(平成24年7月9日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、不動産業等を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、所得税並びに消費税及び地方消費税(以下、消費税及び地方消費税を併せて「消費税等」という。)の各確定申告において算入した総収入金額及び必要経費の一部(まる1妻に対して自宅を売却した収入及び取得に要した費用、まる2競売により取得した土地及び建物の前所有者に対する引越費用、まる3上記まる2の前所有者に対する上記まる2の土地とは別の土地を売却した収入及び取得に要した費用、まる4上記まる2の建物とは別の建物に係る修繕工事費用)について、原処分庁が、調査に基づき、いずれも架空のものであるとして、それ以外の当該各確定申告の誤り等とともに、各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、上記まる1ないしまる4にはいずれも実態があるなどとして、当該各処分の全部又は一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 所得税
(イ) 確定申告
 請求人は、平成19年分、平成20年分及び平成21年分(以下、併せて「本件各年分」という。)について、いずれも青色の確定申告書により、別表1の「確定申告」欄のとおり、法定申告期限までにそれぞれ確定申告をした。
(ロ) 処分
 原処分庁は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)の調査に基づき、別表1の「更正処分及び賦課決定処分」欄のとおり、平成23年6月16日付で、本件各年分の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分をした(以下、当該各更正処分を「本件所得税各更正処分」、当該各賦課決定処分を「本件所得税各賦課決定処分」という。)。
(ハ) 不服申立て
 請求人は、上記(ロ)の各処分に不服があるとして、国税通則法(以下「通則法」という。)第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第4項第1号の規定に基づき、平成23年7月14日に審査請求をした。
ロ 消費税等
(イ) 確定申告
 請求人は、平成19年1月1日から平成19年12月31日まで及び平成20年1月1日から平成20年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成19年課税期間」及び「平成20年課税期間」という。)について、別表2の「確定申告」欄のとおり、法定申告期限までにそれぞれ確定申告をし、平成21年1月1日から平成21年12月31日までの課税期間(以下「平成21年課税期間」といい、平成19年課税期間及び平成20年課税期間と併せて「本件各課税期間」という。)について、同表の「確定申告」欄のとおり、平成22年4月28日に確定申告をした。
(ロ) 賦課決定処分
 原処分庁は、別表2の「賦課決定処分1」欄のとおり、平成22年5月28日付で、上記(イ)の平成21年課税期間の確定申告に対する無申告加算税の賦課決定処分をした。
(ハ) 更正の請求及びこれに対する更正処分
 請求人は、平成21年課税期間について、平成22年5月12日に更正の請求をしたところ、原処分庁は、別表2の「更正の請求に対する更正処分」欄のとおり、平成22年6月11日付で、当該更正の請求のとおりとする更正処分をした。
(ニ) 処分
 原処分庁は、本件調査担当職員の調査に基づき、別表2の「更正処分及び賦課決定処分2」欄のとおり、平成23年6月16日付で、本件各課税期間の各更正処分並びに過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分をした。
(ホ) 異議申立て等
 請求人は、上記(ニ)の各処分を不服として、平成23年8月4日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、別表2の「異議決定」欄のとおり、同年10月4日付で、本件各課税期間の各更正処分及び平成19年課税期間の過少申告加算税の賦課決定処分の一部並びに平成20年課税期間の重加算税及び平成21年課税期間の無申告加算税の各賦課決定処分の全部をそれぞれ取り消し、平成21年課税期間の重加算税の賦課決定処分に対する異議申立てを棄却する旨の異議決定をした(以下、当該異議決定によりいずれもその一部につき取り消された後の当該各更正処分を「本件消費税等各更正処分」といい、当該異議決定によりその一部につき取り消された後の平成19年課税期間の過少申告加算税の賦課決定処分及び平成21年課税期間の重加算税の賦課決定処分を併せて「本件消費税等各賦課決定処分」という。)。
(ヘ) 審査請求
 請求人は、本件消費税等各更正処分及び本件消費税等各賦課決定処分を不服として、平成23年10月12日に審査請求をしたので、通則法第104条《併合審理等》第1項の規定により、上記イの(ハ)の審査請求と併合して審理をする。

(3) 関係法令の要旨

イ 通則法
(イ) 第65条《過少申告加算税》
 第1項は、期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出又は更正があったときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき通則法第35条《申告納税方式による国税等の納付》第2項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨規定している。
(ロ) 第68条《重加算税》
 第1項は、通則法第65条第1項の規定に該当する場合(同条第5項の規定の適用がある場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。
 また、第2項は、通則法第66条《無申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の40の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。
ロ 消費税法
 第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項は、事業者が国内において行う課税仕入れ等については、課税標準額に対する消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を控除する旨、第7項は、第1項の規定は、事業者が課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ等の税額については、適用しない旨、第8項は、前項に規定する帳簿とは、課税仕入れの相手方の氏名又は名称、課税仕入れを行った年月日、課税仕入れに係る資産又は役務の内容、課税仕入れに係る支払対価の額が記載されているものをいう旨規定している。
ハ 消費税法施行令
 第45条《課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準の額》第3項は、事業者が課税資産の譲渡等に係る資産(以下この項において「課税資産」という。)と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に係る資産(以下この項において「非課税資産」という。)とを同一の者に対して同時に譲渡した場合において、これらの資産の譲渡の対価の額(消費税法第28条《課税標準》第1項に規定する対価の額をいう。以下この項において同じ。)が課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないときは、当該課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、これらの資産の譲渡の対価の額に、これらの資産の譲渡の時における当該課税資産の価額と当該非課税資産の価額との合計額のうちに当該課税資産の価額の占める割合を乗じて計算した金額とする旨規定している。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても認められる事実及び証拠によって容易に認められる事実である。
イ 請求人の事業及び事業所
 請求人は、e市g町○−○を事業所として、測量士、土地家屋調査士及び行政書士の各事業並びに不動産業を営んでいる。
ロ 請求人の妻であるKの勤務先
 Kは、本件調査担当職員による請求人への調査が行われた当時、L市役所○○課に勤務していた。
ハ 請求人がKに売却したとする建物等の取得及び使用状況
 請求人は、平成元年7月31日に、e市f町○−○の土地及び同所上に所在する建物を売買により取得し、これを自宅として使用している(以下、請求人が自宅として使用している当該土地及び当該建物を併せて「本件自宅」という。)。
ニ Mからの競売等による土地及び建物の取得及び売却
(イ) M所有のe市h町○−○及び○、同所○番○及び○の各土地並びに同所○番○及び同所○番○の各土地上に存した登記済みの建物が、平成19年5月○日のe地方裁判所担保不動産競売開始決定により、競売されることとなり、請求人は、同所○番○及び同所○番○の各土地上に存した競売の目的外建物である未登記の建物(以下「本件未登記建物」といい、e市h町○−○及び同所○番○の各土地並び当該各土地上に存した登記済みの建物と併せて「本件h物件」という。)を、同年11月27日に1,000,000円でMから購入した上で、それ以外の本件h物件を、同年12月3日の担保不動産競売による売却を受けることによって取得した。
(ロ) 請求人は、本件h物件のうち登記済みの建物を取り壊した上で本件h物件を、平成20年9月18日に、11,316,805円(未経過固定資産税相当額16,805円を含む。)でY及びZに売却した。
ホ 請求人がMに売却したとする各土地の取得
 請求人は、平成19年12月25日に、e市i町○−○、同所○番○及び同所○番○の各土地並びに同所○番○、同所○番○及び同所○番○の各土地の持分5分の1(以下、当該各土地及び当該持分を併せて「本件i物件」という。)を、9,000,000円でN社から、また、e市j町○−○の土地(以下「本件j物件」という。)を、2,000,000円でP社から、それぞれ購入した。
ヘ 請求人が基礎修繕工事費用を支払ったとする建物等の取得及び売却
 請求人は、e市k町○−○、同○番○の各土地及び当該各土地上に存する建物(以下、当該各土地と併せて「本件k物件」という。)を、平成20年2月8日に、9,350,000円(保証金1,408,000円)で競売により取得し、平成21年3月27日に、15,875,000円(未経過固定資産税相当額75,000円を含む。)でQに売却した。
ト e市m町○丁目の土地及び建物の取得及び売却
 請求人は、e市m町○−○の土地及び当該土地上に存する建物(以下、当該土地と併せて「本件m物件」という。)を、平成19年5月10日に、5,537,500円(未経過固定資産税相当額37,500円を含む。)でRから購入し、平成20年4月28日に、12,446,565円(未経過固定資産税相当額46,565円を含む。)でSに売却した。
チ 請求人の経理処理等の内容
(イ) 本件自宅の売却に係る経理処理等
 請求人の「現金−所長小口」勘定には、平成19年10月30日に、本件自宅の売却金額が2,931,151円と、請求人の「平成19年仕入」勘定には、本件自宅の土地建物代が11,315,020円と、「(購入費用)計算書○○」と題する書面には、上記11,315,020円の内訳として購入代金10,000,000円、仲介手数料360,000 円、登記費用153,600円、風呂修理費用375,000円、塗装費用426,420円と、それぞれ記載されており、これらに基づき、平成19年分の所得税について、本件自宅の売却金額2,931,151円を事業所得に係る総収入金額に、「平成19年仕入」勘定に計上した本件自宅に係る費用11,315,020円を事業所得に係る必要経費に、平成19年課税期間の消費税等について、本件自宅の建物部分310,220円を課税売上高に、本件自宅に係る仲介手数料360,000 円ないし塗装費用426,420円の合計額1,315,020円を課税仕入れに係る支払対価の額に、それぞれ算入して、各確定申告がされている。
(ロ) Mへの引越費用等の支払に係る経理処理等
 請求人の「現金−所長小口」勘定には、平成19年11月21日に支払金額3,000,000円と、「T不動産」勘定(TとはT信用金庫の略語である。以下同じ。)には、同月27日に支払金額500,000円と、それぞれ記載され、請求人の「平成19年棚卸資産」と題する書面(以下「本件棚卸資産明細書」という。)には、同日にh町500,000円、同月21日にh町借地権等引越費用3,000,000円がいずれも不動産棚卸資産と記載されているが、請求人の「平成20年期末棚卸資産」と題する書面には、上記の各支払金額が棚卸資産として記載されておらず、これらに基づき、平成19年分の所得税について、上記各支払金額3,500,000円を仕入れとして処理した後に期末棚卸資産に計上し、平成20年分の所得税について、当該金額を売上原価として事業所得に係る必要経費に、平成19年課税期間の消費税等について、上記各支払金額を課税仕入れに係る支払対価の額に、それぞれ算入して、各確定申告がされている。
(ハ) 本件i物件の一部及び本件j物件のMへの売却に係る経理処理等
 請求人の「現金−所長小口」勘定には、平成20年1月30日に、本件i物件の一部及び本件j物件の売却金額が3,000,000円と、本件棚卸資産明細書には、本件i物件及び本件j物件に係る平成19年11月27日ないし同年12月25日の間の支払合計11,700,500円が不動産棚卸資産として記載されているが、請求人の「平成20年期末棚卸資産」と題する書面には、棚卸資産として記載されておらず、これらに基づき、平成20年分の所得税について、当該売却金額3,000,000円を事業所得に係る総収入金額に、平成19年分の棚卸資産としていた11,700,500円を売上原価として事業所得に係る必要経費に、平成20年課税期間の消費税等について、当該売却金額の全額3,000,000円を課税売上高に、それぞれ算入して、各確定申告がされている。
(ニ) 本件k物件に係る基礎修繕工事費用の支払に係る経理処理等
 請求人の「現金−所長小口」勘定には、平成21年12月31日に、外注費9,800,000円と記載されており、これに基づき、平成21年分の所得税について、9,800,000円を事業所得に係る必要経費に、平成21年課税期間の消費税等について、当該金額を課税仕入れに係る支払対価の額に、それぞれ算入して、各確定申告がされている。
リ 本件所得税各更正処分及び本件消費税等各更正処分の内容
本件所得税各更正処分及び本件消費税等各更正処分(平成23年10月4日付でされた異議決定によりその一部につき取り消された後のもの)は、別表3及び4記載の内容で、それぞれ行われた。
ヌ 本件所得税各賦課決定処分及び平成21年課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分の内容
 本件所得税各賦課決定処分は、上記チの各経理処理の前提となった各事実が通則法第68条第1項に規定する仮装に基づくものであるとして、平成21年課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分は、同(ニ)の経理処理の前提となった事実が同条第2項に規定する仮装に基づくものであるとして、それぞれ行われている。

