(平成23年12月20日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、請求人の理事長であった者に対する貸付債権及び未収利息債権について、その支払を免除したところ、原処分庁が、その債務免除に係る経済的利益は同人に対する役員賞与に該当するとして、源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)の納税告知処分等を行ったことに対し、請求人が、原処分庁の認定には誤りがあるとして、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

 審査請求(平成22年12月20日請求)に至る経緯及び内容は、別表1のとおりである。
 以下、平成22年7月20日付でされた平成19年12月分の源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を、それぞれ「本件納税告知処分」及び「本件賦課決定処分」という。

(3) 関係法令等

イ 所得税法第28条《給与所得》第1項は、給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下「給与等」という。)に係る所得をいう旨規定している。
ロ 所得税法第36条《収入金額》第1項は、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする旨規定し、同条第2項は、同条第1項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする旨規定している。
ハ 所得税基本通達(昭和45年7月1日付直審(所)30の国税庁長官通達)36−17《債務免除益の特例》は、債務免除益のうち、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けたものについては、各種所得の金額の計算上収入金額又は総収入金額に算入しないものとする旨定めている。
ニ 民法第95条《錯誤》は、意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする旨規定し、同条ただし書は、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない旨規定している。

(4) 基礎事実

 次の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人の概要等
(イ) 請求人は、a市に事務所を置き、○○及びその加工品の買付けを主たる目的とし、平成19年において、後記(ロ)のとおり、代表者の定めがある、所得税法第2条《定義》第1項第8号に規定する「人格のない社団等」であるとともに、同法第6条《源泉徴収義務者》に規定する源泉徴収義務者である。
(ロ) 請求人は、その定款を要旨次のとおり定めている。
A 理事長1名、専務理事1名を理事の互選をもって定める。
B 理事長は請求人を代表し、請求人事務を総理し、専務理事は理事長を補佐し、請求人の常務を執行する。
C 出資金は○○○○円とし、これを○○○○口に分けて一口の出資の金額は50円とする。
D 決算期は年1回とし、毎年1月1日から12月31日までとする。
E 通常総会は毎決算終了後3か月以内に招集する。
F 総会における議決権は一口をもって一個とし、議決は総口数の過半数をもってこれを定める。
G 一決算期における剰余金は、積立金を控除し残金がある時には、これを組合員に分配することができるものとし、剰余金の分配は、決算期末における組合員の払込出資金額に応じて行う。
(ハ) 請求人は、○○の販売等を目的とするP4社、○○業等を目的とするP5社及び○○業等を目的とするP6社と共に「○○グループ」と称する企業グループを構成している。
(ニ) P7は、平成19年において、請求人の出資総額○○○○円(○○○○口)のうち出資金額4,187,500円(83,750口)を有し、平成6年3月17日から請求人の理事長及び理事に就任していたが、平成22年6月17日に理事長及び理事を辞任した(以下、P7を「P7理事長」という。)。
 また、P7理事長は、P4社の発行済株式総数20,000株のうち6,500株(平成19年10月以後は2,000株)を有し、平成元年9月1日から現在に至るまでP4社の代表取締役に、P5社の発行済株式総数200株のうち100株を有し、昭和62年9月26日から現在に至るまでP5社の取締役に、P6社の発行済株式総数200株のうち40株を有し、昭和57年7月1日から現在に至るまでP6社の取締役にそれぞれ就任している。
ロ 債務免除契約等
(イ) 請求人は、平成19年1月1日現在において、P7理事長に対し、貸付債権5,397,000,000円及び未収利息債権237,400,000円の合計5,634,400,000円の債権を有していたところ、請求人は、同月11日、P2(当時専務理事)が議長となった理事会において、貸付債権5,397,000,000円のうちP7理事長が「株式部門」の名称で区分する債権2,659,280,339円については同月1日以後の利息を免除し、P7理事長が「不動産部門」の名称で区分する債権2,737,719,661円の利息については年利0.5%から年利0.2%に引き下げる旨、その後、同年3月26日、P2が議長となった理事会において、P7理事長が「不動産部門」の名称で区分する債権2,737,719,661円についても、同年4月1日以後の利息を免除する旨それぞれ決議した。
 平成19年1月以後、P7理事長が、請求人に対して支払った利息は、同年1月11日の理事会で利息を減額した貸付債権2,737,719,661円に係る同年1月1日から同年3月31日までの利息1,350,107円(2,737,719,661円の年利0.2%の利息を同年1月から同年3月までの各月について日割計算し、それぞれ1円未満の端数を切り捨てた後の金額を合計した金額)である。
(ロ) その後、P7理事長は、請求人に対し、借入れ、弁済を繰り返し、請求人は、平成19年12月10日現在、P7理事長に対し、貸付債権○○○○円及び未収利息債権236,500,000円の合計○○○○円の債権を有していた(以下、この請求人のP7理事長に対する金銭債権○○○○円を「本件債権」といい、本件債権に対するP7理事長の債務を「本件債務」という。)。
(ハ) P3税務署長は、P7理事長に係る平成15年分、平成16年分及び平成17年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分に対してP7理事長が平成19年5月7日付でした異議申立てについて、P7理事長が債権回収業務の受託者であるP8社(以下「P8社」という。)から平成17年7月31日付で受けた債務免除益は、所得税基本通達36−17に定める「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けたもの」に該当するとして所得の金額の計算上収入金額に算入しない旨記載した平成19年8月6日付の異議決定書(以下「P7理事長異議決定書」という。)の謄本をP7理事長に送達した。
