(平成24年6月27日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、地方公務員である審査請求人(以下「請求人」という。)が、競馬の勝馬投票券(以下「馬券」という。)の的中によって得た払戻金に係る所得について、雑所得として申告したところ、原処分庁が一時所得に該当するとして更正処分等を行ったのに対し、請求人が、当該払戻金に係る所得は雑所得であるなどとして、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成17年分、平成18年分、平成19年分、平成20年分及び平成21年分の所得税について、法定申告期限内に確定申告書を提出しなかったところ、原処分庁所属の調査担当職員の調査を受け、別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、平成23年3月7日にそれぞれ申告した。
ロ 原処分庁は、これに対し、平成23年3月14日付で別表1の「賦課決定処分」欄のとおりの平成17年分、平成18年分、平成19年分、平成20年分及び平成21年分の所得税の無申告加算税の各賦課決定処分をした。
ハ その後、原処分庁は、上記イに対し、平成23年3月14日付で別表1の「更正処分等」欄のとおりの平成17年分、平成18年分、平成19年分、平成20年分及び平成21年分の所得税の各更正処分及び無申告加算税の各賦課決定処分をした。
ニ また、請求人は、平成22年分(以下、平成17年分、平成18年分、平成19年分、平成20年分及び平成21年分と併せて「本件各年分」という。)の所得税について、別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
ホ 原処分庁は、上記ニに対し、平成23年3月30日付で別表1の「更正処分等」欄のとおりの平成22年分の所得税の更正処分(以下、上記ハの各更正処分と併せて「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下、上記ハの無申告加算税の各賦課決定処分と併せて「本件各賦課決定処分」という。)をした。
ヘ 請求人は、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分を不服として、平成23年5月9日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年6月24日付でいずれも棄却の異議決定をし、その決定書謄本を請求人に対し同月28日に送達した。
ト 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成23年7月25日に審査請求をした。

(3) 関係法令

イ 所得税法第34条《一時所得》第1項は、一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう旨規定している。
 また、所得税法第34条第2項は、一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする旨規定し、同条第3項は、同条第2項に規定する一時所得の特別控除額は、500,000円とする旨規定している。
ロ 所得税法第35条《雑所得》第1項は、雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう旨規定している。