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2 争点

(1) 争点1 請求人は、Kに対し、本件自宅を売却したと認められるか否か。
(2) 争点2 請求人は、Mに対し、引越費用等3,500,000円を支払ったと認められるか否か。
(3) 争点3 請求人は、Mに対し、本件i物件の一部及び本件j物件を売却したと認められるか否か。
(4) 争点4 請求人は、U社又は同社の代表取締役であるVに対し、本件k物件に係る修繕工事費用を支払ったと認められるか否か。
(5) 争点5(仮に、争点1ないし争点4について、請求人の主張がいずれも認められないとされた場合に)本件所得税各賦課決定処分及び平成21年課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分の基礎となる各税額の基となった各事実は、通則法第68条第1項又は第2項に規定する隠ぺい又は仮装に該当するか否か。
(6) 争点6 原処分庁が採った、本件m物件、本件h物件及び本件k物件の売却に係る消費税等の課税売上高の算定方法は合理的か否か。また、その算定結果は適正か否か。

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3 争点に対する当事者双方の主張

(1) 争点1 請求人は、Kに対し、本件自宅を売却したと認められるか否か。

原処分庁 請求人
 次のとおり、請求人は、Kに対し、本件自宅を売却したとは認められない。
 請求人は、本件調査担当職員に対し、当初は、「確かにKから売買代金を受け取ったので、Kに領収証を渡した」旨申し立てていたが、その後、「実際にはKからの金銭の受領はないが、Kは私が支払うべき生活費を負担しているので、改めてKから本件自宅の譲渡代金を受領しなかった」旨申し立てており、申立内容が変遷している。
 また、本件自宅の売買を原因とした所有権の移転登記は行われておらず、本件自宅に係る固定資産税は、請求人に対して賦課決定されていることから、請求人は、本件自宅を引き続き所有していると認められ、Kは、「自宅を請求人から買った事実はなく、領収証に記載されている金額を支払ったことはない」旨申し述べていることから、請求人は、Kに対して本件自宅を売却しておらず、売買代金を授受していない。
 次のとおり、請求人は、Kに対し、本件自宅を売却した。
 Kに対して本件自宅を売却したことは事実であり、所有権移転登記をしなかったのは登記費用が掛かるためである。
 申立内容の変遷は、本件調査担当職員の態度から税務調査と関係がない私的興味でKの売買代金の出所を聞いたと思い最後まで隠したかったものである。また、Kが、本件自宅を購入した事実はない等の内容が記載された質問てん末書に署名したのは、請求人が本件調査担当職員から、Kへの本件自宅の売却に多額の贈与税がかかる旨の虚偽の説明を受け、Kには本件自宅の売買を破棄したいと言っていたので、Kは、突然の本件調査担当職員の来訪に混乱したからである。

(2) 争点2 請求人は、Mに対し、引越費用等3,500,000円を支払ったと認められるか否か。

原処分庁 請求人
 次のとおり、請求人は、Mに対し、引越費用等3,500,000円を支払ったとは認められない。
 Vは、本件未登記建物の売買及びMの立ち退き交渉をまとめ、本件未登記建物に係る売買価額について、Mの引越費用を含めて1,000,000円で話を付け、手付金である200,000円を請求人とともにMの自宅で支払ったが、請求人からは、1,000,000円以外の金員をMに支払ったとは聞いていない旨申し立てている。
 また、請求人の従業員が作成した本件棚卸資産明細書には、「11/21h町\3,000,000(H.19架空計上分)」と記載されていることから、請求人は、帳簿書類に引越費用等の支払について虚偽の内容を記載した上、当該引越費用等を架空計上している。
 なお、本件未登記建物の固定資産税評価額は913,389円であり、本件未登記建物に係る売買価額について、Mの引越費用を含めて1,000,000円としたのは相当であるから、当該価額が低額であることを理由として、売買契約の取消しを求めること自体が不自然である。
 おって、引越費用等の支払及び本件未登記建物の購入に係る領収証は同一日付で作成されているが、領収証の様式が異なる上、本件未登記建物の購入に係る領収証は手書で作成され、一方、引越費用等の支払に係る領収証はパソコンで作成され、チェックライターで印字されたものであり、印鑑の印影も本件未登記建物の購入に係る領収証の印影と異なっており、しかも、Kに対して交付した本件自宅の売却に係る領収証の様式と同一である。さらに、Mは「同日付で様式が違う領収証を使用していることは、おかしいと思う」旨申し立てていることから、請求人は、引越費用等を支払った事実はない。
 次のとおり、請求人は、Mに対し、引越費用等3,500,000円を支払った。
 本件未登記建物の購入価額は1,000,000円であり、通常の取引価額よりも異常に低額で、意思の錯誤により契約の取消しのおそれがあったことからMの求めに応じ、当該物件の法定地上権の費用3,000,000円及び引越費用500,000円の合計3,500,000円を支払ったが、帳簿上は誤って3,000,000円のみ計上したものであり、本件棚卸資産明細書の(H.19架空計上分)という記載は誰が書いたか知らない。
 本件未登記建物の売買に係る領収証は、多分、Vが準備したと思う。
 なお、Mから受領した引越費用等の支払に係る領収証とKに対して交付した本件自宅の売却に係る領収証の様式が同一である理由は、支払者が領収証用紙を用意していない場合、必ず、この領収証様式を使用するためである。

(3) 争点3 請求人は、Mに対し、本件i物件の一部及び本件j物件を売却したと認められるか否か。

原処分庁 請求人
 次のとおり、請求人は、Mに対し、本件i物件の一部及び本件j物件を売却したとは認められない。
 請求人は、本件i物件のうち、e市i町○−○、○番○及び○番○の各土地に係る賃貸料を平成20年3月分から引き続き受領し、また、当該各土地の固定資産税を負担するとともに、所有権移転登記を行っていないことから、当該各土地を引き続き所有していると認められ、Mは、「売買契約書に自分の署名押印があったとしても、本件i物件の一部及び本件j物件が自分のものという認識はなく、物件を手に入れたこともない。請求人から説明を受けて、あまりよく分からないまま売買契約書等に署名した結果、売買契約書は、私の知らないところで作成されたのかもしれず、今、私が不動産を持っていることになれば、○○○○が受けられなくなって、生活ができなくなる」旨申し立てていることから、Mが、本件i物件の一部及び本件j物件を取得及び所有した事実はない。
 次のとおり、請求人は、Mに対し、本件i物件の一部及び本件j物件を売却した。
 Mに本件i物件の一部及び本件j物件を売却したことは事実であり、所有権移転登記をしなかったのは、Mが債権者から取立てを受けている等の事情により、移転登記する利益がないためである。
 また、引渡書類一式をMに渡してあり、Mは、物件を購入してないとは言っていないはずである。

(4) 争点4 請求人は、U社又はVに対し、本件k物件に係る修繕工事費用を支払ったと認められるか否か。

原処分庁 請求人
 次のとおり、請求人は、U社又はVに対し、本件k物件に係る修繕工事費用を支払ったとは認められない。
 Vは、まる1本件k物件の基礎修繕工事(以下「本件修繕工事」という。)を施工していない、まる2本件修繕工事に係る請求書(以下「本件修繕工事請求書」という。)は作成していない、まる3パソコンで本件修繕工事に係る見積書(以下「本件修繕工事見積書」という。)を作成し、見積書データとともに請求人に渡したが、請求人は、当社と同じパソコンシステムを持っているので、本件修繕工事請求書は、請求人が作成したと思われる、まる4本件修繕工事に係る領収証(以下「本件修繕工事領収証」という。)の書式は、当社の書式であるが、本件修繕工事領収証と同じものをパソコンで作成することは可能である、及びまる5本件修繕工事領収証に押印されている代表者印の印影は、当社が使用している代表者印と異なるところ、当社は、パソコンで作成した領収証をそのまま使用することはあったが、本件修繕工事領収証に記載された金額であれば、必ず通常使用する代表者印を使用するので、請求人が本件修繕工事領収証を作成したと思われる旨申し述べており、また、本件調査担当職員がQとともに、本件k物件において、本件修繕工事の施工状況を確認したが、工事が行われた形跡は認められなかったことから、本件修繕工事が施工された事実はなく、請求人が本件修繕工事の費用を支払った事実は認められない。
 次のとおり、請求人は、U社又はVに対し、本件修繕工事の費用を支払った。
 本件k物件をQに売却する際、本件修繕工事が行われ、U社に当該工事代金を支払っているものである。
 また、本件修繕工事領収証は、Vから手渡されたものであり、本件修繕工事領収証に押印されている代表者印の印影は、Vが作成した本件修繕工事見積書の印影と同一で、パソコンでは作成できないものである。
 なお、原処分庁は、原処分庁が主張するまる1ないしまる5のとおりVが申し述べたとしているが、Vからは、当該内容の申述はしておらず、質問てん末書に署名も押印もしていない旨の確認を取っており、当該質問てん末書は本件調査担当職員が偽造したものである。
 さらに、本件調査担当職員が、本件k物件の現場において、例えば、床下に入って細部にわたって確認するなど、十分に検討した上で本件修繕工事が施工されていないと判断したものであるのか疑問である。

(5) 争点5(仮に、争点1ないし争点4について、請求人の主張がいずれも認められないとされた場合に)本件所得税各賦課決定処分及び平成21年課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分の基礎となる各税額の基となった各事実は、通則法第68条第1項又は第2項に規定する隠ぺい又は仮装に該当するか否か。

