(平成24年7月2日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)においてリミテッド・パートナーシップ契約(以下、リミテッド・パートナーシップ契約によって組成される仕組みを「LPS」という。)を締結し、そのLPSにおける賃貸事業に係る所得等を不動産所得として申告したのに対し、原処分庁が、LPSは我が国の租税法上の法人に該当することなどから、その賃貸事業に係る所得は配当所得に該当するなどとして更正処分等を行ったところ、請求人が、LPSは組合的性格の強い団体であることなどから、その賃貸事業に係る所得は不動産所得に該当するなどとして、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、別表1−1及び1−2の「確定申告」欄のとおり記載した平成19年分、平成20年分、平成21年分及び平成22年分(以下「本件各年分」という。)の所得税の各確定申告書を、いずれも法定申告期限内にR税務署長(当時の納税地の管轄税務署長)に対し提出した。
ロ R税務署長は、平成19年分、平成20年分及び平成21年分の所得税について、P国税局長所属の調査担当職員の調査に基づき、請求人に対し、平成23年3月10日付で、別表1−1の「更正処分等」欄のとおり、所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
ハ 請求人は、上記ロの各処分を不服として、平成23年4月11日に異議審理庁に対し異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年6月9日付で、平成19年分については棄却の異議決定をし、また、平成20年分及び平成21年分については別表1−1の「異議決定」欄のとおり、いずれの処分についてもその一部を取り消す異議決定をした(以下、当該取消決定後の上記ロの各処分を、順に「本件各更正処分」及び「本件各賦課決定処分」という。)。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成23年7月6日に審査請求をした。
ホ さらに、請求人は、平成22年分の所得税について、平成23年4月7日付で、R税務署長に対し、別表1−2の「更正の請求」欄のとおり更正をすべき旨の請求をしたところ、Q税務署長(平成23年7月11日に請求人の納税地が肩書地へ異動した後の管轄税務署長)は、平成23年11月17日付で、別表1−2の「通知処分」欄のとおり、更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
ヘ 請求人は、上記ホの処分を不服として、平成23年11月17日に、Q税務署長に対し、異議申立てをした。異議審理庁は、当該異議申立てを、国税通則法第89条《合意によるみなす審査請求》第1項の規定により審査請求として取り扱うことが適当であると認め、同年12月1日付でその旨を請求人に通知したところ、請求人が同月20日これに同意したので、同日審査請求がされたものとみなされた。
ト そこで、上記ニ及びヘの各審査請求について併合審理をする。

