別紙11

当事者の主張

1 争点1 調査手続等に違法があったか否か。

請求人 原処分庁
 原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)に係る手続等は、次のとおり違法であり、違法な調査に基づいてされた処分は取り消されるべきである。  本件調査に係る手続等は、次のとおり適法である。
(1) 原処分庁所属の調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)は、無予告で請求人に対する本件調査に着手し、請求人が持病を抱えて病院での診察を待っている時に、携帯電話に電話して本件調査を強要した。
(2) 請求人は、調査着手日当日に、終了時を約束してH税務署で面談したが、その約束の時間は守られなかった。
(3) 調査担当職員は、本件調査の過程で、請求人の私物であるバッグを開けさせ、財布の中身まで確認し、現金を数えさせたり、レジを勝手に触り、メーカーに直接電話して操作方法を問い合わせたりした。
(4) J店での調査は、開店時間を過ぎても調査が終わらなかったため、やむなく店を休まざるを得ず、その日使う予定であった肉が無駄になった。
(5) 請求人は、平成22年2月8日にH税務署庁舎内で、調査担当職員の上司(以下「本件上司」という。)との面談の途中に意識がなくなり、救急車で病院に運ばれた。
(1) 税務調査における質問検査権の行使に当たり、質問検査の範囲、程度、時期及び場所等、実定法上特段の定めのない実施の細目については、質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な程度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な裁量にゆだねられている。
 調査担当職員は、平成21年10月23日のJ店における調査の際に、直近の売上伝票などの原始記録及び売上金の管理状況を請求人から聴取するとともにその現物確認等を行ったが、これは請求人の承諾の下に行っており、請求人から、事業所得に係る帳簿として平成19年分及び平成20年分の総勘定元帳並びに原始記録の提示を受けた。また、L店の売上伝票などは自宅に保管しているとの申立てがあったため、自宅への臨場を要請したが、開店時間が迫っているとの申立てにより、上記の帳簿等を預かり、当日の調査を終了した。
(6) 請求人は、本件調査に協力する姿勢を示し、可能な限り資料も提供した。それに対し、原処分庁は、推計に基づく過大な税額を提示して修正申告をしょうようし、請求人が推計の根拠の説明を求めても明確な回答をせず、「数字をのむか、修正に応じなければ更正処分をする」とのみ主張し、請求人のあらゆる説明にも耳を貸さず、また、請求人が調査協力している中で調査を打ち切った。これは、一方的な調査義務の放棄であり、原処分庁の調査に係る裁量権の逸脱があり、違法である。 (2) 請求人は、調査担当職員に対して何ら証拠を示すことなく、客観的にも信ぴょう性があるとはいえない回答しか行わなかった。
 そのため、調査担当職員は、調査開始からおよそ3か月経過した平成22年1月中旬に、これ以上請求人自身に対する質問調査等を行っても進展がないと判断し、請求人に対する質問等を打ち切ったものであり、本件調査の手続に何ら問題は認められないので、原処分庁の調査に係る裁量権の逸脱はない。

2 争点2 所得税の青色申告の承認の取消しをすべき事実があったか否か。

原処分庁 請求人
 請求人は、調査担当職員がその調査の必要性から行った平成14年分以降の帳簿書類の提示要請に対して、平成18年分以降の帳簿書類のみを提示し、平成17年分以前の原始記録については保存していないとして提示しなかった。
 このことは、青色申告者に課せられた仕訳帳、総勘定元帳その他必要な帳簿及び書類を整理し、7年間保存するという義務を履行していなかったと認められるものであり、所得税法第150条第1項第1号の帳簿書類の備付け等がないことに該当する。
 請求人は、開業以来、税理士に業務委託し、真摯に記帳と決算を実施してきた。また、本件調査に当たっても、病気をおして税務調査に協力しており、保存している資料は全部提出した。資料との突合は完全にできないものの、すべての取引を反映している5年分の総勘定元帳も提示しており、まずは、所得税法第150条第1項第3号が吟味されるべきである。
 原処分庁は、平成14年分の総勘定元帳及び平成17年以前の原始記録の各保存がないという形式をことさら強調するが、更正の理由附記を回避することのみを目的とした本件青色取消処分は違法である。