(ニ) 請求人は、P7理事長及びP7理事長の元妻のP9(以下、P7理事長及びP9を併せて「P7理事長ら」という。)から、別表2の各不動産(以下「本件譲渡不動産」という。)を請求人に譲渡するので本件債務の支払を免除してほしいとの申出を受けた。
 これを受けて、請求人は、平成19年12月9日、P2が議長となる理事会を開催したところ、議長が、現在、P7理事長は、請求人に対し、○○○○円の債務(本件債務)を負い、P9は、本件債務につき連帯保証債務を負うところ、P7理事長らから、請求人に対し、本件譲渡不動産を譲渡するので本件債務の支払を免除してほしいとの申出を受けた旨、P7理事長は債務超過の状態が長期間継続し、○○グループに属する会社が本件譲渡不動産の一部について長期間賃借して建物を建築して会社運営を行っていることから、P7理事長らが第三者に本件譲渡不動産を譲渡して本件債務の支払に充てることになれば、請求人の運営上支障を招き、また、P7理事長らが現状で本件譲渡不動産を第三者に譲渡しようとしても、その譲渡価額が著しく低額になる可能性が高く、その結果、請求人のP7理事長らからの本件債権の回収金額が少額となることが予想される旨説明した。
 それに続き、議長が、本件譲渡不動産の譲渡代金債務と本件債務とを相殺した後に残った本件債務の残債務○○○○円の支払債務及び連帯保証債務を免除する旨を内容とする不動産売買付きの債務免除契約を締結することの承認を諮ったところ、請求人は、上記理事会において、これを承認する決議をした。
 なお、P7理事長は、上記理事会の議案について、利害関係人に当たるため、その決議に参加しなかった。
(ホ) 請求人は、上記(ニ)の理事会の決議に基づき、平成19年12月10日、P7理事長らとの間で、要旨次の内容の契約を締結した(以下、この契約を「本件不動産売買付債務免除契約」という。)。
A P7理事長らは、請求人に対し、P7理事長らが所有又は共有する本件譲渡不動産を合計726,409,699円(うち、P9の共有持分の代金45,141,061円)で売り渡し、請求人はこれを買い受けた。
B P7理事長は、平成19年12月10日現在、本件債務を負担していることを承認する。
C P9は、請求人に対し、本件債務につき連帯保証債務を負担していることを承認する。
D 請求人とP7理事長は、平成19年12月10日、請求人のP7理事長に対する本件譲渡不動産の売買代金債務681,268,638円(上記Aの726,409,699円から45,141,061円を差し引いた金額)とP7理事長の請求人に対する本件債務を対当額で相殺する。
E 請求人とP9は、平成19年12月10日、請求人のP9に対する本件譲渡不動産の売買代金債務45,141,061円とP9の請求人に対する上記Cの連帯保証債務を対当額で相殺する。
F 請求人は、P7理事長に対し、P7理事長の債務超過の状態が長期間継続しP7理事長に対する本件債権の弁済を受けることができないと認め、上記D及びEの相殺後に残った本件債務の残元金○○○○円の支払債務を免除する(以下、この契約による債務免除を「本件債務免除」といい、この契約による債務免除の額○○○○円を「本件債務免除額」という。)。
G P7理事長ら及び請求人は、各当事者間には本件不動産売買付債務免除契約に定めるほか何ら債権債務のないことを相互に確認する。
(ヘ) 本件不動産売買付債務免除契約に基づき、本件譲渡不動産のうち別表2の順号1から3までの各不動産について、いずれも平成20年9月25日に、平成19年12月10日売買を原因として、P7理事長からP5社を所有者とする所有権移転登記が経由された。
 なお、P5社を所有者とする所有権移転登記は、請求人が人格のない社団等であり、請求人を所有者とする登記ができないため、請求人がP5社に対し、P5社の名義で所有権移転登記申請手続を行うことを依頼したことに基づくものである。
ハ 本件不動産売買付債務免除契約に係る経理処理等
(イ) 請求人は、平成19年12月31日付の振替仕訳により、○○○○円(本件債権の額)を、本件譲渡不動産の譲渡代金726,409,699円と相殺し、残債権額○○○○円(本件債務免除額)を同年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の総勘定元帳上、債務免除損勘定に計上する別表3の経理処理を行い、当該債務免除損を雑損失の科目に記載した損益計算書等を作成した。
 請求人は、本件債務免除額について、所得税法第183条《源泉徴収義務》第1項に規定する所得税を徴収せず、本件納税告知処分がされるまで徴収すべき所得税を納付しなかった。
(ロ) 請求人は、平成20年3月25日の定時出資者総会において、本件債務免除額を債務免除損に計上するなどした経理処理に基づき、債務免除損が雑損失の科目に記載されるなどした本件事業年度の損益計算書とともに営業報告書、貸借対照表、財産目録を承認決議した。
ニ 本件債務免除の無効通知の経緯等
(イ) 原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)の担当者(以下「本件調査担当者」という。)は、平成22年5月11日、請求人の法人税等の調査を開始し、同日、請求人は、本件調査担当者から、本件債務免除に係る経済的利益○○○○円(以下「本件債務免除益」という。)はP7理事長の給与所得に該当する可能性があり、請求人は本件債務免除益について源泉徴収義務を負う可能性がある旨の説明を受けた。
(ロ) 請求人は、平成22年6月17日午前に開催された理事会において、P7理事長が請求人に提出した、P7理事長が理事長及び理事から辞任するとの辞任届を受理することを承認するとともに、P2を新たな理事長に選任する決議をし、さらに、同日午後に開催された理事会において、議長であるP2が、本件調査担当者から、本件債務免除益はP7理事長に対する給与とみなされ、請求人はその源泉徴収義務者となることが指摘された旨説明した後、本件債務免除により請求人に源泉徴収義務が課された場合、追加資金が必要になってくることは免除した趣旨に反することになるから、本件不動産売買付債務免除契約のうち本件債務免除に係る部分は錯誤により無効であること、また、これを書面でP7理事長に通知することを決議した。
 なお、P7理事長は、上記各理事会のいずれの決議にも参加しなかった。
(ハ) 請求人は、平成22年6月17日付の仕訳により、同年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「平成22年12月期」という。)の総勘定元帳上、相手科目を雑収入勘定として貸付金勘定の借方に○○○○円(本件債務免除額)を計上する経理処理をした。
(ニ) 請求人は、平成22年6月21日、P7理事長に対して、本件調査において、本件債務免除により請求人に源泉課税されることが指摘されたことは要素の錯誤に該当し、本件不動産売買付債務免除契約のうち本件債務免除に係る部分の無効を主張する旨記載した同日付の「通知書」と題する書面(以下「本件通知書」という。)を書留内容証明郵便物として送付し、同月24日、本件通知書はP7理事長に配達された。

