(平成24年3月21日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、航空機リース事業等を目的とする民法上の組合の組合員であった審査請求人(以下「請求人」という。)が、当該組合の清算に当たり、航空機購入資金の原資となった融資銀行からの借入金に係る残債務のうち航空機売却代金をもって返済しても不足する額についての返済責任が、当該融資銀行との契約に基づいて消滅したことによる消滅益、及び、当該組合の業務執行者に対して支払うべき未払の管理手数料の全額についての支払を免除されたことによる免除益を、いずれも一時所得として確定申告したのに対し、原処分庁が、当該消滅益等はいずれも雑所得に該当するとして所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたことから、請求人が、その各処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成19年分の所得税について、青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
ロ 原処分庁は、これに対し、平成23年3月10日付で、別表1の「更正処分等」欄のとおりとする更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。)をした。
ハ 請求人は、本件更正処分等を不服として、平成23年4月28日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成23年6月28日付で棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成23年7月21日に審査請求をした。

(3) 関係法令等

イ 所得税法第26条《不動産所得》第1項は、不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機の貸付けによる所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいい、また、第2項は、不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする旨規定している。
ロ 所得税法第34条《一時所得》第1項は、一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得(以下、利子所得以下の不動産所得を除く各所得を併せて「利子所得等」という。)以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう旨規定している。
ハ 所得税法第35条《雑所得》第1項は、雑所得とは、利子所得等、不動産所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう旨規定している。
ニ 所得税法第36条《収入金額》第1項は、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする旨規定している。
ホ 所得税法施行令第94条《事業所得の収入金額とされる保険金等》第1項第2号は、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務を行う居住者が受ける、当該業務の全部又は一部の休止、転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもので、その業務の遂行により生ずべきこれらの所得に係る収入金額に代わる性質を有するものは、これらの所得に係る収入金額とする旨規定している。
ヘ 所得税基本通達34−1《一時所得の例示》の(5)は、法人からの贈与により取得する金品(業務に関して受けるもの及び継続的に受けるものを除く。)のようなものに係る所得は、一時所得に該当する旨定めている。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の間に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても、その事実が認められる。
イ F社は、平成10年3月23日付の「航空機賃貸事業のご案内」と題する書面を作成し、組合員による出資金と、いわゆるノンリコースローンの方式による金融機関からの借入金をもって取得した航空機をG社に貸し付けるという航空機リース事業を行い、かつ、当該リース事業の終了後には当該航空機を売却し、これらによって組合員の利益を図ることを目的とする任意組合(以下「本件組合」という。)の組合員の募集を行った。