原処分庁 請求人
 請求人は、まる1Kに本件自宅を売却したと仮装するために領収証を偽造し、架空の売却収入を計上しているほか、当該事実を隠ぺいするために、本件調査担当職員に対して虚偽の答弁を行ったこと、まる2本件i物件及び本件j物件を取得後、引き続き所有しているにも関わらず、売買契約書を偽造した上、Mに署名押印させ、本件i物件の一部及び本件j物件に係る架空の売却収入を計上したこと、まる3引越費用等に係る領収証を偽造して、Mに署名押印させた上、本件棚卸資産明細書には「11/21 h町\3,000,000(H.19架空計上分)」と記載し、引越費用等を必要経費に架空計上したこと、及びまる4本件修繕工事の施工及び工事費用の支払を仮装するために、Vから受領した見積書データを利用して、本件修繕工事請求書及び本件修繕工事領収証を偽造した上で、架空の外注費を計上するとともに、当該事実を隠ぺいするため、本件調査担当職員に対して虚偽の答弁を行ったことが認められるから、本件所得税各賦課決定処分及び平成21年課税期間の重加算税の賦課決定処分の基礎となる各税額に係る事実は、通則法第68条第1項又は第2項に規定する隠ぺい又は仮装に該当する。  Kに対して本件自宅を売却した事実、Mに引越費用等を支払った事実、本件i物件の一部及び本件j物件を売却した事実、及び本件修繕工事の費用を支払った事実は全てあることから、本件所得税各賦課決定処分及び平成21年課税期間の重加算税の賦課決定処分の基礎となる各税額に係る事実は、通則法第68条第1項又は第2項に規定する隠ぺい又は仮装には該当しない。
 また、仮に、上記争点1ないし争点4について、請求人の主張がいずれも認められないとされた場合についても、隠ぺい又は仮装行為の事実及び認識はないことから、重加算税の賦課決定処分は取り消されるべきである。

(6) 争点6 原処分庁が採った、本件m物件、本件h物件及び本件k物件の売却に係る消費税等の課税売上高の算定方法は合理的か否か。また、その算定結果は適正か否か。

原処分庁 請求人
 次のとおり、原処分庁が採った、本件m物件、本件h物件及び本件k物件の売却に係る消費税等の課税売上高の算定方法は合理的であり、また、その算定結果も適正である。したがって、原処分庁主張額のとおりとするべきである。  次のとおり、原処分庁が採った、本件m物件、本件h物件及び本件k物件の売却に係る消費税等の課税売上高の算定方法は合理的ではなく、また、その算定結果も適正ではない。したがって、請求人主張額のとおりとするべきである。
イ 本件m物件及び本件h物件の売却に係る土地及び建物の価額
 請求人は、本件m物件及び本件h物件の購入時及び売却時のいずれにおいても、当該各物件に係る土地及び建物の金額を区分していない。
 また、請求人は、本件m物件及び本件h物件の購入時の土地及び建物の区分を固定資産税評価額により行っている旨申し立てているところ、請求人の当該計算には誤りがある。
 さらに、請求人は、本件m物件及び本件h物件の売却の際、本件m物件の売却金額12,400,000円のうち7,485,050円及び本件h物件の売却金額11,300,000円のうち8,718,824円をそれぞれ課税取引以外の取引として区分し経理しているところ、本件調査担当職員及び異議調査担当職員は、請求人に対して、当該区分経理の方法について説明を求めたが、明確な計算根拠の説明がなかったことから、土地及び建物の合理的な区分方法として本件m物件及び本件h物件の固定資産税評価額のあん分割合を適用して区分した土地及び建物の取得費の構成割合により、本件m物件及び本件h物件の売却金額を土地に係る金額と建物に係る金額に区分した。
イ 本件m物件及び本件h物件の売却に係る土地及び建物の価額
 原処分庁は、本件m物件及び本件h物件の売却金額の評価替えを行い、建物の売却金額が増加したとして課税売上高に加算しているが、売却に係る土地及び建物の価額は、請求人が計算した額が正しい額であり、原処分庁が算定した土地及び建物の売却金額は、経済取引を無視した非常識な金額である。
 また、本件h物件の売却に係る土地及び建物の価額を算定する際、原処分庁は、建物解体等費用を建物の価額に算入しており、理解し難い計算をしている。
ロ 本件k物件の売却に係る土地及び建物の価額
 上記イと同様、請求人は、本件k物件の購入時及び売却時のいずれにおいても、当該物件の土地及び建物の金額を区分しておらず、また、請求人から、購入時及び売却時の区分経理方法について、明確な計算根拠の説明がなかったため、上記イと同様の方法により本件k物件の売却金額を土地に係る金額と建物に係る金額に区分した。
ロ 本件k物件の売却に係る土地及び建物の価額
 上記イと同様、原処分庁は、本件k物件の売却金額の評価替えを行い、建物の売却金額が増加したとして課税売上高に加算しているが、売却に係る土地及び建物の価額は、請求人が計算した額が正しい額であり、原処分庁が算定した土地及び建物の売却金額は、経済取引を無視した非常識な金額である。

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4 判断

(1) 争点1(請求人は、Kに対し、本件自宅を売却したと認められるか否か。)について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件自宅の売買に係る領収証の提示及びその記載内容
 本件自宅の売買に係る領収証は、請求人から本件調査担当職員に対し原本が提示されているが、当該領収証には、名宛人がK、領収金額が2,931,151円、領収日が平成19年10月30日、受領者が請求人、ただし書として、本件自宅の売買代金である旨記載され、請求人の署名押印がされており、日付及び請求人の署名は手書され、それ以外の上記各項目は機械的に印字されて作成されたものである(以下、この領収証を「本件K宛領収証」という。)。
(ロ) 平成19年10月30日以降の本件自宅の使用状況の変化及び所有権移転登記の有無
 請求人は、本件K宛領収証が発行された平成19年10月30日以降も引き続き、本件自宅を従前と変わらず使用しており、また、Kに対する本件自宅の所有権移転登記がされた事実は認められない。
(ハ) 本件自宅の売買を行うこととなった経緯及び売買代金の実際の動きに係る客観的な事実の有無
 本件自宅の売買を行うこととなった経緯をうかがわせるような客観的な事実及び本件自宅の売買代金の実際の動きを裏付ける客観的な事実は、いずれも認められない。
(ニ) 下記ロの申述に係る質問てん末書が作成された際の状況
 下記ロの申述に係る質問てん末書によれば、当該質問てん末書に係る質問及び答弁は、前記1の(4)のロのとおり、Kが勤務するL市役所の1階ロビーにおいて、平成23年1月20日の12時42分に開始され、同時44分に終了した後、そのてん末を録取し、Kに読み聞かせ、かつ、示したところ、Kが相違ない旨申し立てた旨記載されており、Kと本件調査担当職員の署名押印及び割り印が整然とされていることが認められる。
ロ 本件調査担当職員に対するKの申述内容
 Kは、請求人から本件自宅をKが購入したことになっていることを昨年のいつ頃かはっきりしないが聞かされていたが、本件K宛領収証に記憶はなく、また、請求人に対して本件K宛領収証に記載されている金額を支払った事実もなく、本件自宅を請求人から購入した事実はない。
ハ 上記ロのKの申述の採否
 請求人は、前記3の(1)の「請求人」欄のとおり、Kが、本件自宅を購入した事実はない等の内容が記載された質問てん末書に署名したのは、請求人が本件調査担当職員から、Kへの本件自宅の売却に多額の贈与税がかかる旨の虚偽の説明を受け、Kには本件自宅の売買を破棄したいと言っていたので、Kは、突然の本件調査担当職員の来訪に混乱したことによるものである旨主張する。
 しかしながら、上記イの(ニ)のとおり、Kの申述に係る質問てん末書によれば、当該質問てん末書に係る質問及び答弁は、Kが勤務するL市役所の1階ロビーにおいて、平成23年1月20日の12時42分に開始され、同時44分に終了した後、そのてん末を録取し、Kに読み聞かせ、かつ、示したところ、Kが相違ない旨申し立てた旨記載されており、Kと本件調査担当職員の署名押印及び割り印が整然とされていることが認められる。
 また、上記ロのKの申述内容は、上記イの(イ)のとおり、請求人が本件調査担当職員に対し本件K宛領収証の原本を提示したこと、同(ロ)及び(ハ)のとおり、請求人は、本件K宛領収証が発行された平成19年10月30日以降も引き続き、本件自宅を従前と変わらず使用しており、本件自宅の売買を行うこととなった経緯をうかがわせるような客観的な事実及び本件自宅の売買代金の実際の動きを裏付ける客観的な事実は、いずれも認められないこと、また、Kに対する本件自宅の所有権移転登記がされた事実も認められないこととも合致しており、信ぴょう性があると認められる。
 以上によれば、請求人の主張には理由がなく、上記ロのKの申述は採用することができる。
ニ 結論
 上記イの(イ)のとおり、本件K宛領収証には、名宛人がK、領収金額が2,931,151円、領収日が平成19年10月30日、受領者が請求人、ただし書として、本件自宅の売買代金である旨記載され、請求人の署名押印がされている。
 しかしながら、本件K宛領収証は、上記イの(イ)のとおり、日付及び請求人の署名は手書され、それ以外の上記各項目は機械的に印字されて作成されたものであり、上記ロのとおり、Kは、請求人から本件自宅をKが購入したことになっていることを昨年のいつ頃かはっきりしないが聞かされていたが、本件K宛領収証に記憶はなく、また、請求人に対して本件K宛領収証に記載されている金額を支払った事実もなく、本件自宅を請求人から購入した事実はないのであるから、本件K宛領収証の記載内容のみをもって、直ちに本件自宅の売買がされたとはいえない。
 したがって、請求人が、Kに対し、本件自宅を売却したとは認められない。
ホ 上記ハに記載された主張以外の請求人の主張について
 請求人は、前記3の(1)の「請求人」欄のとおり、Kに対する本件自宅の売却は事実であり、所有権移転登記をしなかったのは登記費用が掛かるためで、Kからの本件自宅の売買代金の受領に係る申立内容の変遷は、本件調査担当職員の態度から私的興味でKの資金出所を聞かれたものと思い、最後まで隠したかったことによるものである旨主張する。
 しかしながら、上記ニのとおり、請求人が、Kに対し、本件自宅を売却したと認められず、当審判所は、本件自宅の所有権移転登記がされていないこと、あるいは、請求人の申立内容の変遷をもって、上記のように判断しているわけではないから、請求人の上記主張には理由がない。