(5) 争点

  1. 争点1 請求人は、本件債務免除益について源泉徴収義務を負うか否か。
  2. 争点2 請求人は、税負担に関する錯誤を理由として、本件債務免除の錯誤無効を原処分庁に対して主張できるか否か。

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2 主張

(1) 争点1(請求人は、本件債務免除益について源泉徴収義務を負うか否か。)

原処分庁 請求人
 請求人は、次のとおり、本件債務免除益について源泉徴収義務を負う。
イ 法人の役員が当該法人から一定の利益を支給された場合、その支給が役員の立場を離れて全く無関係になされるという特段の事由がない限り、一般的に給与所得とみるのが相当であると解されている。
 本件についてみると、本件債務免除によりP7理事長は請求人から一定の経済的利益を支給されたものであり、かつ、本件債務免除は、P7理事長らから本件譲渡不動産を請求人に譲渡するので、債務免除を行ってほしい旨の申出があり、これに請求人が応じたものであること、本件債務免除を決議した理事会は、P7理事長の請求人に対する貢献度の大きさなどを考慮して本件債務免除を決議したのであり、P7理事長の資産状況、支払能力等からP7理事長に対する債権が回収できないことが明らかになったことを理由として決議していないことからすれば、本件債務免除は、P7理事長が請求人の役員であったことからなされたものであり、P7理事長が請求人の役員でなければ到底なされることがなかったと認められるから、本件債務免除は、P7理事長が請求人の理事長という立場に基づいて行われたもので、理事長の立場を離れて全く無関係になされたとは認められないから、請求人は、P7理事長に対し、所得税法第28条第1項に規定する給与等の支払をしたものとみるのが相当である。
 そして、源泉所得税の納税義務は、その給与等の支払の時に成立し、その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定するものであるから、本件債務免除が行われたと認められた時点で、源泉徴収義務が同時確定するから、請求人は、本件債務免除益について源泉徴収義務を負うのであり、P7理事長が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に該当するか否かは請求人の源泉徴収義務に何ら影響しない。
ロ 仮に、所得税基本通達36−17の定めにより本件債務免除益がP7理事長の所得の金額の計算上収入金額に算入されるか否かが請求人の源泉徴収義務に影響するとしても、本件債務免除は、P7理事長の資産状況、支払能力等からP7理事長に対する債権が回収できないことが明らかになったことを理由として行われたものではない上、P7理事長は、弁済に充てるべき資産を有しながら、これを債務の弁済に充てず、多額の資産を保有したまま本件債務免除を受けたのであるから、P7理事長が債務超過で資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であったということはできない。
 そうすると、P7理事長は上記通達の「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に該当しないから、本件債務免除益は、P7理事長の所得の金額の計算上収入金額に算入されるのであり、請求人は、本件債務免除益について源泉徴収義務を負う。
ハ また、請求人は、本件債務免除は、法人税基本通達(昭和44年5月1日付直審(法)25の国税庁長官通達)9−6−2《回収不能の金銭債権の貸倒れ》に定める貸倒れに該当すると主張するが、本件債務免除は、上記ロのとおり、P7理事長の資産状況、支払能力等からP7理事長に対する債権が回収できないことが明らかになったことを理由として行われたものではない上、P7理事長は、弁済に充てるべき資産を有しながら、これを債務の弁済に充てず、多額の資産を保有したまま本件債務免除を受けたのであるから、当該通達に定める「貸倒れ」に該当しない。
 請求人は、次のとおり、本件債務免除益について源泉徴収義務を負わない。
イ P7理事長は、以前から債務超過の状態にあり、P3税務署長が、P7理事長が平成17年7月31日付で債権回収業務の受託者たるP8社から受けた債務免除益について、所得税基本通達36−17に定める「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けたもの」に該当するとして所得の金額の計算上収入金額に算入しない旨の判断を平成19年8月6日付のP7理事長異議決定書に記載しているとおり、P7理事長は、平成17年の時点で「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に該当し、その後、特に財産形成されたことはなかったから、本件債務免除を受けた時点においても、P7理事長は、当該通達に定める「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に該当する。
ロ また、仮に、原処分庁が主張するように、本件債務免除益について請求人に源泉徴収義務があるとすると、請求人は本件債務免除益から源泉所得税を徴収することができないため、請求人はP7理事長に対して源泉所得税相当額の債権を取得し、P7理事長はこれに対応する債務を負うことになるが、その場合、P7理事長は、更に債務超過に陥ると同時に資力を喪失して当該債務を弁済することが著しく困難になると認められる。
 そこで、本件債務免除によりP7理事長への経済的利益の供与が認められるとしても、P7理事長は所得税基本通達36−17の定めに該当することになるから、本件債務免除益は、P7理事長の所得の金額の計算上収入金額に算入されないことになる。
 そうすると、P7理事長の所得の金額の計算上収入金額に算入されない本件債務免除益について、源泉所得税が課されることはないから、請求人は源泉徴収義務を負わない。
ハ また、法人税基本通達9−2−9《債務の免除による利益その他の経済的な利益》の本文及び(4)の括弧書は、貸倒れに該当する場合は、法人の役員等に対する債務の免除による利益は法人税法第34条《役員給与の損金不算入》第4項に規定する役員給与に含まれる債務の免除による利益には該当しない旨定めており、これは税法の適用上、法人とみなされる人格のない社団等についても同様に適用されるべきであるから、上記イのとおり、「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に該当するP7理事長に対する本件債務免除は法人税基本通達9−6−2に定める貸倒れに該当し、本件債務免除益は役員給与とならない。
 そうすると、本件債務免除益は役員給与とならないのであるから、請求人は源泉徴収義務を負わない。

(2) 争点2(請求人は、税負担に関する錯誤を理由として、本件債務免除の錯誤無効を原処分庁に対して主張できるか否か。)

請求人 原処分庁
 請求人は、上記(1)の「請求人」欄のイのとおり、P7理事長が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合であったことから、所得税基本通達36−17の適用があり、本件債務免除によって課税関係が生じることは全く予定していなかったのであり、仮に本件債務免除に伴い多額の課税関係が発生することが当初から判明していれば、請求人が本件債務免除を行うことはなかった。
 そして、請求人とP7理事長は、共に、本件債務免除益について課税関係が生じることはないとの前提で、本件不動産売買付債務免除契約を締結したのであるから、最高裁判所平成元年9月14日第一小法廷判決(昭和63年(オ)第385号建物所有権移転登記抹消登記手続請求事件)が判示する錯誤無効が認められる場合に該当する。
 そうすると、請求人が行った本件債務免除は錯誤により無効であり、給与所得とされる本件債務免除益は初めからないことになるから、本件納税告知処分に係る課税要件は存在しない。
 このように錯誤無効が成立する場合、当然、請求人は、本件債務免除について、税負担に関する錯誤を理由として、本件債務免除の錯誤無効を原処分庁に対して主張できる。
 なお、原処分庁は、錯誤無効が成立するにも関わらず、源泉所得税の法定納期限後においてはその錯誤無効は認められない旨主張するが、民法の法律行為に関する基本原則及び最高裁判所判決を無視する全く法的根拠のない違法な主張である。
 給与所得者に対する所得税の徴収方法として源泉徴収制度を採用し、源泉徴収義務の違反や脱税に対しては加算税等を課して、適正な納税がなされることを期待している我が国の租税制度の下において、安易に源泉徴収義務の発生の原因となる法律行為の事後的な錯誤無効の効果を認めて、当該源泉徴収義務を免れさせることは、源泉徴収義務者間の公平を害するとともに、租税法律関係を不安定にし、ひいては源泉徴収制度の破壊につながるといわなければならない。
 したがって、源泉徴収義務者は、源泉徴収義務の発生の原因となる私法上の法律行為を行った場合、税務調査によって、当該法律行為の際に予定していなかった納税義務が生じたり、当該法律行為の際に予定していたものよりも重い納税義務が生じることが判明した結果、この課税負担の錯誤が当該法律行為の錯誤であるとして、当該法律行為が無効であることを、その源泉所得税の法定納期限を経過した以後に主張することはできない。
 そうすると、請求人は、本件債務免除により源泉徴収義務を負い、所得税を徴収し、法定納期限(平成20年1月10日)までに納付することになるが、その法定納期限を経過した後に、本件調査によって、本件不動産売買付債務免除契約の際に予定していなかった納税義務が生じることが判明しても、本件債務免除の錯誤無効を原処分庁に対して主張することはできない。

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3 判断

(1) 争点1(請求人は、本件債務免除益について源泉徴収義務を負うか否か。)