ロ 請求人を含む別表2の「組合員」欄に記載の者ら(以下「本件各組合員」という。)は、平成10年4月○日付の「任意組合契約書」と題する書面(以下「本件組合契約書」という。)のとおり合意して(以下、当該合意を「本件組合契約」という。)、その合意に基づき、同表の「出資額」欄に記載の金額(請求人の出資額は○○○○d国通貨)をそれぞれ出資して本件組合の組合員となり、同表の「出資割合」欄に記載の持分(請求人の出資割合は約○○%)で組合財産を共有することとなった。
ハ 本件組合契約書に記載された本件組合契約の内容は、要旨次のとおりである。
(イ) 組合の名称(第1条)
 本件組合をH事業組合○号と称する。
(ロ) 目的(第2条)
 本件組合は、本件各組合員による出資及び借入金をもって航空機を取得し、取得した航空機を航空会社にリースし、リース期間終了後に売却等の処分をすることを目的とし、航空機の取得、賃貸、管理、売却及びこれに附帯する一切の業務(以下、これらの業務を併せて「本件業務」という。)を行う。なお、借入契約に基づく金融機関の本件組合に対する債権を担保するため、航空機、そのリース料債権その他本件組合の資産に適当な担保を設定する。
(ハ) 組合の存続期間(第3条、第4条)
 本件組合の存続期間を、本件組合契約書に別に定める場合のほか、平成10年4月○日から7年とする。ただし、業務執行者が延長を提案し、かつ、出資割合の過半数を有する組合員の書面による同意が得られた場合には、これを延長する。
(ニ) 業務執行者(第8条)
 本件各組合員は、J社(以下「本件業務執行者」という。)を唯一の業務執行者と定め、本件組合の業務執行を委任し、報酬として、リース契約所定のリース料(消費税込みの金額)の3%相当額(以下「本件手数料」という。)の支払をする。
(ホ) 解散(第22条)
 本件組合の存続期間が終了した場合や航空機を売却した場合に、本件組合を解散する。
(ヘ) 清算(第23条)
 本件組合を解散したときは、本件業務執行者を清算人とし、清算人は、現務の結了、債権の取立て及び債務の弁済並びに残余財産の引渡しを行うために必要な一切の業務を行うことができる。また、残余財産は本件各組合員の出資割合に応じて配当する。
ニ 本件業務執行者は、平成10年4月24日にK銀行e支店(本件組合の解散時の名称は、L銀行e支店。以下「本件融資銀行」という。)を貸主、本件各組合員を借主とし、融資利率を年利7.82%、返済期間を平成10年5月6日から平成16年4月20日まで、毎月の返済金額を393,000d国通貨(元利均等払)とする融資契約を締結し、航空機購入資金として31,435,442d国通貨の融資を受けた(以下、この融資契約を「本件ローン契約」、同契約に基づく借入金を「本件借入金」という。)。なお、本件借入金は、航空機等の本件組合の財産のみを支払の担保とし、原則、本件組合の財産の範囲内で貸付金の回収を行い、本件各組合員の個人財産を支払の担保としないことを前提とした、いわゆるノンリコースローンの方式によるものである。
ホ 本件ローン契約における、ノンリコースローンに関する契約条項の内容は、要旨次のとおりである。
(イ) 第3条《制限付き遡求権ベース》第1項(c)
 本件ローン契約及びその関連書類により、本件各組合員が本件融資銀行に支払うべきこととされる金額又は支払うべきであると明示された金額については、本件各組合員は、これを本件組合の財産から回収した総額(以下「回収総額」という。)を唯一の原資として支払うものとする。
 本件各組合員が、いずれかの者から回収総額のうちいくらかの金額を受領したにも関わらず、これを本件融資銀行に支払わなかった場合や、第3条第1項(e)(本件各組合員が、まる1本件ローン契約に基づく取引又は債務の履行に関して詐欺的又は意図的な不法行為を行った場合、まる2本件ローン契約の中で実施又は伝達した事実等が重要な点で不正確であった場合、まる3本件ローン契約の誓約事項に違反した場合)等に定める場合を除き、本件各組合員は、本件融資銀行に支払われるべき金額について、人的責任を負わないものとする。
(ロ) 第3条第1項(f)
 本件ローン契約及びその関連書類に基づく本件各組合員の責任は、回収総額のうち、本件組合契約に従い決定される本件各組合員の持分相当額にのみ限定されるものとする。
 第3条第1項(e)等に基づく本件各組合員の責任は、本件組合の財産における本件各組合員の持分相当額にのみ限定されるものとする。
 本件融資銀行は、契約又は法の効果に基づき本件各組合員に対して有するその余の権利については明確に放棄する。
ヘ 本件業務執行者は、平成10年4月24日、M社から、f-○○型航空機1機(製造番号○○○○。以下「本件航空機」という。)を、代金42,000,000d国通貨で購入した。当該購入代金は、本件各組合員の出資金(合計10,703,000d国通貨)及び本件借入金(31,435,442d国通貨)によって賄われた。
ト 本件業務執行者は、G社との間で、平成10年4月から平成16年4月まで、本件航空機を月額リース料430,000d国通貨で貸し付ける旨のリース契約を締結した。本件各組合員は、平成13年にG社が倒産する頃までの間、当該契約どおりのリース料収入を得て、当該リース料のうち393,000d国通貨を毎月の本件借入金の返済(元利均等払)に充て、その残額を毎月の本件手数料の支払等に充てた。