(3) 関係法令の要旨

イ 所得税法第2条《定義》第1項第6号は、内国法人とは、国内に本店又は主たる事務所を有する法人をいう旨規定し、同項第7号は、外国法人とは、内国法人以外の法人をいう旨規定している。
ロ 所得税法第24条《配当所得》第1項は、配当所得とは、法人から受ける剰余金の配当(株式又は出資に係るものに限る。)、利益の配当、剰余金の分配(出資に係るものに限る。)、基金利息及び投資信託等の収益の分配に係る所得をいう旨規定している。
ハ 所得税法第26条《不動産所得》第1項は、不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機の貸付けによる所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう旨規定している。
ニ 所得税法第35条《雑所得》第1項は、雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう旨規定している。
ホ 民法(平成18年法律第50号による改正前のもの。以下同じ。)第33条《法人の成立》は、法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない旨規定している。
ヘ 民法第43条《法人の能力》は、法人は、法令の規定に従い、定款又は寄附行為で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う旨規定している。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人の地位
 請求人は、平成19年ないし平成22年において、不動産の賃貸等を目的とするS社の代表取締役の地位にあった。
ロ 請求人が関与したLPSの所在等
 請求人は、平成19年ないし平成22年において、Revised Code of d Uniform Limited Partnership Act(d州改定統一LPS法。以下「州LPS法」という。)及びこれに基づくThe d Revised Uniform Limited Partnership Act(d州改定統一LPS条例。以下、州LPS法と併せて「州LPS法令」という。)に準拠して組成された、米国d州に所在するT Limited Partnership(以下「T−LPS」という。)及びU Limited Partnership(以下「U−LPS」といい、T−LPSと併せて「本件各LPS」という。)に関与していた(なお、具体的な関与状況等は、後記ホ及びチのとおりである。また、以下、英文のタイトルを付した各契約書面の日付は、基本的に米国の現地日付によるものとし、当該各契約書面の要旨の文言は、基本的には証拠資料の翻訳文のとおりであり、必ずしも我が国の法律用語と同義で用いられているものではない。)。
ハ 州LPS法の規定
 州LPS法は、要旨次のとおり規定している。
(イ) LPSは、そのパートナーとは異なる主体(an entity distinct from its partners)である(第25.10.021条(1))。
(ロ) LPSは、自己の活動を遂行するために必要な又は便宜的なあらゆることを行う権限を持つ。その権限には、自己の名前で訴訟を提起したり、提起されたり、弁護する権限を含み、かつ、LPS契約の違反又はLPSに対する義務違反によってLPSに生じた被害について、パートナー(ゼネラル・パートナー及びリミテッド・パートナーの双方を指す。以下同じ。)に対して訴訟を提起する権限を含む(第25.10.031条。以下、上記(イ)と併せて「LPS権限規定」という。)。
(ハ) LPSの債務は、契約上生じたもの、不法行為により生じたもの、又はそれ以外のものであっても、リミテッド・パートナー(以下「LP」という。)の債務ではなく、LPは、たとえLPSの経営と支配に参加している場合であっても、LPであるという理由のみによって、LPSの債務に対して、直接的にも間接的にも、出資その他の方法によって個人的に責任を負うことはない(第25.10.321条。以下「LP無責任規定」という。)。
(ニ) ゼネラル・パートナー(以下「GP」という。)は、LPSの活動においてLPSの代理人である(第25.10.381条。以下「GP権限規定」という。)。
(ホ) パートナーが譲渡できる唯一の利権は、パートナーの譲渡可能な持分(the partner’s transferable interest)である(第25.10.546条)。この譲渡可能な持分とは、個人財産(personal property)であり(第25.10.546条)、パートナーがLPSから分配を受け取る権利(a partner’s right to receive distributions)をいう(第25.10.011条(22)。以下「持分権定義規定」という。)。
ニ T−LPSにおける事業等の概況
(イ) T−LPSは、平成15年9月3日付で、V社との間で「BALLOON NOTE-SECURED(FIXED RATE)」(バルーン形式約束手形−担保付(固定料率))による借入契約を締結した。
(ロ) T−LPSは、平成16年11月1日付で、W社との間で、d州e市f町○−○に所在するTアパート(75戸の共同住宅を構成する土地及び建物等。以下「本件T物件」という。)について、「PROPERTY MANAGEMENT AGREEMENT」(不動産管理委託契約)を締結し、本件T物件に係る賃貸業務の全てを委託した。
(ハ) 平成17年6月30日(後記ホの(イ)、(ロ)及びヘの各契約締結日)当時、T−LPSのLPは、X社及びS社であり、GPは、Y社であった。
ホ 請求人のT−LPSへの関与状況等
(イ) 請求人は、平成17年6月30日付で、X社との間で、「PARTNERSHIP INTEREST ACQUISITION AGREEMENT」(持分権取得契約)を締結した。
 当該契約により、請求人は、X社から、T−LPSにおける持分権(Interest)の一部(持分権の割合(Percentage Interests)は12.5パーセント)を譲り受けるとともに、その購入価格として、X社に対する○○○○米国ドル(以下「米ドル」という。)の支払義務を負い、その一部を、T−LPSの負担する上記ニの(イ)の借入金債務の一部(○○○○米ドル)を承継してその返済責任を負うことによって支払い、その残額○○○○米ドルを別途支払った(以下、上記ニの(イ)の借入金債務の一部、及び上記残額の支払のための別の借入金債務を併せて「T借入金債務」という。)。
(ロ) 請求人は、上記(イ)と同日付で、LPであるX社及びS社、GPであるY社との間で、「THIRD AMENDED AND RESTATED AGREEMENT OF LIMITED PARTNERSHIP OF T LIMITED PARTNERSHIP」(第三改定・修正T−LPS契約。以下「本件T−LPS契約」という。)を締結した。当該契約の内容は、要旨次のとおりである。
A 本契約上の用語の定義は、次のとおりである(第1条)。
(A) 自己資本取引とは、T−LPSの資産の売却、物件担保借入金その他負債の借換え、保険求償による回収、又は一般的に容認されている税務会計上の規則に従い自己資本に帰するとみなされる同様の取引をいう(第1.5条)。
(B) 事業運営収益金とは、自己資本取引から生ずる収入及びT−LPSの清算から生ずる最終残余資金を除き、当該LPSが受領する全ての現金から、正当に必要とされるまる1運営費、まる2流動負債の返済金及びまる3GPが事務運営上設定する引当金等の合計額を控除した残額をいう(第1.6条。以下、後記チの(ロ)のAの(B)の条項と併せて「収益金定義条項」という。)。
(C) みなし自己資本勘定とは、各パートナーの出資額に、まる1各税務会計年度末(各年の12月31日。以下、T−LPSについて同じ。)に発生する各パートナーに分配又は配分される最小収益を合算し、まる2各税務会計年度末に発生が予期される損失・控除の配分額及び各パートナーに対する分配額(各パートナーの自己資本勘定の増額分を除く。)を減算した残高をいう(第1.12条、第1.14条、第1.15条)。
(D) 持分権(Interest)とは、ある特定の時点での各パートナーのT−LPSにおける所有権(the ownership interest)を意味し、当該各パートナーが本契約及び州LPS法令(以下、本項(上記(ロ))において「本契約等」という。)の規定に基づき付与される全ての利益に対する権利と、本契約等の規定・条件に基づく義務を含む(第1.13条。以下、後記チの(ロ)のAの(D)の条項と併せて「持分権定義条項」という。)。
B 各パートナーは、本契約等に規定された諸条件に基づき、T−LPSを継続し、運営することに同意する。本契約書に特に記載されているものを除き、各パートナーの権利及び義務については、州LPS法令の規定が適用される(第2条)。
C T−LPSが営む事業の主要な目的及び一般的な業務形態は、本件T物件の所有(own)、管理(manage)、運営(operate)である(第5条。以下、後記チの(ロ)のCの条項と併せて「事業目的条項」という。)。