(2) 争点2(請求人は、Mに対し、引越費用等3,500,000円を支払ったと認められるか否か。)について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件未登記建物の購入に係る領収証の提示及び記載内容
 請求人が本件未登記建物をMから購入した際の各領収証は、請求人から本件調査担当職員に対し原本が提示されているが、当該各領収証には、名宛人が請求人、受領者がM、領収日が平成19年11月6日、同月21日、同月27日、領収金額が200,000円、250,000円、550,000円、ただし書として、本件未登記建物の手付金、本件未登記建物の2回目内金、本件未登記建物の残金である旨それぞれ記載され、いずれもMの署名押印がされており、当該各領収証は全て手書で作成されている(以下、同月6日付の領収証を「本件M宛領収証1」、同月21日付の領収証を「本件M宛領収証2」、同月27日付の領収証を「本件M宛領収証3」という。)。
(ロ) 引越費用等3,500,000円の支払に係る領収証の提示及び記載内容
 引越費用等3,500,000円の支払に係る各領収証は、請求人から本件調査担当職員に対し原本が提示されているが、当該各領収証には、名宛人が請求人、受領者がM、領収日が平成19年11月21日、同月27日、領収金額が3,000,000円、500,000円、ただし書として、本件未登記建物に係る引越代金の手付金、本件未登記建物に係る引越代金の残金である旨それぞれ記載され、いずれもMの署名押印がされており、日付及びMの署名は手書され、それ以外の上記各項目は機械的に印字されて作成されている(以下、同月21日付の領収証を「本件M宛領収証4」、同月27日付の領収証を「本件M宛領収証5」という。)。
(ハ) 本件未登記建物の固定資産税評価額
 本件未登記建物の平成20年度の固定資産税評価額は、913,389円である。
ロ 関係者の申述及び答述内容
(イ) 本件調査担当職員に対するMの申述内容
A 本件未登記建物を請求人に3,000,000円で買い取ってもらい、平成19年の年末に、現在住んでいるアパートへ請求人が現金3,000,000円を持ってきたので、当該金銭を受領し、領収証に署名押印した記憶がある。
B 請求人から金銭を受領する以前に、U社の社員が引越費用500,000円を持ってきたので、当該金銭を受領した記憶がある。
C 本件未登記建物の売却に係る売買契約書は作成していない。
D 本件M宛領収証1ないし本件M宛領収証5に署名押印したのは、自分である。
E 本件M宛領収証2及び本件M宛領収証4は、平成19年11月21日付であり、本件M宛領収証3及び本件M宛領収証5は、同月27日付であるが、同日に二度も金銭を受領した記憶はなく、本件M宛領収証4及び本件M宛領収証5に記載された日付の筆跡は、自分のものではない。
F 本件M宛領収証1ないし本件M宛領収証5の印鑑は全て自分の印鑑であるが、同日にわざわざ別の印鑑を押すことはおかしいので、本件M宛領収証4及び本件M宛領収証5の領収証の日付は、請求人が後から都合のいい日として記入したのではないか。
(ロ) 当審判所に対するMの答述内容
A 本件未登記建物の売却金額は1,000,000円であるが、当該売却に係る不動産売買契約書は作成していない。
B 本件M宛領収証1ないし本件M宛領収証3については、Vが用意し、本件M宛領収証4及び本件M宛領収証5については、請求人が用意したものであったと記憶している。
C 本件未登記建物の売却金額1,000,000円のうち、手付金として200,000円を平成19年11月6日にe市h町の自宅で受け取り、残金の中からVにいくらか取られ、残った金額を、Vからe市n町の自宅アパートで受け取った。また、上記に加え、日時ははっきりしないが、引越費用等として3,500,000円を請求人から、自宅アパート近くのファミリーレストランで受け取った記憶があり、受領した当該引越費用等は自宅アパートの仏壇に保管していた。
D 本件未登記建物から自宅アパートへ引っ越した際に掛かった費用は100,000円に満たないくらいである。
E 本件M宛領収証1ないし本件M宛領収証5のいずれも署名押印は自分が行い、本件M宛領収証1ないし本件M宛領収証3の日付の字は自分のものであるが、本件M宛領収証4及び本件M宛領収証5の日付の字は自分の字ではない。
F 本件M宛領収証1ないし本件M宛領収証5に押印されている印鑑はいずれも自分の印鑑であるが、本件M宛領収証2及び本件M宛領収証4、そして、本件M宛領収証3及び本件M宛領収証5に押印されている印鑑はそれぞれ別の印鑑であることから、本件M宛領収証4及び本件M宛領収証5に署名押印した日は、当該領収証に記載のある平成19年11月21日及び同月27日ではないと思うが、いつ署名押印したかは覚えていない。
(ハ) 本件調査担当職員に対するVの申述内容
A 請求人からの依頼により、Mの立ち退きの話をまとめた。
B 本件未登記建物は、価値のないようなものであったが、Mは引っ越すお金もなかったことから、自分は、Mに対し、引越代金も含めて1,000,000円で話をつけた。
C 本件未登記建物の売買代金1,000,000円の支払について、手付金は、請求人とともにMの自宅で支払い、残金については、前もってMに領収証へ署名押印してもらい、当該領収証を請求人のところへ持参し、請求人から領収証と引換えに現金を預かり、当該現金をMに届けたと記憶している。
D 平成19年11月21日及び同月27日の両日とも、自分はMの自宅に行っていない。
E 請求人から、請求人が上記C以外の金銭をMに支払ったとは聞いていないし、知らない。
F 自分とMで本件h物件からの立ち退きの話をつけたにも関わらず、その後に、請求人が引越代金等を支払うことは考えられない。
ハ 上記ロの申述及び答述の採否
 上記ロの(イ)のA及びBのとおり、Mは、本件未登記建物を請求人に3,000,000円で買い取ってもらい、請求人から金銭を受領する以前に、U社の社員が引越費用500,000円を持ってきたとしているが、前記1の(4)のニのとおり、請求人は、本件未登記建物を、平成19年11月27日に1,000,000円でMから購入したのであるから、本件未登記建物を3,500,000円で買い取ったとは認められず、これらの申述を採用することはできない。一方、Mによる、上記ロの(ロ)のAの答述、同Cの本件未登記建物の売却金額1,000,000円のうち、手付金として200,000円を同月6日にe市h町の自宅で受け取り、残金の中からVにいくらか取られ、残った金額を、Vからe市n町の自宅アパートで受け取ったとする答述、さらにVによる同(ハ)のB及びCの各申述は、いずれも、上記の本件未登記建物の1,000,000円での購入の事実に合致するものであるから、これらの答述及び申述は事実を述べたものと認められる。
 そして、上記ロの(ハ)のBのとおり、Vは、本件未登記建物は、価値のないようなものであったが、Mは引っ越すお金もなかったことから、自分は、Mに対し、引越代金も含めて1,000,000円で話をつけたとしているが、上記イの(ハ)のとおり、本件未登記建物の平成20年度の固定資産税評価額が913,389円であることともおおむね符号するものであり、信用することができ、以上のVの申述と整合するその他のVの申述についても疑問を挟む余地はないというべきである。
 また、Mによる上記ロの(イ)のCないしF並びに同(ロ)のB及びDないしFの申述及び答述は、これに反する事実が認められず、不相当とするべき理由もない。
 以上によれば、Vの上記ロの(ハ)の申述は採用することができるが、Mの同(イ)の申述及び同(ロ)の答述のうち、同(イ)のCないしF並びに同(ロ)のB及びDないしFの申述及び答述を除き、Mが引越費用等として総額3,500,000円の支払を受けた旨の申述及び答述は、いずれも採用することができない。
ニ 結論
 上記イの(ロ)のとおり、本件M宛領収証4及び本件M宛領収証5には、名宛人が請求人、受領者がM、領収日が平成19年11月21日、同月27日、領収金額が3,000,000円、500,000円、ただし書として、本件未登記建物に係る引越代金の手付金、本件未登記建物に係る引越代金の残金である旨それぞれ記載され、いずれもMの署名押印がされており、日付及びMの署名は手書され、それ以外の上記各項目は機械的に印字されて作成されており、上記ロの(ロ)のBによれば、本件M宛領収証1ないし本件M宛領収証3については、Vが用意し、本件M宛領収証4及び本件M宛領収証5については、請求人が用意したものであったと認められ、請求人が用意した本件M宛領収証4及び本件M宛領収証5は、上記イの(ロ)のとおり、日付及びMの署名は手書され、それ以外の項目は機械的に印字されて作成されたものであったが、上記ロの(イ)のD及び同(ロ)のEによれば、本件M宛領収証1ないし本件M宛領収証5に署名押印したのは、Mであったと認められる。
 しかしながら、上記ロの(イ)のE及び同(ロ)のEのとおり、本件M宛領収証4及び本件M宛領収証5に記載された日付の筆跡は、Mのものではなく、同(ロ)のDのとおり、Mが本件未登記建物から自宅アパートへ引っ越した際に掛かった費用は100,000円に満たないくらいであり、同(ハ)のVの申述によれば、本件M宛領収証1ないし本件M宛領収証3は、その記載内容どおりに、金員の授受がされたことを示すものと認められるが、本件M宛領収証4及び本件M宛領収証5は、その記載内容どおりに、金員の授受がされたことを示すものとは認められず、他に、引越費用等3,500,000円の支払の事実を裏付けるものは認められない。
 したがって、請求人が、Mに対し、引越費用等として3,500,000円を支払ったとは認められない。
ホ 請求人の主張について
 請求人は、前記3の(2)の「請求人」欄のとおり、本件未登記建物の購入価額は1,000,000円であり、通常の取引価額よりも異常に低額で、意思の錯誤により契約の取消しのおそれがあったことからMの求めに応じ、当該物件の法定地上権の費用3,000,000円及び引越費用500,000円の合計3,500,000円を支払ったが、帳簿上は誤って3,000,000円のみ計上したものであり、本件棚卸資産明細書の(H.19架空計上分)という記載は誰が書いたか知らず、また、本件未登記建物の売買に係る領収証は、多分、Vが準備したと思うが、Mから受領した引越費用等の支払に係る領収証とKに対して交付した本件自宅の売却に係る領収証の様式が同一である理由は、支払者が領収証用紙を用意していない場合、必ず、この領収証様式を使用するためである旨主張する。
 しかしながら、請求人が、Mに対し、引越費用等として3,500,000円を支払ったとは認められないと当審判所が判断したのは、上記ニの理由によるものであるから、請求人が主張するように、本件棚卸資産明細書の記載や本件M宛領収証1ないし本件M宛領収証5の様式いかんによって、判断したものではない。
 したがって、請求人の上記主張にはいずれも理由がない。

