(平成24年5月15日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、遺言により被相続人の全ての財産を取得した審査請求人(以下「請求人」という。)が、他の相続人から遺留分減殺請求されたことから、取得した財産の価額から遺留分の額を控除して相続税の申告をしたところ、原処分庁が、遺留分減殺請求に基づく返還又は弁償すべき額が確定していないため、相続税法基本通達11の2−4《裁判確定前の相続分》の定めにより遺留分減殺請求がなかったものとして課税価格を計算すべきであるなどとして更正処分等を行ったのに対し、請求人が、その一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成19年8月○日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡したL(以下「本件被相続人」という。)の相続に係る相続税の申告書に、別表1の「当初申告」欄のとおり記載して法定申告期限までに申告した。
ロ 請求人は、生命保険金及び退職手当金等の支払等が確定したとして、別表1の「第1修正申告」及び「第2修正申告」欄のとおり記載した修正申告書をそれぞれ平成20年11月7日及び平成21年3月30日に提出し、その後、原処分庁所属の調査担当職員の調査を受け、同表の「第3修正申告」欄のとおり記載した修正申告書を平成23年2月23日に提出した。
ハ 原処分庁は、請求人の課税価格等に誤りがあるとして、平成23年5月27日付で別表1の「更正処分等」欄記載のとおりとする更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
ニ 請求人は、上記ハの各処分を不服として、平成23年7月27日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年9月27日付で棄却の異議決定をした。
ホ 請求人は、異議決定を経た後の上記ハの各処分に不服があるとして、平成23年10月24日に審査請求をした。
ヘ 原処分庁は、平成24年1月31日付で別表1の「変更決定」欄記載のとおりとする過少申告加算税の変更決定処分をした(以下、当該変更決定処分後の過少申告加算税の賦課決定処分を「本件賦課決定処分」という。)。

(3) 関係法令等

 別紙2のとおりである。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 本件被相続人は、本件相続開始日において、医療法人Eの理事長であり、本件被相続人の法定相続人は、本件被相続人の子である請求人及び本件被相続人の配偶者であるF(以下「本件配偶者」という。)の2名である。
ロ 本件被相続人は、平成17年10月21日に、公証人役場において遺言公正証書(以下「本件遺言書」という。)を作成した。なお、本件遺言書には、本件被相続人の全ての財産を請求人に相続させる旨記載されている。
ハ 本件配偶者は、平成19年7月30日に、本件被相続人がG生命保険と契約していた全期間払込10年養老保険4口(以下「本件養老保険」という。)を解約し、同日、解約返戻金21,623,072円のうち10,000,000円を本件被相続人名義のH銀行通常貯金口座に入金した(以下、本件養老保険の解約返戻金から当該口座に入金した10,000,000円を差し引いた残額11,623,072円を「本件金員」という。)。
ニ 請求人は、本件配偶者から、侵害された遺留分について減殺請求通知をする旨記載された平成19年11月29日付の「遺留分減殺請求書」と題する書面の送付を受けた。
 その後、本件配偶者は、平成21年7月○日に、J地方裁判所に対し、請求人を相手取り、遺留分減殺請求訴訟を提起した(以下、本件配偶者による遺留分減殺請求を「本件遺留分減殺請求」といい、当該提起された訴訟を「本件遺留分減殺請求訴訟」という。)。なお、本件遺留分減殺請求訴訟は、本件更正処分時において判決が確定していない。
ホ 原処分庁は、請求人の課税価格について、まる1本件金員の額11,623,072円及びまる2K火災保険との保険契約により支払われる所得補償金7,333,334円を加算するとともに、まる3遺留分相当額及びまる4相続税法第13条第1項第2号に規定する葬式費用の額7,883,676円(以下「本件葬式費用」という。)を控除せず、また、本件配偶者の課税価格について、まる5相続開始前3年以内の贈与に係る財産の価額21,851,000円を加算して、別表2の「本件更正処分額」欄記載のとおり、本件更正処分を行った。
ヘ 原処分庁は、上記ホのまる5本件配偶者に対する贈与に係る財産として加算された価額が本件更正処分前の税額計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとして、上記(2)ヘの過少申告加算税の変更決定処分を行った。