3 争点3 J店に係る推計課税の計算方法に合理性が認められるか否か。

原処分庁 請求人
 J店の推計課税の計算方法については、次のとおり合理性が認められる。  J店の推計課税の計算方法については、次のとおり合理性が認められない。
(1) 原処分庁が把握した効率項目は、水道光熱費及び割箸の仕入本数であるところ、水道光熱費と収入金額との間に一定の比例関係は認められるが、J店については、平成20年分の売上伝票から客単価の把握が可能であったことから、収入金額に直接比例する割箸を効率項目とする方法を種々の推計方法の中から選択したことには十分な合理性が認められる。 (1) 原処分庁は、原処分時において、水道光熱費を基に収入金額等を推計したが、異議決定時においては、原処分時とは異なる推計課税の計算方法を採用した。原処分と異議決定で推計の計算方法を変更するということは、原処分庁の推計は、根拠が薄弱で、ずさんであると認められることから合理性がない。
(2) 請求人自身が作成した客数の記載のある平成20年分の売上伝票及び仕入先(取引先)に対する調査の結果に基づいて、平均客単価及び割箸の仕入本数を算定した。当該数値の算出過程に原処分庁のし意が介在する余地はなく、合理性が認められる。
 なお、割箸の仕入本数のうち、客数に反映されない部分は、通常僅少であり、これを一切考慮しなかったとしても不合理とはいえないが、本件においては、割箸の取替え等によるロスを考慮することが合理的であると考えられ、仕入本数の5%をロスするとして勘案し、算出したものである。
(2) 原処分庁は、割箸取替え等の客数に反映しない割箸本数(5%)については考慮しているが、このほかにも、アルバイト等が賄いを食べる際、また、平成19年以前は、トング代わりとして割箸を使用しており、これらに使用される割箸は、売上げに直接影響せず、さらに、カビが発生したこと等により、割箸を大量に廃棄したこともある。
 また、客に供された箸袋の使用枚数を加味した推計を行うと、当該箸袋を用いた請求人の所得金額の計算の結果が原処分庁の推計所得金額を大幅に下回る。
 また、平成20年のJ店の売上げについて、クレジットカードに係る売上げの計上漏れが認められるところ、当該売上計上漏れの確定申告額に対する割合を基礎として現金売上げの計上漏れを推認してした請求人の所得金額の推計計算の結果は、原処分庁の推計計算による所得金額を大幅に下回る。

4 争点4 リベート収入は、請求人に帰属する収入か否か。

原処分庁 請求人
 Q社が支払った販売協力金及びS社が支払った専売料は、J店及びL店でQ社及びS社の各製品を専売したことによる対価として支払われたものであり、当該販売協力金及び専売料名目のリベート収入(以下「本件リベート収入」という。)は、販売店の事業主に帰属する性質のものであるから、本件リベート収入は、J店及びL店の事業主である請求人に帰属するものである。  メーカーからのリベートは、酒類の卸売店に購入高に応じて割り戻されるケースがほとんどであり、料飲店に直接支払われるケースは一般的ではない。本件リベート収入は、Pの以前からのメーカーとの付き合いや、Pとの取引があることによって、Pが影響力を持っている同業者に対してメーカーが営業をかけやすくなるために、Pからの要請に応じて支払われたものである。
 よって、請求人名義に支払われたものも帰属するのは、Pであって、請求人のものではない。

5 争点5 下着等をオークションで販売したことは生活用動産の譲渡に当たるか否か。

原処分庁 請求人
 請求人が行った下着等の販売代金の入金回数は、平成20年中で少なくとも67回にわたっており、請求人の行為は、営利を目的として継続的に行われた資産の譲渡であると認められる。
 したがって、請求人の行った下着等の販売は、生活用動産の譲渡に当たらず、所得税法上、非課税とされる所得には当たらない。
 請求人の○○○○を利用した販売収入(以下「本件オークション収入」という。)の基因となった販売物は、新たに購入したものではなく、不用品の処分を目的とした下着、バッグ、靴及びストッキングなどであり、すべて生活用動産であるから、非課税である。

6 争点6 下着等をオークションで販売したことは、課税資産の譲渡に該当するか否か。

原処分庁 請求人
 消費税法上、「事業として」とは、資産の譲渡等が反復、継続、独立して行われるものであれば、その規模の大小を問わないと解されており、請求人は上記5のとおり、下着等の販売を反復、継続、独立して行っているものと認められる。  下着等の譲渡は、入金回数は多いが、反復、継続、独立して行っていたという状態ではなく、生活用動産の譲渡に当たるから、事業上の取引ではなく、不課税取引であり、消費税等も課税されない。

