の登記が行われたが、別表1の順号3の土地(以下「本件第3土地」という。)及び同14の土地(以下「本件第14土地」という。)については、これらの土地の分筆前の土地を含め平成21年1月1日から本件各登記がされた同年6月○日までの間に地目変更等の登記は行われていない。
ハ 本件各登記がされた平成21年6月○日における本件各土地の登記簿上の地目は、別表1の「登記地目」欄のとおりである。
ニ 請求人は、本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額について、本件分筆前台帳価格の1平方メートル当たりの単価に本件各土地のそれぞれの地積を乗じて、別表1の「土地の価額」の「請求人申請額」欄のとおり、合計で○○○○円と算出した。
ホ 原処分庁は、本件当初告知処分においては本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額が○○○○円、税額が○○○○円、未納税額が○○○○円であるとしたが、本件告知処分においては登録免許税の課税標準の額が○○○○円、税額が○○○○円、未納税額が○○○○円であると変更した。

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2 争点

争点1 本件当初告知処分の手続に違法又は不当があるか否か。

争点2 本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額は、後記本件登記官の認定した額によるべきか否か。

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3 主張及び判断

(1) 争点1について

イ 主張

原処分庁 請求人
 H法務局J出張所登記官(以下「本件登記官」という。)は、請求人が本件各登記に係る登録免許税の額の一部を納付していない事実を知ったことから、登録免許税法第28条第1項の規定に基づき、平成21年9月2日付で、原処分庁に対し課税標準の額の正当額及び登録免許税の額の納付不足額を通知した。
 原処分庁は当該通知に基づき本件当初告知処分を行っており、違法な点はない。
 本件登記官は、請求人に対し、本件各登記に係る登録免許税の納付不足額について法令の規定の説明を行わず、追加納付を依頼する旨の電話連絡等を行うのみで、文書による通知を一切行っていない。
 このような手続のもとで原処分庁が行った本件当初告知処分は、正当なものとは思われない。

ロ 判断
(イ) 法令解釈
 登記について課される登録免許税の納税義務は、国税通則法第15条第2項第12号及び第3項第5号の規定によりその登記の時に成立し、その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定するものであり、申告納税方式による場合の納税者の税額の申告やこれを補正するための税務署長等の処分(更正、決定)、賦課課税方式による場合の税務署長等の処分(賦課決定)なくして、その税額が法令の定めるところに従って当然に、いわば自動的に確定される。したがって、登記を受ける者は、自動的に確定した税額を法令に基づいて自ら算出し、これを国に納付すべきこととなるのであるが、それが納期限までに納付されないときは、国税通則法第36条第1項第4号の規定により、税務署長はその登録免許税を徴収するために納税の告知をしなければならず、当該登記を受ける者に対し、当該登記と同時に確定した税額のうち未納となっている登録免許税がいくらであるかを示すのがこの納税の告知である。
(ロ) 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 本件登記官は、登録免許税法附則第7条及び登録免許税法施行令附則第3項後段の規定に基づき、本件各土地の価額を別表1の「土地の価額」の「登記官認定額」の「変更前」欄のとおり認定し、本件各登記に係る登録免許税の額について、平成21年9月2日付で、登録免許税法第28条第1項に規定する通知として、次の内容の納付不足額通知書を原処分庁に送付した。
(A) 課税標準の額

a 申請書記載額○○○○円
b 正当額○○○○円

(B) 登録免許税の額

a 納付額○○○○円
b 正当額○○○○円
c 未納金額○○○○円

B 原処分庁は、上記Aの通知を受け、登録免許税法第29条第1項の規定に基づき未納金額を徴収するために、請求人に対し本件当初告知処分を行った。
(ハ) そこで、上記(ロ)の各事実を上記(イ)に照らしてみると、次のとおりである。
A 本件登記官は、上記(ロ)のAのとおり、請求人が納付すべき登録免許税の額の一部を納付していない事実を知ったことから、原処分庁に対し、登録免許税法第28条第1項に規定する通知をし、それを受けた原処分庁が、上記(ロ)のBのとおり、登録免許税法第29条第1項の規定に基づき納付不足額を徴収するために、国税通則法第36条第1項第4号の規定に基づき、請求人に対して本件当初告知処分を行ったものであり、本件当初告知処分の手続に違法又は不当は認められない。
B ところで、請求人は、本件当初告知処分について、本件登記官が本件各登記に係る登録免許税の納付不足額について法令の規定の説明を行わず、追加納付を依頼する旨の電話連絡等を行うのみで、文書による通知を一切行っておらず、このような手続のもとで原処分庁が行った本件当初告知処分は、正当なものとは思われない旨主張する。
 しかしながら、登録免許税は、上記(イ)のとおり、納税義務が成立すると同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定するものであり、本件当初告知処分は、当該納税義務の成立と同時に確定した税額のうち未納となっている登録免許税がいくらであるかを請求人に示したものであって、税額を確定するものではない。
 また、本件登記官が登録免許税法第28条第1項の規定に基づき原処分庁に通知をする際に、登記を受ける者に対する何らかの通知や説明を義務付ける旨の法令上の規定はないことから、たとえ本件登記官が請求人に対して何ら通知をせず、納付不足額が生じた法的根拠を明確に説明しなかったとしても、原処分庁が行った本件当初告知処分の手続自体に違法又は不当があることにはならず、請求人の主張は採用できない。

