(平成24年3月7日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、勤務先である内国法人の親会社(外国法人)の株式報酬制度に基づいて与えられた株式に係る給与所得の申告が漏れていたとして、所得税の修正申告書を提出したところ、原処分庁が、当該修正申告書の提出に係る過少申告加算税の賦課決定処分をし、次いで、当該修正申告書に記載された当該株式に係る給与所得の収入金額に誤りがあるとして、所得税の更正処分等をしたのに対し、請求人が、まる1当該修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでないこと、まる2当該株式に係る給与所得の収入金額の収入すべき日の認定に誤りがあることを理由として、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

 審査請求(平成23年3月12日請求)に至る経緯は、別表のとおりである。
 なお、以下、平成22年12月8日付でされた平成20年分の所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分を「本件第一次賦課決定処分」といい、平成22年12月10日付でされた同年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を、それぞれ「本件更正処分」及び「本件第二次賦課決定処分」といい、同日付の両処分を併せて「本件更正処分等」という。

(3) 関係法令の要旨

イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第1項は、期限内申告書(還付請求申告書を含む。)が提出された場合において、修正申告書の提出があったときは、その修正申告により納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨規定し、同条第5項は、修正申告書の提出があった場合において、その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、過少申告加算税を課さない旨規定している。
ロ 所得税法第36条《収入金額》第1項は、その年分の給与所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする旨規定し、同条第2項は、前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする旨規定している。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人が勤務する内国法人(C社)の親会社であるF国の法人D社は、D社及びその子会社(以下、これらを併せて「D社グループ」という。)の従業員を対象とした「○○プラン」(以下「本件プラン」という。)と称する株式報酬制度を設けていた。
ロ 2005年度長期インセンティブプログラム等によれば、D社が、本件プランに基づき、平成17年(2005年)中にD社グループの従業員に付与した「制限付株式ユニット」の概要は、要旨次のとおりである。
(イ) 制限付株式ユニットは、付与契約書に規定されている一定期間(以下「確定期間」という。)が経過し、確定した後に、株式を受け取る権利である。
(ロ) 付与された制限付株式ユニットは、付与日から3年目に確定し(以下、当該3年目の日を「確定日」という。)、同ユニット1口と引換えにD社の実際の株式(ストックオプションのように、権利を行使して株式を購入する必要のない普通株式)1株が同ユニットを付与された者(以下「被付与者」という。)に与えられる。
(ハ) 被付与者は、確定期間中は、制限付株式ユニットの売却等の処分をすることはできず、また、制限付株式ユニットが実際の株式ではないため、議決権を与えられないが、確定期間中も、配当金に相当する金額を提供される。
(ニ) 被付与者は、確定期間中に勤務先との間で雇用関係が終了した場合は、死亡退職など特定の場合を除き、発行済みの制限付株式ユニットを全て没収される。
(ホ) 確定日に、制限付株式ユニットの制限が解除され、株式を受け取る権利が確定する。被付与者は、確定期間の終了後、D社の実際の普通株式を受け取り、株主となる。
(ヘ) 被付与者は、株式を受け取る権利が確定し、普通株式を受け取った時点で、D社の普通株式の適正市場価格に相当する課税対象所得(受け取った株式数に制限付株式ユニットの確定日の株価を乗じたもの)が発生し、給与所得として所得税を課される。
ハ 請求人は、平成17年中に、D社から、平成20年2月8日を確定日とする制限付株式ユニット217口(以下「本件ユニット」という。)を付与され、本件ユニットの確定日である平成20年2月8日に、D社の普通株式217株(以下「本件株式」という。)を与えられた。
ニ 請求人は、別表の「確定申告」欄のとおり、平成20年分の所得税の確定申告書を法定申告期限までに提出したが、その際に本件株式に係る給与所得の申告をしなかった。
ホ なお、請求人は、平成20年分の前後の年分(平成19年分及び平成21年分)については、D社から平成16年中に付与された制限付株式ユニット310口と引換えに与えられた普通株式310株に係る所得を、同ユニットの確定日(平成19年2月10日)の属する平成19年分の給与所得として、また、同社から平成18年中に付与された制限付株式ユニット180口と引換えに与えられた普通株式180株に係る所得を、同ユニットの確定日(平成21年2月14日)の属する平成21年分の給与所得として、いずれも法定申告期限までに申告した。
 それらの際、請求人は、平成19年分及び平成21年分の所得税の各確定申告書に、勤務先から交付された「譲渡制限付株式ユニット(Restricted Stock Units)の確定について」と題する書面(まる1確定日、まる2確定した普通株式数、まる3確定日の株価、まる4市場価格総額(F国通貨)(まる2×まる3)、まる5確定日の為替レート(対顧客直物電信売買相場の仲値。以下「TTM」という。)、まる6市場価格総額(円)(まる4×まる5)、まる7まる6を確定日の属する年分の給与所得として確定申告を行う必要がある旨などが記載されたもの)を、それぞれ添付した。
ヘ 原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件担当者」という。)は、平成22年9月10日付で、平成19年分ないし平成21年分の所得税の確定申告について尋ねたい事項があるので、必要な書類等を持参の上、平成22年9月21日(火)午前10時頃にB税務署へ来訪するよう案内する旨などを記載した「おたずね」と題する文書(以下「本件文書」という。)を作成し、請求人に送付した。
ト 請求人は、平成22年11月5日、同年10月13日のD社の株価(54.40F国通貨)及び為替レート(○○○○円/F国通貨)を用いて、本件株式に係る給与所得の収入金額を○○○○円と算定し、これを確定申告における給与所得の収入金額に加算した平成20年分の所得税の修正申告書(以下「本件修正申告書」という。)を、原処分庁に提出した。
チ 原処分庁は、本件修正申告書の提出に対して本件第一次賦課決定処分をし、その2日後の日付で、本件ユニットの確定日である平成20年2月8日のD社の株価(71.87F国通貨)及び為替レート(○○○○円/F国通貨)を用いて、本件株式に係る給与所得の収入金額を○○○○円と算定し、これに基づく本件更正処分等をした。