7 争点7 請求人の申告は、事実を隠ぺい又は仮装したところに基づくものか否か。

原処分庁 請求人
 請求人は、以下のとおり、本件各店舗において売上伝票を破棄して売上集計表に過少な売上金額を記載し、本件リベート収入及び本件オークション収入について、公表外口座ないしP名義の口座を利用するなどして所得金額の隠ぺいを行い、原処分庁に確定申告書を提出したのであるから、上記の各行為は、通則法第68条第1項に規定する「事実を隠ぺい又は仮装した」ところに基づくものである。
(1) L店における行為
 請求人は、各営業日の売上伝票から売上メモを作成し、当該メモの内容を転記した売上集計表(以下「L店売上集計表」という。)を申告の基礎としているところ、平成20年の6月分売上メモ(以下「平成20年6月分メモ」という。)に記載された現金売上げの金額とL店売上集計表に記載された現金売上げの金額との間には686,071円もの開差が生じているところ、このような多額の開差が単なる記載の誤りによるものとは認められない。そして、請求人が、平成20年6月分メモを除く本件各年分の売上メモを廃棄していること、平成21年1月から8月までの売上メモに記載された現金売上げは月額平均613,150円であるにもかかわらず、L店売上集計表の同年6月を除いた月の現金売上げの月額平均は123,081円にとどまることを併せ考えると、請求人は、売上メモから現金売上げを除外した金額をL店売上集計表に記載し、L店売上集計表に基づいて確定申告書等を提出したものと推認される。
(2) J店における行為
 J店に係る平成20年分の売上伝票のうち、クレジットカードにより支払われたものに係る売上伝票(以下「J店カード売上伝票」という。)が欠落している事実に加え、同年分の売上伝票(客数の記載があるもの)に記載された客数5,727人に対し、同店の割箸の仕入本数が12,000本であることからすると、現金払いに係る売上伝票(以下「J店現金売上伝票」という。)にも相当数の欠落があると想定されるが、売上伝票の保存においてこれだけの欠落が生じることは通常考え難い。また、平成20年分の売上伝票に基づく客1人当たりの平均単価が7,145円であるのに対し、請求人の申告に係る売上金額を同年分の割箸の仕入本数で除して算出した割箸1本当たりの平均単価は3,536円となり、両者の平均単価に著しい開差が認められることを併せ考えると、J店現金売上伝票の欠落は、売上除外に伴って生じたものであることが強く推認される。
 さらに、平成19年以前における請求人の申告に係る売上金額に基づく割箸1本当たりの平均単価も、平成19年分が3,711円、平成18年分が3,676円、平成17年分が3,493円、平成16年分が3,167円、平成15年分が2,927円、平成14年分が2,737円であり、いずれも平成20年分の割箸1本当たりの平均単価と同等ないしそれ以下の金額であることからすれば、これらの年分においても平成20年分と同様の売上除外が行われていたものと認められる。
 請求人は、一部記帳漏れなど軽微な誤りはあるかもしれないが、できる限りの努力とコストをかけ、帳簿の作成を税理士に依頼し、誠実に記帳してきた。
 また、本件オークション収入の振込口座の名義人をPにしたのは、取引に係る安全を図るため、男性名義を使用したものである。
 以上のとおり、隠ぺいし、仮装しようとする行為も意図もない。

8 争点8 請求人の申告は、偽りその他不正の行為により税額を免れたものであるか否か。

原処分庁 請求人
 請求人が行った上記7の行為について、偽りその他不正の行為に該当すると認められる。  本件は、一部の記帳漏れなどの単純な過少申告であるので、偽りその他不正の行為はない。

9 争点9 平成16年課税期間及び平成17年課税期間の消費税等の課税仕入れに係る消費税額の控除が認められるか否か。

原処分庁 請求人
 平成16年課税期間及び平成17年課税期間について、請求人は、調査担当職員の帳簿等の提示要請に対して、これらの課税期間に係る請求書等の提示をしていないので、課税仕入れに係る消費税額の控除は認められない。  請求人の関与税理士は、平成16年課税期間及び平成17年課税期間に係る総勘定元帳を原処分庁に持参したが、受取りを拒否された。
 請求人の平成16年課税期間及び平成17年課税期間については、確かに領収書等の保存はないが、平成16年課税期間及び平成17年課税期間に係る総勘定元帳の記帳内容は、消費税法上規定されている事項について網羅されており、平成16年課税期間及び平成17年課税期間の課税仕入れに係る消費税額の控除を認めることは、法の趣旨に反しない。

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