(平成24年3月13日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、固定資産の取得に際して負担した固定資産税に相当する金額及び土地賃貸借契約に伴う負担金の額を損金の額に算入して申告したところ、原処分庁が、当該固定資産税に相当する金額は、固定資産の取得価額に算入すべきであり、また、当該負担金の額は、土地の上に存する権利の取得価額に算入すべきであるから、損金の額に算入されないとして法人税の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、当該固定資産税に相当する金額のうち使用していない建物に係る分及び当該負担金の額は、損金の額に算入すべきであるとして、同処分等の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成17年2月○日から平成18年2月27日まで、平成18年2月28日から平成19年1月31日まで、平成19年2月1日から平成20年1月31日まで、平成20年2月1日から平成21年1月31日まで及び平成21年2月1日から平成22年1月31日までの各事業年度(以下、順次「平成18年2月期」、「平成19年1月期」、「平成20年1月期」、「平成21年1月期」及び「平成22年1月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、平成18年2月期は確定申告書に、平成18年2月期を除く各事業年度は青色の確定申告書に別表の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
ロ 原処分庁は、これに対し、平成23年4月27日付で、別表の「更正処分等」欄のとおり、本件各事業年度の法人税の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第4項第1号及び3号の規定により、平成23年6月24日に審査請求をした。

(3) 関係法令等

 関係法令等の要旨は、別紙のとおりである。

(4) 基礎事実

イ 請求人は、平成17年2月○日に設立されたゴルフ場、ホテル及び旅館の経営等を目的とする株式会社である。
ロ 請求人が平成17年4月28日付で破産者G社及び破産者H社の両破産者の破産管財人弁護士J(以下「本件破産管財人」という。)との間において締結した営業譲渡契約(以下「本件譲渡契約」という。)に係る営業譲渡契約書(以下「本件譲渡契約書」という。)には、要旨次のとおり記載されている。
(イ) 譲渡資産は、譲渡日現在において、本件破産管財人が保有するK倶楽部及びL倶楽部のホテル事業及びゴルフ場事業に関する一切の資産(棚卸資産及び未収年会費以外の流動資産は除く。以下「本件譲渡資産」という。)とする。(第2条1)
(ロ) 本件破産管財人は、平成17年5月27日をもって、本件譲渡資産を請求人に譲渡する。(第3条)
(ハ) 譲渡代金は、総額510,000,000円(消費税を除く。)とし、当該譲渡代金のK倶楽部の建物への割振額は、42,590,272円(消費税を除く。)であり、同倶楽部の土地への割振額は、所有地分が78,192,469円、借地分が162,399,742円である。(第4条)
(ニ) 請求人は、譲渡日現在本件破産管財人が負担している債務を一切承継しない。
 ただし、平成17年1月1日以降に発生する本件譲渡資産に関する固定資産税等の公租公課(本件破産管財人が法律上の納付義務者となるもの。)のうち、譲渡日以降の分(1年を365日とする日割り計算による。)は、請求人の負担とし、請求人は譲渡日においてこれを精算するものとする。(第11条)
ハ 請求人とe町との間において締結したゴルフ場用地賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)に係る平成18年8月18日付のゴルフ場用地賃貸借契約書(以下「本件賃貸借契約書」という。)には、要旨次のとおり記載されている。
(イ) e町は、b市e町○−○外19筆の土地753,899平方メートル(以下「本件土地」という。)を、賃料年額9,268,007円として、ゴルフ場及びこれに附帯する観光施設の敷地に供する目的で請求人に賃貸し、請求人はこれを借り受ける。(第1条)
(ロ) 賃貸借期間は、平成17年5月27日より20年とする。(第2条)
(ハ) e町は、本件破産管財人と請求人間の本件譲渡契約を是認し、請求人はe町に対し、本件賃貸借契約による賃借権設定の対価として、権利金の額を次のとおり算定して分割して支払う。(第3条)
A 算定方法は、破産者G社のe町に対する未納金のうち、固定資産税本税112,535,000円と未納土地賃貸料13,194,016円の合計125,729,016円に、破産者G社の配当金全額を充当した残額をもって権利金の額とする。
B 支払方法は、平成18年9月から毎年9月末日限り、権利金の額に充つるまで年額12,500,000円を分割して支払う。なお、最終回の残額が12,500,000円に満たない場合はその残額を支払う。
C e町は、上記権利金を請求人に返還することを要しない。
(ニ) 請求人が、賃料若しくは第3条に定める権利金設定の対価の支払を怠り、e町から1か月の催告期間を定めて催告したにも関わらず、支払わなかったときは、e町は本件賃貸借契約を解除することができる。(第8条3)
ニ M地方法務局所属の公証人Nが作成した平成21年9月15日付「平成○年第○号土地賃貸借契約公正証書」(以下「本件公正証書」という。)には、要旨次のとおり記載されている。
(イ) e町と請求人とは、本件土地について、本件賃貸借契約を締結した(平成18年8月18日契約、平成19年1月30日一部変更。)。
 賃料は、年額9,268,007円とする。(第1条)
(ロ) 賃貸借期間は、平成17年5月27日から20年間とする。(第2条)
(ハ) e町は、本件譲渡契約を承認し、請求人は、e町に対し、本件賃貸借契約による賃借権設定の対価(権利金)とする金107,229,493円(以下「本件負担金」という。)を次のとおり分割して支払う。(第3条1)
A 平成18年から平成25年まで、毎年9月末日限り、金12,500,000円宛(合計100,000,000円)
B 平成26年9月末日限り、金7,229,493円
C e町は、本件負担金を請求人に返還することを要しない。(第3条2)
(ニ) 請求人が、賃料若しくは第3条に定める本件負担金の支払を怠り、e町から1か月の催告期間を定めて催告したにも関わらず、支払わなかったときは、e町は本件賃貸借契約を解除することができる。(第8条3)
ホ 請求人は、本件譲渡契約における譲渡日以降の期間に対応する未経過分の固定資産税に相当する金額(以下「未経過固定資産税相当額」という。)を平成17年5月25日に本件破産管財人に支払い、平成18年2月期の総勘定元帳の開業費勘定に平成17年5月27日付でK倶楽部の資産に係る未経過固定資産税相当額15,173,640円(以下、このうち建物に係る金額を「本件未経過固定資産税相当額」という。)及びL倶楽部の資産に係る未経過固定資産税相当額8,907,797円を計上し、損金の額に算入した。
 なお、本件未経過固定資産税相当額には、請求人が資産計上していない建物及び既に存在していない建物に係る未経過固定資産税相当額が含まれている。
ヘ 請求人は、上記ロの(ハ)においてK倶楽部の借地分への割振額とした162,399,742円を総勘定元帳に借地権として計上した。
 また、請求人は、上記ハの(ハ)及びニの(ハ)において分割して支払うこととした年額12,500,000円の金員に関し、各事業年度において次のとおり計上した。