(2) 争点2について

イ 主張

原処分庁 請求人
 本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額は、次の理由から、本件登記官が認定した額によるべきである。  本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額は、次の理由から、本件分筆前台帳価格を基に算定した価額によるべきであり、本件登記官の認定した額によるべきではない。
(イ) 本件各土地はいずれも平成21年2月16日の分筆により生じた土地であり、平成21年度の台帳価格はない。 (イ) 本件各土地はいずれも平成21年2月16日の分筆により生じた土地であるが、当該分筆前の各土地については、d市による公的な評価額として本件分筆前台帳価格がある。
(ロ) 本件登記官は、登録免許税法附則第7条及び登録免許税法施行令附則第3項後段の規定に基づき、課税標準の額を別表1の「土地の価額」の「登記官認定額」の「変更後」欄のとおり、適切に認定している。 (ロ) 請求人は、登録免許税法附則第7条及び登録免許税法施行令附則第3項前段の規定に基づき、別表1の「土地の価額」の「請求人申請額」欄のとおり、本件分筆前台帳価格を基に適正に課税標準の額を算定しており、その課税標準の額を基に計算した納付すべき登録免許税の額を納付し、本件各登記が完了している。
(ハ) 本件登記官が認定した課税標準の額は次のとおりである。
A 本件各土地のうち本件12筆土地は、平成21年3月9日に原野又は雑種地から宅地への地目変更の登記が行われていたことから、本件各土地の近隣のd市f町○−○に所在する地積846.35平方メートルの宅地(以下「本件比準宅地」という。)を選定し、本件比準宅地の平成21年度の台帳価格である1平方メートル当たりの単価13,396円に本件12筆土地のそれぞれの地積を乗じて不動産の価額を算定した。
B 本件第3土地及び本件第14土地については、これらの土地の分筆前の土地を含め平成21年1月1日から本件各登記がされた同年6月○日までの間に地目変更の登記は行われていないことから、本件分筆前台帳価格の1平方メートル当たりの単価4,235円にそれぞれの地積を乗じて、不動産の価額を算定した。
C 上記A及びBの不動産の価額を合計し、本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額を○○○○円と認定した。
(ハ) 請求人が算定した課税標準の額は次のとおりである。
A 本件分筆前台帳価格の1平方メートル当たりの単価4,235円に本件各土地のそれぞれの地積を乗じて、不動産の価額を算定した。
B 上記Aで算定した不動産の価額を合計し、課税標準の額を○○○○円と算定した。

ロ 判断
(イ) 法令解釈
A 登録免許税法第10条第1項は、登録免許税の課税標準について、登記の時における不動産の価額である旨規定するところ、当該登記の時における当該不動産の価額とは、当該登記の時における当該不動産の客観的交換価値、すなわち時価と解されている。
B 登録免許税法附則第7条は、登録免許税の課税標準たる不動産の価額について、当分の間、台帳価格によることができる旨規定しているが、これは、登録免許税が、その納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する自動確定方式による国税で、流通税的な性格を有することから、このような性格を持つ登録免許税において、登記機関が、課税標準たる不動産の登記の時における時価をその都度判断することは容易ではなく、登記の迅速処理という点から問題が生じるため、登記事務の迅速化等を考慮して規定したものと解される。
C 台帳価格のない不動産については、原則として登録免許税法施行令附則第3項後段の規定により、当該不動産に類似する不動産の台帳価格を基礎として、登記機関がその価額を認定することとされているが、当該規定の趣旨は、台帳価格のない不動産に係る登録免許税の課税標準の額について、その近傍類似の不動産に比準して登記機関が認定することにより、当該不動産の台帳価格との均衡を保つ必要があることによるものと解される。
D また、登記機関が、登記等を受けた者の納付した登録免許税の額に過不足がある事実を知った場合には、上記1の(3)のホ及びトのとおり、当該登記等を受けた者の納税地の所轄税務署長に対しその旨を通知しなければならないことから、税務署長は、登記等を受けた者の納付した登録免許税の額に過不足があるときは、登録免許税の納期限後においても、その不足額を徴収し又は過大に納付された額を還付することができるものと解される。
(ロ) 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 本件各土地は、上記1の(4)のイのとおり、平成21年2月16日の分筆登記により分筆された土地又は同日の分筆登記により分筆された複数の土地が同年5月14日の合筆登記により合筆された土地であることから、平成21年度の課税台帳には登録がなく、同年度の台帳価格は存在しない。
B 本件登記官は、登録免許税法附則第7条及び登録免許税法施行令附則第3項後段の規定に基づき、本件第14土地の価額を別表1の「土地の価額」の「登記官認定額」の「変更後」欄のとおり変更し、本件各登記に係る登録免許税の額について、平成22年7月2日付で、登録免許税法第28条第1項に規定する通知として、次の内容の納付不足額通知書を原処分庁に送付した。
(A) 課税標準の額