D T−LPSにおける純損失は、持分権の割合に従って各パートナーに配分されるが、いずれのパートナーに対しても、当該純損失を配分する税務会計年度末に、各パートナーのみなし自己資本勘定残高を負の値に至らせる損失の配分はされない(第9.1条、第9.3条。以下、後記チの(ロ)のDの条項と併せて「損失配分限度条項」という。)。
E LPであるX社は、請求人及びS社に対し、平成17年6月30日から同年12月31日に至る期間において、事業運営収益金が74,151米ドルと同額となること、及び平成18年1月1日からの期間において、事業運営収益金が毎年137,375米ドルと同額となることを保証し、事業運営収益金が当該保証金額に満たない場合には、請求人及びS社に対し、その不足額を支払うものとする。上記各期間における事業運営収益金のうち、○○.○○パーセントがS社に、○○.○○パーセントが請求人に、それぞれ分配されるが、請求人に対する支払額は、請求人が負担する借入金(上記ニの(イ)の借入金債務の一部)の返済額を控除した残額とする(第10.1条ないし第10.3条。以下、後記チの(ハ)のDの条項と併せて「分配額保証条項」といい、当該条項に基づいて請求人に分配される金銭を「LPS収益金」という。)。
F 請求人は、Z社に対し、資産管理業務を委託し、その対価として年間資産管理手数料(その年の分配可能な事業運営収益金の額の5パーセントに相当する額)を、請求人に対して分配されるLPS収益金の中から支払うものとする(第11.2.2条。以下、当該条項及び後記チの(ハ)のEの条項に基づいて請求人が支払う金銭を「資産管理手数料」という。)。
G GPは、T−LPSの経営・運営・管理をし、当該LPSの事業、業務を維持運営するために適切・必要とされる全てのことを行い、決定する独占的権利と権限を有するものとする。また、GPは、本契約に基づいてGPに付与される具体的な権利及び権限に加え、現存する、あるいは将来修正される州LPS法令に規定されるGPとしての全ての権利及び権限を所有・保持・行使することができる(第12.1条。以下、後記チの(ロ)のEの条項と併せて「GP権限条項」という。)。
H 上記G(第12.1条)の条項に関わらず、平成22年3月31日以前において、GPは、各LPによる事前の文書による同意がない限り、本件T物件の売却の承認、認可を禁じられる。また、平成22年4月1日以降に、請求人又はS社の要請があるときは、GPは、第三者に対する本件T物件の売却に合意する(第12.8条。以下、後記チの(ロ)のFの条項と併せて「GP権限制約条項」といい、T−LPSに関する後段の条項を特に「T物件売却合意条項」という。)。
I 各LPは、本契約に定められた限りにおいて、T−LPSの経営に参加する。いずれの各LPも、当該LPSを代表し、又は代理し、あるいは当該LPSを拘束する行為をする権利及び権限を有しない(第13.1条。以下、後記チの(ロ)のGの条項と併せて「LP経営参加制限条項」という。)。
J 各LPは、T−LPS、GP若しくは当該LPSの債権者に対して、当該LPSの借入金、債務若しくはその損失に係る一切の個人的な債務を負わない(第13.2条。以下、後記チの(ロ)のHの条項と併せて「LP債務制限条項」という。)。
K 清算その他の場合には、各LPは、T−LPSから現金以外のいかなる形式での分配を要求したり、受領したりする権利を持たない(第13.4条。以下「T物件不請求条項」という。)。
L T−LPSが、運転資金の供給若しくは他の目的において、日本の投資家、銀行及び他の金融機関から担保付き若しくは無担保の資金借入れの手配を希望する場合、S社、請求人及びあらゆる他の日本人のLPは、当該借換えの最終的な条件がGPによって承認されることを条件として、当該LPSを代理して、当該借換えの手配及び交渉において、当該LPSを代表して行う。同様に、運転資金の供給若しくは他の目的において、米国の投資家、銀行及び他の金融機関から担保付き若しくは無担保の資金借入れの手配を希望する場合、GPは、各LPの投票の過半数によって承認されることを条件として、当該LPSを代理して、当該借換えの手配及び交渉において、当該LPSを代表して行う(第13.6条。以下、後記チの(ロ)のIの条項と併せて「資金調達代理条項」という。)。
M 資産の処分時等においてT−LPSの事業から生じた純損失は、上記D(損失配分限度条項)の定めを例外として、最初に、各パートナーのそれぞれの自己資本勘定残高に比例し、その正の数値が零になるまで減額させ、その後は、各パートナーの当該LPSに対する持分権の割合に比例して、配分される(第17.4.1条。以下、後記チの(ロ)のJの条項と併せて「損失配分割当条項」という。)。
ヘ 請求人のT−LPSに係る収益補填契約の締結等
 請求人は、上記ホの(イ)及び(ロ)と同日(平成17年6月30日)付で、g社との間で、「Supplemental Income Agreement(Tアパート)」(以下「本件収益補填契約」という。)を締結した。当該契約の内容は、要旨次のとおりである。
(イ) g社は、請求人に対し、T−LPSへの投資に対する収益補填として、平成17年6月30日から平成18年12月31日までの期間は3,717米ドル、平成19年1月1日から本契約の終結日までの期間は年間10,165米ドルを、それぞれ支払う(第1条。以下、この条項に基づいて支払われる金銭を「収益補填金」という。)。
(ロ) 請求人が、平成25年6月30日以前にT−LPSにおける持分権の売却を決定した場合、請求人は、その売却に当たり、g社を独占的な仲介人として指名し、請求人が最終的な取引条件を承認することを条件として、g社に全ての代理権限を与えて、その売却に係る取引を一任する(第2.1条)。
(ハ) 請求人は、T−LPSにおける持分権の売却に際し、g社に対して、売却価額の4パーセントに相当する手数料を支払い、また、同持分権の売却価額が請求人の当初の購入価額を上回る場合、当該手数料とともに売却価額と購入価額との差額を取引完了時に報酬として支払う(第2.2条及び第2.3条)。
(ニ) 本契約は、まる1請求人がT−LPSにおける持分権を平成25年6月30日以前に売却した場合には、その売却完了日に終了し(第3.1条)、まる2請求人が同年7月1日以後T−LPSにおける持分権を保有し続けることを決定した場合は、その時点で終了する(第3.2条)。上記まる2の場合、請求人は、平成17年6月30日以後当該契約終了の日までに取得した収益補填金の総額に、年利9パーセントで計算した金額を加算した額を、g社に対して支払うものとする(第4条)。
ト U−LPSにおける事業等の概況
(イ) U−LPSは、平成13年8月15日付で、h社との間で、d州i市j町○−○に所在し、Uアパート Limited Partnership(以下「オーナーLPS」という。)が所有(own)するUアパート(146戸の共同住宅を構成する土地及び建物等。以下「本件U物件」といい、本件T物件と併せて「本件各物件」という。)について、「PROPERTY MANAGEMENT AGREEMENT」(不動産管理委託契約)を締結し、本件U物件に係る賃貸業務の全てを委託した。
(ロ) U−LPSは、平成21年10月31日(後記チの(イ)ないし(ハ)の各契約締結日)当時、オーナーLPSにおける持分権の大半(持分権の割合は99パーセント。以下「本件オーナーLPS持分権」という。)を有する当該LPSのLPであった。
(ハ) U−LPSは、平成21年12月31日付で、k社との間で、本件U物件について、「ASSET MANAGEMENT AGREEMENT」(資産管理契約)を締結した。
チ 請求人のU−LPSへの関与状況等
(イ) 請求人は、平成21年10月31日付で、U−LPS、m社及びn社との間で、「PARTNERSHIP INTEREST ACQUISITION AGREEMENT」(持分権取得契約)を締結した。
 当該契約により、請求人は、n社から、U−LPSにおける持分権(Interest)の一部(持分権の割合(Percentage Interest)は10.5パーセント)を譲り受けるとともに、その購入価格として、n社に対する○○○○米ドルの支払義務を負い、その一部を、U−LPSの負担する借入金債務の一部(○○○○米ドル)を承継してその返済責任を負うことによって支払い、その残額○○○○米ドルを別途支払った(以下、上記の借入金債務の一部、及び上記残額の支払のための別の借入金債務を併せて「U借入金債務」という。)。
(ロ) U−LPSのLPであるp社及びn社、並びにGPであるm社は、上記(イ)と同日付で、「THIRD AMENDED AND RESTATED AGREEMENT OF LIMITED PARTNERSHIP OF U LIMITED PARTNERSHIP」(第三次改定・修正U−LPS契約。以下、当該契約を、後記(ハ)の改定契約の内容を含めて「本件U−LPS契約」といい、これと本件T−LPS契約を併せて「本件各LPS契約」という。)を締結した。当該契約の内容は、要旨次のとおりである。
A 本契約上の用語の定義は、次のとおりである(第1条)。
(A) 自己資本取引とは、U−LPSの資産の売却、若しくは一般的に容認されている税務会計上の規則に従い自己資本に帰することができるとみなされる同様の取引、又はオーナーLPSに関する自己資本取引で最終的にU−LPSに配分されることとなる取引をいう(第1.6条)。