イ 法令解釈等
(イ) 債務免除益は、所得税法第36条第1項括弧書に規定する「その他経済的な利益」に該当するから、各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額となるところ、上記1の(3)のハのとおり、債務免除益に関して、所得税基本通達36−17は、その本文において、債務免除益のうち、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けたものについては、各種所得の金額の計算上収入金額又は総収入金額に算入しないものとする旨定めている。
 上記通達の定めは、支払能力のない債務者が債務の弁済を免れてもそのことによって担税力のある所得を得たものとみるのは必ずしも実情に即したものではないことから、収入金額に算入しない取扱いとすることによって積極的に課税することを避ける趣旨で定められたものであり、当審判所においても相当と認められる。
 そして、上記通達に定める「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」とは、上記趣旨から、債務者が、単に債務超過の状態にあるだけでは足りず、債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達できず、支払能力のないものと認められる場合をいうと解される。
 また、上記通達は、所得税法第36条第1項に規定する各種所得の金額の計算上収入金額又は総収入金額に算入すべき金額について定めたものであり、10種類に類別される所得のうち特定のものについて又は特定のものを除外して定められたものとは解されないから、給与所得に係る源泉所得税についても適用されるものであり、上記通達の定める取扱いにより、各種所得の金額の計算上収入金額又は総収入金額に算入しない債務免除益は、その支払の際も、給与所得の金額の計算上収入金額に算入されず、その支払者に源泉徴収義務は生じないものと解するのが相当である。
(ロ) 所得税法第28条第1項に規定する給与所得とは、俸給、給与、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいい、雇用契約又はこれに類する関係において、非独立的労働ないし従属的労働の対価として他人から受ける報酬及び実質的にこれに準ずる給付に係る所得であると解されるが、法人又は社団(以下「法人等」という。)の役員は、当該法人等と委任関係にあり、その委任事務処理に関して善管注意義務を負い、役員としての空間的、時間的拘束を受け、継続的ないし断続的な労務又は役務に従事するものであることに照らせば、法人等の役員が当該法人等から一定の利益を受けた場合、その利益の享受が役員の立場を離れて全く無関係になされるという特段の事情がない限り、役員としての地位、労務又は役務に対する広義の対価としてなされたものとみるのが自然であるから、これを給与(賞与)所得とみるのが相当である。
ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件債務免除時のP7理事長の資産及び負債の金額
 P10銀行a支店のP7理事長名義普通預金口座(番号○○○○。以下「本件P10銀行預金口座」という。)に係る「取引明細表」、P11銀行c支店のP7理事長名義普通預金口座(番号○○○○。以下「本件P11銀行預金口座」という。)に係る「取引推移一覧表」、P12銀行d支店のP7理事長名義普通預金口座(番号○○○○。以下「本件P12銀行預金口座」という。)に係る「お取引明細」、P13銀行d支店のP7理事長名義普通預金口座(番号○○○○。以下「本件P13銀行預金口座」という。)に係る「普通預金元帳」、原処分庁作成の「有価証券評価額」と題する書面、請求人、P4社、P5社及びP6社の各貸借対照表、不動産登記記録の全部事項証明書、原処分関係資料などから、P7理事長が本件債務免除を受けた時のP7理事長の資産及び負債はそれぞれ別表4及び別表5のとおりであり、P7理事長は、本件債務免除時において、債務超過の状態にあったことが認められる。
(ロ) P7理事長に対する貸付債権の担保
 上記1の(4)のロの(ニ)及び(ホ)の理事会の議事録及び本件不動産売買付債務免除契約の契約書から、請求人は、P9に請求人のP7理事長に対する貸付債権の連帯保証債務を負わせていた他、請求人の平成10年5月18日付臨時出資者総会議事録から、請求人のP7理事長に対する貸付債権の担保として、請求人の出資証券をP7理事長本人から252,260口、P4社から28,000口、P5社から2,000口、P2から64,350口、P14から50,400口及びP15から57,000口の合計454,010口(請求人の総出資口数の約○○%)を差し入れさせたことが認められる。
 しかし、上記1の(4)のロの(ロ)、(ニ)及び(ホ)並びに上記1の(4)のハのとおり、請求人は、本件債務免除の際、P7理事長らに対し、本件譲渡不動産の譲渡代金債務と本件債務とを相殺した後の本件債務の残債務の支払債務を免除したのであるから、請求人が、P9に本件債務の全額について連帯保証債務を現実に履行させたことはなく、上記貸付債権の担保とされた出資証券についても本件債権の回収のために処分しなかったものと認められる。
(ハ) P7理事長が所有する不動産等
 不動産登記記録の全部事項証明書及びP7理事長の平成19年分の所得税の確定申告書に添付された平成19年分収支内訳書(不動産所得用)から、P7理事長は、本件債務免除前、別表2の各不動産(本件譲渡不動産)の他、P7理事長の自宅建物(敷地はP9名義である。)を含む別表6の順号2から7までの各不動産を所有又は共有していたこと、平成19年において○○○○円の不動産賃貸収入を得ていたことが認められ、平成20年においても、本件不動産売買付債務免除契約がなければ、おおむね同額の不動産賃貸収入を得ていたものと認められる。
 また、上記1の(4)のロの(ホ)及びハのとおり、本件債務免除の際、請求人は、P7理事長らから本件譲渡不動産を譲り受けただけであったから、P7理事長は、本件債務免除後も別表6の順号2から7までの各不動産を保有し続けることができたこと(以下、この別表6の順号2から7までの各不動産を「本件残存不動産」という。)、P7理事長は、別表6の順号3から5までの各不動産を賃貸し、平成20年において○○○○円の不動産賃貸収入を得ていたことが認められる。
(ニ) P7理事長の役員給与
 P7理事長の平成19年分及び平成20年分の所得税の各確定申告書に添付された当該各年分の給与所得の源泉徴収票から、P7理事長は、請求人の理事長及びP4社の代表取締役として、平成19年に請求人から○○○○円、P4社から○○○○円の合計○○○○円の役員給与を受給していたこと、平成20年においても請求人から○○○○円、P4社から○○○○円の合計○○○○円の役員給与を受給していたことが認められる。
 このうち、P7理事長が請求人から受給していた平成19年の役員給与○○○○円について、請求人作成のP7理事長に係る「平成19年分所得税源泉徴収簿(給与台帳)」(以下「本件給与台帳」という。)によれば、請求人は、P7理事長に対し、各月とも、月額給与額○○○○円から社会保険料、所得税等を差し引いた金額を支給していたことが認められ、そして、本件P10銀行預金口座の平成19年1月から3月までの期間に係る「取引明細表」及び本件P11銀行預金口座の平成19年4月から12月までの期間に係る「取引推移一覧表」によれば、当該各預金口座に、各月とも、月額給与額○○○○円から社会保険料、所得税等が差し引かれた金額と同額の金員が振り込まれていたことが認められる。
 そうすると、請求人は、平成19年において、P7理事長の役員給与からP7理事長に対する債権の回収を行うことはしなかったことが認められる。
(ホ) 請求人の剰余金の分配
 請求人が作成した「○期」及び「○期」と題する書面から、請求人は、上記1の(4)のイの(ロ)のGの剰余金を分配する定款の定めに基づき、P7理事長に対し、○期(平成18年1月1日から同年12月31日までの事業年度に係るもの)において剰余金418,750円(出資1口当たり5円に相当する金額)、○期(本件事業年度に係るもの)において剰余金837,500円(出資1口当たり10円に相当する金額)をそれぞれ分配する計算を行っていることが認められ、そして、本件P10銀行預金口座の平成19年4月に係る「取引明細表」によれば、平成19年4月3日に本件P10銀行預金口座に請求人から418,750円の金員が振り込まれ、本件P11銀行預金口座の平成20年4月に係る「取引推移一覧表」によれば、平成20年4月14日に本件P11銀行預金口座に請求人から837,500円の金員が振り込まれたことが認められる。
 そうすると、請求人は、上記各剰余金の分配に際し、P7理事長に対する債権の回収を行うことはしなかったことが認められる。
(ヘ) P7理事長のその他の収入
 P7理事長の平成19年分及び平成20年分の所得税の各確定申告書、本件P10銀行預金口座の平成19年6月及び同年12月に係る「取引明細表」並びに資料情報カード(所得税法第225条《支払調書及び支払通知書》第1項本文及び第2号の規定に基づき配当等の支払をする者がP3税務署長に提出した配当等の支払調書を基に作成されたP7理事長が平成20年に支払を受けた配当等の金額等が記載されたもの)から、P7理事長は、平成19年において配当収入○○○○円及び上記(ホ)の剰余金の分配を除く雑所得に係る収入○○○○円を、平成20年において配当収入○○○○円及び上記(ホ)の剰余金の分配を除く雑所得に係る収入○○○○円を得ていたことが認められる。