(4) 基礎事実

 以下の事実については、請求人と原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても、その事実が認められる。
イ 日本中央競馬会が行う競馬の概要
(イ) 日本中央競馬会(以下「JRA」という。)は、競馬法第1条第1項の規定に基づき競馬を行い、併せて同法第5条《勝馬投票券》の規定に基づき馬券を発売している。
(ロ) JRAが競馬を行う競馬場は、競馬法施行規則第1条《競馬場》に規定する札幌、函館、福島、新潟、中山、東京、中京、京都、阪神及び小倉の10競馬場である。
(ハ) また、競馬法施行規則第2条《競馬の開催》第1項は、年間開催回数、一競馬場当たりの年間開催回数、1回の開催日数及び1日の競走回数を規定し、同条第2項では、開催の日取りについて、原則として、土曜日、日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日(以下「祝日」という。)又は1月5日から同月7日までのいずれかの日からなる日取りと規定している。
 なお、JRAは、競馬開催日(競馬開催日が2日以上連続する場合にはその連続する競馬開催日を併せたもの。)又は競馬開催日と競馬開催日との間の日が土曜日、日曜日若しくは祝日である場合の前後する競馬開催日を併せたものを「節」と称している。
(ニ) JRAは、競馬法第7条《払戻金》第1項から第3項までの規定に基づき、各競走において馬券の的中者に対し、馬券の発売金額から同法第12条《投票の無効》に規定する投票の無効により馬券の所有者に対して返還すべき金額(この金額は、当該馬券の券面金額である。以下「返還金」という。)を控除した後の金額の約75%を的中した馬券にあん分して払戻金を交付するが、同法第7条第4項の規定により、払戻金の額は的中した馬券の券面金額を下回ることはない。
(ホ) JRAと「日本中央競馬会PAT方式電話投票(A−PAT)に関する約定」を結んだ者(以下「A−PAT会員」という。)は、電話やパーソナルコンピュータを利用したPAT方式電話投票(以下「A−PAT」という。)により馬券の購入を申し込むことができる。
 なお、A−PATの投票方式には、プッシュホン電話のボタン操作で馬券の購入を申し込むARS方式とパーソナルコンピュータやウェブ機能付携帯電話からインターネットを利用して馬券の購入を申し込むIPAT方式がある。
(ヘ) A−PAT会員がA−PATにより馬券を購入した場合は、節の直後の銀行営業日にA−PAT会員のA−PAT専用の銀行口座から当該節の馬券の購入金の総額が口座振替によりJRAに支払われ、また、当該節に馬券の的中による払戻金及び返還金がある場合は、当該節の直後の銀行営業日にA−PAT会員のA−PAT専用の銀行口座に当該払戻金及び当該返還金の総額がJRAから振り込まれる仕組みになっている。
ロ 請求人の馬券の購入状況等
(イ) 請求人は、本件各年分においてA−PAT会員であり、A−PAT専用の銀行口座として、J銀行n支店(旧、K銀行p支店)に請求人名義の普通預金口座(以下、この請求人名義の普通預金口座を「本件預金口座」という。)を設けている。
(ロ) 請求人は、本件各年分において、IPAT方式により携帯電話から継続して馬券を購入しており、本件各年分の本件預金口座のJRAとの決済に係る入出金状況は、別表2−1から別表2−6までの「入出金履歴」欄のとおりである。そして、別表2−1から別表2−6までの「年月日」欄の日付はいずれも節の直後の銀行営業日であり、「まる1入金金額」欄の金額はその日にJRAから振り込まれた払戻金(返還金がある場合はこれを含む。以下、これを「本件払戻金等」という。)であり、「まる2出金金額」欄の金額はその日にJRAに口座振替された馬券の購入金である。
ハ 本件各更正処分
 原処分庁は、原処分に係る調査の結果に基づき、請求人がA−PATにより購入した馬券の的中によって得た払戻金に係る所得(以下「本件競馬所得」という。)は一時所得に該当するとして、別表2−1から別表2−6までの本件各年分について、それぞれ「まる1入金金額」欄の金額の合計額を一時所得に係る総収入金額、「まる2出金金額」欄の金額(ただし、入金金額を上回る場合は入金金額を限度とする。)の合計額を一時所得に係る収入を得るために支出した金額と認定し、その差引金額から特別控除額500,000円(所得税法第34条第3項)を控除した金額を請求人の本件各年分の一時所得の金額であるとして、本件各更正処分をした。

(5) 争点

  1. 争点1 本件競馬所得は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」に該当し一時所得となるか、これに該当せず雑所得となるか。
  2. 争点2 本件競馬所得に係る所得金額の計算において、年間を通じた馬券の購入金額の全額を控除できるか否か。また、原処分庁が採用した算定方法に合理性はあるか否か。

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2 主張及び判断

(1) 本件競馬所得は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」に該当し一時所得となるか、これに該当せず雑所得となるか(争点1)。