(3) 争点3(請求人は、Mに対し、本件i物件の一部及び本件j物件を売却したと認められるか否か。)について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件i物件の一部及び本件j物件の不動産売買契約書の内容
 本件i物件の一部及び本件j物件の不動産売買契約書(以下「本件売買契約書」という。)には、要旨次のとおり記載されている。
A 契約年月日 平成20年1月30日
B 売主 e市f町○−○ P1
C 買主 e市h町○−○ M
D 売買物件
(A) e市j町○−○2の土地601平方メートル(前記1の(4)のホのとおり、本件j物件の地番は○であり、○2は誤記と認められる。)
(B) e市i町○−○、○番○及び○番○の土地118.96平方メートル
E 売買代金 3,000,000円
(ロ) 本件i物件の一部及び本件j物件の所有権移転登記の有無
 本件売買契約書が取り交わされた平成20年1月30日以降、本件i物件の一部及び本件j物件について、所有権移転登記がされた事実は認められない。
(ハ) 本件i物件の一部に係る駐車場賃貸収入の帰属先
 本件i物件の一部(e市i町○−○、○番○及び○番○の各土地)は、i町駐車場として貸し付けられていた。そして、前記1の(4)のホのとおり、請求人が本件i物件を取得した「i町駐車場オーナーチェンジ(所有者変更)お知らせ」と題する書類には、平成19年12月25日付で当該各土地の所有者がN社から請求人に変更された旨記載されており、i町駐車場に係る賃貸収入は、請求人の「現金−所長小口」勘定には、同日、平成19年12月分の日割り分及び平成20年1月分と認められる38,192円が計上され、同年2月分以降は、請求人の「T信用金庫」勘定又は「売上高−不動産(非課税)」勘定にそれぞれ計上されている。
ロ 関係者の当審判所に対する答述内容
(イ) M
A 本件売買契約書に自分の署名押印があることから、契約は結んだが、当該物件が自分のものであるという認識はない。
B 請求人から説明を受けて、あまりよく分からないまま署名押印をしてしまったが、今現在自分が不動産を所有していることになれば、○○○○が受けられなくなって、生活ができなくなるのでそんなことにはなって欲しくない。
C 本件j物件は、請求人に案内してもらったので記憶にあるが、本件i物件の一部は、本件調査担当職員に教えてもらうまで分からなかった。
D 本件i物件の一部及び本件j物件の売買代金3,000,000円は、仏壇に保管していた現金により工面し、日時は覚えていないが、自宅のアパート近くのファミリーレストランで請求人に支払った。
E 本件i物件の一部及び本件j物件が自分の土地であるという認識はないので、現在に至るまで当該各物件の管理などしておらず、また、請求人から本件i物件の一部に係る駐車場収入の支払を受けたことは一度もない。
F 本件i物件の一部及び本件j物件に係る各固定資産税を支払ったことはなく、また、請求人から当該各固定資産税の支払の請求をされたことは一度もない。
G 本件売買契約書の契約日である平成20年1月30日から現在に至るまで、本件i物件の一部及び本件j物件に関する内容のことで、請求人からの連絡等は何もない。
(ロ) 請求人
A 売却した物件は、本件i物件の一部及び本件j物件で、売却金額は3,000,000円である。
B 本件i物件及び本件j物件を合わせて11,000,000円という高い金額で購入してしまったが、なかなか売れるような土地ではなく、持っていてもしょうがないと思い、3,000,000円という安い値段であるが、Mに売却することにした。
C 売却金額の3,000,000円は、いつかは覚えていないが、自分の使用している車のなかで現金で受領したので領収証をMに交付した。自分は、当該領収証の控えを保管していると思うが、はっきりとは分らないので探してみる。
D 本件売買契約書は、自分が作成し、控えを保管しているが、原本は、Mに渡した。
ハ 結論
 上記イの(イ)のとおり、本件売買契約書によれば、本件i物件の一部及び本件j物件は、平成20年1月30日に、請求人からMに対し、3,000,000円で売却されたとされているが、この3,000,000円の出どころについて、上記ロの(イ)のDのとおり、Mは、仏壇に保管していた現金により工面したとしており、この仏壇に保管していた現金とは、上記(2)のロの(ロ)のCのとおり、請求人がMに対して支払ったとする引越費用等3,500,000円に他ならないが、同ニのとおり、請求人が、Mに対し、引越費用等3,500,000円を支払ったとは認められないのであるから、本件i物件の一部及び本件j物件の代金3,000,000円を仏壇に保管していた現金により工面したとは認められず、前記1の(4)のニの(イ)のとおり、Mは、本件h物件を競売にかけられたことからすれば、金銭的に困窮していたと推認するのが相当であるので、Mがこの3,000,000円を負担することができたとは認められず、Mが負担したことを前提とした上記ロのM及び請求人の各答述は、いずれも採用することはできない。
 また、上記イの(ロ)のとおり、本件売買契約書が取り交わされた平成20年1月30日以降、本件i物件の一部及び本件j物件について、Mに対する所有権移転登記がされた事実は認められず、同(ハ)のとおり、請求人は、i町駐車場として賃貸されている本件i物件の一部に係る賃貸収入を、同日以降も、自らの帳簿に計上している。
 以上によれば、請求人が、Mに対し、本件i物件の一部及び本件j物件を売却したとは認められない。
ニ 請求人の主張について
 請求人は、前記3の(3)の「請求人」欄のとおり、Mに本件i物件の一部及び本件j物件を売却したことは事実であり、所有権移転登記をしなかったのは、Mが債権者から取立てを受けている等の事情により、移転登記する利益がないためであって、引渡書類一式をMに渡してあり、Mは、物件を購入してないとは言っていないはずである旨主張する。
 しかしながら、上記ハのとおり、Mが、本件i物件の一部及び本件j物件の代金3,000,000円を負担することができたとは認められず、Mが負担したことを前提とした上記ロのM及び請求人の各答述は、いずれも採用することはできないことに加え、本件i物件の一部及び本件j物件について、Mに対する所有権移転登記がされた事実は認められないこと、及び、請求人は、i町駐車場として賃貸されている本件i物件の一部に係る賃貸収入を、平成20年1月30日以降も、自らの不動産所得に係る帳簿に計上していることをもって、当審判所は、請求人が、Mに対し、本件i物件の一部及び本件j物件を売却したとは認められないと判断しているのであるから、請求人が主張するように、所有権移転登記がされていないことや引渡書類一式をMに渡したことのみをもって判断しているわけではなく、また、本件i物件の一部及び本件j物件を購入したとするMの答述を採用することはできない。
 したがって、請求人の上記主張には理由がない。