(B) 事業運営収益金とは、自己資本取引から生ずる収入及びU−LPSの清算から生ずる最終残余資金を除き、当該LPSが受領した全ての現金から、正当に必要とされるまる1運営費、まる2流動負債の返済金及びまる3GPが事務運営上設定する引当金等の合計額を控除した残額をいう(第1.7条。収益金定義条項)。
(C) みなし自己資本勘定とは、各パートナーの出資額に、まる1各税務会計年度末(各年の12月31日。以下、U−LPSについて同じ。)に発生する各パートナーに分配又は配分される最小収益を合算し、まる2各税務会計年度末に発生が予期される損失・控除の配分額及び各パートナーに対する分配額(各パートナーの自己資本勘定の増額分を除く。)を減算した残高をいう(第1.9条、第1.14条、第1.15条)。
(D) 持分権(Interest)とは、ある特定の時点での各パートナーのU−LPSにおける所有権(the ownership interest)を意味し、当該パートナーが本契約及び州LPS法令(以下、本項(上記(ロ))において「本契約等」という。)の規定に基づき付与される全ての利益に対する権利と、本契約等の規定・条件に基づく義務を含む(第1.13条。持分権定義条項)。
B 各パートナーは、本契約等に規定された諸条件に基づき、U−LPSの継続し、運営することに同意するとともに、本契約書に特に記載されているものを除き、各パートナーの権利及び義務については、州LPS法令の規定が適用される(第2条)。
C U−LPSが営む事業の唯一の目的及び一般的な業務形態は、本件U物件を所有(own)するLPSであるオーナーLPSにおけるLPS持分権(a limited partnership interest。本件オーナーLPS持分権)を所有(own)し、売却(dispose)することである。加えて、U−LPSは、その主要事業目的を経営するために必要な、若しくは付随する他の事業活動に従事することができる(第5条。事業目的条項)。
D U−LPSにおける純損失は、持分権の割合に従って各パートナーに配分されるが、いずれのパートナーに対しても、当該純損失を配分する税務会計年度末に、各LPのみなし自己資本勘定残高を負の値に至らせる損失の配分はされない(第8.1条、第8.3条。損失配分限度条項)。
E GPは、U−LPSの経営・運営・管理をし、当該LPSの事業・業務を維持運営するために適切・必要とされる全てのことを行い、決定する独占的権利と権限を有するものとする(第11.1条)。GPの権限には、まる1持分権の割合に応じた各LPの3分の2以上の承認を得た上で、当該LPSのあらゆる物件を管理、売却、開発、改修、運営及び処分すること、まる2動産・不動産の取得・リース・売却、従業員の雇用・解雇その他の当該LPSの事業の経営のために必要・適切・有益な全ての業務を行うこと、まる3当該LPSの事業に関してGPが賢明である若しくは適切であるとみなす契約等の締結や解除・取消しを行うことなどのほか、まる4オーナーLPSのLPとして、U−LPSを代理して、全ての事項を行うことを含む(第11.1.2条、第11.1.4条、第11.1.8条、第11.1.11条)。また、GPは、本契約に基づいてGPに付与される具体的な権利及び権限に加え、現存する、あるいは将来修正される州LPS法令で規定されるGPとしての全ての権利及び権限を所有・保持・行使することができる。GPの権限・代理権の範囲には、当該LPSの事業に関連する、又は付随する全ての事柄を包含する(第11.1条後文。以下、第11.1条に定められた条項全部を指してGP権限条項と称する。)。
F 上記E(第11.1条)の条項に関わらず、GPは、U−LPSの所有する物件の売却については、LPであるp社の承認を必要とし、当該物件に係る改装費等については、持分権の割合に応じて過半数を保有するLPの承認を必要とする(第11.8.1条、第11.8.2条。GP権限制約条項)。
G いずれのLPも、U−LPSを代表し、又は代理し、あるいは当該LPSを拘束する行為をする権利及び権限を有しない。各LPは、本契約に定められた限りにおいて、当該LPSの経営に参加するものとする(第12.1条。LP経営参加制限条項)。
H 各LPは、オーナーLPSが負う債務で、U−LPSに割り当てられたもののうち、当該LPSにおける持分権を有する各LPが分担するとされた部分を除き、当該LPS、GP若しくは当該LPSの債権者に対し、当該LPSの負債、債務若しくはその損失に係る一切の個人的な債務を負わない(第12.2条。LP債務制限条項)。
I U−LPS又はオーナーLPSが、運転資金の供給、若しくは他の目的において、日本の投資家、銀行及び他の金融機関から担保付き、若しくは無担保の資金借入れの手配を希望する場合、LPであるp社及びあらゆる他の日本人のLPは、当該借換えの最終的な条件がGPによって承認されることを条件として、U−LPS、及び・若しくは、オーナーLPSを代理して、当該借換えの手配及び交渉において、U−LPSを代表して行う。同様に、運転資金の供給、若しくは他の目的において、米国の投資家、銀行及び他の金融機関から担保付き、若しくは無担保の資金借入れの手配を希望する場合、GPは、持分権の割合による各LPの投票の過半数によって承認されることを条件として、U−LPS、及び・若しくは、オーナーLPSを代理して、当該借換えの手配及び交渉において、U−LPSを代表して行う(第12.5条。資金調達代理条項)。
J 資産の処分時等においてU−LPSの事業から生じた純損失は、最初に、各パートナーの自己資本勘定残高に比例し、その正の数値が零になるまで減額させ、その後は、各GPの間で当該LPSおける持分権の割合に比例して配分される(第16.4.1条。損失配分割当条項)。
(ハ) 請求人は、上記(イ)及び(ロ)と同日付で、LPであるn社及びGPであるm社との間で、上記(ロ)のp社等による第三次改定・修正U−LPS契約を改定及び修正する内容の「SECOND AMENDMENT TO THIRD AMENDED AND RESTATED AGREEMENT OF LIMITED PARTNERSHIP OF U LIMITED PARTNERSHIP」(第三次改定・修正U−LPS契約の改定契約)を締結した。当該改定契約の内容は、要旨次のとおりである。
A 本改定契約は、同日付で締結された第三次改定・修正U−LPS契約を改定・修正するために、締結されるものである(前文)。
B 本改定契約の目的は、U−LPSおいて請求人が新たなLPであることの認可を確認することであり、請求人によって取得された持分権(the Interest)に関する一定の事項を規定することにある。本改定契約は、U−LPSの他のLPの持分権に影響を及ぼさないので、当該他のLPの署名を要しない(前文)。
C 請求人は、本改定契約によって、U−LPSの10.5パーセントの持分権(Interest)を所有するLPであることを認可され、第三次改定・修正U−LPS契約に定められたLPとしてのあらゆる権利・特権及び義務・責任を保持する(第1条)。
D GPであるm社は、請求人に対し、まる1平成21年10月31日から同年12月31日に至る期間において、事業運営収益金が13,361.75米ドルになること、及びまる2平成22年1月1日から平成27年6月30日までの期間において、事業運営収益金が毎年79,951.46米ドル(平成27年度は半額)になることを保証し、事業運営収益金が当該保証金額に満たない場合には、請求人に対し、その不足額を支払うものとする。上記まる1及びまる2の期間における請求人に対する支払額は、請求人が負担する借入金(上記チの(イ)の借入金債務の一部)の返済額を控除した残額であり、上記まる1の期間分の残額は、平成22年2月28日までに、上記まる2の期間分の残額は、半年ごとに、各年の8月31日及び翌年の2月28日に支払われる(第3.1条ないし第3.3条。分配額保証条項。当該条項に基づいて請求人に分配される金銭を「LPS収益金」という。)。
E U−LPSは、k社に対し、請求人が当該LPSに対して行う投資に関する資産管理サービスの提供を委託し、その対価として資産管理手数料(年間6,562.50米ドル)を支払うものとし、その支払は、請求人へ分配されるべき事業運営収益金の中から、同人が負担する借入金(上記チの(イ)の借入金債務の一部)の返済額を控除した残額から行われる(第4条。当該条項に基づいて請求人が支払う金銭を「資産管理手数料」という。)。
F 本改定契約によって改定される部分を除き、第三次改定・修正U−LPS契約は、変更なく、なお効力を有する(第11条)。
リ 請求人の本件各LPSに係る所得等の計算等
 請求人は、本件各年分における本件各LPSに係る所得等を、いずれも不動産所得であるとした上、まる1LPS収益金及び収益補填金の合計額を不動産所得の収入金額に計上し、まる2その必要経費の額として、減価償却費、支払利息(T借入金債務及びU借入金債務に係るもの)、資産管理手数料及びその他の経費の各金額(以下「請求人必要経費算入額」という。)を算入して、本件各年分の不動産所得の金額を算出している。
ヌ 原処分庁の本件各LPSに係る所得の計算等
 原処分庁は、本件各年分における本件各LPSに係る所得のうち、LPS収益金に係る所得は配当所得であり、収益補填金に係る所得は雑所得であるとした上、請求人必要経費算入額のうち、上記リの支払利息の金額のみを、負債の利子に相当する額として配当所得の収入金額から控除している。