チ 本件業務執行者は、平成13年11月に本件航空機のリース先であったG社が倒産したことに伴い、再リース先としてN社(平成16年1月に「P社」へ改称)を選定し、同社との間で、リース期間を平成14年5月から平成16年3月まで、当該期間中の月額リース料を90,000d国通貨ないし130,000d国通貨とする旨の、本件航空機のリース契約を締結し、本件各組合員は、当該契約どおりのリース料収入を得た。
 その後、本件業務執行者は、N社との間で、リース期間を平成22年3月31日まで延長し、当該期間中の月額リース料を月額125,000d国通貨とする旨の、本件航空機のリース契約を締結し、本件各組合員は、平成19年3月○日に本件組合が解散するまでの間、当該契約どおりのリース料収入を得た。
リ 本件業務執行者は、上記チの頃、N社に対する本件航空機の再リースを開始するに当たって生じた諸費用等を賄うため、F社から、リコースローンの方式による借入れ(平成19年3月○日現在の残債務は、2,766,093.27d国通貨。)を行った。なお、当該リコースローンにおける借入利率は、年利1.75%である。
ヌ 本件業務執行者は、N社に対する本件航空機の再リース開始後の月額リース料が、毎月の本件借入金の返済額に満たないことから、本件融資銀行と協議の上、本件借入金に係る本件ローン契約について、要旨次のとおりの新たな合意をした。
(イ) 本件航空機の再リースによる月額リース料の全額を、毎月の本件借入金の返済に充てる。
(ロ) 毎月の本件借入金の返済額を変更せず、未返済額の返済期限を繰り延べる。
(ハ) 本件借入金の返済期間を、平成22年3月31日まで延長する。
(ニ) 本件借入金の融資利率を年利5.48%に変更する。
ル 本件各組合員は、平成13年11月にG社が倒産してから平成14年5月にN社に対する本件航空機の再リースを開始するまでの間、リース料収入が得られなかったこと、及び、上記ヌの(イ)のとおり、本件航空機の再リースによる月額リース料の全額が、毎月の本件借入金の返済に充てられたことから、平成13年11月分から本件航空機を売却した平成19年3月分までの間、本件業務執行者に対して支払うべき毎月の本件手数料の未払を続け、本件業務執行者は、本件組合の経理上、当該未払の全額を、各事業年度における未払の手数料として計上した。
 なお、本件業務執行者は、本件各組合員に対し、本件手数料の支払期限を繰り延べる旨を通知しており、本件各組合員は、上記の未払の本件手数料について、本件業務執行者から支払の催促を受けたことはなかった。
ヲ 本件各組合員は、平成16年2月10日付の「N社向け航空機賃貸事業について」と題する書面のとおり、本件組合の存続期間を平成29年4月21日まで延長する旨の本件組合契約の変更に合意した。
ワ 本件業務執行者は、本件各組合員に対し、平成19年2月1日付の「P社向け(旧G社向け)航空機賃貸事業について」と題する書面を交付し、要旨次の(イ)ないし(ニ)の理由で、本件航空機を売却して本件業務を終了することについての提案をし、その頃、本件各組合員は、当該提案のとおりに可決した。
(イ) 米国などにおける景気低迷、平成13年9月の米国での同時多発テロ、イラク戦争等の影響により、航空業界は、かつて経験したことがないほど厳しい状況になり、航空機マーケットも低迷が続いている。また、f型航空機(f-○○及びf-△△)については、平成16年10月にQ社が生産を中止したため、本件航空機に関するマーケットは、依然として厳しい状況にある。
(ロ) 本件航空機の平成19年1月時点の鑑定会社5社による現在市場価格は、13,600,000d国通貨ないし18,480,000d国通貨であるが、これは平成19年2月時点の本件借入金の元本残高の約21,300,000d国通貨を下回る水準となっている。このような状況の中では、本件業務を継続しても、出資金の回収の見込みが生じる可能性は小さい。
(ハ) 以上の情報、本件組合のその他の負債等、諸般の事情を前提に、本件組合の業務執行者として、本件融資銀行等と交渉を行い、次のAないしCのとおりの取引を実行することについて、合意を取り付けることができる見込みとなった。その結果として、本件各組合員に追加出資を求めることなく、本件業務を終了させることが可能である。
A 本件各組合員は、平成19年2月5日を基準として本件航空機を17,000,000d国通貨で売却する(本件航空機の最終的な売却価格は、実際の売却日によって変更になる可能性がある。)。
B 本件各組合員は、上記の本件航空機の売却代金の一部を用いて、本件融資銀行に対し約14,000,000d国通貨を返済することにより、本件借入金を完済し(平成19年2月時点の本件借入金の元本残高は約21,300,000d国通貨であるが、本件融資銀行との交渉により、その返済必要額が減額される予定である。)、当該返済に充てた残額をF社に対する借入金の支払に充て、全債務を完済する。
