(平成23年8月26日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、共同相続人である共同審査請求人の相続税について、原処分庁が、調査に基づき、共同審査請求人の各人名義の定期預金は被相続人の死亡によって効力を生ずる贈与によりそれぞれ取得されたものと認められるから相続税の課税財産に該当するなどとして、修正申告のしょうようをしたところ、共同審査請求人のうち1名のみが修正申告をしたので、同人に対し過少申告加算税の賦課決定処分を、また、残りの共同審査請求人に対し各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を、それぞれしたのに対し、共同審査請求人が、当該各定期預金は当該被相続人の生前に共同審査請求人に対し贈与されていたものであるから相続税の課税財産に該当せず、また、1名の共同審査請求人がした修正申告は原処分庁によって修正申告が必要であるとの錯誤に陥れられたことによりなされたものであるから無効であるなどとして、当該各更正処分等の一部の取消し等を求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 申告
 共同審査請求人であるG、J、K、L、M及びN(以下、それぞれの審査請求人を「請求人G」のようにいい、共同審査請求人を併せて「請求人ら」という。)は、平成19年5月○日を相続開始日とする被相続人P(以下「本件被相続人」という。)の相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税について、原処分庁に対し、別表1の「申告」欄のとおり、法定申告期限までに共同で申告した。
ロ 修正申告及び処分
 請求人らは、本件相続に係る相続税について、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)の調査(以下「本件調査」という。)を受け、請求人Jは、原処分庁に対し、別表1の「修正申告」欄のとおり、平成22年3月25日に修正申告をした(以下、当該修正申告を「本件修正申告」という。)が、請求人Jを除く請求人らは、修正申告をしなかったので、原処分庁は、請求人Jを除く請求人らに対し、本件調査の結果に基づき、同年4月19日付で、別表1の「更正処分及び賦課決定処分」欄のとおり、各更正処分をする(以下、当該各更正処分を「本件各更正処分」という。)とともに、本件修正申告及び本件各更正処分による納付すべき税額に基づき、過少申告加算税の各賦課決定処分をした(以下、当該各賦課決定処分を「本件各賦課決定処分」といい、本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)。
ハ 不服申立て
(イ) 異議申立て及び異議決定
 請求人らは、本件各更正処分等を不服として、また、請求人Jは、本件修正申告が無効であるとも主張して、平成22年5月17日に、それぞれ異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年8月12日付で、本件各更正処分等に対する異議申立てを棄却する旨の異議決定をしたが、本件修正申告に対する異議申立てに係る異議決定をしなかった。
(ロ) 審査請求
 請求人らは、異議決定を経た本件各更正処分等の一部の取消し等及び3か月を経過しても異議決定がされなかった本件修正申告の無効を求めて、平成22年9月10日に、それぞれ審査請求をした。
 なお、請求人らは、請求人Gを総代として選任し、平成22年9月10日に、その旨を届け出た。

(3) 関係法令

イ 税理士法
 第2条《税理士の業務》第1項第1号は、税理士が行うことを業とする事務として税務代理を掲げ、税務代理とは、税務官公署に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立てにつき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行することをいう旨規定し、また、第30条《税務代理の権限の明示》は、税理士は、税務代理をする場合においては、その権限を有することを証する書面を税務官公署に提出しなければならない旨規定している。
ロ 国税通則法
 第65条《過少申告加算税》第1項は、期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出又は更正があったときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨規定している。
ハ 相続税法
(イ) 第1条の3《相続税の納税義務者》
 本条は、次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある旨規定し、第1号は、相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。)により財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するものと規定している。
(ロ) 第1条の4《贈与税の納税義務者》
 本条は、次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、贈与税を納める義務がある旨規定し、第1号は、贈与により財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するものと規定している。
(ハ) 第55条《未分割遺産に対する課税》
 本条は、相続により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は更正する場合において、当該相続により取得した財産の一部が共同相続人によってまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人が民法の規定による相続分に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする旨規定し、ただし、その後において当該財産の分割があり、当該共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分に従って計算された課税価格と異なることとなった場合においては、当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として、納税義務者において申告書を提出し、又は税務署長において更正することを妨げない旨規定している。
ニ 民法
(イ) 第549条《贈与》
 本条は、贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる旨規定している。
(ロ) 第550条《書面によらない贈与の撤回》
 本条は、書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができるが、履行の終わった部分については、この限りでない旨規定している。
(ハ) 第554条《死因贈与》
 本条は、贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する旨規定している。

