(平成24年10月12日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、固定資産課税台帳(以下「課税台帳」という。)に価格が登録されていない土地を取得した審査請求人(以下「請求人」という。)が、当該土地の所有権移転の登記の際に納付した登録免許税の額が過大であるとして行った還付請求について、原処分庁が、登録免許税の過誤納の事実は認められないとして還付通知をすべき理由がない旨の通知処分を行ったのに対し、請求人が、同処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成23年2月22日、農地法等の一部を改正する法律(平成21年法律第57号)附則第8条《買収した土地等の管理及び売払いに関する経過措置》の規定に基づく改正前の農地法第80条《売払》第2項の規定により、国(J省)から次表の土地(以下「本件土地」という。)の売払いを受け、同日、登録免許税○○○○円を国に納付した。

所在・地番 地積
d市e町○-○ 933平方メートル

ロ J省は、平成23年3月2日、本件土地について、上記イの売払いを原因とする所有権移転の登記をG地方法務局c出張所に嘱託し、請求人は、同日、本件土地について、上記内容の所有権移転の登記(以下「本件登記」という。)を受けた。
ハ 請求人は、平成23年9月9日付で、原処分庁に対し、本件登記に係る登録免許税の課税標準の額は○○○○円又は○○○○円、税額は○○○○円又は○○○○円であり、登録免許税の過誤納があるとして、登録免許税法(平成23年法律第57号による改正前のもの。以下同じ。)第31条《過誤納金の還付等》第2項の規定に基づき、同条第1項に規定する登録免許税の還付通知をすべき旨の請求をし、当該請求に係る請求書は同月12日に到達した。
ニ 原処分庁は、平成23年9月16日付で、請求人に対し、登録免許税の過誤納の事実は認められないとして、還付通知をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をし、請求人は、同月17日に本件通知処分に係る通知書の送達を受けた。
ホ 請求人は、平成23年10月26日、本件通知処分の全部を不服として、審査請求をした。
ヘ なお、平成24年4月1日付人事異動により、原処分庁であるG地方法務局c出張所登記官は、KからHに変更された。

(3) 関係法令等の要旨

 別紙1のとおり。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがないか、証拠上容易に認められるものである。
イ 本件土地は、国有地であり地方税法第348条《固定資産税の非課税の範囲》第1項に該当し、固定資産税が非課税の土地であったため、本件登記の嘱託の日である平成23年3月2日現在、課税台帳に登録された価格(以下「台帳登録価格」という。)のない土地であった。
ロ 上記(2)のイの本件土地の売払いに際し請求人への売却価格を決定するに当たり、L局長が依頼した民間精通者による本件土地の評価額(平成22年7月20日現在)は、○○○○円であった(以下、当該評価額を「本件精通者評価額」という。)。
 請求人は、本件精通者評価額の7割に相当する○○○○円で本件土地の売払いを受けた。
ハ L局長は、G地方法務局c出張所に本件土地の所有権移転の登記を嘱託するに当たり、あらかじめ同出張所の登記官へ相談し、その結果を踏まえて、次表の土地(以下「本件f土地」という。)を登録免許税法施行令附則第3項に規定する台帳登録価格のない不動産に類似する不動産で台帳登録価格のあるもの(以下「台帳登録価格のない不動産に類似する不動産」という。)として選定した上、別表1のとおり、本件f土地の平成22年度の台帳登録価格(固定資産税評価額)を基礎として、本件土地の価額を○○○○円、課税標準の額を○○○○円と算定した上で、請求人に対して、本件土地の所有権移転の登記に必要な登録免許税として○○○○円の納付を求め、請求人は、上記(2)のイのとおり、平成23年2月22日、上記登録免許税額を納付した。

所在・地番 地積
d市f町○-○ 129平方メートル

ニ J省は、平成23年3月2日、要旨次表の本件登記に係る登記嘱託書(以下「本件登記嘱託書」という。)に上記ハの登録免許税の納付に係る領収証書を貼付し、また、台帳登録価格のない不動産に類似する不動産の台帳登録価格の証明書として本件f土地の平成22年度土地課税台帳登録事項証明書を添付して、これらをG地方法務局c出張所に提出した。

項目 記載内容
不動産の表示 本件土地
登記の目的 所有権移転
登記原因 平成23年2月22日農地法等の一部を改正する法律附則第8条の規定に基づく改正前の農地法第80条第2項による売払い
登記権利者 請求人
登記義務者 J省
登録免許税の課税標準の額 ○○○○円
登録免許税の額 ○○○○円

ホ 原処分庁は、平成23年3月2日、本件登記嘱託書を審査し、本件土地が台帳登録価格のない土地であったことから、登録免許税法施行令附則第3項の規定に基づき、本件f土地を台帳登録価格のない不動産に類似する不動産と認定した上で、本件f土地の平成22年度の台帳登録価格(固定資産税評価額)を基礎として、本件土地の価額、課税標準の額及び登録免許税の額を算定し、いずれも本件登記嘱託書に記載された額と同額と認定して、本件登記をした。

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2 争点

(1) 争点1

 本件f土地の台帳登録価格を基礎として、本件登記に係る登録免許税の課税標準の額を算定することの適否。

(2) 争点2

 本件精通者評価額をもって、本件登記に係る登録免許税の課税標準の額とすることの適否。

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3 主張

(1) 争点1について

イ 請求人
 本件土地の価額の算定につき、登録免許税法施行令附則第3項によるとしても、以下のとおり、原処分庁が認定した本件f土地は、台帳登録価格のない不動産に類似する不動産ということはできず、次表の土地(以下「本件e土地」という。)を台帳登録価格のない不動産に類似する不動産として選定すべきであり、本件土地の価額は、本件e土地の台帳登録価格(固定資産税評価額)を基礎として○○○○円と認定すべきである。