C 本件組合は、G社の倒産時に本件航空機を取り戻すために、G社が未払であった管制料や空港使用料等をq国当局等に立替払をしたところ、この立替金を取り戻すために行ったq国の裁判に関連して今後発生する債権・債務については、F社に譲渡して、本件各組合員には当該裁判に関する資金負担が以後発生しないようにし、本件業務を速やかに終了させる。
(ニ) 本件業務の状況を踏まえると、上記の条件に基づいて、本件航空機を売却することが本件各組合員にとって最善であり、かつ、現実的な方法であると考えるので、上記のとおり提案する。
カ 本件業務執行者は、平成19年3月○日、N社との間のリース契約を解除することなく、本件航空機をR社に売却した。これに伴い、本件組合は、解散した。
ヨ 本件組合の平成19年1月1日から同年3月○日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)における、本件航空機の営業収益としてのリース料収入の計上額は、375,000d国通貨であり、請求人の出資割合に応じた持分相当額は○○○○d国通貨(日本円に換算した額は○○○○円)であった。
タ 本件各組合員は、平成19年3月○日、本件航空機の売却代金の一部である14,000,000d国通貨をもって本件融資銀行に対する本件借入金(同日現在の元本残高は21,174,562.71d国通貨)の返済に充て、その結果、本件借入金に係る残債務(7,174,562.71d国通貨)の返済責任が、本件融資銀行との本件ローン契約等に基づいて消滅した(以下、この消滅した額を「本件組合ローン残債務消滅益」という。)。本件業務執行者(清算人)は、本件組合の経理上、本件組合ローン残債務消滅益を、本件事業年度の債務免除益として計上した。
 なお、F社が組成した個人向け航空機リース事業に係る組合(本件組合を含む。)においては、全てノンリコースローンの方式による借入れが行われたが、平成23年10月12日時点で終了し、又は清算中の組合○○件(本件組合を含む。)のうち、本件各組合員についてのみ、ノンリコースローンの方式による借入金に係る債務消滅益が生じた。
 また、F社が組成した法人向け航空機リース事業に係る組合で、上記時点で終了し又は清算中の組合のうち、ノンリコースローンの方式による借入れが行われた案件は○○件あるが、上記借入金について債務消滅益が生じた案件はない。
レ 本件各組合員は、本件業務執行者(清算人)から、平成19年3月○日現在の本件手数料に係る未払債務の全額(合計231,370d国通貨)について、その支払免除を受けた(以下、この支払免除を受けた額を「本件組合手数料免除益」といい、本件組合ローン残債務消滅益と併せて「本件組合消滅益等」という。)。そして、本件業務執行者(清算人)は、本件組合の経理上、本件組合手数料免除益を、本件事業年度の債務免除益として計上した。
ソ 本件組合消滅益等の額は、合計7,405,932.71d国通貨であり、請求人の出資割合に応じた本件組合ローン残債務消滅益及び本件組合手数料免除益(以下、順に「本件ローン残債務消滅益」及び「本件手数料免除益」といい、両者を併せて「本件消滅益等」という。)に係る持分相当額は、合計○○○○d国通貨である(なお、これを日本円に換算すると、本件ローン残債務消滅益が○○○○円、本件手数料免除益が○○○○円、本件消滅益等が合計○○○○円となる。)。
ツ 本件各組合員は、平成19年3月○日現在のF社からのリコースローンの方式による借入金に係る残債務について、本件航空機の売却代金の残りの額を充当して、その弁済を完了した。
ネ 上記タないしツの弁済等により、平成19年3月○日、本件組合の清算は終了した。
ナ 請求人は、平成19年分の所得税の確定申告の際に、本件航空機のリース料収入のうち出資割合に応じた持分相当額を不動産所得の総収入金額に、本件航空機の売却代金収入のうち出資割合に応じた持分相当額を譲渡所得の総収入金額にそれぞれ算入し、本件消滅益等(合計○○○○円)をいずれも一時所得の金額とし、他方で、本件各組合員が本件業務執行者に対して支払うべき本件手数料に係る未払債務のうち、平成19年に支払日の到来する分の合計額の出資割合に応じた持分相当額を、不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入した。なお、請求人は、本件手数料が未払になって以降も、未払となる以前と同様に、継続して、本件手数料に係る未払債務のうち請求人の出資割合に応じた持分相当額を、各年の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入していた。
ラ 原処分庁は、本件消滅益等は、いずれも雑所得に該当するとして本件更正処分等をした。
ム 請求人は、本件更正処分等を不服として異議申立てをした。これに対し、異議審理庁は、本件消滅益等はいずれも一時所得には当たらないとして、棄却の異議決定をした。