(4) 争点4(請求人は、U社又はVに対し、本件修繕工事の費用を支払ったと認められるか否か。)について

イ 認定事実等
(イ) 本件修繕工事見積書、本件修繕工事請求書及び本件修繕工事領収証の記載内容等
 本件修繕工事見積書、本件修繕工事請求書及び本件修繕工事領収証には、要旨次のとおり記載されている。なお、本件修繕工事請求書は、平成21年4月1日以降同年12月1日までの間、各月1日付の請求書がいずれも下記Bの内容で9枚発行されている。
A 本件修繕工事見積書
(A) 発行者名 U社 e市p町○−○
(B) 発行年月日 平成21年2月16日
(C) 税込見積金額 10,336,945円
(D) 工事件名 k町○−○基礎修繕工事
(E) 工事概要 基礎修繕工事
(F) 工事期間 着工より30日
(G) 工事内訳明細
 a 上屋曳家 4,447,710円
 b 解体工事 2,156,000円
 c 基礎工事 2,441,000円
 d 諸経費   800,000円
B 本件修繕工事請求書
(A) 発行者名 U社 e市p町○−○
(B) 発行年月日 各月1日
(C) 税込請求金額 10,336,945円
(D) 工事件名 k町○−○基礎修繕工事
(E) 工事内訳明細
 a 上屋曳家 4,447,710円
 b 解体工事 2,156,000円
 c 基礎工事 2,441,000円
 d 諸経費   800,000円
C 本件修繕工事領収証
(A) 発行者名 U社 e市p町○−○
(B) 入金日 平成21年12月30日
(C) 金額 9,800,000円
(D) 入金内訳 現金
(ロ) 本件k物件の売却に係る不動産売買契約書の記載内容
 本件k物件の売却に係る不動産売買契約書には、要旨次のとおり記載されている。
A 契約年月日 平成21年2月28日
B 引渡しの日 平成21年3月27日まで
C 売主 e市f町○−○ P1
D 買主 q市r町○−○ Q
E 売買物件
(A) e市k町○−○の宅地63.20平方メートル
(B) e市k町○−○の宅地89.91平方メートル
(C) e市k町○−○、○番地○の建物144.93平方メートル
F 売買代金 15,800,000円
G 本物件に賦課される公租公課は本物件の引渡前日までを売主が分担し、以降の分は買主が分担する。
(ハ) 本件修繕工事に係る出金の請求人の帳簿への記載状況
 前記1の(4)のチの(ニ)のとおり、請求人の「現金−所長小口」勘定には、平成21年12月31日に、外注費9,800,000円と記載されているが、出金後の残高は3,988,989円の赤字となっている。
(ニ) 請求人の当審判所に対する答述内容
A 本件修繕工事見積書に記載されている曳家工事は施工されていないので、建築確認申請の手続はしていない。
B 本件修繕工事をU社に依頼したが、自分は、実際に工事を施工した下請業者の名称や工事内容は把握しておらず、当審判所に対し提示できる書類等もない。
ロ Vの申述内容等
(イ) 質問てん末書に記載されたVの本件調査担当職員に対する申述内容
A U社は、本件修繕工事を施工したことはなく、実際に行った工事は、土間工事等のこそくり仕事であって、工事代金は120,000円から130,000円であった。
B 請求人から、本件修繕工事を行った場合、どのくらいになるかと相談を受けたので、下請業者に依頼して見積書をもらい、当該見積書を基に自分がパソコンで本件修繕工事見積書を作成し、データとともに請求人に渡した。
C 本件修繕工事請求書及び本件修繕工事領収証は、自分が作成したものではなく、本件修繕工事見積書を基に請求人が作成したものであると思う。
D 請求人に対し、何枚か白紙の領収証を渡した記憶がある。
E 本件修繕工事領収証に押印されている代表者印は、自分が通常使用している代表者印と異なっている。
F 自分は、たまにパソコンで作成した領収証をそのまま使用することはあったが、本件修繕工事領収証に記載された9,800,000円という金額であれば、必ず通常使用する代表者印を押印する。
G 請求人から口裏を合わせてくれと言われたら口裏を合わせたと思うが、請求人から、そんなことは頼まれていないので、嘘を言っていない。
(ロ) 上記(イ)の質問てん末書(以下「本件質問てん末書」という。)の作成状況に関する記載及び署名押印等の状況
 本件質問てん末書には、本件質問てん末書に係る質問及び答弁は、J税務署の庁舎4階面接室において、平成23年1月12日の11時15分に開始され、12時30分に終了した後、そのてん末を録取し、同年6月24日にVに読み聞かせ、かつ、示したところ、Vが相違ない旨申し立てた旨記載されており、同日付でVと本件調査担当職員の署名押印及び割り印がされている。
(ハ) 当審判所に対する本件質問てん末書についてのVの答述内容
A 本件質問てん末書の署名押印は、V自身でした。
B 本件質問てん末書は平成23年1月12日から同年6月24日の間に本件調査担当職員の質問に対するVの回答に基づいて作成されたものである。
C Vは、本件質問てん末書の内容についての本件調査担当職員の読み聞かせを全て聞いた上で、間違いがなかったから、署名押印した。
(ニ) 当審判所に対する本件質問てん末書についての本件調査担当職員の答述内容
A U社が本件修繕工事を行ったかどうかについて、Vに確認するため、平成22年8月中旬頃から連絡をしていたが、同年12月15日に、Vが実質的に経営をしていると見込まれたW社の代表取締役Xに面接を求め、Vを伴ってJ税務署の庁舎に赴くよう求めたところ、平成23年1月12日に面接することになった。同日に、Vと面接した際には、本件調査担当職員の他、Xも同席した。
B 本件質問てん末書は、平成23年1月12日のVとの面接、同年2月7日のVとの面接及びVからの電話でのやりとり並びに同年6月24日のVに対する本件質問てん末書の内容の読み聞かせの際にVが述べたことに基づき、作成したものである。
C 平成23年1月12日の面接後、Vの都合もあって、同日中に署名押印をもらうことができなかったため、本件調査担当職員はVと一両日中にJ税務署の庁舎に赴くことを約束したが、Vが赴くことはなかったため、その後もVとの連絡を試みたがうまくいかず、同年5月13日の電話連絡においてXを通じてVにJ税務署の庁舎に赴くよう説得したところ、同年6月24日にVが赴くことが決まり、同日にV一人で面接に来た。
D 平成23年6月24日午後3時30分頃から面接が始まり、本件調査担当職員が、Vに対し、これまでのやりとりに基づいて作成した本件質問てん末書を読み聞かせるので、違う箇所があれば指摘してほしいと伝えた上で、本件質問てん末書にも添付してある別紙(本件修繕工事見積書、本件修繕工事請求書、本件修繕工事領収証及び上記(3)のイの(ハ)の「i町駐車場オーナーチェンジ(所有者変更)お知らせ」と題する書類)も示しながら、本件質問てん末書を15分から20分程度かけて読み聞かせたところ、Vは淡々と聞いていたが、本件質問てん末書の内容について、追加、訂正及び削除事項の意思表示は一切なかった。その後、Vに本件質問てん末書を示し確認させたところ、Vは、受け取った本件質問てん末書をパラパラと全部をめくって確認した。
E Vは、読み聞かせた内容に間違いはないということだったが、言い分を聞いてほしいとして、「こんなことを言うのもなんですが、P1(請求人)さんから口裏を合わせてくれと言われたら死んでも口裏を合わせたと思いますが、P1さんからは、そんなことは頼まれていませんので、私は嘘を言っていません。」と話したので、本件質問てん末書に記載した。
F 平成23年6月24日の午後4時過ぎ頃に、V本人が本件質問てん末書に署名押印をしたが、特に渋る様子もなく淡々と署名押印していた。その後、J税務署の庁舎を退出するまでの間に、本件質問てん末書の内容に不満があるとか、内容を否定したいというような様子はなく、同日後にそのような申出を受けたことも一切ない。
ハ 上記ロの(イ)のVの申述の採否及びこの点に関する請求人の主張について
 請求人は、前記3の(4)の「請求人」欄のとおり、原処分庁が主張するVの申述について、Vからは、原処分庁が主張するような内容の申述はしておらず、質問てん末書に署名も押印もしていない旨の確認を取っており、当該質問てん末書は本件調査担当職員が偽造したものである旨主張する。
 しかしながら、上記ロの(ハ)及び(ニ)によれば、本件質問てん末書が、平成23年1月12日から同年6月24日の間に本件調査担当職員の質問に対するVの回答に基づいて作成され、本件質問てん末書の内容について、本件調査担当職員が、Vに対し読み聞かせ、Vがその内容に間違いがないことを確認した上で、V自身が署名押印したことに、疑いを挟む余地はない。また、同(ロ)の本件質問てん末書の記載内容のとおり、本件質問てん末書に係る質問及び答弁は、J税務署の庁舎4階面接室において、同年1月12日の11時15分に開始され、12時30分に終了した後、そのてん末を録取し、同年6月24日にVに読み聞かせ、かつ、示したところ、Vが相違ない旨申し立てたため、同日付で、Vと本件調査担当職員が署名押印をしたと認められ、質問及び答弁並びにそれらが録取された時期と、その内容をVに読み聞かせた時期が相当離れているが、それは、同(ニ)のCのとおり、同日にVの署名押印を受けたのは、本件調査担当職員がVに対し連絡を試みたもののなかなか連絡がつかなかったことによるものであるから、この事実をもって、本件質問てん末書が偽造されたことを推認させるものともいえない。
 そうすると、請求人が主張するように、本件質問てん末書が本件調査担当職員によって偽造されたものと認めることはできず、請求人の上記主張には理由がない。
 そして、本件質問てん末書に記載されたVの申述内容は、上記ロの(イ)のAないしFのとおり、本件修繕工事の内容だけでなく、見積書作成の経緯、白地の領収証を渡した記憶及び本件修繕工事領収証の代表者印について具体的に述べられていること、同Gのとおり、請求人から口裏を合わせてくれと言われたら口裏を合わせたと思うが、請求人から、そんなことは頼まれていないので、嘘を言っていない旨述べられており、請求人と近い関係にあるVがあえて請求人に不利益な申述をしたものであることからすれば、本件質問てん末書に記載されたVの申述内容は、信用できるものといえる。
ニ 判断及び結論
 前記1の(4)のヘのとおり、請求人は、本件k物件を、平成20年2月8日に取得し、平成21年3月27日に売却しているところ、上記イの(イ)のとおり、本件修繕工事見積書、本件修繕工事請求書及び本件修繕工事領収証には、本件修繕工事は、本件修繕工事見積書が発行された同年2月16日以降、遅くとも同月25日には着工され、30日間で完成した旨記載され、その工事代金10,336,945円の内訳は、上屋曳家、解体工事、基礎工事及び諸経費であったが、最終的には9,800,000円とする旨記載されていることが認められる。
 しかしながら、上記イの(ロ)のとおり、本件k物件の売却に係る不動産売買契約書には、本件修繕工事を行った上での売買であることをうかがわせる記述はなく、前記1の(4)のヘのとおり、9,350,000円で取得した本件k物件に、10,336,945円の本件修繕工事を施した上で、15,875,000円で売却するというのは、いかにも不合理な取引といわざるを得ない。
 そのうえ、本件修繕工事をU社に依頼した請求人ですら、上記イの(ニ)のとおり、本件修繕工事見積書に記載された曳家工事は施工されていない上、本件修繕工事をU社に依頼したが、実際に工事を施工した下請業者の名称や工事内容は把握しておらず、当審判所に対し提示できる書類等もない旨答述しているところ、請求人が本件修繕工事を依頼したとするU社のVは、上記ロの(イ)のAのとおり、本件修繕工事を施工したことはない旨申述しており、また、上記ロの(イ)のB及びCのとおり、請求人から、本件修繕工事を行った場合、どのくらいになるかと相談を受けたので、Vがパソコンで本件修繕工事見積書を作成し請求人に渡したとしており、本件修繕工事請求書及び本件修繕工事領収証は、自分が作成したものではない旨申述していて、同人の申述は上記ハのとおり信用できる。したがって、本件修繕工事が行われたとは認められず、本件修繕工事見積書、本件修繕工事請求書及び本件修繕工事領収証があることは、上記認定を覆すものではない。
 そして、上記ロの(イ)のDないしFのとおり、Vは、請求人に対し、白紙の領収証を渡した記憶があるとしており、本件修繕工事領収証に押印されている代表者印は、通常使用している代表者印と異なっており、9,800,000円という金額であれば、必ず通常使用する代表者印を押印するとしていることに加え、上記イの(ハ)のとおり、請求人の「現金−所長小口」勘定における9,800,000円を出金した後の残高は3,988,989円の赤字となっていることを総合してみると、請求人が、実際に9,800,000円を出金でき、これをU社又はVが受け取ったとも認められない。
 以上によれば、請求人が、U社又はVに対し、本件修繕工事の費用を支払ったとは認められない。
ホ 上記ハに記載された主張以外の請求人の主張について
 請求人は、前記3の(4)の「請求人」欄のとおり、まる1本件k物件をQに売却する際、本件修繕工事が行われ、U社に当該工事代金を支払っている、まる2本件修繕工事領収証は、Vから手渡されたものであり、本件修繕工事領収証に押印されている代表者印の印影は、Vが作成した本件修繕工事見積書の印影と同一で、パソコンでは作成できないものである、まる3本件調査担当職員が、本件k物件の現場において、例えば、床下に入って細部にわたって確認するなど、十分に検討した上で本件修繕工事が施工されていないと判断したものであるのか疑問である旨主張する。
 しかしながら、上記まる1及びまる2の点については、上記ニのとおり、本件修繕工事は行われなかったと認めるのが相当であり、請求人が、実際に9,800,000円を出金でき、これをU社又はVが受け取ったとも認められず、本件修繕工事の実態を知るのは、V以外ないところ、Vは、請求人に対し、白紙の領収証を渡した記憶があるとしており、本件修繕工事領収証に押印されている代表者印は、通常使用している代表者印と異なっており、9,800,000円という金額であれば、必ず通常使用する代表者印を押印するとしていることからすれば、請求人が主張するように、本件修繕工事領収証がVから渡されたものとは認められず、また、本件修繕工事領収証の代表者印の印影が本件修繕工事見積書のものと同一であることによって、本件修繕工事が行われたことを裏付けることにはならない。
 また、上記まる3の点については、当審判所としても、本件k物件を実地に検証して判断したものではないが、それをするまでもなく、請求人が本件修繕工事の費用を支払ったとは認められないのは、上記ニのとおりである。
 以上によれば、請求人の上記主張にはいずれも理由がない。

(5) 争点5(本件所得税各賦課決定処分及び平成21年課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分の基礎となる各税額の基となった各事実は、通則法第68条第1項又は第2項に規定する隠ぺい又は仮装に該当するか否か。)について

イ 法令解釈
 通則法第68条第1項及び第2項に規定する「事実を隠ぺいした」とは、課税標準等又は税額等の基礎となる事実を隠ぺいしあるいは故意に脱漏したことをいい、また、「事実を仮装した」とは、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装うなど、故意に事実をわい曲したことをいうと解される。
ロ 本件への当てはめ
 前記1の(4)のチによれば、請求人が、まる1Kに対し本件自宅を売却し、まる2Mに対し引越費用等3,500,000円を支払い、まる3Mに対し本件i物件の一部及び本件j物件を売却し、まる4U社又はVに対し本件修繕工事の費用を支払ったことを前提に、不動産業に係る経理処理がされており、当該経理処理に基づいて所得税及び消費税等の確定申告がされたと認められ、同ヌのとおり、本件所得税各賦課決定処分及び平成21年課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分は、上記まる1ないしまる4の各事実がいずれも通則法第68条第1項及び第2項に規定する仮装に基づくものであるとして、それぞれ行われているところ、上記(1)のハないしホ、上記(2)のニ及びホ、上記(3)のハ及びニ並びに上記(4)のハないしホのとおり、上記まる1ないしまる4の各事実はいずれも認められず、これらに係る請求人の主張にはいずれも理由がないのであるから、上記イによれば、当該経理処理の前提となった各事実は、いずれも故意にわい曲された事実というべきである。
 したがって、本件所得税各賦課決定処分及び平成21年課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分の基礎となる各税額の基となった各事実は、通則法第68条第1項又は第2項に規定する隠ぺい又は仮装に該当すると認められる。
ハ 請求人の主張について
 請求人は、前記3の(5)の「請求人」欄のとおり、Kに対して本件自宅を売却した事実、Mに引越費用等を支払った事実、Mに対して本件i物件の一部及び本件j物件を売却した事実及び本件修繕工事の費用の支払の事実は全てあること、また、仮に上記事実が認められなかった場合についても、隠ぺい又は仮装行為の認識はないことから、通則法第68条第1項又は第2項に規定する隠ぺい又は仮装の事実はない旨主張する。
 しかしながら、上記ロのとおりであるから、請求人の上記主張には理由がない。