(4) 基礎事実

イ 本件被相続人と共同相続人の関係
 本件被相続人の共同相続人は、本件被相続人の長男である請求人G、長女である請求人J、三男である請求人K、四男である請求人L、五男である請求人M、請求人Gの妻であり本件被相続人の養子である請求人Nの合計6名である。
ロ 請求人らの各名義の定期預金の明細及びその預入れの状況
 Q信用金庫g支店の請求人らの各名義の定期預金(以下「本件各定期預金」という。)の明細及び預入れの状況は、別表2のとおりであり、平成10年8月24日、平成15年12月25日及び平成16年1月6日に、それぞれ一斉に預け入れられた。
ハ 本件各定期預金の預入れの形態及び預入れ後の状況等
 本件各定期預金は、いずれも証書式であり、本件各定期預金のうち、平成10年8月24日に預け入れられた各定期預金(以下「平成10年各定期預金」という。)は、5年満期かつ元利金自動継続により、また、平成15年12月25日に預け入れられた各定期預金(以下「平成15年各定期預金」という。)及び平成16年1月6日に預け入れられた各定期預金(以下「平成16年各定期預金」という。)は、いずれも3年満期かつ元利金自動継続により、それぞれ預け入れられ、預入れ後の本件各定期預金は、いずれも自動継続され本件相続の開始時点において解約されていない。
 なお、Q信用金庫は、本件各定期預金の満期のお知らせ等を、請求人らのそれぞれの住所地へ送付した。
ニ 本件相続に係る遺産分割協議書の作成及びその内容
 本件相続に係る遺産分割協議が請求人らの間で成立し、本件相続に係る遺産分割協議書が平成19年12月5日付で作成された。
 なお、本件相続に係る遺産分割協議書には、請求人J、請求人K、請求人L、請求人M及び請求人Nのそれぞれが取得する各財産の内容が記載されているが、そこに本件各定期預金は含まれておらず、当該遺産分割協議書に記載のない本件被相続人の積極・消極財産のすべて及び祭礼財産は、請求人Gが相続する旨記載されている。

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2 争点

(1) 争点1 税務代理権限のある税理士を介さず修正申告をしょうようした後になされた本件各更正処分等は違法なものであるか否か。

(2) 争点2 本件各定期預金は、本件相続に係る相続税の課税財産に当たるか否か。

(3) 争点3 本件修正申告は無効であるか否か。

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3 主張

 当事者双方の主張は、別紙6のとおりである。

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4 判断

(1) 争点1 税務代理権限のある税理士を介さず修正申告をしょうようした後になされた本件各更正処分等は違法なものであるか否か。

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人らとR税理士との税務代理の委任状況
 請求人らは、本件相続に係る相続税について、R税理士を代理人と定め、本件相続に係る相続税の申告書に、税理士法第2条第1項第1号に規定する税務代理を委任した旨を証する「税務代理権限証書」を添付し平成20年2月6日に原処分庁に提出した。
(ロ) 原処分関係資料及び本件調査担当職員の当審判所に対する答述から認められる事実
A 本件調査担当職員は、R税理士に対し、平成21年9月29日に、本件調査の経過を説明し、同年11月6日に、請求人らに係る修正申告のしょうようをした。
B 平成21年12月2日に、S税理士が本件相続に係る相続税について請求人Gの税務代理権限証書を提出し、同月17日に再度、臨場して調査を行うことになり、その際、R税理士は立ち会わなかった。
C 本件調査担当職員は、S税理士に対し、平成22年1月6日に、修正申告のしょうようをしたところ、同月14日にS税理士から請求人Gに説明をしたが納得を得られない旨連絡を受けた。
D 本件調査担当職員は、平成22年3月23日に、R税理士に対し、請求人らの修正申告書の提出について確認したところ、R税理士から、R税理士と請求人らとの間における本件相続の相続税に係る税務代理委任契約が既に存しない旨聴取した。
E 本件調査担当職員は、平成22年3月25日に、請求人J及び請求人Kに対し、また、同年4月1日に、請求人G、請求人M及び請求人Lに対し、直接、修正申告のしょうようをした。
F 請求人J以外の請求人らから各修正申告書の提出はなかった。
(ハ) R税理士及び請求人Gの各答述から認められる事実
A R税理士は、本件調査担当職員から請求人らに係る修正申告のしょうようを受けた後、請求人らの修正申告書を作成して、請求人Gに対し、本件各定期預金は相続財産に該当する旨説明するとともに、他の共同相続人にも同様の説明をするよう依頼した。
B 請求人Gは、他の共同相続人に対し、原処分庁による修正申告のしょうようの内容についてR税理士から知らされたことを話したが、請求人らは納得できなかったため、その後は、R税理士と電話や書面によるやりとりや面会はしておらず、請求人Gは、平成21年12月の初めにS税理士に税務代理の委任をした。
ロ 請求人らの主張の当否
 請求人らは、別紙6の1の「請求人ら」欄のとおり、請求人らには税理士法第2条第1項第1号に規定する税務代理権限を有するR税理士がいるにもかかわらず、原処分庁が請求人らに対し直接修正申告をしょうようしたことは、同号及び同法第30条の規定に違反又は同規定の趣旨に反する著しく不当なものであり、このような行為の後になされた本件各更正処分等は違法である旨主張する。
 しかしながら、修正申告のしょうようは、税務調査の過程で把握された申告上の誤りについて、納税者自らが修正申告書を提出することにより当該誤りを是正することを促すため、税務官庁により行われる強制力のない事実上の行為であって、税務署長の権限として行われる更正処分及び加算税の賦課決定処分とは全く別異の行為であるから、修正申告のしょうようがその後の更正処分や加算税の賦課決定処分の適法性に影響を与えることのないことは明らかである。
 そうすると、上記イの(ロ)のEによれば、本件調査担当職員は、確かに、請求人Nを除く請求人らに対して直接修正申告のしょうようをしていると認められるものの、このことが本件各更正処分等の適法性に何ら影響を及ぼすことはない。
 仮に、請求人らの主張のとおり、本件調査担当職員が請求人Gの妻である請求人Nを除く請求人らに対し、直接修正申告のしょうようをした時点において、請求人らとR税理士との間の税務代理委任契約が存していたとしても、上記のとおり、修正申告のしょうようがその後の更正処分や加算税の賦課決定処分の適法性に影響を与えることのないことは明らかであるから、本件各更正処分等の適法性が同税務代理委任契約の存否に左右されることはない。
 以上によれば、請求人らの上記主張には理由がない。