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2 争点

 本件消滅益等(本件ローン残債務消滅益及び本件手数料免除益)は、一時所得に該当するか否か。

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3 主張

(1) 原処分庁

 本件消滅益等は、本件航空機を使用又は収益させる対価としての性質を有しておらず、本件航空機のリース料収入に代わる性質を有するものでもないから、不動産所得に該当せず、また、利子所得等のいずれにも該当しない。そして、本件消滅益等は、次のイないしニの理由で、一時所得にも該当しないから、雑所得に該当する。
イ 本件組合契約書によれば、本件組合は、本件各組合員が出資し、本件組合を通じて本件航空機の取得、賃貸、管理、売却等に関する事業を営み、組合員相互の利益を図ることを目的として組成された民法上の組合であるから、本件業務は、営利を目的とする継続的行為に当たる。
ロ そして、民法上の組合が解散したときの清算業務は、組合としての取引、すなわち組合業務の一環であり、当該業務の効果は各組合員に帰属するところ、本件消滅益等は、本件業務の一環である清算業務の中で生じた所得である。そうすると、上記イのとおり、本件業務が、営利を目的とする継続的行為に当たる以上、本件消滅益等は「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」に当たる。
ハ したがって、本件消滅益等は「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」でないから、一時所得に該当しない。
ニ なお、所得税基本通達34−1の(5)において、法人から受ける贈与により取得する金員のうち業務に関連して受けるもの及び継続的に受けるものは一時所得から除かれているところ、営利を目的とする継続的行為たる本件業務から生じた所得である本件消滅益等が、当該通達の射程外であることは明らかである。

(2) 請求人

 本件消滅益等は、本件融資銀行又は本件業務執行者に対して本件航空機を使用又は収益させる対価としての性質を有する経済的利益ではなく、本件航空機のリース料収入に代わる性質を有する経済的利益でもないから、不動産所得に該当せず、また、利子所得等のいずれにも該当しない。そして、本件消滅益等は、次のイないしニの理由で、一時所得に該当する。
イ 本件ローン残債務消滅益について
 本件ローン残債務消滅益は、やむを得ない事情に基づき、本件組合の清算時に本件融資銀行が行った1回限りの債務の免除により生じたものであり、その後、継続的に本件融資銀行からの債務の免除がなされ、請求人が当該免除による利益を受けることは、全く想定されていない。また、実際、本件ローン残債務消滅益以外に、請求人が本件融資銀行からの債務の免除を受けたことはない。
 したがって、本件ローン残債務消滅益は、繰り返し生じることが予定されていない一時的な所得であるから、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」に当たる。
ロ 本件手数料免除益について 
 本件手数料免除益は、やむを得ない事情に基づき、本件組合の清算時に本件業務執行者が行った1回限りの債務の免除により生じたものであり、その後、継続的に本件業務執行者からの債務の免除がなされ、請求人が当該免除による利益を受けることは、全く想定されていない。また、実際、本件手数料免除益以外に、請求人が本件業務執行者から債務の免除を受けたことはない。
 したがって、本件手数料免除益は、繰り返し生じることが予定されていない一時的な所得であるから、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」に当たる。
ハ 所得税基本通達について
 所得税基本通達34−1の(5)は「法人からの贈与により取得する金品」を一時所得の一例として掲げているところ、本件消滅益等は法人から受けたという点で、当該通達に当てはまることは明らかである。
ニ 原処分庁の主張に対する反論の要旨
 任意組合は、所得税法上の納税義務者ではなく、任意組合の事業から生じる所得は、裁判例等において、当該任意組合の組合員に直接帰属するものとされている。かかる法理に立つならば、任意組合の事業から生じる所得の区分についても、当該事業においてその所得がどのような発生原因によって生じたのかにより決定するべきであり、任意組合自体の属性から判断することは誤りである。
 したがって、本件組合の業務自体に営利性及び継続性があることをもって、本件消滅益等が「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」に当たるとの原処分庁の主張は、誤りである。