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2 争点

(1) 争点1 本件修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当するか否か。
(2) 争点2 本件株式に係る給与所得の収入金額の収入すべき日はいつか。

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3 主張

(1) 争点1について

請求人 原処分庁
 原処分庁から送付された本件文書には「調査」である旨の記載がない。また、請求人は、本件担当者から「調査」ではなく尋ねたいことがあるだけである旨を告げられたので1回目の面接に応じた上、本件担当者の上司である原処分庁所属の職員に対し、「調査」ではなく税務相談であればよいと断った上で、第2回目の面接に応じた。
 したがって、請求人が本件文書の送付を受けてから本件修正申告書を提出するまでの間に、「調査があった」とはいえない。
 そして、請求人は、本件文書を受け取った後、自分で調べて申告漏れを発見し、自ら修正申告を申し出た上、本件修正申告書を提出したのであるから、本件修正申告書の提出は、「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する。
 本件担当者は、請求人の提出した確定申告書の申告内容等を精査して検討した結果、給与所得の申告漏れの事実を把握し、本件文書を送付して請求人にその旨を連絡した。このことは、「調査があった」ことに該当する。
 そして、請求人が本件修正申告書を提出したのは、本件文書の送付を受けたことに基因して、給与所得の申告漏れを認識し、また、請求人の勤務先での面談時に、本件担当者から所得税の調査への協力を依頼され、調査への協力が得られない場合には独自に調査を行う旨の説明を受けた後であるから、請求人は、原処分庁よりやがて更正処分がなされるであろうことを当然に予知した後に本件修正申告書を提出したものと推認される。したがって、本件修正申告書の提出は、「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでないとき」には該当しない。

(2) 争点2について

原処分庁 請求人
 本件株式に係る給与所得の収入金額の収入すべき日は、請求人が本件株式に係る経済的利益を取得した時であるから、本件ユニットの確定日(平成20年2月8日)である。  請求人が本件株式に係る給与所得の申告漏れに気付いた平成22年10月の時点では、本件株式の株価は、本件ユニットの確定日(平成20年2月8日)の株価よりも、大きく下落していた。このような場合に、下落分の税金を還付するなどの救済措置がないのに、本件ユニットの確定日(平成20年2月8日)の株価等を用いて本件株式に係る給与所得の収入金額を算定するのは、不公平である。
 したがって、本件株式に係る給与所得の収入金額を、下落後(具体的には、平成22年10月13日)の株価等を用いて算定することも、認められるべきである。