(2) 争点2 本件各定期預金は、本件相続に係る相続税の課税財産に当たるか否か。

イ 法令解釈等
 民法第549条は、贈与は当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによってその効力を生ずる旨規定しているので、贈与の有無は、各当事者の意思表示の有無によって判断すべきであるが、書面によらない贈与は、同法第550条の規定によりその履行が終わるまでは当事者がいつでもこれを取り消すことができることから、その履行前は目的財産の確定的な移転があったということはできないので、この場合の贈与の有無、すなわち、目的財産の確定的な移転による贈与の履行の有無は、贈与されたとする財産の管理・運用の状況等の具体的な事実に基づいて、総合的に判断すべきであると解される。
 また、民法第554条に規定する死因贈与とは、契約としての生前贈与のうち、その効力の発生が死亡時という契約をいうものと解される。
ロ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件被相続人の経歴等
 本件被相続人は、農業及び不動産賃貸業に長年従事し、平成18年12月に○○により入院するまで、請求人G及び請求人Nと同居しており、当審判所の照会に対し請求人Gから提出された平成23年3月3日付の「回答書」と題する書面によると、本件被相続人は亡くなる直前まで頭脳明せきであったとしていることからすれば、本件被相続人は亡くなる直前まで十分な意思能力を有していたと認められる。
(ロ) 本件被相続人に係る相続税額の試算等
 請求人G及びR税理士の当審判所に対する答述によれば、平成5年頃、本件被相続人がR税理士に本件被相続人に係る相続が開始した場合の相続税額の試算を依頼し、相続税額が多額になると知ったこと、また、平成15年頃、請求人Gが、同様にR税理士に相続税額の試算を依頼し、R税理士から生前贈与などのアドバイスを受けたことが、それぞれ認められる。
(ハ) 本件各定期預金の預入れの原資
 平成10年各定期預金は、本件被相続人が請求人Lに貸し付けていた貸付金の返済金を原資として、また、平成15年各定期預金及び平成16年各定期預金は、いずれもQ信用金庫g支店の本件被相続人の名義の普通預金口座(口座番号○○○○)から出金された金員を原資として、それぞれ預け入れられた。
(ニ) 本件各定期預金の預入れに係る本件被相続人の申出及びそれに対する請求人らの対応
 請求人G、請求人K、請求人L及び請求人Mの当審判所に対する答述によれば、まる1本件被相続人は、本件被相続人の妻Tの100日の法事を行った平成10年8月1日に、請求人Nを除く請求人らに対し、1人当たり1,000,000円ずつ贈与する旨話し、請求人Nを除く請求人らは、本件被相続人の申出を拒むことなく礼を言ったこと、まる2本件被相続人は、請求人らに対し、平成15年8月13日に請求人らやその家族たちを本件被相続人の自宅に集めて開催された食事会の場において、平成15年及び平成16年にそれぞれ1人当たり1,100,000円ずつ贈与する旨話し、請求人らは、本件被相続人の申出を拒むことなく礼を言ったこと、まる3本件被相続人と請求人らとの間で、上記まる1及びまる2の本件被相続人の各申出に関する書面は作成されなかったことが、それぞれ認められる。
(ホ) 本件各定期預金の届出印鑑及びその保管状況
 原処分関係資料及び請求人Gの当審判所に対する答述によれば、まる1本件各定期預金の印鑑票のうち、請求人Jを除く請求人らの各名義の定期預金の印鑑票には、いずれも本件被相続人が所有していた「○○」の文字が刻印された印鑑(以下「本件○○印」という。)、平成10年8月24日預入れの請求人Jの名義の定期預金の印鑑票には、本件被相続人が所有していた「△△」の文字が刻印された印鑑、平成15年12月25日及び平成16年1月6日預入れの請求人Jの名義の各定期預金の印鑑票には、いずれも上記の「△△」の文字が刻印された印鑑と異なる本件被相続人が所有していた「△△」の文字が刻印された印鑑(以下、本件被相続人が所有していた「△△」の文字が刻印された2種類の印鑑を併せて「本件各△△印」という。)により、各届出印の押印がされており、いずれも、請求人Gが、本件被相続人の指示で、押印をしたこと、まる2本件○○印及び本件各△△印は、いずれも本件被相続人の自宅の寝室の枕元に置かれた時計の引き出しの中に本件相続が開始するまで保管されていたこと、まる3本件被相続人は、本件○○印を本件被相続人の名義の預金の届出印鑑としても使用していたことが、それぞれ認められる。
(ヘ) 本件○○印の保管状況及び本件各△△印の存在に関する請求人G及び請求人Nを除く請求人らの認識
 請求人K、請求人L、請求人M及び請求人Jの当審判所に対する答述によれば、本件被相続人の生前中、請求人K、請求人L及び請求人Mのいずれもが、本件○○印の保管場所を知らなかったこと、また、請求人Jは、平成20年2月か3月頃に請求人Nから本件各△△印を受け取るまでは、本件各△△印を一度も見たことがなかったことが認められる。
(ト) 本件各定期預金の証書の受領及び保管状況