事業年度 請求人の仕訳
平成19年1月期 借地権12,500,000円/普通預金12,500,000円
減価償却費833,333円/借地権833,333円
平成20年1月期 賃借料12,500,000円/普通預金12,500,000円
減価償却費2,5000,000円/借地権2,5000,000円
平成21年1月期 借地権12,500,000円/普通預金12,500,000円
減価償却費3,333,333円/借地権3,333,333円
平成22年1月期 租税公課12,500,000円/普通預金12,500,000円
減価償却費5,000,000円/借地権5,000,000円

(注) 各期の減価償却費は、平成19年1月期と平成21年1月期に借地権としてそれぞれ計上した12,500,000円を繰延資産として毎期2,500,000円(各計上初年度は期間あん分して、833,333円)償却しているものである。

ト 請求人の平成18年2月期の固定資産減価償却内訳明細書によれば、K倶楽部の建物は、平成2年築のホテル建物(以下「本件建物」という。)44,719,786円(消費税相当額を含む。)である旨、また、L倶楽部の建物は、クラブハウス建物19,956,012円(消費税相当額を含む。)である旨記載している。

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2 争点

(1) 争点1 本件未経過固定資産税相当額のうち本件建物以外の建物に係る未経過固定資産税相当額は、一時の損金の額に算入できるか否か。
(2) 争点2 本件負担金は、損金の額に算入できるか否か。

