別紙8

当事者の主張

争点1 本件賃料は、請求人の不動産所得に係る収入金額に該当するか否か。

原処分庁 請求人
 以下のとおり、K社に対する賃貸物件は本件建物であり、本件賃料は、本件建物持分の賃料であるから、請求人に帰属する。  以下のとおり、K社に対する賃貸物件は本件各土地建物であり、本件賃料は、本件土地に係るFらの共有持分に対する賃料であるから、Fらに帰属する。
1 HらがK社に賃貸していたのは本件建物であり、Hの死亡に伴い、請求人は、本件建物持分を相続した。 1 HらがK社に賃貸していたのは敷地を含んだ本件建物であり、Hの死亡に伴い、本件建物持分を請求人が相続するとともに、本件土地を請求人らが共同で相続し、請求人らは、本件建物持分及び本件土地に係る各自の共有持分に対する賃料を受領し、不動産所得に係る総収入金額に算入して確定申告していた。
2 平成15年覚書は、前回調査の調査担当職員がK社を調査した結果によると、Fらが地代を請求人から受領することに代え、K社から請求人に支払われる本件建物持分の賃料を地代として直接K社から受領することを目的として作成されたものと認められるが、土地の所有者であるFらが権利(使用料等の請求)を主張できる相手は、建物の所有者である請求人であって、賃借人であるK社ではないことから、K社から支払われる本件建物持分の賃料が、本件建物持分を有しないFらに直接帰属することはない。 2 平成15年覚書は、請求人らがK社との間で、本件契約が土地建物一体としての賃貸借契約であること及び請求人らが本件土地を賃貸していることを確認するために取り交わしたものであり、その後、Fらは、請求人及びMらと同じ契約当事者としてK社との間で平成17年10月29日付及び平成20年2月12日付の各覚書を取り交わした。

争点2 本件管理費は、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入することができるか否か。

原処分庁 請求人
 本件各土地建物に係る管理全般は、N社が行っており、本件法人は、K社からの賃料を請求人らの口座に振り込んでいるほか、N社からの請求に基づき、ビル管理分担金並びに本件建物に係る火災保険料及び修繕費の負担額をN社に支払っているが、本件法人が行っているこれら金銭の支払行為をもって、本件建物持分及び本件土地の管理業務を行っているとはいえないことから、本件管理費は、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入することができない。  請求人らは、本件法人との間で土地建物管理委託契約を締結し、K社に賃貸している本件建物持分及び本件土地の管理を委託しており、本件法人は、K社との前交渉などの一部をN社に委託するなどして、K社及びN社との連絡、賃料の改定交渉、店舗の改装等、火災その他の保険料の支払及び簡単な補修等の依頼などの条項に定めた業務を現実に行っているから、本件管理費は、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入することができる。

争点3 原処分は、信義則に反する違法な処分か否か。

請求人 原処分庁
 以下のとおり、請求人は、2度の税務調査において、原処分庁からさまざまな指導を受けており、これらの指導は原処分庁が公的見解を表示したことになるから、この表示に反する原処分は、信義則に反する違法な処分である。  以下のとおり、原処分には、納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお請求人の信頼を保護しなければならないといえる特別な事情があったものとは認められないから、原処分は、信義則に反する違法な処分ではない。
1 平成10年に行われた請求人の平成7年分、平成8年分及び平成9年分(以下「先々行各年分」という。)の所得税の確定申告についての調査(以下「前々回調査」という。)では、K社から受領した不動産賃貸料の40%相当額を管理費用として本件法人に支払っていたところ、高額であると指摘され、原処分庁と関与税理士との交渉の結果、20%相当額にすることが妥当であるとの指導の下、所得税の修正申告書を提出し、原処分庁から過少申告加算税の賦課決定処分を受け、平成10年分以降、20%相当額として申告している。
 なお、Fらが受領した金員の帰属については、検討されたが、何らの指摘も受けず、訂正を求められなかった。
1 前々回調査については、関係書類等の保存年限を経過していることから、修正申告書提出の有無が確認できず、また、修正申告書が提出されていたとしても、その経緯が明らかでないため、公的見解を表示したか否か判断できない。
 なお、Fらが受領した金員の帰属を指摘していなかったとしても、それは公的見解の表示には該当しない。
2 前回調査では、消費税等については、修正申告書を提出したものの、所得税におけるFらが受領した本件賃料に係る金員の帰属及び本件管理費については、検討されたが、何らの指摘も受けず、訂正を求められなかった。
 そもそも、税務調査で、税法上認められないと指摘したのであれば、修正申告をしょうようし、応じなければ原処分庁は更正処分していたはずである。
2 前回調査を受けて、FがN社に送付した平成15年9月22日付の文書において、前回調査において、本件契約が本件建物の賃貸借契約であり、FらがK社から土地の賃料を受け取ることは認められないとの指摘を受けた旨述べていることからすれば、前回調査の調査担当職員は、少なくともFらが受領した金員の帰属については指摘している。
 また、本件管理費を否認していなかったとしても、それは公的見解の表示には該当しない。

争点4 通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があると認められるものがある場合に該当するか否か。

請求人 原処分庁
 仮に、本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等の各更正処分が法令の規定に従って適法にされたものであるとしても、請求人は、2度の税務調査における指導を信頼し、その指導に基づいて所得税及び消費税等の確定申告書を提出してきたものであり、このことは通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があると認められるものがある場合に該当する。  通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があると認められるものがある場合とは、税法の解釈に関して、申告時において公表されていた見解が、その後改変されたことに伴い、更正を受けるに至った場合など、真にやむを得ないものがこれに当たるが、本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等の各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があると認められるものがある場合に該当しない。

トップに戻る