 請求人Gの当審判所に対する答述及び当審判所の照会に対するQ信用金庫g支店の職員の回答によれば、本件各定期預金の預入れに伴って作成された本件各定期預金の証書は、いずれも作成された都度、請求人G又は請求人Nが本件被相続人の自宅においてQ信用金庫g支店の職員から受領し、その後すぐに本件被相続人に手渡され、それから1週間程度、本件被相続人が所有する手提げ金庫に保管されたものの、当該手提げ金庫の中では盗難のおそれがあることから、本件被相続人から請求人Gに手渡され、請求人Gが自分の耐火金庫に入れて保管したことが認められる。
(チ) 本件各定期預金の証書の交付に関する事実
A 請求人G、請求人K及び請求人Lの本件調査担当職員に対する申述並びに当審判所に対する答述によれば、本件各定期預金のうち、請求人K及び請求人Lの各名義の定期預金の証書は、本件被相続人から、遅くとも平成16年2月までには請求人K及び請求人Lにそれぞれ交付されたことが認められ、その交付の理由について、まる1請求人Kは、目的とか節税対策とは聞いていない旨、まる2請求人Lは、平成16年に請求人Lが○○で入院していた際に3本の定期預金の証書を本件被相続人から請求人Lの妻に手渡され、同人が見舞金だと思った旨、前記1の(2)のハの(イ)の異議申立てに係る調査を担当した職員に対してそれぞれ申述し、まる3請求人Gは、本件被相続人が、請求人K及び請求人Lに上記各定期預金の証書を渡した理由は分からないが、両名が生活に困窮していたので、先に渡したのだと思う旨、本件調査担当職員に対して申述していることからすれば、本件被相続人が上記各定期預金の証書を交付の理由を明示して交付したものとは認められない。
B 請求人G、請求人M及び請求人Jの本件調査担当職員に対する申述並びに当審判所に対する答述によれば、請求人M及び請求人Jの各名義の定期預金の証書は、請求人Gから本件相続の開始後の平成20年の正月に請求人M及び請求人Jにそれぞれ交付されたことが認められ、その交付の理由について、まる1請求人Gは、相続税の計算が済んで、上記各定期預金を解約しなくても納税資金が足りたので交付した旨、まる2請求人Mは、相続税の納税が済んで、上記各定期預金を解約しなくても足りたので交付されたのだと思う旨、本件調査担当職員に対してそれぞれ申述し、まる3請求人Jは、財産分けの手続が終わったので交付してくれた旨、前記1の(2)のハの(イ)の異議申立てに係る調査を担当した職員に対して申述していることからすれば、上記各定期預金の証書は相続税の計算が完了し納税資金に目処がついたため交付されたものと認められる。
(リ) 本件各定期預金に係る改印及び証書の再発行の有無
 請求人らは、本件被相続人の生前中、本件各定期預金について、請求人らの固有の印鑑への改印及び証書の再発行手続を行っていない。
ハ 本件への当てはめ
(イ) 請求人らと本件被相続人との間での贈与契約の成立
 上記ロの(ニ)のとおり、本件被相続人が請求人らに対し、平成10年8月1日に1人当たり1,000,000円を、平成15年8月13日に、平成15年と平成16年にそれぞれ1人当たり1,100,000円を贈与する旨話し、前記1の(4)のロのとおり、実際に、平成10年8月24日に平成10年各定期預金が、平成15年12月25日に平成15年各定期預金が、平成16年1月6日に平成16年各定期預金がそれぞれ預け入れられていることは、本件被相続人において当該贈与の意思を有していたことを裏付ける事実であると認められ、請求人らは拒むことなく礼を言っているものと認められることからすれば、本件被相続人が本件各定期預金についての贈与の意思表示をし、これに対し、請求人らが受諾の意思表示をしたものと認められる。
 また、当該贈与の意思表示の書面は作成されていないことからすると、本件被相続人と請求人らとの間で、いずれも本件各定期預金に関する書面によらない贈与契約が成立したものと認められる。
(ロ) 贈与契約の履行の有無
 上記イによれば、書面によらない贈与は、民法第550条の規定によりその履行が終わるまでは当事者がいつでもこれを取り消すことができることから、その履行前は目的財産の確定的な移転があったということはできないので、この場合の贈与の有無、すなわち、目的財産の確定的な移転による贈与の履行の有無は、贈与されたとする財産の管理・運用の状況等の具体的な事実に基づいて、総合的に判断すべきであると解されるところ、本件各定期預金の届出印及び証書の管理状況に基づいて、本件各定期預金に係る贈与の履行の時期について検討した結果は、以下のとおりである。
A 本件各定期預金の届出印の管理状況
 上記ロの(ホ)のとおり、本件各定期預金の届出印は、本件○○印及び本件各△△印であり、本件相続が開始するまで、いずれも本件被相続人の自宅の寝室の枕元に置かれた時計の引き出しの中に保管されていたと認められるところ、同(ヘ)のとおり、本件被相続人の生前中、請求人K、請求人L及び請求人Mのいずれもが、本件○○印の保管場所を知らず、また、請求人Jは、平成20年2月か3月頃に請求人Nから本件各△△印を受け取るまでは、本件各△△印を一度も見たことがなかったこと、更に、同(リ)のとおり、請求人らは、本件被相続人の生前中、本件各定期預金の届出印を、請求人らの固有の印鑑へ改印をするための手続を行っていないことからすれば、請求人K、請求人L、請求人M及び請求人Jは、いずれも本件各定期預金の届出印の管理には、全くかかわっていなかったと認められる。