a 申請書記載額○○○○円
b 正当額○○○○円

(B) 登録免許税の額

a 納付額○○○○円
b 正当額○○○○円
c 未納金額○○○○円

C 原処分庁は、上記Bの通知を受け、平成23年1月20日付で、登録免許税の納税告知書(訂正用)により、請求人に対し減額の通知をした。
D 本件登記官が認定した本件第3土地及び本件第14土地の価額並びにその算定方法については、次のとおりである。
(A) 本件第3土地の価額については、本件分筆前台帳価格の1平方メートル当たりの単価4,235円に地積○○平方メートルを乗じて○○○○円と認定しており、本件登記官の認定額と請求人の申請額が同額である。
(B) 本件第14土地の価額については、本件分筆前台帳価格の1平方メートル当たりの単価4,235円に地積○○平方メートルを乗じて○○○○円と認定している。
 なお、請求人の申請額○○○○円は、182円の計算誤りがあり、それを考慮すると、本件登記官の認定額と同額である。
E 本件登記官が認定した本件12筆土地の価額及びその算定方法については、次のとおりである。
(A) 本件12筆土地は、d市f町○−○の街区符号6を付された街区(以下「6街区」という。)内及び平成20年11月28日付d市指令建都指宅第○○○○号の開発行為許可通知書に記載された開発区域内に所在する分譲用宅地である。
(B) 本件登記官は、本件12筆土地の近傍類似の不動産として本件比準宅地を選定し、本件比準宅地に係る平成21年度の台帳価格の1平方メートル当たりの単価13,396円に本件12筆土地のそれぞれの地積を乗じて、別表1の「土地の価額」の「登記官認定額」の「変更後」欄のとおり認定した。
(C) 本件比準宅地は、まる16街区内に所在し、別紙の地図のとおり、本件12筆土地のおおむね北から北西に近接して位置しており、まる2都市計画法上は第一種住居地域内に所在し、建ぺい率は60%、容積率は200%であり、まる3底辺と高さが共に約40メートルの三角形状の地積846.35平方メートルのほぼ平坦な宅地である。
 そして、本件比準宅地の平成21年度の台帳価格は、6街区に隣接する街区符号7の街区内において状類番号3380、幅員10メートルの公道に付された平成21年度の固定資産税の路線価(1平方メートル当たり22,000円)に、奥行価格補正率0.80、奥行長大補正率0.90及びがけ地補正率0.85の連乗値0.612並びに地価の下落に伴う修正率0.995を乗じて、1平方メートル当たり13,396円と算出されている。
(ハ) そこで、上記(ロ)の各事実を上記(イ)に照らしてみると、次のとおりである。
A 本件各土地については、上記(ロ)のAのとおり、本件各登記がされた平成21年6月○日において平成21年度の台帳価格がなかったことが認められるため、上記(イ)のCのとおり、本件各土地の価額は、それらの近傍類似の土地で平成21年度の台帳価格のあるものの当該台帳価格を基礎として登記機関が認定した価額となる。
B まず、本件登記官が認定した本件12筆土地の価額の適否について判断する。
(A) 本件12筆土地の価額の認定に当たっては、その近傍類似の土地の平成21年度の台帳価格を基礎とするところ、本件登記官が基礎とした本件比準宅地は、上記(ロ)のEの(C)のとおり三角形状の不整形地であって、ほぼ長方形状の本件12筆土地と形状における類似性を著しく欠いているほか、その平成21年度の台帳価格の算出において適用された補正率の連乗値は0.612と、標準とされる補正率の1.00から大きくかけ離れている。
 したがって、本件12筆土地の価額の認定に当たり本件比準宅地の平成21年度の台帳価格を基礎とすることはできない。
(B) そこで、当審判所は、本件登記官が本件12筆土地の価額を認定するに当たり本来採用すべきであったと認められる、本件12筆土地の近傍類似の土地として、本件12筆土地を含んで、住宅地の用に供されることで地域的なまとまりを示し、本件12筆土地の価格の形成に影響を与えるような特性を有する地域、すなわち近隣地域の中から、住宅地としての品等がほぼ同程度で地域格差のない、別紙の地図のとおり、本件12筆土地の北方約200メートルと近傍である分譲住宅地、通称「K」の中に所在する、d市f町○−○の宅地(以下「本件認定宅地」という。)を選定した。