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4 判断

(1) 争点1(本件修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当するか否か。)について

イ 法令解釈
 通則法第65条第5項に規定する「調査」とは、課税庁が行う課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠書類の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て更正に至るまでの思考、判断を含む包括的な概念であり、実地調査や税務署における資料等の調査はもとより、納税者に対する電話や文書等による質問等も「調査」に含まれるものと解される。
ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、以下の事実が認められる。
(イ) 本件担当者は、平成22年8月頃、請求人の平成19年分ないし平成21年分の所得税の各確定申告書の記載内容を精査した結果、平成20年分の本件株式に係る給与所得の申告が漏れているものと判断した。
(ロ) 本件担当者は、平成22年9月10日、上記1の(4)のへのとおり、平成19年分ないし平成21年分の所得税の確定申告について、尋ねたい事項(インセンティブ報酬について(リストリクテッドストック(RS)などの株式報酬について))があるので、必要な書類等(RS等に関する各種書類(契約書・明細書・外国証券会社(E証券など)からの明細書等))を持参の上、同月21日(火)午前10時頃にB税務署へ来訪するよう案内する旨のほか、本件担当者の名前などを記載した本件文書を、請求人に送付した。
(ハ) 請求人は、平成22年9月15日、本件担当者と電話で話をし、本件文書に記載された面接日及び面接場所の変更を依頼した。その電話で、本件担当者は、請求人に対し、面接日を平成22年10月19日に変更する旨、また、面接場所は後日、別途調整する旨を告げた上、面接の際には、本件文書に記載した事項について尋ねる旨を伝え、本件文書に記載した書類等を準備するよう依頼した(以下、この電話でのやり取りを「本件電話」という。)。
(ニ) 請求人は、平成22年10月13日ないし翌14日頃、D社から付与された制限付株式ユニットを管理するE証券のインターネット上の請求人の口座の状況を閲覧し、また、勤務先会社の関係部署に問い合わせて、まる1本件ユニットの確定日が平成20年2月8日であること、まる2本件ユニットと引換えに与えられた本件株式の株数は217株であること、まる3本件ユニットの確定日における本件株式の1株の株価は71.87F国通貨であること、まる4本件ユニットの確定日における為替レート(TTM)は○○○○円/F国通貨であることなどを確認し、本件株式に係る給与所得の申告が漏れていることを把握した。
(ホ) 請求人は、平成22年10月19日午前10時15分頃、自身の勤務先会社で本件担当者と面接し、また、同月29日、再び自身の勤務先会社で原処分庁所属の別の職員と面接した。
(ヘ) 請求人は、平成22年11月5日、上記1の(4)のトのとおり、本件修正申告書を原処分庁に提出し、その際、上記(ニ)のまる1ないしまる3の内容を記載したE証券作成の「Restricted Stock:Vesting Details」と題する画面を印刷した書面と、上記(ニ)のまる3及びまる4の内容を記載した勤務先会社の関係部署から請求人に宛てたメールを印刷した書面を添付した。
ハ 本件への当てはめ
(イ) 上記1の(4)のヘ及び上記ロの(イ)ないし(ハ)のとおり、本件担当者は、税務署における資料の調査により、請求人の本件株式に係る給与所得の申告が漏れているものと判断し、この判断に基づいて、リストリクテッドストック(RS)などのインセンティブ報酬について尋ねたい旨、また、その際に必要なリストリクテッドストック(RS)等に関する各種書類(E証券などからの明細書等)の持参を求める旨を明記した本件文書を請求人に送付し、その後の本件電話でも、本件文書と同じ内容を告げたのであるが、この一連の過程は、証拠書類の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て決定に至るまでの判断過程の一端であるから、「調査」があったと認められる。
(ロ) 他方で、請求人は、上記1の(4)のホのとおり、本件株式に係る給与所得の申告漏れを生じた平成20年分の前後の年分では、本件株式と同じく制限付株式ユニットと引換えに与えられたD社の普通株式に係る給与所得の申告をしており、本件株式に係る給与所得があればその申告をすべきことを理解していたと認められるところ、上記ロの(ロ)ないし(ニ)及び(ヘ)のとおり、本件担当者から、本件文書を通じて、インセンティブ報酬の種類やそれを管理する証券会社の名称を具体的に指摘された上で、当該インセンティブ報酬に係る所得に関する質問への応答及びその際に必要な書類等の準備を依頼され、更にその後の本件電話を通じて、本件文書の内容と同じ依頼をされた上、本件担当者との面接日の前に、自ら本件株式に係る情報(上記ロの(ニ)のまる1ないしまる4)を入手して、本件文書及び本件電話での上記指摘の内容のとおりに、本件株式に係る給与所得の申告が漏れていることを把握し、その後に同所得を含めた本件修正申告書を提出したのであるから、遅くとも本件株式に係る給与所得の申告漏れを自ら把握した時点では、本件担当者が同所得についての調査を既に開始していることを認識することができ、かつ、請求人が同所得に係る修正申告をしなければ、やがて調査が進行して原処分庁が請求人に対して所得税に係る更正処分を行うであろうことを、前もって認識することができたものと推認される。
(ハ) 以上によれば、請求人は、本件担当者による調査があったことを端緒として、本件株式に係る給与所得についての修正申告をしなければ、調査が進行し、やがて原処分庁が請求人に対する更正処分を行うであろうことを予知し、その上で本件修正申告書を提出したものと認められるから、本件修正申告書の提出は、「その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない。
ニ 請求人の主張について
(イ) 請求人は、上記3の(1)のとおり、本件文書の記載内容及び本件文書の送付を受けた後の2回の面接状況を根拠に「調査があった」とはいえない旨主張する。
 しかしながら、請求人が本件修正申告書を提出した経緯は、上記ハの(ロ)及び(ハ)のとおりであり、請求人が、本件文書及び本件電話で本件担当者から具体的な指摘を受けた後、1回目の面接日よりも前の時点で既に、本件株式に係る給与所得の申告が漏れていることを把握し、本件修正申告書を提出しなければ請求人の所得税について調査があったことにより更正があるであろうことを予知し、その上で本件修正申告書を提出したものと認められるから、現に本件文書に本件株式に係る所得の「調査」をする旨の記載がなく、また、仮に請求人が主張するとおりの面接状況があったとしても、「調査があった」という上記ハの認定は変わらない。
 したがって、請求人の上記主張には理由がない。
(ロ) なお、請求人は、争点1について、上記3の(1)の主張のほか、国税庁から、調査の前に修正申告をすれば加算税はかからない旨の電話回答を得て、原処分庁の調査がある前に本件修正申告書を提出したのであるから、本件第一次賦課決定処分は、請求人の信頼に反するという点からも取り消されるべきである旨も主張している。
 しかしながら、請求人が本件修正申告書を提出するまでに「調査があった」ことは、上記ハ及び上記(イ)のとおりであるから、請求人に対する調査がある前に本件修正申告書を提出したという、請求人の主張の前提となる事実関係自体が認められない。
 したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(2) 争点2(本件株式に係る給与所得の収入金額の収入すべき日はいつか。)について