 一方、請求人G及び請求人Nについては、上記ロの(イ)のとおり、本件被相続人と生前同居しており、請求人Gにあっては、同(ホ)のとおり、本件被相続人の指示を受けて本件各定期預金の届出印を押印していることが認められることからすると、本件被相続人が、本件○○印及び本件各△△印を、本件被相続人の自宅の寝室の枕元に置かれた時計の引き出しの中に本件相続が開始するまで保管していたことを了知していたものと認められるところ、本件被相続人が本件○○印を本件被相続人の名義の預金の届出印鑑としても使用していたことに加え、同(リ)のとおり、本件被相続人の生前中、請求人らは、本件各定期預金の届出印を、請求人らの固有の印鑑へ改印をするための手続を行っていないことからすれば、請求人G及び請求人Nにおいても、本件各定期預金の届出印の管理には、かかわっていなかったと認められる。
 以上のことのほか、上記ロの(イ)のとおり、本件被相続人は、亡くなる直前まで十分な意思能力を有していたことを加味すると、本件各定期預金の届出印は、本件相続が開始するまでの間、本件被相続人が管理していたものと認められる。
B 本件各定期預金の証書の管理状況
 上記ロの(イ)のとおり、本件被相続人は、亡くなる直前まで十分な意思能力を有していたこと、同(ト)のとおり、本件各定期預金の預入れに伴って作成された本件各定期預金の証書は、いずれも作成された都度、請求人G又は請求人Nが本件被相続人の自宅においてQ信用金庫g支店の職員から受領し、その後すぐに本件被相続人に手渡され、それから1週間程度、本件被相続人が所有する手提げ金庫に保管されたものの、当該手提げ金庫の中では盗難のおそれがあることから、本件被相続人から請求人Gに手渡され、請求人Gの耐火金庫に保管されていたこと、同(チ)のとおり、請求人M及び請求人Jの各名義の定期預金の証書は、本件相続の開始後の平成20年の正月に請求人M及び請求人Jにそれぞれ交付されたこと、同(リ)のとおり、請求人らは、本件被相続人の生前中、本件各定期預金について、請求人らの固有の印鑑への改印及び証書の再発行手続を行っていないことからすれば、請求人K及び請求人Lの各名義の定期預金の証書を除く本件各定期預金の証書は、本件被相続人の生前中、本件被相続人の手提げ金庫の中から、請求人Gの耐火金庫の中に移され、そのまま保管されていたが、それは盗難のおそれを回避するため請求人Gの耐火金庫を借りただけであって、実質的には本件被相続人が管理していたものと認めるのが相当である。
 もっとも、上記ロの(チ)のとおり、本件各定期預金のうち、請求人K及び請求人Lの各名義の定期預金の証書は、遅くとも平成16年2月までには請求人K及び請求人Lにそれぞれ交付されていることからすれば、本件相続の開始時点において、これらの定期預金の証書を本件被相続人が管理していたものと認めることはできない。
 以上によれば、請求人K及び請求人Lの各名義の定期預金の証書を除く本件各定期預金の証書は、本件被相続人の生前中、実質的には本件被相続人が管理していたものと認められるが、請求人K及び請求人Lの各名義の定期預金の証書については、本件相続の開始時点において、本件被相続人が管理していたものとは認められない。
C まとめ
 上記A及びBのとおり、本件被相続人が、本件相続が開始するまで、本件各定期預金の届出印及び請求人K及び請求人Lの各名義の定期預金の証書を除く本件各定期預金の証書を実質的に管理していたと認めるのが相当であるから、請求人K及び請求人Lの各名義の定期預金を除く本件各定期預金は、いずれも本件被相続人によって管理支配されていたものと認められ、これらの贈与はいつでも本件被相続人によって取り消し得る状態にあったということができるので、請求人K及び請求人Lを除く請求人らにこれらの確定的な移転があったということはできない。
 また、上記Bのとおり、請求人K及び請求人Lの各名義の定期預金の証書は、遅くとも平成16年2月までには請求人K及び請求人Lにそれぞれ交付されていることからすれば、請求人K及び請求人Lの各名義の定期預金の証書の管理支配は請求人K及び請求人Lに移転したものと認められるが、定期預金を自由に運用するためにはその届出印が必要となるところ、上記Aのとおり、当該各届出印は、本件相続が開始するまでの間、本件被相続人が管理していたものと認められるから、請求人K及び請求人Lの各名義の定期預金について確定的な移転があったとまではいうことができない。
(ハ) 結論
 上記(イ)及び(ロ)のとおり、本件被相続人と請求人らとの間で本件各定期預金に係る書面によらない贈与契約が成立したと認められるものの、本件被相続人の生前中、贈与の履行があったとは認められないから、本件各定期預金は贈与によって請求人らが取得したものとは認めることができない。
 したがって、本件各定期預金は、本件相続に係る相続税の課税財産に該当する。
ニ 当事者双方の主張の当否
(イ) 請求人らの主張
 請求人らは、別紙6の2の「請求人ら」欄の(3)のとおり、請求人G、請求人N、請求人K及び請求人Lの各名義の定期預金の証書が手渡された時点で、また、請求人M及び請求人Jの各名義の定期預金の証書が請求人Gに手渡された時点で贈与の履行がそれぞれあった旨主張する。