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3 主張

(1) 争点1 本件未経過固定資産税相当額のうち本件建物以外の建物に係る未経過固定資産税相当額は、一時の損金の額に算入できるか否か。

原処分庁 請求人
 本件未経過固定資産税相当額の授受は売買の条件の一つであるところ、請求人は、その支払に見合う資産を取得するために、本件譲渡契約における譲渡価額と別に本件未経過固定資産税相当額を支払ったものと認められる。
 そして、本件譲渡契約において、本件破産管財人から譲渡されたK倶楽部の建物の価額は42,590,272円(消費税相当額を加算した額は44,719,786円)とされているところ、請求人は、本件建物を同額で資産計上していることが認められる。
 そうすると、本件譲渡契約により支払われた本件未経過固定資産税相当額は、本件建物を取得する目的で本件破産管財人に支払った購入代価の一部であると認められるため、本件建物の取得価額に算入すべきであり、平成18年2月期の所得の金額の計算上、損金の額に算入されない。
 請求人は、本件譲渡契約書の第4条に基づき、固定資産を取得しているが、K倶楽部の建物のうち、事業の用に供し減価償却資産として計上しているのは本件建物のみである。それ以外の建物については、固定資産税課税明細書に記載はあるが、利用するには相当の修繕費用が掛かるため事業に利用していないものであり、事業の用に供する資産として減価償却することはできないから、購入時に1点の価額が10万円未満の什器備品等の扱いと同様に譲受け時に零円評価としたものである。
 したがって、本件建物以外の建物に係る未経過固定資産税相当額は、法人税法第2条第24号の繰延資産である開業費に含まれ、一時の損金の額に算入することができる。

(2) 争点2 本件負担金は、損金の額に算入できるか否か。

原処分庁 請求人
 賃借権の譲渡について、賃借人は賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲り渡すことができない(民法第612条第1項)とされており、また、本件譲渡契約書は、譲渡人である本件破産管財人が譲受人である請求人に対し、e町を賃貸人とする土地の借地権を譲渡する旨定めているが、一方、譲渡人が締結している賃貸借契約など一切の契約(権利)の承継については、譲受人の責任と負担において、賃貸人等の利害関係人との間で解決するものとし、譲渡人は一切責任を負わない旨定めていることからすると、本件譲渡契約により、本件破産管財人と請求人の間において借地権を譲り渡すことを合意したことは認められるものの、飽くまで、請求人は、賃貸人であるe町の承諾を得なければ、本件土地を使用する権利、すなわち本件土地の借地権を有効に取得することができなかったことが認められる。
 そして、本件公正証書は、まる1e町は、請求人と本件破産管財人との間で締結された本件譲渡契約を承認する旨、まる2請求人は、e町に対し、本件賃貸借契約による借地権設定の対価として本件負担金を分割して支払う旨、まる3e町は、本件負担金を請求人に返還することを要しない旨定めていること、また、まる4e町総務課長は、原処分調査において、本件負担金は、賃貸料とは別にゴルフ場用地の貸付けの条件として支払を受けるものである旨申述していることからすると、本件負担金は、請求人が本件土地の借地権を取得することに関し、賃貸人であるe町の承諾を得るために支払うものと認められる。
 以上のとおり、本件負担金の性質は、その実質において、本件土地の借地権を有効に取得するために賃貸人であるe町に対し、その支払を約したものと認められるから、本件土地の借地権の取得価額に算入されるべきものである。
 請求人は、本件譲渡契約書の第4条により、本件破産管財人から譲渡されたK倶楽部の土地について、借地権の代金を162,399,742円支払っている。
 元々e町に借地権についての代金の収受の慣行はないのであるが、当該譲渡契約時に請求人が借地権の譲渡代金を支払ったことは明らかであり、請求人は、営業譲受けの時に、K倶楽部に係る借地権を取得しているのであり、本件賃貸借契約書により、借地権を設定する必要はなく、この時に借地権を設定したものではない。
 したがって、本件賃貸借契約書は、請求人が観念的に取得していた借地権に係る土地の賃料金額を具体的に定めるための契約書である。
 また、本件賃貸借契約書第3条に定める権利金は、同条の算定方法を見て分かるように、破産者G社の未納固定資産税と、未納土地賃貸料の負担であり、本来、請求人に法的支払義務はないが、契約上の条件であり、e町と円滑な関係を保ち、行政サービスを受けるために、その対価としてe町の歳入不足を手助けすることに同意し、営業を円滑に行うための好意での資金負担である。
 したがって、当該権利金名目で支出した負担金は、法人税法第22条第3項に定める、各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべきである。