(ト) P7理事長のP4社に対する債務等
 P4社の補助元帳及びP7理事長がP4社に宛てた「貸付願」と題する書面から、P4社は、本件債務免除当時、P7理事長に対する貸付金残高は80,000,000円であったこと、しかし、本件債務免除後、P7理事長に対し、平成20年1月4日から同月24日までの間に19回にわたり合計122,000,000円の追加貸付けを行って貸付金残高は202,000,000円となったこと、その後、弁済、貸付けが繰り返され、P4社のP7理事長に対する同年12月30日現在の貸付金残高は453,000,000円になったことが認められる。
ハ 判断
(イ) 所得税基本通達36−17の適用について
A 上記イの(イ)のとおり、所得税基本通達36−17に定める「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」とは、債務者が、単に債務超過の状態にあるだけでは足りず、債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達できず、支払能力のないものと認められる場合をいうと解される。
B これを本件についてみると、上記ロの(イ)のとおり、P7理事長は、本件債務免除時において、債務超過の状態であったものの、上記ロの(ハ)から(ヘ)までのとおり、請求人が本件債務免除を行った際、P7理事長は、○○○○円に上る収入及び別表4の「合計」欄の金額1,840,784,244円に相当する資産から本件債務の一部を弁済することができたと認められる。
 また、上記ロの(ハ)のとおり、P7理事長は、その所有不動産から、平成19年において○○○○円の不動産賃貸収入を得ていた他、本件不動産売買付債務免除契約がなければ、平成20年においてもおおむね同額の不動産賃貸収入を得ていたものと認められること、上記ロの(ニ)から(ヘ)までのとおり、P7理事長は、平成20年において、○○○○円の役員給与を得て、837,500円の剰余金の分配を受けていた他、○○○○円の配当収入及び○○○○円の雑所得に係る収入をそれぞれ得ていたこと、さらに、上記ロの(ト)のとおり、P7理事長は、本件債務免除直後、P4社から多額の追加借入れを受けていたことに照らせば、請求人が本件債務免除を行った際、P7理事長は、将来において、P4社からの追加借入れによって本件債務の一部を弁済するほか、その他の収入からも本件債務の一部を弁済し続けることができたものと認めるのが相当である。
 そうすると、P7理事長は、その所有する資産から本件債務の一部を弁済することができただけでなく、その信用、才能等を活用すれば、将来において、本件債務の一部を弁済するための資金を調達することができたものと認められるから、所得税基本通達36−17に定める「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に当たらないものとみるのが相当である。
(ロ) 給与所得該当性について
A 上記イの(ロ)のとおり、法人等の役員が当該法人等から一定の利益を受けた場合、その利益の享受が役員の立場を離れて全く無関係になされるという特段の事情がない限り、その利益を給与所得とみるのが相当である。
B これを本件についてみると、本件調査担当者が作成したP2の聴取書によれば、P2は、本件調査担当者に対し、本件債務免除は、請求人に対するP7理事長の長年にわたる貢献の大きさを理由としている旨申述している上、請求人は、上記ロの(ロ)のとおり、一般債権者であれば通常行うはずの貸付債権の担保からの回収を行わなかったこと、上記ロの(ハ)のとおり、P7理事長にその自宅建物を残しただけでなく、年間○○○○円の不動産賃貸収入を得ることができる本件残存不動産を残したこと、上記ロの(ニ)及び(ホ)のとおり、P7理事長の役員給与や剰余金の分配からも貸付金の回収をしていないことなどを考慮すれば、本件債務免除は、P7理事長が請求人の理事長としての地位、労務又は役務に対する広義の対価としてなされたものと認められ、本件債務免除が、P7理事長が請求人の理事長であることと無関係になされたものと認めるべき特段の事情は認められないから、本件債務免除益は所得税法第28条第1項に規定する給与所得とみるのが相当である。
 なお、請求人は、平成23年6月30日付の反論書において、P2の本件調査担当者に対する上記申述は、税務調査に慣れない忙しい中で行われたことから、P2が早く調査を済ませようと思って調査担当者が言うがまま聴取書に押印したものであるとしてその信用性を争うが、P2は、本件調査担当者に対し、P7理事長異議決定書を理由にP7理事長は資力がないと判断し、本件債務免除について給与課税しないでいいと考えていた旨の請求人の言い分を申述していること、また、P7理事長の貢献についても、以前、P7理事長について査察事件があった時、P7理事長が責任を負うことで請求人に対する課税がなかったという貢献があるなどと付け加える申述をしていることからすれば、P2は本件調査担当者が言うがまま聴取書に押印したものとは認められないから、P2の上記申述の信用性は否定されない。
(ハ) まとめ
 以上のとおり、本件債務免除益は、所得税基本通達36−17に定める「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けたもの」に当たらず、かつ、P7理事長に対する給与と認められるから、請求人は、本件債務免除時に、本件債務免除益について源泉徴収義務を負うことになる。
(ニ) 請求人の主張について
A 請求人は、上記2の(1)の「請求人」欄のイのとおり、P3税務署長が、P7理事長異議決定書において、平成17年7月31日付でP8社から受けた債務免除益について、所得税基本通達36―17に定める「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けたもの」に該当すると判断したことをもって、P7理事長は平成17年の時点で「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に当たり、その後、特に財産形成されていないから、本件債務免除時においても、「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に該当する旨主張する。
 しかしながら、P7理事長が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に債務免除を受けたものであるか否かは、本件債務免除時において判断されるのであり、本件債務免除時にP7理事長が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に当たらないことは、上記(イ)のBのとおりである。
 また、P7理事長異議決定書に記載されたP3税務署長の判断は、同税務署長が当時の調査によって収集された範囲の証拠から認定できた事実に基づいてした判断にすぎず、平成19年の源泉所得税の課税関係について、当審判所はもちろん原処分庁もその判断に拘束されるわけではないから、上記(イ)のBの認定を左右するものではない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
B 請求人は、上記2の(1)の「請求人」欄のロのとおり、請求人に源泉徴収義務があるとすると、P7理事長は、請求人に対し源泉所得税相当額の債務を負うことになり、更に債務超過に陥ると同時に資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難になるから、所得税基本通達36−17の定めに照らし、請求人は源泉徴収義務を負わない旨主張する。
 しかしながら、P7理事長が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に債務免除を受けたものであるか否かは、本件債務免除時において判断されるのであり、請求人が主張するP7理事長が負う源泉所得税相当額の債務は、本件債務免除時には存在しない債務であるから、所得税基本通達36―17に定める「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に当たるか否かの判断に当たり、これを考慮することは適切ではない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
C 請求人は、上記2の(1)の「請求人」欄のハのとおり、P7理事長に対する本件債務免除は法人税基本通達9−2−9の(4)に定める貸倒れに該当し、本件債務免除益は役員給与とならない旨主張する。
 しかしながら、本件債務免除益がP7理事長に対する給与所得に該当するかどうかは、上記イの(ロ)のとおり、所得税法第28条第1項に照らして判断されるものであり、本件債務免除益が給与所得に該当することは、上記(ロ)のBのとおりである。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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(2) 争点2(請求人は、税負担に関する錯誤を理由として、本件債務免除の錯誤無効を原処分庁に対して主張できるか否か。)