イ 主張

原処分庁 請求人
 本件競馬所得は、次のとおり、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」という一時所得の課税要件に該当するので、一時所得である。  本件競馬所得は、次のとおり、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」という一時所得の課税要件に該当しないので、雑所得である。
(イ) 営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得とは、所得源泉を有しない所得と解すべきであり、所得源泉の有無は、所得の基礎に源泉性を認めるに足る継続性、恒常性があるか否かが判断基準になる。
 JRAが開催する競馬においては、馬券を購入する行為とその競走の結果(着順)との間に相関関係がないことは明らかであり、購入した馬券及び競走結果については、他の競走に影響を与えることのない独立事象であるから、馬券の購入金額よりも大きい払戻金を受け取れるか否かは飽くまで臨時的、不規則的なものであって、払戻金については、所得の基礎に源泉性を認めるに足るだけの継続性、恒常性を有しているとはいえない。
(イ) 請求人は、娯楽として楽しむのではなく、投機的行為に近いものとして、払戻金を原資に継続的に毎週馬券を購入しており、購入に当たっては、出走馬の過去の実績、競走への適合性、騎手の技量や騎乗馬との相性、その日の出走馬のコンディション、枠順、コースの特徴、馬場の状態など多種多様のファクターを組み合わせて着順を予想し、また、競走後には競走内容及び自らの予想の分析及び検討を繰り返して次の競走に生かし、高確率で馬券を的中させている。これは営利を目的とした継続的行為である。
(ロ) 請求人は、過去6年余にわたり、安定した払戻金を受けていた事実がある旨主張するが、これは飽くまで「結果」であり、臨時的、不規則的な払戻金が連続しているものであるから、この事実をもって本件競馬所得の基礎に源泉性を認めるに足るだけの継続性、恒常性があるとはいえない。 (ロ) 請求人は、上記(イ)の予想、分析及び検討を行うことにより、過去6年余にわたり毎年黒字の収益を確保しており、本件競馬所得は、臨時的、偶発的に生じる一時の所得ではなく、連続した継続性のある所得であり、所得源泉を有するとみることができる。
(ハ) 馬券を連続して購入し払戻金を得た場合であっても、馬券が当たるか当たらないか、換言すれば、所得が生じるか否かは臨時的、不規則的なものであることに何ら変わりはなく、払戻金としての性質は変わらないのであるから、本件競馬所得は一時所得である。 (ハ) 請求人は、極めて特殊な継続性をもって馬券を購入しており、所得の性質の判断においては、その具体的な事情を検討することが必要である。
 また、一回的な行為としてみた場合所得源泉とは認め難いものであっても、これが連続して継続的行為となるに及んで所得源泉とみられるに至る場合すなわち所得が質的に変化する場合もあることも否定できないとする判決もある。

ロ 法令解釈
 所得税法第34条第1項は、上記1の(3)のイのとおり規定しており、また、この一時所得の該当要件のうち、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」とは、性質に基づき判断すべきものであって、所得源泉を有する所得以外の所得と解されるところ、所得源泉の有無は、所得の基礎に源泉性を認めるに足りる継続性、恒常性があるか否かが判断基準になると解するのが相当である。
ハ JRAが開催する競馬の仕組み
 JRAが開催する競馬は、JRAが開催日時、開催競馬場、距離、競走ごとの出走馬及びその組合せなどの事項を全て馬券の発売前に決定し、各競走の馬券を競走前に販売し、競走後に馬券の的中した者に払戻金を支払う仕組みになっている。
ニ 請求人提出資料