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4 判断

(1) 争点1について

イ 法令解釈等 
(イ) 法人税法第2条第24号は、繰延資産は、法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもので政令で定めるものをいうと規定しているところ、法人税法施行令第14条第1項は、当該費用は、資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く旨規定している。
(ロ) 法人税法施行令第54条第1項第1号は、減価償却資産の取得価額は、当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)及び当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額とする旨規定しているところ、土地も減価償却資産と同様に固定資産の一つであることから、その取得価額については、同条を準用することになると解するのが相当である。法人税基本通達7−3−16の2も、このことを明確にしたものと考えられ、当審判所においても相当と認められる。
(ハ) 地方税法第343条及び同法第359条の規定によれば、固定資産税は、その賦課期日である毎年1月1日現在において、固定資産課税台帳に所有者として登録されている者に対して課されるものであり、賦課期日後に所有者に異動が生じたからといって、課税関係に変動が生じるものではなく、賦課期日後に資産の所有者となった者が当該年度の固定資産税の納税義務を負うことはない。
 したがって、当該資産の売買当事者間において、固定資産税を納めた売主が買主に対し、売買後の期間に対応する未経過分の固定資産税の求償権を取得することはないから、売買当事者間において未経過固定資産税相当額が授受されたとしても、地方税法上、固定資産税の納税義務に伴う負担とみることはできない。
ロ 当てはめ
(イ) 一般的な不動産売買においては、不動産売買価額自体とは別に、その所有期間に応じた未経過分の固定資産税相当額を譲受人が負担する旨の契約を締結する取引慣行が認められるところ、当該取引慣行は、上記イの(ハ)のとおり、固定資産税がその賦課期日である1月1日現在の所有者に課されるもので、賦課期日後に当該固定資産が譲渡された場合であってもその譲渡前の所有者が納税義務者とされていることにより、売買当事者間においてその譲渡時点における未経過期間に係る固定資産税に相当する金額を譲受人に負担させようとするものであり、いわば売買の取引条件の一つであると考えられる。
 そして、上記イの(ロ)のとおり、購入した減価償却資産及び減価償却資産以外の固定資産の取得価額は、当該資産の購入の代価とされている。
 以上のことから、譲受人が未経過固定資産税相当額を負担することは、租税公課としての固定資産税の負担ではなく、飽くまでも固定資産税相当額を売買の取引条件として負担するものであることから、譲受人にとって未経過固定資産税相当額は、譲受けに係る資産の購入の代価を構成するものとして、固定資産である減価償却資産及び土地等の取得価額に含まれることとなる。
(ロ) ところで、前記1の(4)のロの(ハ)のとおり、本件譲渡契約書におけるK倶楽部の建物への割振額は42,590,272円(消費税相当額を加算した額は44,719,786円)であるところ、同トのとおり、請求人の固定資産減価償却内訳明細書に記載された本件建物の取得価額は44,719,786円(消費税相当額を含む。)である。
 そうすると、K倶楽部の建物のうち請求人が本件譲渡契約において取得の目的としている建物は、本件建物であると認められるから、請求人が支払った本件未経過固定資産税相当額は、請求人にとって本件建物の購入に係る代価の一部として支払ったと認めるのが相当である。
 したがって、本件未経過固定資産税相当額のうち本件建物以外の建物に係る未経過固定資産税相当額は、本件建物の取得価額に算入すべきであるから、一時の損金の額に算入することはできない。
(ハ) 請求人は、K倶楽部の減価償却資産で建物として計上しているのは、事業の用に供する建物である本件建物のみであり、それ以外の建物については事業の用に供する資産として減価償却することはできないから、本件建物以外の建物に係る未経過固定資産税相当額は、繰延資産である開業費に含まれる旨主張する。
 しかしながら、上記(ロ)のとおり、請求人が本件譲渡契約において取得の目的としているのは、本件建物であると認められ、また、請求人が負担すべき本件未経過固定資産税相当額に、請求人が資産計上していない建物に係る未経過固定資産税相当額を含んでいるとしても、それは、請求人が本件建物を取得するに当たり、売買当事者間で合意した取引条件として負担すべき金額の算定根拠にすぎない。
 したがって、本件未経過固定資産税相当額は、請求人にとって本件建物の購入に係る代価の一部として支払ったものと認めるのが相当であり、法人税法施行令第14条に規定する「資産の取得に要した金額とされるべき費用」に該当し、繰延資産となる費用には当たらないことから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2について