(5) 争点

イ 請求人の課税価格は、遺留分減殺請求がなかったものとして計算すべきか否か。
ロ 本件金員は、本件被相続人の相続財産であるか否か。
ハ 本件葬式費用は、請求人の課税価格の計算上控除すべきか否か。

トップに戻る

2 主張

(1) 争点イ(請求人の課税価格は、遺留分減殺請求がなかったものとして計算すべきか否か。)について

イ 原処分庁
(イ) 本件遺言書の効力は、民法第985条《遺言の効力の発生時期》の規定により、本件被相続人の死亡により効力を生ずるところ、本件遺言書には、請求人に本件被相続人の全ての財産を相続させる旨記載されていることから、本件相続開始日において、本件被相続人の財産は全て請求人に帰属することとなり、請求人の課税価格は、相続税法第2条《相続税の課税財産の範囲》第1項の規定により本件遺言書により請求人に帰属することとなった全ての財産の価額となる。
 また、本件遺留分減殺請求がなされているとしても、本件更正処分時において、請求人と本件配偶者との間で返還すべき又は弁償すべき額が確定していないことから、相続税法第11条の2の規定及び基本通達11の2−4の定めにより、本件遺留分減殺請求がなかったものとして請求人の課税価格を計算すべきである。
(ロ) 仮に、請求人が取得すべき財産について、本件配偶者が処分したことなどによって事実上請求人が取得することができないような事情があるとしても、当該事情は、請求人と本件配偶者との間で解決すべき問題であって、本件更正処分に係る認定を左右するものではない。
ロ 請求人
(イ) 本件遺言書において本件被相続人の財産承継者として請求人が指定されているが、本件遺留分減殺請求に基づき返還すべき又は弁償すべき額が確定していない現状においては、請求人は、遺言を執行し、本件被相続人の財産を処分するなどできない状況であるから、本件被相続人の財産を請求人が取得したと考えることはできない。
 このことは、本件被相続人の財産が未分割であるのと異ならないから、本件遺言書の存在のみによって、請求人に本件被相続人の全ての財産に係る相続税を課税することは、課税の公平及び担税力の観点からみて問題がある。
(ロ) また、本件相続開始日以後、本件配偶者が金融機関から払い戻した本件被相続人の預金は、請求人又は遺言執行者の管理下にはなく、本件被相続人と同居していた本件配偶者が自由に処分してしまっており、当該処分された財産に係る相続税まで請求人が負担しなければならないことは著しく不合理である。
(ハ) したがって、請求人の課税価格は、本件遺言書により取得した財産の価額から本件遺留分減殺請求に基づき返還すべき又は弁償すべき額に相当する金額を控除して計算すべきである。

(2) 争点ロ(本件金員は、本件被相続人の相続財産であるか否か。)について

イ 原処分庁
 本件金員は、本件養老保険が解約された後、本件配偶者の管理下にあると認められるものの、同人は、本件金員を本件被相続人から預かったものであると認識しており、他に本件金員が本件被相続人から本件配偶者に対して贈与された事実を明らかにする証拠が見当たらないから、本件金員は、本件相続開始日において本件被相続人の財産であると認めるのが相当である。
ロ 請求人
 本件金員は、本件相続開始日に存在しない財産であるから、請求人が相続により取得する本件被相続人の財産には含まれない。

(3) 争点ハ(本件葬式費用は、請求人の課税価格の計算上控除すべきか否か。)について

イ 原処分庁
 葬式費用は、被相続人の債務ではなく、相続又は遺贈により財産を取得した者がその相続又は遺贈との関連において負担する性質のものではないところ、本件葬式費用は、本件配偶者により支払われていると認められるから、現実に支払った本件配偶者の課税価格の計算上控除するのが相当である。
ロ 請求人
 本件葬式費用は、本件配偶者との間において誰が負担するか確定していないこと及び請求人が取得すべき預金から支払われていることからすれば、その全額を請求人の課税価格の計算上控除すべきである。