 請求人は、当審判所に「陳述書」と題する書面を提出した。当該書面には、まる1馬の能力、まる2騎手の技術、まる3コース適性、まる4枠順、まる5馬場状態への適性及びまる6競走展開などの各ファクターで出走馬を評価し、競馬場の特徴なども加味して総合的に競走を予想し、馬券を購入していた旨記載がある。また、具体的な競走の予想、分析及び検討方法等を説明するための資料として、馬券を購入していない平成21年の○○記念を例にした競走の予想過程を記載した表を添付した。
ホ 本件への当てはめ
(イ) 本件競馬所得を得るためには、馬券の購入が不可欠であることからすれば、本件競馬所得に係る所得の基礎とは、馬券を購入する行為であると認めるのが相当である。
 そこで、馬券を購入する行為に源泉性を認めるに足りる継続性、恒常性があるか否かについてみると、上記1の(4)のイの(ニ)のとおり、JRAが開催する競馬においては、馬券の購入者は購入した馬券が的中したことを原因として、JRAから当該馬券の購入に要した金額以上の払戻金の交付を受けることができるが、購入した馬券が的中しなければ払戻金の交付を受けることはできないところ、上記ハのとおり、JRAは馬券の発売前に競走に関する全てのことを決定していること、また、競走に全く同一条件はないことから、馬券を購入する行為と、競走の結果(馬の着順)に因果関係はないと認められ、結局のところ、各競走の結果は、それぞれ出走馬の持つ能力等に偶然が作用して現れるものであり、競走ごとに独立して確定すると認められる。
 そうすると、馬券を購入する行為は、払戻金を得られるか否か分からない不確実な行為であるのみならず、競走ごとに独立した行為であると評価できることから、本件競馬所得には、所得の基礎である馬券を購入する行為に、その源泉性を認めるに足りる継続性、恒常性を認めることはできず、たとえ馬券を継続的に購入したとしても、馬券を購入する行為から得られた所得が所得源泉を有する所得であると認めることはできない。
 したがって、馬券を購入する行為から生じた本件競馬所得は、所得源泉を有する所得以外の所得ということになり、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得であると認められる。
(ロ) 本件競馬所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得のいずれにも当たらず、上記(イ)のとおり、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得であり、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しない所得に該当するから、所得税法第34条に規定する一時所得と認めるのが相当である。
(ハ) この点について請求人は、多種多様のファクターを組み合わせて着順を予想し、競走後にも結果の分析及び検討を行い、次の競走に生かして、過去6年余にわたり、毎年黒字の収益を確保していたなどとして、本件競馬所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得に該当し、雑所得である旨主張する。
 しかしながら、請求人の主張するような方法で馬券を購入することによって馬券の的中率が向上することを否定するものではないが、上記(イ)で判断したとおり、営利を目的とする継続的行為に該当するか否かは、性質に基づき判断すべきものであって、本件競馬所得についてみれば、馬券を購入する行為の連続性、長期性や的中率の向上があったとしても、それらのことによって、所得源泉を有しないという性質が変化するものではない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(2) 本件競馬所得に係る所得金額の計算において、年間を通じた馬券の購入金額の全額を控除できるか否か。また、原処分庁が採用した算定方法に合理性はあるか否か(争点2)。