イ 法令解釈
 所得税法第36条第1項は、現実の収入がなくても、その収入の原因となる権利が確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとしてその権利確定の時期の属する年分の課税所得を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)を採用しているものと解される(最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決・民集28巻2号186頁、同昭和53年2月24日第二小法廷判決・民集32巻1号43頁等)。そして、その収入の原因となる権利が確定する時期は、その権利の特質を考慮し、決定されるべきものである(最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決・民集32巻1号43頁参照)。
ロ 本件への当てはめ
 上記1の(4)のイ及びロによれば、被付与者は、付与された制限付株式ユニットの確定日に、同ユニットの口数に対応する株数の普通株式の支給を受けて、当該株式に係る株主としての地位を確定的に取得するものと認められる。そうすると、請求人は、上記1の(4)のハのとおり、D社から付与された本件ユニットの確定日(平成20年2月8日)に、その口数に対応する株数の本件株式の支給を受けて、本件株式に係る株主としての地位を確定的に取得したのであるから、その時点で、本件株式に係る所得の実現があったものというべきである。
 したがって、本件株式に係る給与所得の収入金額の収入すべき日は、本件ユニットの確定日(平成20年2月8日)である。
ハ 請求人の主張について
 請求人は、本件株式に係る給与所得の申告漏れを把握し、平成22年10月の時点では本件株式の株価が下落しており、その下落分の救済措置がないのに、下落前の株価を用いて課税されるのは不公平であるから、本件株式に係る給与所得の収入金額を、下落後(具体的には平成22年10月13日)の本件株式の株価及び為替レートを用いて算定することも認められるべきである旨主張する。
 しかしながら、上記イのとおりの所得税法第36条第1項の規定の内容からすれば、上記ロのとおり、本件株式に係る収入金額の収入すべき日は、本件ユニットの確定日(平成20年2月8日)であると認めるのが相当であり、課税の公平の見地からも、それ以後の別の日をも収入すべき日とすることはできない。
 したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(3) 本件第一次賦課決定処分について

 本件修正申告書の提出は、上記(1)のとおり、通則法第65条第5項に規定する要件に該当せず、また、本件修正申告書に記載した納付すべき税額の計算の基礎となった事実が修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、同条第4項に規定する「正当な理由がある」とも認められないから、同条第1項の規定に基づき行われた本件第一次賦課決定処分は、適法である。

(4) 本件更正処分について

 本件株式に係る給与所得の収入金額の収入すべき日は、上記(2)のとおりである。そうすると、上記1の(4)のハ及び上記(1)のロの(ニ)によれば、本件株式に係る給与所得の収入金額は、本件株式の株数(217株)に、本件ユニットの確定日(平成20年2月8日)における本件株式の株価(71.87F国通貨)を乗じた額を、同日の為替レート(○○○○円/F国通貨)により円換算した金額である○○○○円となる。この金額等を基に計算した納付すべき税額は、本件更正処分の額と同額であるから、本件更正処分は適法である。

(5) 本件第二次賦課決定処分について

 本件更正処分は上記(4)のとおり適法であり、また、本件更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由がある」とも認められないから、同条第1項の規定に基づき行われた本件第二次賦課決定処分は適法である。

(6) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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