(5) 争点

 まる1LPS収益金及びまる2収益補填金に係る所得の区分は何か。

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2 主張

(1) 原処分庁

イ まる1LPS収益金に係る所得の区分について
 本件各LPSは、次のハのとおり、我が国の租税法上の法人に該当すること、また、LPS収益金が、収益金定義条項のとおり、本件各LPSの運営費等を控除した残額を原資として分配されるものであることからすると、LPS収益金は、請求人が外国法人の出資者としての地位に基づいて分配を受ける剰余金であり、当該金銭に係る所得は、配当所得に該当する。
ロ まる2収益補填金に係る所得の区分について
 本件収益補填契約は、請求人が将来的に一定の手数料又は報酬をg社に支払うことの見返りとして、一定期間、g社から相応の金銭の支払を受けられる旨を約したものである上、請求人がg社の出資者でないことからすると、収益補填金に係る所得は、配当所得に該当せず、また、利子所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しないから、雑所得に該当する。
ハ 上記イの主張の根拠について
(イ) 本件各LPSは、次のとおり、いずれも我が国の私法上の法人に認められる権利能力と同等の能力を有するから、我が国の租税法上の法人に該当する。
A 外国の法令によって設立された事業体が我が国の租税法上の法人に該当するか否かは、当該事業体が我が国の私法上の法人に認められる権利能力と同等の能力を有するか否か、すなわち、当該事業体が、まる1その構成員の個人財産とは区別された独自の財産を有するか否か、まる2その名において契約を締結し、その名において権利を取得し義務を負うなど独立した権利義務の帰属主体となり得るか否か、まる3その権利義務のためにその名において訴訟当事者となり得るか否かに基づいて判断すべきところ、この判断に当たっては、当該事業体の設立準拠法や設立契約の内容、実際の活動状態、財産や権利義務の帰属状況等を考慮要素として、個別具体的に行うのが相当である。
B 州LPS法におけるLPS権限規定によれば、本件各LPSは、各パートナーとは異なる主体であり、自己の活動を遂行するために必要な又は便宜的なあらゆることを行う権限を持ち、訴訟当事者にもなり得る。さらに、本件各LPS契約におけるLP債務制限条項によれば、各LPが各LPS、GP若しくは当該LPSの債権者に対して、当該LPSの借入金、債務若しくはその損失に係る一切の個人的な債務を負わない。このように、本件各LPSは、いずれもその準拠法及び契約上、各パートナーの個人財産とは区別された独自の財産を有し、独立した権利義務の主体として活動し、かつ、自己の名において訴訟当事者となることができる事業体である。
C 現に、本件各LPSは、自己の名において、借入契約や不動産管理委託契約などを締結したり、本件T物件や本件オーナーLPS持分権を取得したりしている。
(ロ) 次の点からも、本件各LPSは、LPである請求人から独立した事業体である。
A 州LPS法におけるLPS権限規定及びGP権限規定によれば、LPSは自己の活動を遂行するために必要な又は便宜的なあらゆることを行う権限を持つ事業体であり、GPはLPSの代理人であるから、本件各LPSが限られた権利のみを有するとはいえない。
B 他方で、州LPS法における持分権定義規定によれば、パートナーが譲渡できる唯一の利権は、パートナーがLPSから分配を受け取る権利のみである。さらに、本件各LPS契約におけるLP経営参加制限条項及びGP権限制約条項によれば、各LPは、GPが本件各LPSの代理人として行う業務執行の一部について、同意等を与えるにすぎないのであるから、請求人が本件各LPSの財産に対する固有の権利を有するということはできない。
C また、州LPS法におけるLP無責任規定並びに本件各LPS契約におけるLP債務制限条項及び損失配分限度条項によれば、LPである請求人は、本件各LPSの債務について自身の出資額を限度として弁済する責任(有限責任)を負うにすぎない。

(2) 請求人

イ まる1LPS収益金に係る所得の区分について
 本件各LPSは、次のハの(イ)のとおり、我が国の租税法上の法人ではなく、構成員間の契約に基づく民法上の組合的な性格の強い団体であり、現に本件各LPS契約によれば、損失配分割当条項等のとおり、各パートナーに対して本件各LPSにおける損益が直接帰属する旨が定められていることからすれば、LPS収益金は、本件各LPSから各パートナーに対して分配された剰余金ではない。そして、本件各LPSの事業が不動産の賃貸及び管理であることからすれば、LPS収益金に係る所得は、不動産所得に該当する。
ロ まる2収益補填金に係る所得の区分について
 本件収益補填契約は、請求人のT−LPSにおける不動産の賃貸及び管理に係る事業上のリスクを最小限に抑えるための保険契約的な性格を有するものであるから、収益補填金に係る所得は、不動産所得に該当する。
ハ 上記イの主張の根拠について
(イ) 本件各LPSは、次のとおり、民法上の組合と同様に、限られた事業目的の範囲内で、共同事業を遂行するための便宜上の集合体にすぎず、独立した主体的な事業体ではないから、我が国の租税法上の法人に該当しない。
A 米国において、LPSは、法人とは認識されておらず、特定の範囲内で法律行為の主体となることが特別に認められているものであり、LPS名義の財産は、その構成員(パートナー)が所有するものであると認識されている。そして、パートナーは、契約により合意した権利義務関係に従って業務執行を行い、その事業に係る損益もパートナーに帰属するのが原則とされている。
B また、本件各LPS契約における事業目的条項のとおり、本件各LPSの事業目的は、本件T物件の所有、管理及び運営、又は本件オーナーLPS持分権の所有及び売却に限られている。そのうえ、GP権限制約条項等のとおり、本件各LPSのGPは、LPである請求人らの承認等がなければ、本件各LPSの資産の処分をはじめ、不動産の賃貸に付随する設備の点検・修理などもできず、とりわけT物件売却合意条項のとおり、請求人又はS社に本件T物件の優先的な処分権のあることが明記されている。そうすると、本件各LPSは、日常の不動産の賃貸及び管理業務を円滑に遂行するために組成されたものにすぎず、不動産の賃貸及び管理に係る事業を独立して主体的に行う事業体としての機能を持たせられていない。
C さらに、本件各LPS契約によれば、持分権定義条項のとおり、各パートナーに本件各LPSにおける所有権があることが明らかである上、GP権限制約条項及びT物件売却合意条項の存在からしても、GPには財産権の象徴である処分権が委ねられていないのであるから、LPである請求人らが、本件各LPSの財産(本件T物件等)に対する固有の権利を持っている。また、まる1州LPS法にはLP無責任規定が、本件各LPS契約にはLP債務制限条項及び損失配分限度条項が置かれているが、損失配分割当条項のとおり、各LPは、本件各LPSの終了時には無制限の損失負担義務を課せられることとなる。この他にも、各LPは、まる2本件各LPSに係る各借入金債務(上記1の(4)のホの(イ)及び同チの(イ)の各借入金債務の一部)について応分の負担をしなければならず、まる3資金調達代理条項のとおり、日本国内での資金調達をする義務と責任があり、まる4d州での納税義務という、みなし自己資本勘定とは無関係の独立したリスクも負っているのである。以上によれば、LPである請求人は、有限責任しか負わない単なる出資者ではない。
D 他方で、我が国の法制度では、民法第33条等のとおり、法令で法人格を与えられていないものが「法人」でないことは明らかである。
(ロ) 請求人は、上記(イ)のとおり、不動産の賃貸及び管理業務を行う本件各LPSの共同事業者であるところ、現に、当該共同事業の開始前から、本件各LPSの各パートナーとの間で経営方法等の協議を行い、当該共同事業の開始後も、毎年1回、年央に現地へ赴き、GPから前年に承認した予算計画の実施状況や現地での不動産市況の報告を受け、また、賃貸物件を内覧し、現地の管理業者に対して改善事項等の指摘を行っている。