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4 判断

(1) 本件消滅益等の所得区分の検討

 本件消滅益等が、利子所得等のいずれにも該当しないことは明らかである。そこで、以下、本件ローン残債務消滅益及び本件手数料免除益が、それぞれ、不動産所得、一時所得又は雑所得のいずれに該当するかについて、順に検討する。

(2) 本件ローン残債務消滅益について

イ 法令解釈
(イ) 所得税法第26条第1項は、不動産所得とは、不動産等の貸付けによる所得である旨規定しているところ、この「貸付けによる」とは、「貸付けに基づく」ないし「貸付けを原因とする」という意味に解されるのであり、不動産所得に係る総収入金額には、賃貸人が賃借人に対して一定の期間、不動産等を使用又は収益させる対価としての性質を有するもののみならず、これに代わる性質を有するものも含まれるものと解される。そして、所得税法施行令第94条第1項第2号は、不動産所得を生ずべき業務を行う者が受ける当該業務の収益の補償として取得する補償金等で、その業務の遂行により生ずべき不動産所得に係る収入金額に代わる性質を有するものも、不動産所得に係る総収入金額とする旨規定することにより、上記の趣旨を明らかにしている。
(ロ) さらに、不動産所得を生ずべき業務の性質・内容が、不動産等の貸付けによる利益の獲得を目的とした経済活動の総体であることからすると、当該業務の遂行に伴って本来企図した収入以外の収入が付随して生じる場合もあるところ、所得税法が所得をその源泉や性質によって10種類に区分し、その性質や発生の態様によって異なる担税力に応じた公平な課税の実現を図ろうとするものであることに鑑みると、上記(イ)のような本来企図した収入ではないが、不動産所得を生ずべき業務の遂行に伴い付随して生じた収入についても、不動産所得の総収入金額に含まれると解するのが相当である。
ロ 当てはめ
(イ) 不動産所得該当性について
 上記1の(4)のニ、ホ及びタのとおり、本件ローン残債務消滅益は、本件ローン契約等に基づいて本件融資銀行が本件各組合員に対して供与した経済的利益であるから、不動産等に当たる本件航空機を使用又は収益させる対価としての性質を有するものにも、これに代わる性質を有するものにも当たらない。
 また、確かに、上記1の(4)のイないしヘのとおり、本件ローン契約は、本件各組合員が、航空機の賃貸(リース)等による利益の獲得を目的とする本件業務の一環として締結されたものであるが、本件ローン契約自体は、貸付けの用に供する不動産等(本件航空機)の取得資金を賄うために当該貸付けに係るリース契約とは別個に本件融資銀行との間で締結されたものである上、本件ローン残債務消滅益は、本件ローン契約中のノンリコースローンに関する契約条項に基づいて生じたものであるから、本件航空機の貸付けに係る不動産所得を生ずべき業務の遂行に伴い付随して生じた収入には該当しないものというべきである。
 したがって、本件ローン残債務消滅益は、不動産所得に該当しない。
(ロ) 一時所得該当性について
 本件ローン残債務消滅益は、本件ローン契約中のノンリコースローンに関する契約条項に基づいて、一回限りで生じたものであるが、上記1の(4)のイないしヘのとおり、本件ローン契約の締結自体は、本件組合の目的である航空機の賃貸(リース)等の事業の遂行に必要不可欠な本件航空機の取得資金を賄うためにされたものであって、そのことは本件組合契約において予定されていたことであるから、本件ローン契約の締結は、営利を目的とする継続的行為に該当することの明らかな本件組合の業務の一環としてされたものということができる。そして、上記事実関係によれば、本件組合の事業の用に供する本件航空機の取得資金の借入れに当たって、本件融資銀行が本件組合の財産のみを返済原資とし、本件各組合員は出資持分以外の人的責任を負わない旨のいわゆるノンリコースローンの約定がされたことが、本件組合契約の前提として当初から予定されていたものと認められる。
 以上によれば、本件ローン残債務消滅益は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得ということはできないから、一時所得に該当しない。
ハ 結論
 したがって、本件ローン残債務消滅益は、不動産所得に該当せず、また、一時所得にも該当しないから、雑所得に該当する。