トップに戻る

3 判断

(1) 争点イ(請求人の課税価格は、遺留分減殺請求がなかったものとして計算すべきか否か。)について

イ 判断
(イ) 民法第908条は、被相続人は、遺言で、遺産の分割方法を定めることができる旨規定しているところ、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言は、同法第964条《包括遺贈及び特定遺贈》に規定する遺贈と解すべき特段の事情がなければ、当該遺産を当該相続人に単独で相続により承継させようとする遺言と解すべきであり、同法第908条に規定する遺産の分割方法を定める遺言として、被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産の分割の効果を発生させる。
 このことは、遺産全部を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言の場合も同様であるが、この場合、当該相続人に法定相続分を超える遺産を相続させることとなるから、当該遺言は、遺産の分割方法の指定と同時に民法第902条第1項に規定する相続分の指定をしたものと解され、同項ただし書の規定により遺留分に関する規定に違反することができないことにより、遺留分を侵害された相続人は、財産を取得した相続人に対し、遺留分減殺請求権を行使することができることとなる。
(ロ) 遺留分減殺請求権が行使されると、相続分の指定は遺留分を侵害している限度において失効し、遺留分権利者に帰属すると解されるが、遺留分減殺請求権を行使された相続人が請求どおり速やかに履行する場合はともかく、遺留分減殺請求権を行使された相続人とそれを行使した相続人との間で、遺留分減殺請求の効果及び履行について争われることは現実に数多く見られることであり、このように当事者間で遺留分減殺請求の効果及び履行について争っている状況において、不確定事実を基として相続税の課税価格を計算することは事実上困難であることから、基本通達11の2−4は、遺留分減殺請求に基づき返還すべき又は弁償すべき額が確定するまでの間、遺留分減殺請求がなかったものとして課税価格を計算する旨定めるものであり、当該取扱いは、当審判所において相当と認められる。
(ハ) これを本件についてみると、本件遺言書における、被相続人の全ての財産を請求人に相続させる旨の遺言は、遺贈と解すべき特段の事情がないことから、民法第908条に規定する遺産分割方法の指定と同時に同法第902条第1項に規定する相続分の指定をしたものと認められ、本件被相続人の相続開始によって直ちに遺産分割の効果を発生させるものであるが、上記1(4)ニのとおり、当該遺言により遺留分を侵害された本件配偶者は、遺留分減殺請求権を行使し、請求人に対して本件遺留分減殺請求訴訟を提起しており、当該訴訟に係る判決は、本件更正処分時において確定していない。
 そうすると、請求人と本件配偶者との間で、本件遺留分減殺請求に基づき返還すべき又は弁償すべき額が確定していないのであるから、請求人の課税価格は、基本通達11の2−4の定めに基づき、本件遺留分減殺請求がなかったものとして計算するのが相当である。
ロ 請求人の主張について
(イ) 請求人は、本件遺留分減殺請求に基づく返還すべき又は弁償すべき額が確定していないことは、本件被相続人の財産が未分割であるのと異ならないから、本件遺言書の存在のみによって、請求人に本件被相続人の全ての財産に係る相続税を課税することは、課税の公平及び担税力の観点からみて問題がある旨主張する。
 しかしながら、本件遺言書における遺言は、上記イ(ハ)のとおり、遺産分割方法の指定と同時に民法第902条第1項に規定する相続分の指定をしたものと認められ、本件被相続人の相続開始によって直ちに遺産分割の効果を発生させるものであるから、請求人が本件被相続人の財産全部を取得しているといえ、未分割であるとはいえない。また、遺留分減殺請求に係る判決あるいは調停に基づき返還すべき又は弁償すべき額が確定した場合には、相続税法第32条の規定による更正の請求、同法第30条《期限後申告の特則》又は第31条《修正申告の特則》の規定による期限後申告又は修正申告、同法第35条《更正及び決定の特則》の規定による更正等により課税関係を是正する措置が講じられていることから、課税の公平及び担税力の観点からみて問題があるとはいえない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(ロ) 請求人は、本件被相続人と同居していた本件配偶者が本件被相続人の財産を自由に処分しており、当該処分された財産に係る相続税まで請求人が負担しなければならないことは著しく不合理である旨主張する。
 しかしながら、相続税の納税義務の成立要件としては、納税義務者において相続を原因として財産を取得することが必要であり、かつ、それをもって足りると解されるところ、本件の場合、本件遺言書における遺言は、上記イ(ハ)のとおり、本件被相続人の相続開始によって直ちに遺産分割の効果を発生させるものであるから、請求人においては、本件被相続人の相続を原因として、同人の財産全部を取得しているといえ、上記相続税の納税義務の成立要件を満たしている。
 したがって、仮に、本件相続開始日以後に本件配偶者が本件被相続人の相続財産を処分し、請求人が当該財産を現実に取得し得なかったとしても、そのことが上記判断を左右するものではないから、この点に関する請求人の主張は採用できない。