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3 判断

(1) まる1LPS収益金に係る所得の区分について

イ 配当所得か否かについて
(イ) 原処分庁は、本件各LPSは我が国の租税法上の法人に該当するから、請求人は出資者としての地位にあり、また、請求人がこの地位に基づいて分配を受けるLPS収益金は、本件各LPSの剰余金であるから、配当所得に該当する旨主張するので、まず、これを検討する。
(ロ) 所得税法は、第2条第1項第6号において「内国法人」を「国内に本店又は主たる事務所を有する法人」と定義し、同項第7号において「外国法人」を「内国法人以外の法人」と定義するものの、「法人」そのものの定義をしていないから、我が国の租税法上の「法人」は、我が国の私法上の「法人」の概念と同様に「自然人以外のもので、法律上、権利義務の主体となることのできるもの」、すなわち「権利を有し、義務を負う能力を法律上有しているもの」をいうと解すべきである。
 そして、上記1の(4)の基礎事実のとおり、州LPS法におけるLPS権限規定によれば、本件各LPSは、その構成員(パートナー)とは異なる主体であり、自己の活動を遂行するために必要な又は便宜的なあらゆる取引等を行うことや、訴訟の当事者となることができるところ、現に、本件各LPSは、州LPS法令に準拠する本件各LPS契約における事業目的条項のとおり、本件T物件又は本件オーナーLPS持分権を所有(own)することなどを事業目的とし、その目的のために、自己の名義で、本件T物件及び本件U物件に係る不動産管理委託契約などの契約当事者になるなどしている。したがって、本件各LPSは、我が国の法律でいう権利義務の帰属主体であるという意味においては、我が国の租税法上の「法人」としての要素を備えているということができる。
 しかしながら同時に、本件各LPS契約における持分権定義条項によれば、各パートナーは、ある特定の時点での本件各LPSにおける所有権(the ownership interest)を有し、また、本件各LPS契約におけるGP権限制約条項及びLP経営参加制限条項、U−LPS契約におけるGP権限条項によれば、GPは、本件各LPSが自らの名義で所有(own)する財産を処分したり、当該財産に改変を加えたりするような、一部の重要な業務執行を行う際には、LPの承認等を要することとされている。そうすると、本件各LPSは、自己の名義で所有(own)する財産を、その構成員であるパートナーのために所有(own)することを契約の内容としているものと認められるから、本件各LPSが自らの名義で財産を所有(own)することができるとしても、そのことをもって我が国の私法上の法人がその名義で自らのために財産を所有する場合と同視することはできない。
 また、そもそも、我が国の所得税法が所得区分を定めた趣旨は、租税の公平負担の観点から各種の所得についてそれぞれの担税力に応じた課税を行うことにあるが、どのような「自然人以外のもの」にどのような内容の権利義務の主体性を認めるかは、例えば我が国の民法上では、法人は、我が国の各種法律によらなければ成立せず(第33条)、その成立後の法人が権利義務の帰属主体となり得るのは、所定の目的の範囲内に限られる(第43条)旨規定されているように、税法の観点のみにとどまらない様々な政策目的を実現するための各国の立法政策の問題であるから、単に「自然人以外のもの」が権利義務の帰属主体であるか否かによって、個人が当該「自然人以外のもの」から得た所得の区分が何であるかを判断するのは相当ではない。
 そうすると、「自然人以外のもの」から、ないし「自然人以外のもの」を介して個人が得た所得について、その区分が何であるかを判断するに当たっては、その「自然人以外のもの」が我が国の法律でいう権利義務の帰属主体であるか否かという点も考慮すべき要素ではあるものの、それのみによって決せられるべきものではなく、個人が得た所得の法律的経済実質的関係を個別具体的にみて、それを我が国の所得税法が所得区分を定めた趣旨に照らして判断すべきである。
(ハ) そこで、配当所得の意義についてみると、所得税法第24条第1項は、配当所得とは、法人から受ける剰余金の配当、利益の配当及び剰余金の分配等に係る所得をいう旨規定しているところ、これらについては、剰余金又は利益の処分として配当又は分配したものだけでなく、法人が株主又は出資者に対しその株主又は出資者である地位に基づいて供与した経済的な利益も含まれると解するのが相当であるが、いずれにしても、法人に帰属する利益の処分としての性質を有するものである。
 これを本件についてみると、上記1の(4)の基礎事実のとおり、本件各LPS契約における収益金定義条項によれば、LPである請求人は、本件各LPSの事業活動等によって受領した全ての現金の中から、運営費等を控除した残額(事業運営収益金)の分配を受けるものとされ、また、本件各LPS契約における分配額保証条項によれば、その分配額は毎年所定の額となることを保証されており、計算上の分配可能な額が保証された金額に満たない場合にも、毎年所定の額の分配を受けられるものとされているところ、現に、請求人は、この分配額保証条項に基づいて、別表2の「LPS収益金」の各項のとおり、毎年所定の額のLPS収益金の分配を受けているのであるから、LPS収益金に係る所得は、本件各LPSに帰属する利益の処分としての性質を有するものでないことが明らかである。
(ニ) したがって、LPS収益金に係る所得は、配当所得に該当しないというべきである。これに反する原処分庁の主張には理由がない。
ロ 不動産所得か否かについて
(イ) 他方で、請求人は、本件各LPSの事業に係る損益は、民法上の組合の場合と同様に、損益分配の割当てに応じて請求人に直接帰属し、また、本件各LPSの事業が不動産の賃貸及び管理であることからすれば、LPS収益金に係る所得は不動産所得に該当する旨主張するので、次に、これを検討する。
(ロ) まず、請求人は、本件各LPSが我が国の民法上の組合と同様の団体である点を、LPS収益金に係る所得が不動産所得に該当することの根拠として指摘するが、上記イの(ロ)と同様の理由で、この点についての判断のみによって個人が得た所得の区分の判定を決すべきものではなく、結局、個人が得た所得の法律的経済実質的関係を個別具体的にみて、それを我が国の所得税法が所得区分を定めた趣旨に照らして判断すべきであるから、上記指摘の点のみをもって、LPS収益金に係る所得が不動産所得に該当するということはできない。
(ハ) そこで、不動産所得の意義についてみると、所得税法第26条第1項は、不動産所得とは、不動産等の貸付けによる所得である旨規定しているところ、この「貸付けによる」とは「貸付けに基づく」ないし「貸付けを原因とする」という意味に解されるのであり、不動産所得に係る総収入金額には、賃貸人が賃借人に対して一定の期間、不動産等を使用又は収益させる対価としての性質を有するもの及びこれに代わる性質を有するもの(例えば、所得税法施行令第94条《事業所得の収入金額とされる保険金等》第1項第2号)はもとより、不動産等の貸付業務の遂行に付随して生じたものも含まれると解するのが相当であるが、いずれにしても、不動産所得を生ずべき業務(不動産等の貸付業務)を行う者が、その業務の遂行により、あるいはそれに伴い得た所得を意味するものである。
(ニ) これを本件についてみると、上記1の(4)の基礎事実のとおり、請求人は、本件各LPS契約を締結し、LPSを介して、T−LPS又はオーナーLPSが所有(own)する本件各物件を賃貸することによって生じた損益の分配又は配分を受けるものとされているところ、まる1本件各LPS契約における事業目的条項及びLP債務制限条項、州LPS法におけるLPS権限規定及びLP無責任規定によれば、本件各LPSは、自らの事業活動を遂行するために必要なあらゆることを行う権限を持った、その構成員であるパートナーとは異なる権利義務の帰属主体であり、本件各LPSと第三者との間の法律関係がパートナーに帰属することは予定されておらず、現に、本件各LPSが別の会社等との間で不動産管理委託契約を締結し、当該会社等に対して本件各物件に係る賃貸業務の全てを委託するなどしていること、まる2本件各LPS契約におけるGP権限条項、州LPS法におけるGP権限規定によれば、いずれのGPも、本件各LPSの業務を維持運営するために必要・適切とされる全てのことを行い、決定する独占的権限を有し、本件各LPSの代理人となるものであること、他方で、まる3本件各LPS契約におけるLP経営参加制限条項及びGP権限制約条項によれば、いずれのLPも、本件各LPS契約に定められた一定の範囲内で本件各LPSの経営に参加するものの、その範囲は、GPが本件T物件等を処分するなどの一部の重要な業務執行を行う場合に限られる上、その方法は、原則としてLPの一部若しくは全員、又は持分権の割合に応じた多数による同意又は承認等を与えるにとどまり、本件各LPSを代理又は代表する権限を有するものではないこと、まる4本件各LPS契約における分配額保証条項、収益金定義条項及び持分権定義条項、州LPS法における持分権定義規定によれば、LPである請求人は、本件各LPSにおける「持分権(Interest)」を有するものの、その内容は、本件各LPS契約及び州LPS法令に基づいて付与され又は負担するLPとしての権利義務であり、その主要なものの1つとして、本件各LPSの事業活動等によって受領した全ての現金の中から、運営費等を控除した残額(事業運営収益金)の有無及び額に関わらず、毎年所定の額のLPS収益金の分配を受ける権利を有するものであること、さらに、まる5本件各LPS契約におけるLP債務制限条項、州LPS法におけるLP無責任規定によれば、いずれのLPも、本件各LPSとの間に法律関係の成立している第三者に対して個人的な賠償責任を負わない立場にあることが認められる。