 しかしながら、上記ハの(ハ)のとおり、本件被相続人と請求人らとの間で本件各定期預金に係る贈与契約が成立したと認められるものの、本件被相続人の生前中、贈与の履行があったとは認められないのであるから、請求人らの上記主張は理由がない。
(ロ) 原処分庁の主張
 原処分庁は、別紙6の2の「原処分庁」欄の(1)のとおり、本件各定期預金は、相続税の納税に充てることを目的とし、他のことに使うことのないよう本件被相続人が請求人Gに対して指示し、請求人Gが本件被相続人の当該指示を他の請求人らへ伝えた上で預け入れられていることから、本件被相続人が請求人らに対し、本件被相続人の死亡後に請求人らが使用することができる旨の条件を付した上での死因贈与により請求人らが取得したものである旨主張する。
 確かに、請求人Gは、本件調査担当職員に対し、本件各定期預金の使途について、本件被相続人が請求人Gに本件相続に係る相続税の支払に充てることを目的とし他のことに使うことのないよう指示したことから、請求人Gは本件被相続人の当該指示を他の請求人らに伝えた旨申述していることが認められ、上記ロの(チ)のBによれば、請求人M及び請求人Jの各名義の定期預金の証書は、本件相続に係る相続税の計算が完了して納税資金に目処がついたため、請求人Gから各名義人へ交付されているものと認められる上、その交付理由について、請求人G及び請求人Mが上記各定期預金を解約しなくても本件相続に係る相続税の納税資金が足りたからである旨述べていることからすると、請求人Gの上記申述は、同人の行動並びに同人及び請求人Mの認識に沿う信用性の高いものと認められる。この点、請求人Gは、当審判所に対して、本件被相続人から「おまえたち6人に定期預金を作ってやるぞ。」と言われたことは記憶しているものの、その使途についての指示はなかった旨答述しているが、同答述は、請求人Gの行動並びに請求人G及び請求人Mの認識に反するものであるから、採用できない。よって、原処分庁の主張のとおり、請求人Gは、本件被相続人から本件各定期預金の使途を本件相続に係る相続税の納税資金に限定するよう指示されていたものと推認することができる。
 しかしながら、上記イのとおり、死因贈与とは、契約としての生前贈与のうち、その効力の発生が死亡時という契約をいうものと解され、そもそも贈与契約とは贈与者の贈与意思と受贈者の受諾意思の合致であるから、原処分庁が主張するように、本件各定期預金に係る贈与契約が死因贈与であるとするならば、同贈与契約の成立時に、本件被相続人と請求人らとの間で、同贈与契約の効力発生時期が本件被相続人の死亡時であることについて、合意されている必要があるといえるので、仮に、本件被相続人による本件各定期預金の費消時期や費消目的の指示をもって本件各定期預金の贈与契約が死因贈与に該当すると解する余地があったとすれば、少なくとも、同贈与契約の成立時に上記指示に係る話が本件被相続人から請求人らに対してあって然るべきである。
 これを本件についてみると、上記推認によっても、請求人Gが本件被相続人から本件各定期預金の使途を本件相続に係る相続税の納税資金に限定するよう指示された時期は明らかでない上、本件各定期預金に係る贈与契約の成立時(上記ハの(イ))の状況からすると、上記ロの(ニ)のとおり、まる1本件被相続人は、平成10年8月1日に、請求人Nを除く請求人らに対し、1人当たり1,000,000円ずつ贈与する旨話し、請求人Nを除く請求人らは、本件被相続人の申出を拒むことなく礼を言ったこと、まる2本件被相続人は、平成15年8月13日に、請求人らに対し、平成15年及び平成16年にそれぞれ1人当たり1,100,000円ずつ贈与する旨話し、請求人らは、本件被相続人の申出を拒むことなく礼を言ったというのであり、このような状況は、本件被相続人と請求人らが一堂に会した下においてのことであるにもかかわらず、請求人らのうち請求人G以外の者においては、本件被相続人から、本件各定期預金の費消時期や費消目的について指示されたことがある旨を本件調査担当職員又は当審判所に対して申述又は答述をしている事実が認められないことからすれば、本件各定期預金に係る贈与契約の成立時に、本件被相続人と請求人Gを含む請求人ら各人との間で、本件各定期預金の費消時期や費消目的についての話があったとは認められない。加えて、同(チ)のとおり、本件各定期預金のうち、請求人K及び請求人L名義の各定期預金の証書については、遅くとも平成16年2月までには、本件被相続人自身が各名義人に対しそれぞれ交付していると認められることからすると、本件被相続人において、本件各定期預金の使途を必ずしも本件相続に係る相続税の納税資金に限定していたとみることもできない。
 以上によれば、本件被相続人の請求人Gに対する上記指示は、法的拘束力のあるようなものではなく、単に本件被相続人の希望を述べたにすぎないものとみるのが相当である。そうすると、本件被相続人の請求人Gに対する上記指示をもって、本件各定期預金に係る贈与契約が死因贈与契約に該当するとは認められず、その他、本件各定期預金に係る贈与契約が死因贈与契約であると認め得るに足りる証拠もない。
 したがって、原処分庁の上記主張には理由がない。