(2) 争点ロ(本件金員は、本件被相続人の相続財産であるか否か。)について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件金員は、平成19年7月30日に、本件配偶者名義のH銀行通常貯金口座に入金され、その後、本件相続開始日に簡易保険の保険料の引落しがあるまで入出金は一切なく、当該出金後の残高は、本件金員の額を上回る11,963,723円であった。
(ロ) 本件配偶者が平成20年6月26日付で原処分庁に提出した「上申書(相続税申告について)」と題する書面には、平成19年7月に本件被相続人名義の本件養老保険を解約し、生活費及び入院治療費等の支払に充てていたが、本件相続開始日時点で1,000万円ほどの残金があり、それを本件配偶者名義で保管している旨記載されている。
ロ 本件配偶者の答述
 本件配偶者は、当審判所に対し、要旨次のとおり答述した。
(イ) 本件被相続人は、以前から○○のため半年又は1年に1度程度で入退院を繰り返していたが、平成19年5月末頃に大学病院に入院し、同年6月末に数日間自宅に戻った後、同年7月1日に再び入院し、○○のため死亡した。
(ロ) 本件被相続人には毎月の給与の手取額が約140万円あり、本件被相続人から当該給与収入が振り込まれる預金通帳を預けられ、生活費などの支払を任されていた。
(ハ) 毎月の収入に比べ、1日の入院室料42,000円を含む治療代、生命保険契約の保険料や生活費等の支払の方が多く、本件被相続人の入院がいつまで続くのか分からないことへの不安もあったので、入院費や生活費等の支払に充てるため、本件被相続人と相談して本件養老保険を解約した。
(ニ) 本件金員は、本件養老保険の解約返戻金の一部であり、本件被相続人から預かって本件配偶者名義の通常貯金口座に預け入れていたが、他にあったお金で入院費や生活費等を支払ったので、本件相続開始日には使うことなく残っていた。
ハ 判断
 上記イ(ロ)及びロの本件配偶者の上申書及び答述の内容は、おおむね一致しているところ、家族の主たる収入を支える世帯主等が病気などによって長期入院を強いられる状況に置かれた場合、生活を共にする配偶者等の家族が入院費や生活費等の支払に備えるため、世帯主等が貯蓄していた預貯金や保険契約などを解約し、手元に現金を確保しておくことは一般的に見られる行動であり、これに照らしても、本件配偶者の答述内容等に不自然な点は認められない。
 そうすると、本件配偶者は、本件被相続人の入院費や生活費等の支払のため、本件被相続人の了解の下、本件養老保険を解約し、本件被相続人の通常貯金口座に入金した1,000万円をその支払に充てるとともに、残額である本件金員を急な支払に備えて上記イ(イ)の本件配偶者名義の通常貯金口座に入金したものと認められることから、本件金員は、本件配偶者が本件相続開始日において本件被相続人から預かっていたものであり、本件被相続人の相続財産であると認めるのが相当である。