イ 法令解釈
 意思表示の動機の錯誤が法律行為の要素の錯誤としてその無効を来すためには、その動機が相手方に表示されて法律行為の内容となり、もし錯誤がなかったならば表意者がその意思表示をしなかったであろうと認められる場合であることを要するところ、その動機が黙示的に表示されているときであっても、これが法律行為の内容となることを妨げるものではないから、課税されないことを当然の前提とし、かつ、その旨を黙示的に表示して当該法律行為を行った場合、課税されないと信じたことについて重大な過失があったと認められないときは、当事者間において、当該法律行為の錯誤無効を主張することは妨げられない。
 しかしながら、私法上の行為によって生じた経済的成果について課税する場合、その原因たる私法行為に瑕疵があっても、経済的成果が現に生じている限り課税要件は充足され、課税は妨げられないのであるから、当事者間においてある法律行為の錯誤無効が認められる場合でも、その法律行為によって生じた経済的成果が実質的に存続する場合は、その錯誤無効を国に対して主張することはできないと解するのが相当である。
ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件譲渡不動産の譲渡価額
 本件不動産売買付債務免除契約の契約書及び不動産登記記録の全部事項証明書から、別表2の各不動産(本件譲渡不動産)の譲渡価額は、別表2の順号3の区分所有建物については10,000,000円としたこと、そのほかの土地については、順号1の土地の譲渡価額は登記上の地積を坪換算して1坪当たり300,000円を乗じた額(別表2の順号1の「坪数からの計算価額」欄の金額)、順号2及び4から37までの各土地の譲渡価額は登記上の地積を坪換算して1坪当たり100,000円を乗じた額(別表2の順号2及び4から37までの「坪数からの計算価額」欄の金額)に基づき決定されたことが認められる。
 そして、本件譲渡不動産の上記譲渡価額の決定について、P7理事長が、平成20年10月10日、P7理事長の所得税の調査に係るP3税務署長所属の担当者に対し、坪100,000円で取得したのを覚えているので、P2と話し合って、P7理事長個人に譲渡所得が生じないように、取得した時と同じ値段にした旨申述していることなどからすると、本件譲渡不動産の譲渡価額は、その価額をできるだけ高くして債務免除額を少なくするとともにP7理事長に譲渡所得が生じない額に抑えるため、P7理事長が記憶していた取得価額に基づいて決定されたことが認められる。
(ロ) 本件不動産売買付債務免除契約を締結する際の当事者の認識等
 上記1の(4)のロの(ハ)のとおり、本件債務免除に先立ち、P3税務署長は、平成19年8月6日付のP7理事長異議決定書において、P7理事長が債権回収業務の受託者であるP8社から平成17年7月31日付で受けた債務免除益について、所得税基本通達36−17に定める「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けたもの」に該当するとして所得の金額の計算上収入金額に算入しない旨の判断を記載していること、本件債務免除を決議した理事会の議長を務めたP2は、本件調査担当者に対し、「P7理事長異議決定書に所得税基本通達36−17の適用があると記載されていたことから、P7理事長の債務の支払は不可能であり、所得税基本通達36−17の適用があると考えていた。」旨申述していること、請求人は、上記1の(4)のハの(イ)のとおり、振替仕訳により、本件債務免除額を債務免除損とする経理処理をしているところ、その経理処理について、P2は、本件調査担当者に対し、「債務免除損について、仕訳伝票を作成する際、間違いがあってはいけないと思い、請求人の関与税理士であるP38税理士に相談した。」旨申述し、同税理士は、当該仕訳伝票に基づき、請求人の本件事業年度に係る法人税の確定申告書を作成し、原処分庁に提出していること、本件債務免除益について源泉徴収義務を負う場合には、請求人に○○○○円を納付する負担が生じることからすれば、請求人は、本件債務免除益については、所得税基本通達36−17の適用があり、P7理事長の給与所得の金額の計算上収入金額に算入する必要はないと考え、同税理士も、本件債務免除益をP7理事長に対する給与として経理処理せず、債務免除損として経理処理をすれば足りると考えていたものと認められるのであり、本件不動産売買付債務免除契約を締結する際の請求人の認識は、本件債務免除益についてP7理事長に課税されることはないというものであったと認められる。
 また、請求人の本件事業年度に係る損益計算書によれば、本件事業年度は○○○○円の当期損失があり、留保金を取り崩して前期繰越利益金と合わせても本件事業年度の繰越利益金は○○○○円であったと認められるから、請求人が○○○○円の源泉徴収義務を負うか否かは重要な問題となること、上記1の(4)のニのとおり、請求人は、本件調査担当者から、本件債務免除益はP7理事長に対する給与所得となり、請求人は源泉徴収義務を負う可能性がある旨指摘を受けると、理事会において本件債務免除は錯誤により無効である旨決議をし、P7理事長に対して、本件債務免除は要素の錯誤に該当し無効である旨記載した本件通知書を送付したことからすれば、請求人にとって、本件債務免除益について源泉徴収義務を負うか否かは、本件債務免除を行うに当たり重要な動機となっていたことが認められる。
 他方、P7理事長についても、P7理事長が、その所得税の調査に係るP3税務署長所属の担当者に対し、P7理事長異議決定書では、前回の債務免除益について課税していないから、本件債務免除益についてもそうなるだろうと思っている旨申述していることからすれば、本件不動産売買付債務免除契約を締結する際のP7理事長の認識も、本件債務免除益について課税されることはないというものであったと認められる。
(ハ) 本件通知書送付後の債権関係
 請求人は、上記1の(4)のニの(ハ)のとおり、平成22年6月17日付で、相手科目を雑収入勘定として貸付金勘定の借方に○○○○円を計上する経理処理を行うとともに、「請求書」と題する2通の書面(作成名義人が請求人、宛名をP7理事長とする書面)から、平成22年12月30日付で「下記のとおり請求致します。貸付金(平成22年12月30日残高)○○○○円」などと記載した請求書を、平成23年6月30日付で「下記のとおり請求致します。貸付金(平成23年6月30日残高)○○○○円」などと記載した請求書をいずれもP7理事長に交付したことが認められるが、請求人の総勘定元帳及び請求人の代理人であるP39の当審判所に対する答述などから、P7理事長からは当該各請求書に係る請求に対する弁済はなかったこと、請求人は、P7理事長に対する貸付債権の保証人であるP9に対して連帯保証債務の履行を求めなかったこと、また、上記(1)のロの(ロ)のとおり、本件債務免除前にP7理事長に対する貸付債権の担保としていた請求人の出資証券を出資者から再提出させたことはなく、これらに代えた別の担保の差入れもさせていないことが認められる。