(6) 争点6(原処分庁が採った、本件m物件、本件h物件及び本件k物件の売却に係る消費税等の課税売上高の算定方法は、合理的か否か。また、その算定結果は適正か否か。)について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件m物件の取得に係る不動産売買契約書並びに本件h物件及び本件k物件の取得に係る競売関係書類において、土地及び建物の金額は区分されておらず、本件m物件、本件h物件及び本件k物件の売却に係る不動産売買契約書においても、土地及び建物の金額は区分されていない。
(ロ) 本件m物件、本件h物件及び本件k物件の各売却に係る土地及び建物の価額について、原処分庁及び請求人の各主張額並びにそれぞれの算出過程は、別表5ないし7のとおりである。
ロ 原処分庁が採った、本件m物件、本件h物件及び本件k物件の売却に係る消費税等の課税売上高の算定方法は、合理的か否かについて
 上記イの(イ)によれば、本件m物件、本件h物件及び本件k物件の取得及び売却の際に、土地及び建物の金額は区分されていなかったと認められる。
 このような場合に、消費税法施行令第45条第3項は、事業者が課税資産と非課税資産とを同一の者に対して同時に譲渡した場合の対価の額が、課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないときは、当該課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、これらの資産の譲渡の対価の額に、これらの資産の譲渡の時における当該課税資産の価額と当該非課税資産の価額との合計額のうちに当該課税資産の価額の占める割合を乗じて計算した金額とする旨規定していることからすれば、区分されていない対価の額を、課税資産の価額と非課税資産の価額にあん分する合理的な割合を算出することができれば、これにより、当該課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準を計算することは、同項に規定する計算方法の趣旨を逸脱することにはならない。そこで、原処分庁が採った本件m物件、本件h物件及び本件k物件の売却に係る消費税等の課税売上高の算定方法についてみると、別表5ないし7の原処分庁主張額のとおり、本件m物件、本件h物件及び本件k物件の土地及び建物の取得時の固定資産税評価額に基づくあん分割合を求めた上で、それぞれの取得時の各価額、並びにその取得後に支出した費用で土地及び建物の売却に係る原価を構成すると認められる費用について、土地及び建物に共通するものは当該あん分割合に基づき土地及び建物の価額にあん分し、土地又は建物のそれぞれ固有のものは土地又は建物の価額として、本件m物件、本件h物件及び本件k物件の土地及び建物の売却に係る土地及び建物の原価の額を算出している。そして、当該原価の額に基づくあん分割合を求め、このあん分割合に基づいて、本件m物件、本件h物件及び本件k物件の売却に係る土地及び建物の価額を算出し、当該建物の価額を消費税等の課税売上高としており、上記の同項の規定の趣旨に照らし、このような算定方法に格別不合理とするべきところは認められない。
 他方、別表5ないし7の請求人主張額のとおり、請求人が主張する本件m物件の売却に係る土地及び建物の価額の算定方法は、平成20年度の固定資産税評価額とその後のリフォーム代金等を加えて建物の売却に係る価額とした上で、売却に係る土地の価額は土地及び建物の売却金額から上記売却に係る建物の価額を差し引いた残額とし、本件h物件の売却に係る土地及び建物の価額の算定方法は、本件未登記建物の売買代金とその後のリフォーム代金等を加えて売却に係る建物の価額とした上で、売却に係る土地の価額は土地及び建物の売却金額から上記売却に係る建物の価額を差し引いた残額としており、上記の消費税法施行令第45条第3項の規定に照らし、合理的な算定方法とはいえない。また、本件k物件の売却に係る土地及び建物の価額の算定方法は、土地及び建物の平成21年度の固定資産税評価額に基づくあん分割合で算定しているところ、原処分庁は、本件k物件に係る取得対価とその後のリフォーム代金等を含めた本件k物件の売却に係る土地及び建物の原価の額に基づき、本件k物件の売却金額に係る土地及び建物の価額を算定していることからすれば、請求人が主張する方法よりも、原処分庁が採った方法のほうが、本件k物件の売却時における土地及び建物のそれぞれの価額をより精緻に算定したものということができる。
 以上によれば、当審判所としては、原処分庁が採った、本件m物件、本件h物件及び本件k物件の売却に係る消費税等の課税売上高の算定方法が合理的な区分による算定方法であると認められる。
ハ その算定結果は適正か否かについて
 上記ロのとおり、当審判所として、原処分庁が採った本件m物件、本件h物件及び本件k物件の売却に係る消費税等の課税売上高の算定方法による算定結果が適正であるか否かについてみると、本件m物件は、別表5の原処分庁主張額のとおり、平成20年度の固定資産税評価額に基づいて、取得時の土地・建物購入代金、仲介手数料、所有権移転登記費用、登録免許税の土地及び建物へのあん分計算がされているが、前記1の(4)のトのとおり、本件m物件の取得時期は平成19年5月10日であるから、平成19年度の固定資産税評価額に基づいて算定するのが相当である。
 また、本件h物件は、別表6の原処分庁主張額の「本件未登記建物売買代金」欄のとおり、土地及び建物の価額に振り分けられているが、建物の価額に振り分けるのが相当であり、また、同「解体」欄及び「片付け」欄のとおり、当該各欄の金額をいずれも建物の価額に振り分けられているが、土地の価額に振り分けるのが相当である。
 そして、本件m物件は別表5の原処分庁主張額の(1)のまる5ないしまる7、本件h物件は別表6の原処分庁主張額の(1)のまる4及びまる9並びに本件k物件は別表7の原処分庁主張額の(1)のまる4及びまる5記載の各金額には、いずれも振込手数料が加算されていない誤りが認められる。
 以上に基づき、改めて本件m物件、本件h物件及び本件k物件の売却に係る消費税等の課税売上高を算定すると、別表8ないし10の各売却に係る土地及び建物の価額の「建物」欄のとおり、本件m物件が5,012,935円、本件h物件が5,971,393円、本件k物件が7,495,423円である。
ニ 当事者双方の主張額について
 上記ハのとおりであるから、これに反する原処分庁及び請求人の主張額を採用することはできない。

(7) 本件所得税各更正処分の適法性

イ 事業所得の金額
 本件各年分の事業所得の金額は、次の(イ)から(ロ)及び(ハ)を控除した金額となり、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円である。
(イ) 総収入金額
 上記(1)のニ及び上記(3)のハのとおり、本件自宅並びに本件i物件の一部及び本件j物件は、いずれも売却したとは認められないから、平成19年分について2,931,151円、平成20年分について3,000,000円が、それぞれ当該年分の総収入金額から減算され、上記以外の別表3の1ないし3の「総収入金額」欄の各金額を本件各年分の総収入金額(確定申告額)に加減算することはいずれも相当であると認められることに加え、原処分庁が請求人から提示された帳簿等に基づき平成21年分の総収入金額を算定すると、確定申告額が110,617円過大となっているにも関わらず、これが減算されていない。そして、請求人が平成19年分の総収入金額に算入したe市s町の土地の売却金額5,215,364円は、未経過固定資産税相当額16,204円を含んでおらず、当該売却代金5,500,000円から相殺された仲介手数料236,250円、広告料63,750円及び振込手数料840円を除いた金額であるから、5,516,204円で計上するべきであり、その差額300,840円が平成19年分の総収入金額(確定申告額)に加算される。
 以上に基づき、本件各年分の総収入金額を改めて算定すると、別表11の1の「審判所認定額」欄のとおり、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円となる。
(ロ) 必要経費の額
 上記(1)のニのとおり、本件自宅を売却したとは認められないから、平成19年分の仕入金額から11,315,020円が減算されること、上記(2)のニのとおり、引越費用等を支払ったとは認められないから、平成19年分の仕入金額並びに平成19年期末商品棚卸高及び平成20年期首商品棚卸高からそれぞれ3,500,000円が減算される。そして、上記(3)のハのとおり、本件i物件の一部及び本件j物件は売却したとは認められないから、当該各物件の取得費11,700,500円が平成20年分以降の期末商品棚卸高にそれぞれ加算され、上記(4)のニのとおり、本件修繕工事の費用を支払ったとは認められないから、平成21年分の外注費の金額から9,800,000円が減算される。また、上記(イ)のe市s町の土地の売却金額から相殺された300,840円が平成19年分の必要経費の額に加算され、上記以外の別表3の「必要経費の額」欄の各金額を本件各年分の必要経費の額(確定申告額)に加減算することはいずれも相当であると認められる。
 以上に基づき、本件各年分の必要経費の額を改めて算定すると、別表11の2の「審判所認定額」欄のとおり、平成19年分が24,817,090円、平成20年分が38,925,204円、平成21年分が34,599,005円となる。
(ハ) 青色申告特別控除額
 本件各年分の青色申告特別控除額は、平成19年分及び平成21年分は、租税特別措置法第25条の2《青色申告特別控除》第5項の規定により、平成19年分が○○○○円及び平成21年分が○○○○円となるが、平成20年分については、同条第1項の規定により100,000円となる。
ロ 不動産所得の金額
 本件各年分の不動産所得の金額は、いずれも確定申告額のとおりである。
ハ 雑所得の金額
 請求人が受け取った還付加算金は雑所得に該当し、雑所得の金額は、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円である。
ニ 総所得金額
 本件各年分の総所得金額は、上記イないしハの合計額となり、別表12の「総所得金額」欄のとおり、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円である。
ホ 所得控除額
 本件各年分の所得控除のうち社会保険料控除の額は、平成19年中に請求人が支払った国民健康保険料○○○○円及び国民年金保険料○○○○円の合計額○○○○円、平成21年中に請求人が支払った国民健康保険料○○○○円であり、その他の所得控除額は確定申告額のとおりであるから、所得控除額はこれらの合計額となり、別表12の「所得控除額の合計額」欄のとおり、平成19年分が626,400円、平成20年分が430,000円、平成21年分が466,596円である。
ヘ 源泉徴収税額
 本件各年分の源泉徴収税額は、平成19年分及び平成20年分が確定申告額のとおりであり、平成21年分が、別表3の3の「総収入金額」欄のまる2の金額に係る源泉徴収税額26,395円が確定申告額に加算されるから、別表12の「源泉徴収税額」欄のとおり、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円となる。
ト 納付すべき税額又は還付金の額に相当する税額
 上記ニからホを控除した課税総所得金額(1,000円未満切捨て)及び上記ヘの源泉徴収税額に基づき、本件各年分の納付すべき税額(100円未満切捨て)又は還付金の額に相当する税額を算定すると、別表12の「納付すべき税額」欄のとおり、還付金の額に相当する税額として、平成19年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円であり、納付すべき税額として、平成20年分が○○○○円である。
チ 結論
 上記トのとおり、還付金の額に相当する税額として、平成19年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円であり、納付すべき税額として、平成20年分が○○○○円であり、平成19年分及び平成20年分の各税額は、本件所得税各更正処分のうち平成19年分及び平成20年分の各更正処分の各税額と同額であるから、当該各更正処分は適法であるが、平成21年分の還付金の額に相当する税額は、本件所得税各更正処分のうち平成21年分の更正処分の税額を上回るから、当該更正処分はその一部が取り消されるべきである。

(8) 本件所得税各賦課決定処分の適法性

 上記(5)のロ及びハのとおり、本件所得税各賦課決定処分の基礎となる税額の基となった事実は、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当すると認められるところ、上記(7)のチのとおり、本件所得税各更正処分のうち平成19年分及び平成20年分の各更正処分は適法であるから、本件所得税各賦課決定処分のうち当該各年分の各賦課決定処分は適法であるが、本件所得税各更正処分のうち平成21年分の更正処分は、その一部が取り消されるべきであるから、これに基づき、同年分の重加算税の基礎となる税額及び重加算税の額を改めて算定すると、○○○○円及び○○○○円となり、平成21年分の重加算税の賦課決定処分の額を下回るので、本件所得税各賦課決定処分のうち当該賦課決定処分は、その一部が取り消されるべきである。