(3) 争点ハ(本件葬式費用は、請求人の課税価格の計算上控除すべきか否か。)について

イ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、本件遺留分減殺請求訴訟において本件配偶者が準備書面の添付資料として提出した「L遺産目録」と題する書面には、当事者間で争いがある葬儀費用として、本件葬式費用を含む10,346,619円が記載されている事実が認められる。
ロ 請求人等の答述
(イ) 請求人は、当審判所に対し、本件葬式費用は本件配偶者が支払っているが、本件遺留分減殺請求訴訟において、本件葬式費用を誰がいくら負担するかについて係争中である旨答述した。
(ロ) 本件配偶者は、当審判所に対し、本件葬式費用は喪主である自分が支払うものと思って支払ったが、本件遺留分減殺請求訴訟において、本件葬式費用を誰がいくら負担するかについて係争中である旨答述した。
ハ 判断
(イ) 相続税法第13条第1項は、相続又は遺贈により取得した財産について課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から被相続人に係る葬式費用等のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による旨規定し、基本通達13−3は、「その者の負担に属する部分の金額」について、相続又は遺贈によって財産を取得した者が実際に負担する金額をいい、この場合において、これらの者の実際に負担する金額が確定していないときは、民法第900条から第902条までの規定による相続分又は包括遺贈の割合に応じて負担する金額をいう旨定めており、当該取扱いは、当審判所において相当と認められる。
(ロ) これを本件についてみると、上記ロによれば、本件遺留分減殺請求訴訟の両当事者である請求人及び本件配偶者の各答述は、本件葬式費用を誰がいくら負担するかについて係争中である点で一致しており、上記イのとおり、本件遺留分減殺請求訴訟において、本件配偶者が葬儀費用については当事者間で争いがあるとして本件被相続人の財産目録を作成していることからすれば、本件葬式費用は、本件更正処分時において、請求人と本件配偶者との間でどちらがどれだけ負担するか確定していなかったと認められる。
 そうすると、本件葬式費用は、基本通達13−3の定めに基づき、民法第900条から第902条までの規定による相続分又は包括遺贈の割合に応じ、各人の課税価格の計算上控除すべきであるところ、本件遺言書における遺言は、上記(1)イ(ハ)のとおり、遺産分割方法の指定と同時に同条第1項に規定する相続分を指定したものと認められることから、当該指定された相続分に応じ、請求人が本件葬式費用を負担するものとして、その全額を請求人の課税価格の計算上控除するのが相当である。

(4) 本件更正処分について

 上記(1)及び(2)のとおり、請求人の課税価格は、本件遺留分減殺請求がなかったものとして計算すべきであり、また、本件金員は、本件被相続人の相続財産であると認められるが、上記(3)のとおり、本件葬式費用は、その全額を請求人の課税価格の計算上控除すべきである。
 そこで、当審判所において、請求人の課税価格及び納付すべき税額を計算すると、別表2の「審判所認定額」欄記載のとおり、本件更正処分における額をそれぞれ下回るから、本件更正処分は、その一部を別紙1の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(5) 本件賦課決定処分について

 本件更正処分は、上記(4)のとおり、その一部を取り消すべきであり、また、それにより納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件更正処分前の税額計算の基礎とされていなかったことについて、上記1(4)ホのまる5本件配偶者に対する贈与に係る財産として加算された価額部分を除いては、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そこで、当審判所において、請求人の加算税の基礎となる税額を計算すると、別表3記載のとおり○○○○円となり、本件賦課決定処分における加算税の基礎となる税額○○○○円を下回るから、本件賦課決定処分は、その一部を別紙1の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(6) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る

トップに戻る