(ニ) 本件通知書送付後の不動産関係
 請求人の平成22年12月期の法人税の確定申告書に添付された「固定資産の内訳書」及び総勘定元帳並びに不動産登記記録の全部事項証明書から、請求人は、本件通知書送付後も、本件譲渡不動産を請求人所有の固定資産とし、別表2の「不動産賃貸先」欄がP4社又はP16となっている不動産については、それぞれP4社又はP16からの賃料(P4社からの合計28,200,000円及びP16からの合計840,000円である。)を収入に計上していること、別表2の「不動産賃貸先」欄が請求人となっている不動産については、P7理事長に対し賃料の支払をしていないこと、また、上記1の(4)のロの(ヘ)のとおり、P5社を所有者とする所有権移転登記が経由された別表2の順号1から3までの各不動産の各登記は、いずれも抹消されていないことが認められる。
ハ 判断
(イ) 本件不動産売買付債務免除契約は、上記1の(4)のロの(ニ)及び(ホ)のとおり、「P7理事長らがその所有する本件譲渡不動産を請求人に譲渡し、請求人は、P7理事長らに対し、本件譲渡不動産の譲渡代金債務と本件債権とを相殺した後に残った本件債務の残元金の支払債務を免除する」というものであるから、本件譲渡不動産の譲渡がなければ本件債務免除の額も確定しないだけでなく、本件譲渡不動産の価額が通常の取引価格とかい離していても、そのかい離は本件債務の残債務の支払の免除の中で解消される関係にあり、理事会においても、本件債務免除と本件譲渡不動産の譲渡が一体の債権処理として承認され、その契約締結においても一体の契約として締結されているだけでなく、上記ロの(イ)のとおり、本件譲渡不動産の譲渡価額は、その価額をできるだけ高くして債務免除額を少なくするとともにP7理事長に譲渡所得が生じない額に抑えるため、P7理事長が記憶していた取得価額に基づいて決定されたことからすれば、当事者の合理的意思としては、このような譲渡価額による本件譲渡不動産の譲渡と本件債務免除は相互に他方がなければ締結することはなかったものと認めるのが相当であるから、本件不動産売買付債務免除契約において、本件譲渡不動産の譲渡と本件債務免除は不可分であり、錯誤による無効が成立する場合には、本件不動産売買付債務免除契約の全体が無効となるべきものであり、本件譲渡不動産の譲渡と不可分である本件債務免除のみを無効として、課税要件の欠如を主張することはできないというべきである。
(ロ) ところで、本件不動産売買付債務免除契約については、上記ロの(ロ)のとおり、請求人にとって、本件債務免除益について源泉徴収義務を負うか否かは本件債務免除を行うに当たり重要な動機となっていた上、本件債務免除益について課税されないことが本件不動産売買付債務免除契約を締結する当事者の共通の認識となっていたことからすれば、請求人及びP7理事長は、本件債務免除益について課税されないことを前提とし、かつ、その旨を黙示的に表示して本件不動産売買付債務免除契約を締結したものとして、錯誤による無効が成立する可能性がないものではない。
 しかしながら、上記(イ)のとおり、本件譲渡不動産の譲渡と本件債務免除は不可分であり、錯誤による無効が成立する場合には、本件不動産売買付債務免除契約の全体が無効となるべきものであり、本件譲渡不動産の譲渡と不可分である本件債務免除のみを無効として、課税要件の欠如を主張することはできないというべきである。
 そして、請求人は、上記1の(4)のニの(ハ)とおり、平成22年6月17日付で、相手科目を雑収入勘定として貸付金勘定の借方に○○○○円を計上する経理処理を行うとともに、上記ロの(ハ)のとおり、P7理事長に対して各請求書を交付しているが、その請求書の内容は、単に貸付金額を記載しただけのもので、具体的な弁済を求める内容ではなく、現にP7理事長から当該各請求書に係る請求に対する弁済がないこと、それにも関わらず、P7理事長に対する貸付債権の担保とされていた請求人の出資証券を再提出させることをせず、P7理事長から貸付債権の弁済がないのに保証人であるP9に対しても連帯保証債務の履行を求めていない上、それらに代わる担保の差し入れもさせていないなど、本件債務免除が無効の場合に債権を有する者が行うべき債権の保全措置等をとっていないこと、本件債務免除と不可分である本件譲渡不動産の譲渡については、上記ロの(ニ)のとおり、請求人は、本件譲渡不動産を請求人の固定資産とし、別表2の「不動産賃貸先」欄がP4社又はP16となっている不動産については、それぞれP4社及びP16から賃料収入を得ていること、別表2の「不動産賃貸先」欄が請求人となっている不動産については、P7理事長に対して賃料の支払をしていないこと、また、上記1の(4)のロの(ヘ)のとおり、P5社を所有者とする所有権移転登記が経由された別表2の順号1から3までの各不動産の登記をいずれも抹消していないなど、本件不動産売買付債務免除契約がなかった状態に戻していないのであるから、かかる事実関係の下では、本件通知書の送付後も本件不動産売買付債務免除契約に基づく経済的成果が現に生じたままとなっているといわざるを得ない。
 そうすると、仮に請求人の法律行為(本件不動産売買付債務免除契約)に瑕疵(錯誤)があり、本件不動産売買付債務免除契約の全体について無効となるとしても、本件不動産売買付債務免除契約に基づく経済的成果が現に生じている以上、課税要件は充足され、課税は妨げられないのであるから、請求人はその錯誤無効を原処分庁に対して主張することはできないというべきである。
(ハ) 請求人は、上記2の(2)の「請求人」欄のとおり、本件不動産売買付債務免除契約のうち本件債務免除について錯誤無効が成立するから本件納税告知処分に係る課税要件は存在しない旨主張する。
 しかしながら、上記(ロ)のとおり、本件譲渡不動産の譲渡と不可分である本件債務免除のみを無効として、課税要件の欠如をいうことはできない上、本件通知書の送付後も本件不動産売買付債務免除契約による経済的成果が現に生じている以上、課税要件は充足され、課税は妨げられない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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(3) 本件納税告知処分