(3) 本件手数料免除益について

イ 法令解釈
 所得税法第26条第2項が、不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする旨規定していることに鑑みると、不動産所得の必要経費に算入される金額の補填を目的とする金員の支払や、同金額に係る未払債務の支払免除を受けた場合には、その支払や免除を受けた金額は、不動産所得の総収入金額に算入すべきである。
 また、所得税法第36条第1項によれば、当該免除等相当額は、その免除等のあった日の属する年分の不動産所得の金額の計算上、総収入金額に算入すべきである。
ロ 当てはめ(不動産所得該当性)
 本件手数料は、上記1の(4)のハの(ニ)のとおり、本件組合契約上、本件組合の業務である本件航空機の賃貸(リース)等を、本件業務執行者に委任したことに対する報酬として、毎月のリース料収入の一定割合に相当する額を、本件各組合員が支払うこととされたものであり、本件各組合員は、同ト及びルのとおり、本件業務の開始当初は、本件航空機の毎月のリース料収入の中から本件手数料を支払っていたものの、平成13年11月分以降は、全額未払であり、請求人は、上記1の(4)のナのとおり、当該未払の本件手数料に係る債務のうち持分相当額を、その支払日の属する年分の不動産所得の必要経費に算入していたところ、同レのとおり、請求人の不動産所得の必要経費に算入した金額に係る本件手数料の未払債務の全額について、支払免除を受けたというのである。
 そうすると、本件手数料免除益は、その免除を受けた日の属する平成19年分の不動産所得の総収入金額に算入すべきものである。
ハ 結論
 したがって、本件手数料免除益は、不動産所得に該当するから、一時所得に該当しない。

(4) 請求人の一時所得該当性に関する主張について

イ 請求人は、本件消滅益等が、やむを得ない事情に基づき1回限りで生じたものであり、繰り返して生じることが予定されているものではないことを理由に、いずれも一時所得に該当する旨主張する。しかし、本件消滅益等が、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得といえないこと、また、不動産所得の総収入金額に算入すべき所得に当たることから、いずれも一時所得に該当しないことは、上記(2)のロの(ロ)及び同(3)のロのとおりであって、請求人の上記主張は採用できない。
ロ また、請求人は、本件消滅益等が、所得税基本通達34−1の(5)が掲げる「法人からの贈与により取得する金品」に該当することを理由に、一時所得に該当する旨も主張する。しかし、当該通達上、法人からの贈与のうち業務に関して受けるものは、一時所得に該当しないこととされているところ、本件消滅益等は、本件業務に関して発生したものであるから、当該通達の定めによっても、一時所得に該当しない。したがって、請求人の上記主張も採用できない。

(5) 本件更正処分について

 上記(2)及び(3)のとおり、本件ローン残債務消滅益○○○○円は雑所得に該当し、本件手数料免除益○○○○円は不動産所得に該当するから、これを前提として請求人の平成19年分の所得税の総所得金額及び納付すべき税額を計算すると、別表3の「審判所認定額」欄のとおりとなる。この額は本件更正処分と同額であるから、本件更正処分は適法である。

(6) 本件賦課決定処分について

 本件更正処分は上記(5)のとおり適法であり、本件更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいてされた本件賦課決定処分は適法である。

(7) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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