(9) 本件消費税等各更正処分の適法性

イ 課税標準額
 上記(7)のイの(イ)のとおり、平成19年分について本件自宅の建物部分310,220円(別表4では1のまる1の金額)、平成20年分について本件i物件の一部及び本件j物件の売却金額3,000,000円(同表では2のまる1の金額)、平成21年分について110,617円が、それぞれ事業所得に係る総収入金額から減算され、本件i物件の一部及び本件j物件は土地であり非課税取引であるものの課税売上高(確定申告額)に算入されているから、上記の各金額は、所得税と同様に、本件各課税期間の課税売上高からそれぞれ減算され、請求人が平成19年分の総収入金額に算入したe市s町の土地の売却金額5,215,364円は非課税取引であるから、平成19年課税期間の課税売上高には影響しないところ、請求人は、平成19年分の総収入金額に算入したe市s町の土地の売却金額5,215,364円を資産の譲渡等の対価とし、非課税取引に係る対価を5,500,000円として、平成19年課税期間の課税売上高を算定しているから、その差額284,636円が課税売上高に加算される。そして、上記以外の別表4の1ないし3の「課税売上高」欄の各金額は、同表の2のまる5の金額及び同表の3のまる3の金額を除き、課税売上高に加減算することが相当であると認められ、同表の2のまる5の金額及び同表の3のまる3の金額は、本件m物件、本件h物件及び本件k物件の未経過固定資産税相当額であるところ、前記1の(4)のニの(ロ)、ヘ及びトのとおり、別表8ないし10の(2)のまる1の各金額には未経過固定資産税相当額を含めて、売却に係る土地及び建物の価額を算定したことから、改めて課税売上高に加算する必要はない。また、別表3の2のまる4の金額7,774円は、預金利息であり非課税取引に係る対価であるが、請求人はこれを平成20年課税期間の課税売上高に算入しているから、いずれからも減算される。さらに、本件m物件及び本件h物件の平成20年課税期間の課税売上高は、別表8及び9の(2)のまる1の各金額(未経過固定資産税相当額を含む金額)に基づいて算定された建物の価額5,012,935円及び5,971,393円となるが、請求人は、別表5の2のまる8の金額8,718,824円及び別表6の2のまる11の金額7,485,050円に非課税売上額として138,800円及び213,000円を加算した上で、未経過固定資産税相当額を除く本件m物件及び本件h物件の各売却金額から減算して、建物の価額を算定し確定申告をしていると認められ、これらの非課税売上額を土地の価額に加算するのは相当でなく、建物の価額には上記のとおり不足額があるから、これらの合計額(本件m物件は1,470,559円、本件h物件は2,369,443円)が加算され、本件k物件の平成21年課税期間の課税売上高は、別表10の(2)のまる4の「建物」欄の金額7,495,423円であるところ、請求人は、これを別表7の2のまる4の「建物」欄の金額5,295,154円として確定申告をしているで、その差額2,200,269円が加算されることとなる。
 以上に基づき、本件各課税期間の課税売上高を改めて算定すると、別表13の1の「審判所認定額」欄のとおり、平成19年課税期間が○○○○円、平成20年課税期間が○○○○円、平成21年課税期間が○○○○円となり、課税標準額(1,000円未満切捨て)は、別表14の「課税標準額」欄のとおりである。
ロ 控除対象仕入税額
(イ) 課税売上割合
 請求人は一括比例配分方式を適用しているので、控除対象仕入税額の計算に当たって、課税売上割合を算定することとなるが、本件各課税期間の資産の譲渡等の対価の額は、本件各年分の事業所得に係る総収入金額と同額であり、上記(7)のイの(イ)のとおり、平成19年課税期間が○○○○円、平成20年課税期間が○○○○円、平成21年課税期間が○○○○円である。
 また、本件各課税期間の非課税売上高は、上記資産の譲渡等の対価の額から上記イの課税売上高を差し引いた額となり、平成19年課税期間が5,516,204円、平成20年課税期間が19,721,542円、平成21年課税期間が8,654,977円である。
 これらの金額は、平成19年課税期間がe市s町の土地売却価額5,500,000円に未経過固定資産税相当額16,204円を加算した5,516,204円であり、平成20年課税期間が本件m物件の売却に係る土地の価額7,433,630円、本件h物件の売却に係る土地の価額5,345,412円、e市t町○丁目の売却に係る土地の価額6,942,500円の合計額19,721,542円、平成21年課税期間が本件k物件の売却に係る土地の価額8,379,577円、請求人が非課税売上げとした○県等からの振込金額275,400円の合計8,654,977円と一致する。
 そして、本件各課税期間の課税資産の譲渡等の対価の額は、上記イの課税売上高に105分の100を乗じた金額であり、平成19年課税期間が○○○○円、平成20年課税期間が○○○○円、平成21年課税期間が○○○○円となる。
 これらに基づいて、本件各課税期間の課税売上割合を改めて算定すると、平成19年課税期間が○○○○(上記の○○○○円及び5,516,204円の合計額)分の○○○○、平成20年課税期間が○○○○(上記の○○○○円及び19,721,542円の合計額)分の○○○○、平成21年課税期間が○○○○(上記の○○○○円及び8,654,977円の合計額)分の○○○○となる。
(ロ) 課税仕入れに係る支払対価の額
A 上記(7)のイの(ロ)のとおり、平成19年分について、本件自宅の建物部分の仕入金額1,315,020円(別表4では1のまる4の金額)及び引越費用等3,500,000円(同表では1のまる5の金額)、平成21年分について外注費9,800,000円(同表では3のまる7の金額)が、いずれも必要経費の額から減算されるから、これと同様に、平成19年課税期間及び平成21年課税期間の課税仕入れに係る各支払対価の額(確定申告額)からそれぞれ減算され、平成19年分の必要経費の額に加算されるe市s町の土地の売却金額から相殺された300,840円は、請求人の帳簿に記載されていないため、消費税法第30条第7項及び第8項の規定により、課税仕入に係る支払対価の額に算入することはできない。
B 平成19年課税期間における本件m物件の課税仕入れに係る支払対価の額は、別表8の(1)の「土地・建物購入代金」欄の「建物」欄の金額1,177,581円、「仲介手数料」欄の「支払金額」欄の金額150,000円、「所有権移転登記費用」欄の「支払金額」欄の金額49,350円、「シロアリ駆除」欄の「支払金額」欄の138,232円及び「リフォーム」欄の「支払金額」欄の1,129,200円の合計額2,644,363円となるが、請求人はこれを3,178,343円として確定申告をしており、その差額533,980円が過大となっている。また、当該課税期間の本件h物件の課税仕入れに係る支払対価の額は、別表9の(1)の「土地・建物購入代金」欄の「建物」欄の金額17,233円及び「本件未登記建物売買代金」欄の「支払金額」欄の金額1,000,000円、「シロアリ駆除」欄の「支払金額」欄の74,550円、「塗装」欄の「支払金額」欄の400,000円、「解体」欄の「支払金額」欄の900,000円及び「リフォーム」欄の「支払金額」欄の1,950,000円の合計額4,341,783円となるが、請求人はこれを引越費用等3,500,000円を含め8,911,165円として確定申告をしており、その差額1,069,382円(引越費用等3,500,000円を除く。)が過大となっている。
C 平成20年課税期間における本件k物件の課税仕入れに係る支払対価の額は、別表10の(1)の「土地・建物購入代金」欄の「建物」欄の金額3,510,054円及び「立退費用」欄の「支払金額」欄の金額300,000円及び「リフォーム」欄ないし「電灯」欄の「支払金額」欄の各金額の合計額5,619,724円となるが、請求人はこれを5,045,722円として確定申告をしており、その差額574,002円が過少となっている。また、当該課税期間においてe市u町○丁目及びe市t町○丁目の各土地取得に伴い司法書士に支払った報酬15,140円及び25,360円が課税仕入れに係る支払対価の額に算入されていない。
D そして、上記AないしC以外の別表4の1ないし3の「課税仕入れに係る支払対価の額」欄の各金額は、同表の2のまる6及びまる9の各金額を除き、本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額(確定申告額)に加減算することが相当であると認められ、同表の2のまる6及びまる9の各金額は、前記1の(4)のヘ及び別表10の(1)のまる2のとおり、本件k物件の土地及び建物の原価の額に含めて算定したことから、改めて加算する必要はない。
E 以上に基づき、本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額を改めて算定すると、別表13の2の「審判所認定額」欄のとおり、平成19年課税期間が14,374,888円、平成20年課税期間が14,595,821円、平成21年課税期間が14,438,015円となる。
(ハ) 本件各課税期間の控除対象仕入税額は、上記(ロ)のEの本件各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に105分の4を乗じた金額(平成19年課税期間が547,614円、平成20年課税期間が556,031円、平成21年課税期間が550,019円である。)に、上記(イ)の課税売上割合を乗じた額となり、別表14の「控除対象仕入税額」欄のとおり、平成19年課税期間が453,584円、平成20年課税期間が321,862円、平成21年課税期間が440,381円である。
ハ 貸倒れに係る税額
 平成20年課税期間の貸倒れに係る税額は、請求人の確定申告額のとおりである。
ニ 納付すべき消費税等の額
 上記イないしハに基づき、本件各課税期間の納付すべき消費税等の額を算定すると、その金額は、別表14の「納付すべき消費税等の額」欄のとおり、平成19年課税期間が○○○○円、平成20年課税期間が○○○○円、平成21年課税期間が○○○○円となる。
ホ 結論
 上記ニのとおり、本件各課税期間の納付すべき消費税等の額は、平成19年課税期間が○○○○円、平成20年課税期間が○○○○円、平成21年課税期間が○○○○円となり、いずれも本件各課税期間の各更正処分の額を下回るから、本件消費税等各更正処分は、いずれもその一部が取り消されるべきである。

(10) 本件消費税等各賦課決定処分の適法性

イ 平成19年課税期間
 上記(9)のホのとおり、平成19年課税期間の更正処分はその一部が取り消されるべきであり、これに基づき過少申告加算税の基礎となる税額を改めて算定すると○○○○円となるが、平成23年10月4日付の異議決定で、別表2の「平成19年課税期間」欄の「過少申告加算税の額」欄のとおり、異議審理庁は、過少申告加算税の額を○○○○円と算定しており、過少申告加算税の基礎となる税額を○○○○円としているので、これを増額することは許されず、結果的に賦課決定処分の額と同額となり、当該税額の計算の基礎となった事実のうちに通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」に該当するものがあるとは認められない。
 したがって、本件消費税等各賦課決定処分のうち平成19年課税期間の過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。
ロ 平成21年課税期間
 通則法第68条第2項の規定によれば、同項の重加算税は同法第66条第1項に規定する無申告加算税に代えて賦課されるものであり、無申告加算税が同項ただし書に規定する「正当な理由」によって賦課されない場合には、同法第68条第2項に規定する重加算税が賦課されることはないところ、上記(9)のホのとおり、平成21年課税期間の更正処分はその一部が取り消されるべきであり、これに基づき加算税の基礎となる税額を改めて算定すると、○○○○円となる。
 ところで、平成23年10月4日付の異議決定で、別表2の「平成21年課税期間」欄の「無申告加算税の額」欄のとおり、異議審理庁は、無申告加算税の額を零円に変更しており、当審判所の調査の結果によれば、その理由として、通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」に基づく税額○○○○円(請求人が確定申告をする際に記載しなかった中間納付税額○○○○円と100円未満の端数部分の納付税額75円の合計額)があると認められ、上記のとおり、一部取り消された後の平成21年課税期間の更正処分に基づく加算税の基礎となる税額は○○○○円であるから、上記の同項ただし書に規定する「正当な理由」に基づく税額を超えておらず、これに対し無申告加算税を賦課することはできない。
 したがって、上記(5)のロのとおり、平成21年課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分の基礎となる税額の基となった事実は、通則法第68条第2項に規定する隠ぺい又は仮装に該当すると認められるものの、これに対し、重加算税を賦課することはできないから、本件消費税等各賦課決定処分のうち、平成21年課税期間の重加算税の賦課決定処分は、その全部が取り消されるべきである。

(11) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所の調査によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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