(3) 争点3 本件修正申告は無効であるか否か。

 請求人Jは、本件修正申告は無効であるとして、その取消しを求めているが、修正申告は、国税通則法(以下「通則法」という。)第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項に規定する国税に関する法律に基づく処分に当たらないから、本件修正申告に対する審査請求は不適法である。
 もっとも、原処分庁は、前記1の(2)のロのとおり、本件修正申告に基づき過少申告加算税の賦課決定処分をしているので、仮に、本件修正申告が無効であるとすれば、当該処分はその前提を欠くこととなるため、この点につき検討した結果は以下のとおりである。
イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 原処分庁の本件各定期預金の帰属に対する判断
 本件調査担当職員が、本件調査において把握した本件各定期預金について、金融機関調査や請求人らへの質問調査を行い、その原資、本件各定期預金の証書の請求人らへの交付状況、本件各定期預金の届出印鑑の管理状況等の調査を行った結果、原処分庁は、本件各定期預金の贈与が履行されておらず、本件相続に係る相続税の課税財産に該当すると判断した。
(ロ) 請求人Jに対する修正申告しょうようの状況
 上記(イ)の判断に基づき、本件調査担当職員は、請求人Jの自宅に臨場し、あらかじめ本件各定期預金を本件相続に係る相続税の取得財産の価額に算入した金額を記載した相続税の修正申告書を、請求人Jに示しながら、本件被相続人が生前中に贈与の履行があったとはいえず、相続財産に該当するので、修正申告が必要である旨説明した。そして、請求人Jは、上記の説明を受け、修正申告書に自ら署名押印し、本件調査担当職員を通じて原処分庁へ提出した。
 なお、本件調査担当職員は、請求人Jに対する上記説明時に、本件各定期預金は請求人らが死因贈与により取得した財産であるとの説明はしなかった。
ロ 本件への当てはめ及び請求人Jの主張の当否
 請求人Jは、別紙6の3の「請求人J」欄のとおり、原処分庁は、修正申告の必要性を説明しないまま、修正申告書を提示して、あたかもその提出が必要であるがごとく誤認を与え、死因贈与があったかのごとく欺いて、贈与により取得した本件各定期預金が相続財産であると錯誤に陥れたものであるから、本件修正申告は無効である旨主張する。
 しかしながら、まる1上記イのとおり、原処分庁は、本件各定期預金が、本件相続に係る相続税の課税財産に該当すると判断し、それを受けて、本件調査担当職員は、請求人Jに対し、本件各定期預金について、本件被相続人が生前中に贈与の履行があったとはいえず、相続財産に該当するので、修正申告が必要である旨説明したと認められること、まる2上記イの(ロ)のとおり、本件調査担当職員は、請求人Jに対し、本件各定期預金は請求人らが死因贈与により取得した財産であるとの説明をしたとは認められないことからすれば、上記請求人Jの「修正申告の必要性を説明しないまま」、「修正申告書を提示して、あたかもその提出が必要であるがごとく誤認を与え」た旨の主張及び「死因贈与があったかのごとく欺い」た旨の主張はいずれも採用することができない。むしろ、同(ロ)のとおり、請求人Jは、本件調査担当職員から、本件各定期預金については本件被相続人の生前中、贈与の履行があったとはいえず相続財産に該当するので修正申告が必要である旨の説明を聞いた上で、修正申告書に自ら署名押印して、これを原処分庁へ提出したことからすれば、本件修正申告は、請求人Jの意思に基づきなされた有効なものと認められる。
 したがって、請求人Jの上記主張には理由がない。