 上記(1)のハの(ハ)のとおり、請求人は、本件債務免除時に、本件債務免除益について源泉徴収義務を負うことなる。
 そこで、平成19年12月分のP7理事長に係る徴収すべき所得税の額を計算すると、次のとおりである。
イ 本件債務免除益について徴収すべき所得税の額の計算
(イ) 所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)第186条《賞与に係る徴収税額》に規定する賞与とは、賞与、ボーナス、夏季手当、期末手当等の名目で支給されるものその他これらに類する臨時的な給与をいうものと解されるところ、本件債務免除益は、上記(1)のハの(ロ)のBのとおり、P7理事長の給与所得に該当し、定期に支払われるものではなく臨時的なものであるから、賞与となる。
 そして、給与等から控除される社会保険料等がある場合、所得税法第188条《給与等から控除される社会保険料等がある場合の徴収税額の計算》の規定により給与等の金額から社会保険料等の金額を控除した残額に相当する金額の給与の支払があったものとみなされるところ、本件給与台帳によれば、請求人がP7理事長に支給する月額給与額○○○○円から控除される社会保険料等が存在し、平成19年12月10日の前月である同年11月に支払があったものとみなされるP7理事長の給与の金額は○○○○円(以下「本件通常給与額」という。)となるが、本件債務免除益○○○○円は、本件通常給与額の10倍に相当する金額を超え、かつ、当審判所の調査によれば、P7理事長は、請求人を経由して、平成19年分について、所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第194条《給与所得者の扶養控除等申告書》第1項に規定する給与所得者の扶養控除等申告書をP3税務署長に提出したと認められるから、同法第186条第2項第1号の規定に基づき、本件債務免除益について徴収すべき所得税の額を計算することとなる。
 この場合において、本件債務免除は、上記(1)のハの(ロ)のBのとおり、P7理事長の長年にわたる貢献の大きさを理由として行われたことからすれば、本件債務免除益○○○○円の計算の基礎となった期間は、所得税法第186条第1項第1号ロの括弧書に規定する「賞与の金額の計算の基礎となった期間が6月を超える場合」に該当すると認めるのが相当であり、同号ロの括弧書により、同条第2項第1号に規定する「賞与の金額の6分の1に相当する金額」は「賞与の金額の12分の1に相当する金額」、「6を乗じて計算した金額に相当する税額」は「12を乗じて計算した金額に相当する税額」となる。
 そうすると、本件債務免除益について徴収すべき所得税の額は、まる1本件債務免除益○○○○円の12分の1に相当する金額と本件通常給与額との合計金額並びに給与所得者の扶養控除等申告書に記載された主たる給与等に係る控除対象配偶者及び扶養親族の有無及びその数に応ずる所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)別表第二《給与所得の源泉徴収税額表(月額表)》の甲欄に掲げる税額と、まる2本件通常給与額並びに給与所得者の扶養控除等申告書に記載された主たる給与等に係る控除対象配偶者及び扶養親族の有無及びその数に応ずる同法別表第二の甲欄に掲げる税額とを比較し、上記まる1まる2の税額の差額に12を乗じて計算された金額に相当する額となる。
(ロ) 上記(イ)の計算方法に基づき本件債務免除益について徴収すべき所得税の額を計算すると、次のとおりとなる。
A 上記(イ)のまる1の税額
 上記(イ)のまる1の税額は、本件債務免除益○○○○円の12分の1に相当する金額と本件通常給与額との合計金額等に応ずる所得税法別表第二の甲欄に掲げる税額となるところ、本件債務免除益○○○○円の12分の1に相当する金額は、別表7の「審判所認定額」欄のまる3欄のとおり、本件債務免除益○○○○円を12で除して計算した金額○○○○円(国税通則法第118条《国税の課税標準の端数計算等》第2項の規定に基づき1円未満の端数金額を切り捨てた後のもの)となり、本件通常給与額は○○○○円となるから、これらの合計金額は、別表7の「審判所認定額」欄のまる7欄のとおり○○○○円となる。
 そして、上記(イ)の給与所得者の扶養控除等申告書によれば、P7理事長の控除対象配偶者及び扶養親族の数は零人となることから、上記○○○○円及び当該人数により所得税法別表第二に基づいて税額を計算すると、上記(イ)のまる1の税額は○○○○円となる。
B 上記(イ)のまる2の税額
 上記(イ)のまる2の税額は、本件通常給与額等に応ずる所得税法別表第二の甲欄に掲げる税額となるところ、上記Aのとおり、本件通常給与額は○○○○円となり、P7理事長の控除対象配偶者及び扶養親族の数は零人となるから、これらの金額及び人数により同法別表第二に基づいて税額を計算すると、上記(イ)のまる2の税額は○○○○円となる。
C 本件債務免除益について徴収すべき所得税の額
 本件債務免除益について徴収すべき所得税の額は、上記Aの税額○○○○円から上記Bの税額○○○○円を控除した金額○○○○円に12を乗じて計算した金額となり、別表7の「審判所認定額」欄のまる11欄のとおり○○○○円となる。
ロ 平成19年分のP7理事長の給与に係る年末調整による過納額
(イ) 本件給与台帳によれば、請求人は、平成19年において、P7理事長に対し、月額○○○○円、合計○○○○円の給与を支給していること、月々の給与の支給に関しては、その支給の際に、所得税法第189条《主たる給与等に係る徴収税額の特例》第1項の規定に基づき徴収すべき所得税を計算し、それらを合計した所得税の額は○○○○と計算していること、同年中に支払うべきことが確定した給与の金額○○○○円に関しては、所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)第190条《年末調整》の規定を適用し、同条第2号の規定に基づきその所得税の額を○○○○円と計算し、上記徴収すべき所得税の合計金額○○○○円は過納額が9,260円生じたとする計算を行っていることが認められる。
 そして、当審判所の調査によれば、請求人は、上記過納額9,260円について、平成19年12月分の給与等、報酬、料金等に係る徴収すべき所得税に充当する年末調整を行っていることが認められる。
(ロ) ところで、所得税法第190条は、年末調整の対象となる者について、給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者で、その年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が20,000,000円以下である者と規定しているところ、上記イの(イ)のとおり、本件債務免除益は、請求人が平成19年12月10日にP7理事長に対する賞与の支払をしたものと認められ、同年中に支払うべきことが確定したP7理事長の給与等の額は、本件債務免除益○○○○円と上記(イ)の○○○○円を合計した金額○○○○円となり、その額は20,000,000円を超えるから、P7理事長の給与等については年末調整ができないこととなり、上記(イ)の過納額9,260円を同年12月分の給与等、報酬、料金等に係る徴収すべき所得税に充当することはできないことになる。
ハ まとめ
 以上からすれば、平成19年12月分のP7理事長に係る徴収すべき所得税の額は、上記イの(ロ)のCの本件債務免除益について徴収すべき所得税の額○○○○円及び上記ロの(ロ)の過納額9,260円を合計した金額となるから、その額は、別表8の「審判所認定額」欄のまる3欄のとおり○○○○円となり、本件納税告知処分のその額を下回るから、本件納税告知処分は、その一部を別紙「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(4) 本件賦課決定処分

 本件納税告知処分は、上記(3)のハのとおり、その一部を取り消すべきであるから、不納付加算税の基礎となる税額は、上記(3)のハで認定した平成19年12月分の徴収すべき所得税の額○○○○円について、国税通則法第118条第3項の規定に基づき10,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額○○○○円となる。
 そして、請求人は、本件納税告知処分に係る源泉所得税を法定納期限まで納付しなかったことについて、国税通則法第67条《不納付加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があると認められる場合に該当しないから、同項に基づいて、不納付加算税の額を計算すると○○○○円となり、その額は、本件賦課決定処分の額と同額となるから、本件賦課決定処分は適法である。

(5) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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