イ 主張

原処分庁 請求人
 所得税法第34条第2項の規定から、払戻金に係る一時所得の金額の計算において控除できるのは、的中した馬券の購入金の額のみであり、一時所得の金額の計算をするに当たり採用すべき方法は、競走ごとに払戻金の総額から的中した馬券の購入金の総額を控除して計算する方法である。
 しかしながら、請求人の馬券の購入履歴(どの競走でどの馬券をいくら購入したか判明するものをいう。)を示す証拠等が存在しないことから、この方法を採用することができなかった。
 他に適切であると認められる採用すべき方法としては、競走ごとに払戻金の総額から馬券の購入金の総額(ただし、その競走において、馬券の購入金の総額が払戻金の総額を超える場合は、払戻金の総額を限度とする。)を控除する方法、開催日ごとに払戻金の総額から馬券の購入金の総額(ただし、その開催日において、馬券の購入金の総額が払戻金の総額を超える場合は、払戻金の額を限度とする。)を控除する方法であるが、いずれの方法の馬券の購入金の総額も判明していないので採用することができない。
 次に適切であると認められる方法が節ごとに払戻金の総額から馬券の購入金の総額(ただし、その節において、馬券の購入金の総額が払戻金の総額を超える場合は、払戻金の総額を限度とする。)を控除する方法であるところ、A−PATの決済は節ごとに記録されていることから、本件預金口座の入出金履歴を用いて算定する方法を採用した。
 なお、「日本中央競馬会PAT方式電話投票(A−PAT)に関する約定」によると、返還金は節単位でその節の直後の銀行営業日に加入者の預金口座に振り込むことにより交付する旨定められており、本件預金口座の入金額には払戻金の他返還金も含まれるが、本件預金口座の出金額に返還金と同額の馬券の購入金が含まれていることから、本件競馬所得に係る一時所得の金額の計算に何ら影響を与えるものではない。
 さらに、当該方法で計算した所得金額は、少なくとも競走ごとに払戻金の総額から的中した馬券の購入金の総額を控除して計算される請求人の一時所得の金額を上回ることはない。
 本件競馬所得は雑所得であるから、年間を通じて購入した馬券の全額を控除できる。
 仮に、本件競馬所得が一時所得であったとしても、請求人は、払戻金を得るために継続的、連続的に年間を通して馬券を購入しており、的中しなかった馬券からも的中率を上げるために必要な情報を得て、次の馬券の購入に生かしているので、一時所得の金額の計算において、的中しなかった馬券の購入金も含め、年間を通じた馬券の購入金の全額を所得税法第34条第2項に規定する「収入を生じた行為をするために直接要した金額」に該当するものとして控除すべきである。
 また、一時所得の課税は、一時的、臨時的な収入であることから2分の1課税によって納税者の担税力に配慮しているところ、請求人のように継続的に多額の馬券を購入する常連者においては、担税力をはるかに超える課税となっており、年間を通じた馬券の購入金の全額を控除せずに行った原処分は違法である。
 次に、原処分庁は、払戻金に係る一時所得の金額の計算において控除できるのは、的中した馬券の購入金の額のみであると主張しながら、的中した馬券の購入履歴を示す証拠等は存在しないことを理由に、本件預金口座の入出金額から節単位で所得金額を計算し、馬券の購入金の一部しか控除していないが、このような計算方法に合理性はなく、的中した馬券のみの購入金の額の算定ができないのなら、年間を通じた馬券の購入金の全額を控除すべきである。
 なお、上記主張が認められなかったとしても、JRAの投票成績照会サービスから入手した平成21年分及び平成22年分の開催別成績一覧(4節単位)記載の購入金、払戻金の額は、出走取消等により無効となった馬券に係る返還金は含まれない金額であるから、両年分の正確な一時所得の金額の計算は、当該払戻金の額から購入金の額を控除して計算すべきであり、また、開催別成績一覧がない年分については、本件預金口座の入出金額を利用せざるを得ないが、返還金の返還が翌節となる可能性も考えられることから、一時所得の金額の計算における返還金の影響を完全に排除できないまでも最小限とするため、4節単位で計算すべきである。