 これらの事実によれば、本件T物件を賃借人に対して賃貸しているのはT−LPSであり、また、本件U物件を賃借人に対して賃貸しているのはオーナーLPS(ないしはU−LPS)であるというべきであって、請求人が、自ら、又は本件各LPSないしオーナーLPS(ないしはU−LPS)を自らの代理人として、主体的に本件各物件を賃借人に対して賃貸し、それによる収益の稼得や費用の負担を行っているということはできない。
(ホ) なお、上記2の(2)のハの(ロ)で請求人が主張するとおり、請求人が、本件各LPSに参画する前から、本件各LPSの他の各パートナーとの間で経営方法等の協議を行い、また、これに参画した後も、毎年1回、現地へ赴き、前年に承認した事項や現地での不動産市況の報告を受け、賃貸物件を内覧し、改善事項等の指摘を行っているとしても、上記(ニ)のまる1ないしまる5の事実からすると、請求人が主体的に本件各物件を賃借人に対して賃貸していたと認めることはできない。
(ヘ) したがって、LPS収益金に係る所得は、請求人が、不動産所得を生ずべき業務(不動産等の貸付業務)の遂行により、あるいはそれに伴い得た所得でないから、不動産所得に該当しない。
ハ 不動産所得該当性に関連する請求人の主張について
(イ) 請求人は、本件各LPSは、その事業目的が限られている上、その業務執行の一部を行うにはLPの承認等を要し、本件T物件については請求人又はS社に優先的な処分権があるとされているのであるから、本件各LPSは、日常の不動産の賃貸及び管理業務を円滑に遂行するために組成されたものにすぎず、不動産の賃貸及び管理に係る事業を独立して主体的に行う事業体としての機能を持たせられていない旨主張する。
 しかしながら、本件各LPS契約における事業目的条項は、その文言上、主要な事業目的及び一般的な業務形態のみを具体的に掲げていることが明らかである上、本件各LPS契約におけるGP権限条項、州LPS法におけるGP権限規定及びLPS権限規定によれば、GPは、本件各LPSの事業を遂行するために必要な全てのことを行い、決定する権限を有し、本件各LPSの代理人となるのであり、その活動の結果(法律効果)が本件各LPSに帰属するものとされていることを併せ考えると、事業目的条項に具体的に掲げられていない行為であっても、当該事業を遂行するために必要な行為は、本件各LPSの事業目的の範囲に属するものと解すべきである(現に、本件U−LPS契約における事業目的条項の後段には、U−LPSは、その主要な事業目的のために必要な、又はこれに付随する他の事情活動に従事できる旨が明記され、また、同LPS契約におけるGP権限条項の中にも、GPの権限・代理権の範囲には、U−LPSの事業に関連する、又はこれに付随する全ての事柄を包含する旨が明記され、上記の趣旨が明らかにされている。)。また、本件各LPS契約におけるGP権限条項、GP権限制約条項及びLP経営参加制限条項並びに州LPS法におけるLPS権限規定によれば、各LPは、GPがその権限で行う業務執行のうち重要な一部について、承認等を与えるほかには、原則として本件各LPSの経営に参加せず、また、本件各LPSを代理又は代表する権限もないのであるから、各LPの承認等を要する業務を含む全てのことについて、その決定及び執行の権限自体はGPにあり、その結果(法律効果)は、本件各LPSに帰属することとなるものと解される。さらに、T−LPSについては、T物件売却合意条項のとおり、請求人又はS社が当該LPSの所有(own)する本件T物件の売却を要請すれば、GPは、当該売却に合意するものとされているが、請求人又はS社は、飽くまでGPに対して売却を要請できるにとどまり、上記のとおりの本件LPS、GP及びLPの各権限内容からして、本件T物件の売却権限自体は、飽くまでGPにあり、その売却行為の効果も本件各LPSに帰属するものと解される。
 以上のことからすれば、本件各LPSが、不動産の賃貸及び管理に係る事業 を独立して主体的に行う事業体としての機能を持たせられていない旨の請求人の主張は、採用することができない。
(ロ) また、請求人は、本件各LPSの各パートナーに本件各LPSにおける所有権があるとされ、GPには本件各物件の処分権が委ねられていないのであるから、請求人を含む各LPが、本件各LPSの財産(本件T物件等)に対する固有の権利を持っている旨主張する。
 しかしながら、本件各LPS契約における持分権定義条項及び州LPS法における持分権定義規定によれば、LPSのパートナーの持分権(Interest)とは、ある特定の時点での各パートナーの所有権(the ownership interest)であり、その内容として、パートナーがLPSから分配を受け取る権利(a partner’s right to receive distributions)その他の本件各LPS契約及び州LPS法令に基づく権利義務を含む旨が明示されている一方で、上記(イ)で検討したとおり、LPである請求人には、本件各LPSないしオーナーLPSの所有(own)する特定の財産を直接売却するなどの権限はないものと解される。そうすると、本件各LPSにおける持分権(Interest)の本質は、本件各LPSないしGP又は他のLPに対する債権債務を有する地位であると認められるから、本件各LPSのいずれのLPも、本件各LPSの所有(own)する財産(本件T物件等)そのものに対する固有の権利を持っているということはできない(現に、本件T−LPS契約におけるT物件不請求条項には、清算その他の場合に、各LPが、T−LPSに対して、現金以外の形式での分配を要求したり、受領したりする権利を持たない旨が明記され、上記の趣旨が明らかにされている。)。なお、請求人は、T−LPSについて、GP権限制約条項、特にT物件売却合意条項によれば、GPに本件各物件の処分権が委ねられていないと主張するが、上記(イ)で検討したとおり、LPである請求人及びS社には、本件T物件を直接売却する権限がなく、その権限及び代理権はGPにあるものと解されるのであるから、請求人の指摘する条項の存在を考慮に入れても、本件各LPSのLPが、当該各LPSの所有(own)する財産(本件T物件等)そのものに対する固有の権利を持っていると見ることはできない。
 以上のことからすれば、請求人を含むパートナーが、本件各LPSないしオーナーLPSの所有(own)する財産(本件T物件等)に対する固有の権利を持っている旨の請求人の主張は、採用することができない。
(ハ) さらに、請求人は、本件各LPSの各パートナーは、当該各LPSの資産の処分時等には無制限の損失負担義務が課せられるなど、出資額の限度にとどまらない各種リスクを直接負担するのであるから、有限責任しか負わない単なる出資者ではない旨も主張する。
 しかしながら、請求人が上記2の(2)のハの(イ)のCで主張するまる1ないしまる4のような、出資額以外の各種のリスクを負担しなければならない場面があるとしても、上記ロの(ニ)のまる1ないしまる5の事実からすると、請求人が主体的に本件各物件を賃借人に対して賃貸しているとはいえないとの認定判断は変わらない。
 したがって、請求人の上記主張には理由がない。
ニ その他の所得への該当性について
 LPS収益金に係る所得は、上記ロで検討したとおり、請求人自身が主体的に本件各物件を賃借人に対して賃貸しているとはいえない以上、事業所得にも該当せず、また、上記イの(ハ)のとおり、請求人は、本件各LPS契約における分配額保証条項に基づいて、毎年所定の額のLPS収益金の分配を受けているのであるから、利子所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しないことが明らかである。
 そうすると、LPS収益金に係る所得は、所得税法第35条第1項に規定する雑所得に該当する。

