別紙2

争点1 本件アパート及び本件倉庫は、恒久的施設に該当するか否か。
原処分庁 請求人
 請求人の本件アパート及び本件倉庫における作業は、単なる在庫管理や引渡しといった「準備的又は補助的な性格の活動」の範囲にとどまるものとは到底認められず、以下の事実に基づいて、日S租税条約第5条第1項の恒久的施設に該当し、日本における所得税の納税義務を負うことになるから、原処分は適法である。  請求人の本件アパート及び本件倉庫は、以下の事実からすれば、外国製○○販売の在庫商品を保管し、倉庫業務を行うとともに、発送業務を行うことのみを目的とした「準備的又は補助的な性格の活動」を行う場所であるから、日S租税条約第5条第4項が定める恒久的施設に該当しない場合に当たり、日本における所得税の納税義務を負わないことになるので、原処分は違法である。
1 請求人は、日本国内において、本件アパート及び本件倉庫を継続して賃借し、仕入商品の受領から顧客に対する発送に至るまでの全ての作業を行っていた。 1 本件アパート及び本件倉庫でのパート従業員の作業内容は、メーカーから直送された商品を受け入れて保管し、請求人の指示により宅配便を使って出荷する以外に返品された不良品の受け入れ、メーカーへの返品作業及び当該商品の受け入れ時の検査確認等である。
2 自己の商品販売用ウェブサイト等に掲載するための写真撮影を行っていた。 2 従業員が行う本件倉庫の写真撮影は、商品の外観の画像という情報を収集する行為であり、送られた画像を加工及び調整し、ウェブサイトを作成して画像を掲載するとともに、魅力的な説明文を付ける等の主要な作業は、全て請求人がS国の事務所において行っており、本件倉庫における当該撮影行為は、宣伝広告のための準備行為である。
3 返品された不良品の受領及び代替品の発送を行っていた。 3 購入者から返品された不良品の受け入れは商品発送に伴う補助的な業務である。
4 日本国内の顧客のうち、一般客からの注文は、ウェブサイト等を通じたものが主であるが、業者からの注文は、本件倉庫に設置したファックスや電子メールによるものが中心であり、業者からの注文を受け付ける業者販売専用としてファックスによる業者販売用商品の受注等が行われていた。 4 業者からの注文は、ほとんど全てが電子メールにより受注されており、これは倉庫に設置された機器とは全く関係なく、請求人がS国に有していた事務所に設置されたパソコンにより受信をしていた。電話機兼ファックスは、倉庫内で作業しているパート従業員が、商品の発送のために宅配便業者に連絡するためなどに用いていたのであり、商品の注文を電話で受注することも、購入者からの電話に応対することもなかった。
5 請求人は、出国後も、ウェブサイト等に、連絡先の住所及び電話番号として本件アパートの所在地及び同室の電話番号を掲載しており、また、商品発送伝票の依頼主欄に記載するなど、請求人が外形的に国内事業者の体裁を整えるための施設として使用されていたことを踏まえると、日本を基盤とする請求人の事業において、取引に係る請求人の信用力を増大させ、国内顧客を獲得するという意味で、引き続き重要な役割を果たしていることが認められる。 5 事業の場所とは、現実に事業活動を行っている場所を指すのであって、対外的に事業の場所として表明されているか否かは関係がない。本件アパートにおいて何らかの事業活動が実際に行われていない限り、このような記載があるからと言って、本件アパートが事業を行う場所という恒久的施設の定義に当てはまるものではない。
6 請求人の国内顧客との取引形態は、請求人が出国した後も、本件アパートを事業所として、対外的な機能及びそこで行われる一連の作業に何ら変化がなく、平成18年12月1日に本件倉庫にその作業の場所を移すまでの間、出国前と同様に、請求人の事業における中核的な施設としての機能を有していた。
 また、平成18年12月1日以後は、本件倉庫が、本件アパートに代わって上記機能を果たしているものと認められる。
6 請求人の出国日以後も出国日以前と変わることなく行われていたのは、商品の保管及び発送に係る作業であり、本件事業の中心的な活動である、仕入れ、ウェブサイトの管理、顧客対応、受注、商品契約の成立、管理、支払及び集金に係る活動は、請求人の出国以降は請求人がS国に有していた事務所において行われていたものである。
7 日S租税条約第5条第4項は、第1項の例外として、事業を行う一定の場所であっても、準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として保有している場所は恒久的施設に該当しない旨規定しており、同項にいう「準備的又は補助的な性格を有する活動」とそのような性格を有しない活動とを区分する決定的な基準は、事業を行う一定の場所での活動それ自体が、企業の全体としての活動の本質的及び重要な部分を形成するか否かであると解されている。
 なお、請求人が出国前に原処分庁の職員にしたとする恒久的施設に関する質問に対する回答の事実については、対応した職員はどのような回答をしたか記憶しておらず、請求人主張の事実は直接確認することはできなかった。
7 日S租税条約第5条第4項は、「事業を行う一定の場所」であっても、「企業に属する物品又は商品の保管、展示又は引渡しにのみ施設を使用する」場合は、そのような場所は恒久的施設には当たらないと規定されている。
 この規定によれば、そのような活動自体が、企業の全体としての活動の本質的な部分及び重要な部分を形成するか否かという判断を改めて行うことなく、当該「事業を行う一定の場所」において行われている活動が、上記のようなカテゴリーに該当する活動である限り、当該場所は恒久的施設には当たらないと規定されているものである。
 なお、日S租税条約第5条第4項においては、上記に加えて、「企業のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として事業を行う一定の場所を保有する」場合や、「同条第4項の(a)ないし(e)までに掲げる活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有する」場合にも、恒久的施設に当たらないものとされている。
 したがって、請求人の事業において、本件アパート及び本件倉庫で行われていた請求人に属する商品の保管・発送行為は、商品の保管・発送自体が請求人の事業にとってどのような重要性を持つかに関わらず、本件アパート及び本件倉庫を請求人の恒久的施設とする根拠にはならない。
 なお、請求人は、出国する前に、原処分庁所属の職員に対し電話で請求人の行う事業に関し、本件アパート及び本件倉庫が恒久的施設に該当するか否かを問い合わせたが、応対した職員から当該施設は恒久的施設には該当しない旨の回答を得ている。
争点2 推計の方法による事業所得の認定に合理性が認められるか否か。
原処分庁 請求人
 請求人の本件各年分の所得金額の算出において、請求人自身の平成16年分の所得率を適用したことは、請求人の業態(インターネットによる○○の輸入販売)の特殊性から合理的なものである。  原処分庁が行った所得金額の算出において、平成16年分に比較して新たにS国の経費が発生しているから、請求人の平成16年分の所得割合(14.28%)を適用したことは合理的な根拠がない。

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