ロ 法令解釈
 所得税法第34条第2項は、上記1の(3)のイのとおり規定しており、「その収入を得るために支出した金額」とは、「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」とされていることから、同項は、一時所得の金額の計算において、一時所得に係る収入、支出について総体対応計算によることなく、個別対応的に収入を生じた行為又は原因ごとに直接支出した金額に限るものとし、その反面、収入を生じさせない行為又は原因に係る支出は控除しないということを規定したものと解するのが相当である。
ハ 認定事実
(イ) 請求人の答述によると、請求人は、本件各年分における的中した馬券の払戻金とこれに係る購入金について記録、保存をしていなかったことが認められる。
(ロ) 当審判所の照会に対するJRAの○○部長Lの回答によると、次の事実が認められる。
A JRAは、A−PATによる馬券の購入、払戻履歴等を馬券を発売した日から60日間保存している。
B A−PAT会員がA−PATにより購入することができる馬券の限度額(以下「購入限度額」という。)は、節の当初は直前の銀行営業日の最終のA−PAT専用の銀行口座の残高であるが、馬券の購入時点で購入金が購入限度額から減算され、競走が終了し払戻金が確定した時点で的中による払戻金及び返還金が購入限度額に加算される。
C 各節の馬券の購入金及び本件払戻金等の決済は全てその節の直後の銀行営業日に行われ、翌銀行営業日以降になることはない。
D 競馬法第8条に規定する勝馬の的中者がいない場合に購入馬券100円につき70円を払い戻すという「特払い」(以下「特払い」という。)は、本件各年分においてJRAが開催する競馬では発生していない。
E JRAが「JRA電話投票会員専用Webサービス」で提供している投票成績照会サービスの一つである「開催別成績一覧」(以下「開催別成績一覧」という。)では、各A−PAT会員に係る閲覧日を含む年分及びその前年分の開催別の馬券の購入金の総額及び払戻金の総額を表示している。なお、当該情報は各節の終了日の翌日(通常は月曜日)にA−PATによる馬券の購入金及び払戻金の情報から必要なデータを抽出して作成及び更新しているが、JRAは表示情報に係るデータしか保存していない。
ニ 本件競馬所得の計算において総収入金額から控除する金額
(イ) 上記(1)で判断したとおり、馬券の的中によって得た払戻金に係る所得は一時所得であると認めるのが相当であり、当該払戻金は所得税法第34条第2項に規定する一時所得に係る総収入金額となる。そして、上記ロの法令解釈に従えば、その収入を得るために支出した金額とは、払戻金という収入の原因の発生に伴い直接要した金額であるから、的中した馬券に係る購入金ということができる。
(ロ) この点について請求人は、一時所得の課税は、一時的、臨時的な収入であることから2分の1課税によって納税者の担税力に配慮しているところ、請求人のように継続的に多額の馬券を購入する常連者においては、担税力をはるかに超える課税となっており、原処分は違法である旨主張する。しかしながら、上記(1)で判断したとおり、本件競馬所得は一時所得であるから、所得金額の計算については、所得税法第34条第2項及び同法第22条《課税標準》第2項第2号に従って行われるべきであり、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ホ 原処分庁の採用した算定方法の合理性
(イ) 上記ハの(イ)及び(ロ)のAのとおり、請求人は本件各年分における馬券の的中によって得た払戻金及びこれに係る購入金について記録、保存をしておらず、JRAにも本件各年分における請求人の馬券の購入履歴等は保存されていない。また、本件払戻金等の額に返還金が含まれている可能性があることからすれば、原処分庁は本件各年分の払戻金の額及びこれに係る購入金の額を正しく把握することができなかったことが認められる。
(ロ) このような状況において、原処分庁は、上記1の(4)のハのとおり、別表2−1から別表2−6までの本件各年分について、それぞれ「まる1入金金額」欄の金額の合計額を一時所得に係る総収入金額、「まる2出金金額」欄の金額(ただし、入金金額を上回る場合は入金金額を限度とする。)の合計額を一時所得に係る収入を得るために支出した金額と認定し、請求人の本件各年分の一時所得の金額を算定したことが認められる。
 上記ハの(ロ)のBからDまでのことから、節の直後の銀行営業日の本件預金口座の入金金額及び出金金額は、それぞれ直前の節の本件払戻金等及び購入金の決済額であり、本件払戻金等の額に返還金が含まれていたとしても同額が購入金の額にも含まれていること、的中した馬券の払戻金は券面金額を下回ることはなく、また、特払いは本件各年分において発生していないことからすれば、原処分庁の採用した算定方法は、請求人にとって不利益な算定方法とはいえず、当該算定方法を特段不合理とする理由は認められないから、原処分庁が本件各更正処分で用いた本件競馬所得に係る一時所得の金額の計算は、当審判所においても相当と認められる。
(ハ) この点について請求人は、平成21年分及び平成22年分の一時所得の金額は返還金を含まない開催別成績一覧記載の払戻金の額から購入金の額を控除して計算すべきであり、また、開催別成績一覧がない年分は返還金の返還が翌節となる可能性も考えられるので返還金の影響を最小限とするため、4節単位で計算すべきである旨主張するが、上記(ロ)のとおり、原処分庁の算定方法によっても返還金の影響は生じることはなく、また、馬券の購入金及び本件払戻金等の決済が節の直後の銀行営業日にされていることからすれば、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(3) 本件各更正処分について

 以上の結果、本件各年分の一時所得の金額及び納付すべき税額は、原処分に係る一時所得の金額及び納付すべき税額と同額になる。よって、本件各更正処分はいずれも適法である。

(4) 本件各賦課決定処分について

 上記(3)のとおり、本件各更正処分はいずれも適法であり、本件各更正処分により増加した納付すべき税額の基礎となった事実には、国税通則法(平成17年分については、平成18年法律第10号による改正前のもの。)第65条《過少申告加算税》第4項及び同法第66条《無申告加算税》第4項において準用する同法第65条第4項に規定する正当な理由があると認められないから、平成17年分については同法第66条第1項、平成18年分、平成19年分、平成20年分及び平成21年分については同条第1項及び第2項、平成22年分については同法第65条第1項及び第2項に基づいてされた本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

(5) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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