(2) まる2収益補填金に係る所得について

イ 上記1の(4)の基礎事実のとおり、本件収益補填契約は、請求人が、本件各LPS及びその各パートナー以外の第三者であるg社との間で、本件各LPS契約とは別個に締結した契約であり、その内容は、請求人が、g社に対し将来的に一定の手数料及び報酬を支払うことと引換えに、一定期間継続して、本件各LPSに係るLPS収益金の支払とは別に、g社から所定の額の収益補填金の支払を受けるというものであるから、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しないことが明らかである。
 したがって、収益補填金に係る所得は、雑所得に該当する。
ロ 請求人は、これに対し、本件収益補填契約は、T−LPSにおける不動産の賃貸及び管理に係る事業上のリスクを最小限に抑えるための保険契約的な性格を有するものであるから、不動産所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、上記1の(4)の基礎事実のとおり、本件収益補填契約は、本件T−LPS契約とは別個に第三者との間で締結した契約である上、上記(1)のロのとおり、請求人自身が主体的に本件T物件を賃借人に対して賃貸しているとはいえないのであるから、収益補填金は、本件T−LPSに係る不動産の貸付けの対価及びその付随収入に当たらず、これに係る所得は、不動産所得に該当しない。
 したがって、請求人の上記主張には理由がない。

(3) 納付すべき税額について

 上記(1)及び(2)によれば、請求人の本件各年分の各納付すべき税額は、別表1−1及び1−2の「審判所認定額」欄のとおりであり、その詳細は次のとおりである。
イ 総所得金額
(イ) 不動産所得の金額
 本件各年分における不動産所得の金額は、本件各LPSに係る所得の金額を除くものであるところ、当審判所の調査の結果によれば、平成19年分の不動産所得の金額は、別表1−1の「更正処分等」欄の金額と同額であり、平成20年分及び平成21年分の不動産所得の金額は、別表1−1の「異議決定」欄の各金額とそれぞれ同額である。また、平成22年分の不動産所得の金額は、別表1−2の「確定申告」欄の金額と同額となる。
(ロ) 配当所得の金額
 本件各年分における配当所得の金額は、本件各LPSに係る所得の金額を除くものであるところ、当審判所の調査の結果によれば、平成19年分ないし平成21年分の配当所得の金額は、別表1−1の「確定申告」欄の金額と同額であり、また、平成22年分の配当所得の金額は、別表1−2の「審判所認定額」欄のとおり○○○○円となる。
(ハ) 給与所得の金額
 本件各年分の給与所得の金額は、別表1−1及び1−2の「給与所得」の各項のとおり、請求人が確定申告書に記載した各金額と同額である。
(ニ) 雑所得の金額
 本件各年分における雑所得の収入金額は、LPS収益金及び収益補填金の合計額であり、また、その必要経費の額は、上記(1)のハの(ロ)の理由で、本件各物件はいずれも請求人の本件各年分の12月31日において有する減価償却資産であるとは認められないから、請求人必要経費算入額のうち、減価償却費を除く額であり、これらの収支の金額は、別表2の「収支差額」欄のとおりとなるところ、平成19年分ないし平成21年分の雑所得の金額は、別表1−1の「更正処分等」欄の各金額を上回り、また、平成22年分の雑所得の金額は、別表1−2の「確定申告」欄の金額を上回ることとなる。
(ホ) 総所得金額
 以上の結果、本件各年分の総所得金額は、別表1−1及び1−2の「審判所認定額」欄のとおりであり、平成19年分ないし平成21年分については別表1−1の「更正処分等」欄の金額を下回り、また、平成22年分については別表1−2の「確定申告」欄の金額を下回ることとなる。
ロ その他の所得及び所得控除等の金額
原処分庁は、平成21年分の分離長期譲渡所得の金額、本件各年分の所得控除の合計額、配当控除の金額、源泉徴収税額及び予定納税額を、請求人が確定申告書に記載した各金額のとおりと算定しているところ、当審判所もこれを相当と認める。
ハ 納付すべき税額
 上記イ及びロを基に、請求人の本件各年分の所得税の納付すべき税額を計算すると、別表1―1及び1−2の「審判所認定額」欄の「納付すべき税額」の各項のとおり、平成19年分ないし平成21年分については別表1−1の「更正処分等」欄の金額を下回るが、「確定申告」欄の金額を上回り、平成22年分については別表1−2の「確定申告」欄の金額を下回るが、「みなす審査請求(異議申立て)」欄の金額を上回ることとなる。

(4) 本件各更正処分及び本件通知処分について

 上記(3)のとおり、請求人の本件各年分の課税総所得金額は、平成19年分ないし平成21年分については本件各更正処分の金額を、平成22年分については確定申告の金額を、それぞれ下回るから、本件各更正処分及び本件通知処分は、いずれもその一部を、別紙1ないし別紙4「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(5) 本件各賦課決定処分について

 上記(4)のとおり、本件各更正処分は、いずれもその一部を取り消すべきであるから、平成19年分ないし平成21年分における過少申告加算税の各賦課決定処分の基礎となるべき税額は、平成19年分○○○○円、平成20年分○○○○円及び平成21年分○○○○円となる。
 そして、新たに納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そうすると、平成19年分ないし平成21年分の所得税に係る過少申告加算税の額は、いずれも本件各賦課決定処分の金額を下回るから、本件各賦課決定処分は、いずれもその一部を、別紙1ないし別紙4「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(6) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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