(4) 本件各更正処分の適法性

 上記(2)のハの(ハ)のとおり、本件各定期預金は本件相続に係る相続税の課税財産に該当することから、前記1の(4)のニの遺産分割協議書の記載内容によれば、請求人Gが取得する財産に該当すると理解することもできる。
 しかしながら、そもそも本件各定期預金については、本件被相続人の生前中に本件被相続人と請求人らとの間で書面によらない贈与契約が成立していたものであると認められることからすると、請求人らの間において、遺産分割協議の時点で本件相続に係る遺産分割対象財産として認識していなかったと解するのが相当であり、本件各定期預金を遺産分割協議書に記載のない財産として、請求人Gが相続することを予定して遺産分割協議がされたとは認められないことから、本件各定期預金は、相続税法第55条に規定する未分割財産とみるのが相当である。
 そうすると、本件相続に係る未分割財産の価額は、別表3の(1)の「金額」欄の「合計」欄のとおりとなり、相続税法第55条の規定に基づき、請求人らの未分割財産の取得額を計算すると、同表の(2)の「未分割財産の取得額」欄の記載のとおりとなる。これに基づき、改めて請求人らの納付すべき税額を算定すると、別表4の「金額」欄の「納付すべき税額」欄の各欄記載のとおりとなり、請求人G及び請求人Nの各納付すべき税額は、いずれも本件各更正処分の金額を下回るが、請求人K、請求人L及び請求人Mの各納付すべき税額は、いずれも本件各更正処分の金額を上回る。
 したがって、本件各更正処分のうち、請求人G及び請求人Nに対する各更正処分は、いずれもその一部が取り消されるべきであるが、請求人K、請求人L及び請求人Mに対する各更正処分は、いずれも適法である。

(5) 本件各賦課決定処分の適法性

イ 請求人G及び請求人Nに対する各賦課決定処分
 上記(4)のとおり、請求人G及び請求人Nに対する各更正処分は、いずれもその一部が取り消されるべきであるから、別表4の「金額」欄の「納付すべき税額」欄に記載された税額を基に請求人G及び請求人Nに対する過少申告加算税の基礎となる税額を算出すると、それぞれ○○○○円、○○○○円となる。
 また、これらの税額の計算の基礎となった事実については、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 以上によれば、請求人G及び請求人Nの過少申告加算税の額は、それぞれ○○○○円、○○○○円となり、請求人G及び請求人Nに対する各賦課決定処分の金額にいずれも満たないから、本件各賦課決定処分のうち、請求人G及び請求人Nに対する各賦課決定処分は、いずれもその一部を取り消すべきである。
ロ 請求人K、請求人L及び請求人Mに対する各賦課決定処分
 上記(4)のとおり、請求人K、請求人L及び請求人Mに対する各更正処分は、いずれも適法であり、また、当該各更正処分による納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められず、それぞれの過少申告加算税の額は、いずれも、同条第1項の規定に従い、正しく計算されている。
 したがって、本件各賦課決定処分のうち、請求人K、請求人L及び請求人Mに対する各賦課決定処分は、いずれも適法である。
ハ 請求人Jに対する賦課決定処分
 上記(3)のロのとおり、本件修正申告は有効であり、本件修正申告による納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められず、過少申告加算税の額は、同条第1項の規定に従い、正しく計算されている。
 したがって、本件各賦課決定処分のうち、請求人Jに対する賦課決定処分は適法である。

(6) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所の調査によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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