イ 法令解釈等
 法人税法第2条第22号及び法人税法施行令第12条は、固定資産について、「土地(土地の上に存する権利を含む。)、減価償却資産、電話加入権及びこれらに準ずる資産」である旨規定しているところ、土地に含まれる「土地の上に存する権利」とは、地上権、土地の賃借権及び地役権等をいうものと解され、この地上権及び土地の賃借権を総称して借地権といわれているが、借地権は減価償却資産には当たらず、償却できないものとされている。
 そして、法人税基本通達7−3−8は、借地権の取得価額には、土地の賃貸借契約又は転貸借契約に当たり借地権の対価として土地所有者又は借地権者に支払った金額のほか、これらの契約に当たり支出した手数料その他の費用の額も含む旨定めているところ、借地権が法人税法上の土地に含まれること、及び土地の取得価額について準用される法人税法施行令第54条が、資産の取得に要した仲介手数料等の費用を資産の取得価額を構成するものとして取り扱っていると解されること等に照らし、当該通達の定めは、当審判所においても相当と認められる。
ロ 当てはめ
(イ) 本件賃貸借契約書及び本件公正証書によれば、前記1の(4)のハの(イ)及び(ロ)並びに同ニの(イ)及び(ロ)のとおり、本件土地に係る賃料及び期間を定め、また、当該賃料とは別に、同ハの(ハ)及び同ニの(ハ)のとおり、e町は本件譲渡契約を是認し、請求人はe町に対し、本件負担金を分割して支払う旨及びe町は本件負担金を請求人に返還することを要しない旨定め、さらに、同ハの(ニ)及び同ニの(ニ)のとおり、賃料若しくは第3条に定める本件負担金の支払を怠り、e町から1か月の催告期間を定めて催告したにも関わらず、支払わなかったときには、e町は本件賃貸借契約を解除することができる旨定められている。
 これらのことからすると、請求人は、本件賃貸借契約により、土地の賃借料の他本件負担金を支払わなければ本件土地を賃借することができなかったものと認められる。
 したがって、請求人は、ゴルフ場用地を賃借する権利を取得するために、本件負担金を支払うことを条件として本件賃貸借契約を締結しているものと認められることから、本件負担金は、土地の借地権設定の対価と認められ、土地の上に存する権利の取得価額となり、損金の額に算入することはできない。
(ロ) 請求人は、本件譲渡契約時に借地権の譲渡代金を支払い、K倶楽部に係る借地権を取得しているのであり、本件賃貸借契約書により、借地権を設定したものではなく、また、破産者G社が負担すべきであった未納固定資産税及び未納土地賃貸料は、本来、請求人に法的支払義務はないが、契約上の条件であり、e町と円滑な関係を保ち、行政サービスを受けるために、その対価としてe町の歳入不足を手助けすることに同意し、営業を円滑に行うための好意での資金負担であるから、当該権利金名目で支出した負担金は、法人税法第22条第3項に定める各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額であることは明らかである旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)のとおり、請求人は、本件譲渡契約を承認した上で、当該譲渡契約とは別に、ゴルフ場用地を賃借する権利を取得するために、本件負担金を支払うことを条件として本件賃貸借契約を締結したものと認められることから、たとえ本件負担金が、破産者G社がe町に対し未納となっていた固定資産税及び賃貸料相当額を負担するものであったとしても、それは本件負担金の額の算定の根拠とされているにすぎないとみるのが相当である。
 したがって、請求人の主張には理由がない。

(3) 本件各更正処分について

 上記(1)のロの(ロ)のとおり、本件未経過固定資産税相当額を平成18年2月期の損金の額に算入することはできず、また、上記(2)のロの(イ)のとおり、本件負担金は、土地の上に存する権利の取得価額であることから、平成19年1月期ないし平成22年1月期において、減価償却費、賃借料及び租税公課として損金の額に算入することはできない。
 なお、請求人は、平成18年2月期のQ司法書士に対して支払った報酬額が計上漏れである旨主張するが、請求人が提出した証拠資料及び当審判所の調査によれば、請求人自身が当該報酬額を支払った事実は確認できない上、請求人の帳簿上当該報酬額が損金の額として計上漏れであるかどうかも確認することができない。
 そうすると、本件各事業年度の所得金額は、いずれも本件各更正処分の額と同額となるので、本件各更正処分はいずれも適法である。

(4) 本件各賦課決定処分について

 上記(3)のとおり、本件各更正処分は適法であり、また、同処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づきなされた本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

(5) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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