 ちなみに、本件12筆土地及び本件認定宅地の平成22年度の台帳価格については、本件12筆土地のそれぞれの1平方メートル当たりの単価の平均が24,085円、本件認定宅地が1平方メートル当たり25,343円となっている。
(C) 本件認定宅地に適用される平成21年度の固定資産税の路線価、当該路線価に乗じるべき地価の下落に伴う修正率、本件認定宅地と本件12筆土地の画地条件及び場所的条件は、別表2−1から別表2−3までのとおりである。
(D) これに、当審判所において相当と認められる不動産鑑定評価基準、土地価格比準表(国土交通省から通達された土地価格評価事務のための一般的な基準を定めたもの。)等を参考として、不動産鑑定評価における取引事例比較法と同様の手法により、上記(C)の各条件に応じた本件認定宅地と本件12筆土地との格差率に基づき、本件12筆土地の価額を算定すると、別表3−1から別表3−12までの「審判所認定額」欄のとおりとなり、この価額をもって、当審判所における本件12筆土地の価額であると認定する。
C 次に、本件第3土地及び本件第14土地については、上記1の(4)のイ及びロのとおり、平成21年2月16日に分筆された土地であるが、当該分筆前の土地を含め同年1月1日から本件各登記がされた同年6月○日までの間に地目変更等の登記は行われていないことから、本件登記官は、本件分筆前台帳価格の1平方メートル当たりの単価4,235円にそれぞれの土地の地積を乗じて当該土地の価額を認定しているところ、本件登記官が認定した当該土地の価額については、当審判所の調査の結果によっても相当と認められる。
 なお、上記(ロ)のDのとおり、本件登記官が認定した本件第3土地の価額については、請求人の申請額と同額であり、本件登記官が認定した本件第14土地の価額についても182円の計算誤りを考慮すれば、請求人の申請額と同額である。
D 以上のことから、本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額は、別表1の「土地の価額」の「審判所認定額」欄のとおり○○○○円となり、本件登記官の認定した課税標準の額○○○○円を上回ることから、本件登記官の認定した課税標準の額は過大とはいえず、本件登記官が認定した本件各土地の価額を基になされた本件告知処分は適法である。
E ところで、請求人は、本件各土地はいずれも分筆により生じた土地であるが、当該分筆前の各土地についてd市による公的評価額である本件分筆前台帳価格があることを理由に、本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額は本件分筆前台帳価格を基に算定した価額によるべきである旨主張する。
 しかしながら、上記Aのとおり、本件各土地の価額は、それらの近傍類似の土地で平成21年度の台帳価格のあるものの当該台帳価格を基礎として認定するのが相当であることから、本件12筆土地の分筆前の各土地につき単に本件分筆前台帳価格があることを理由に、これによるべきとする請求人の主張は採用できない。
F また、請求人は、本件分筆前台帳価格を基に適正に課税標準の額を算定しており、その課税標準の額を基に計算した納付すべき登録免許税の額を納付し、本件各登記が完了していることから納付不足額は存在しない旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)のDのとおり、税務署長は、登記等を受けた者の納付した登録免許税の額に過不足があるときは、登録免許税の納期限後においても、その不足額を徴収し又は過大に納付された額を還付することができるのであるから、本件登記官が請求人の本件各登記の申請に対し、たとえ納付額の過不足を理由に当該申請を却下することなく登記が完了したとしても、必ずしも当該申請書に記載された登録免許税の課税標準の額及び登録免許税の額が正当と認定されたことにはならず、したがって、請求人の主張は採用できない。

(3) 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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