所在・地番 地積
d市e町○-○ 469平方メートル

(イ) 本件f土地は、以下の理由から、台帳登録価格のない不動産に類似する不動産とは認められない。
A 本件土地が所在するd市e町と本件f土地が所在するd市f町○丁目は、場所的な環境が異なり、相続税の路線価も大きく異なる。
B 本件土地は不整形な袋地であるのに対し、本件f土地は道路に面した正方形の土地であり、土地の形状、利便性が異なる。
C 本件土地のうち、g川側で境界を接する国有地との境界線から幅10メートルの部分は、河川法上の河川保全区域に指定され工作物の建築制限があるが、本件f土地には河川保全区域の指定がされていない。
D 本件土地は、g川の堤防との高低差によって視界が遮られているという特殊性がある。
E 本件土地の登記上の地目は畑であり、本件登記後に請求人からM社へ所有権移転の登記をするに際して、転用目的を駐車場として農地法の届出を行っているものの、現状では農地として利用できないとはいえず、直ちに現況地目を雑種地に変更することは不可能であるのに対し、本件f土地の現況地目は雑種地であり、土地の現状の違いが考慮されていない。
(ロ) 本件土地は、本件登記後、転用目的を駐車場として農地法の届出を行っている土地であるところ、本件e土地は、本件土地から約50メートル離れたところにあり、現在駐車場として利用されている雑種地であるから、本件e土地を台帳登録価格のない不動産に類似する不動産として選定すべきであり、本件e土地の平成22年度の台帳登録価格(固定資産税評価額)○○○○円を基礎として、本件e土地の1平方メートル当たりの台帳登録価格に本件土地の面積を乗じて本件土地の価額を算定すると○○○○円となるから、当該価額を登録免許税の課税標準となる本件土地の価額と認定すべきである。
ロ 原処分庁
 以下のとおり、本件土地の所有権移転登記に係る登録免許税について、原処分庁による課税標準たる不動産の価額(○○○○円)の認定は適法である。
(イ) 権利に関する登記についての登記官の審査権は形式的審査権であり、また、画一的に大量の登記申請を処理することから、登記官はそれらの土地の特性について逐一把握することは不可能であり、登記申請時における不動産の課税標準の額及び税額を認定するに当たり、その調査の程度、方法等については登記官の合理的な裁量に委ねられているというべきである。
 原処分庁は、J省の登記の嘱託に基づき、書類審査を適正に行い登記を実行したものであり、違法はない。
 なお、本件登記の嘱託者から原処分庁に対し、他に課税標準の額を認定する方法を採らなければならない特段の事情がある旨の申出もなかった。
(ロ) 本件土地は、都市計画法上の市街化区域内の用途地域が第一種住居地域内に所在するのに対し、本件e土地は、市街化調整区域内に所在し、本件土地の周辺の土地の台帳登録価格を勘案すると、その価格に著しく開きがあることから、本件e土地を台帳登録価格のない不動産に類似する不動産と認定することはできない。

(2) 争点2について

イ 請求人
 登録免許税の課税標準である本件土地の価額については、以下のとおり、本件精通者評価額である○○○○円と認定すべきである。
(イ) 登録免許税法附則第7条《不動産登記に係る不動産価額の特例》が、同法第10条《不動産の価額》第1項の課税標準たる不動産の価額は、当該不動産の台帳登録価格を基礎として政令で定める価額によることができる旨を、また、登録免許税法施行令附則第3項が、台帳登録価格のない不動産の場合に台帳登録価格のない不動産に類似する不動産の価額を基礎として認定できる旨を、それぞれ規定しているのは、個々の不動産の価額を逐一計算するのが不便であるため設けられた一種の便法にすぎないから、本件土地のように周辺に本件土地の時価と同水準の土地が見当たらない場合には、原則に戻り、同法第10条第1項の規定により、時価によって不動産の価額を算定すべきである。
(ロ) 本件土地のJ省による売払いに際し、L局長は、民間精通者の評価に基づき、本件土地の時価が○○○○円(本件精通者評価額)であることを前提として売却価格を算定している。
 したがって、本件土地の時価は○○○○円(本件精通者評価額)と認められるから、登録免許税の課税標準となる本件土地の価額も○○○○円(本件精通者評価額)と認定すべきである。
ロ 原処分庁
 登録免許税法附則第7条の規定が設けられた趣旨は、同法第10条第1項の規定において、いわゆる時価の判断基準の定めがなく、同法附則第7条の制定前における登記機関の不動産の価額の認定が台帳登録価格を基礎とするもの、相続税の評価額を基礎とするものなどその統一性を欠き、国民に課税の不公平感を生じさせていたことから、この点に対する配慮と、膨大な登記事件の適正かつ迅速な事務処理の観点から、不動産ごとにその評価額が定められている台帳登録価格を基礎として算定した価額を登録免許税の課税標準たる不動産の価額としたものである。
 そうであるとすれば、登録免許税法が、課税台帳に未登録の土地のみについて課税標準たる不動産の価額を時価によることとし、当該時価の算定を原処分庁に求めていると解することは、同法附則第7条を設けた趣旨に反するばかりか、台帳登録価格のある不動産とそうでない不動産の間で課税の均衡を失することになる。
 したがって、法令上、原処分庁に個別に時価を算定することが求められているとは認められないから、J省の登記の嘱託に当たり、原処分庁が台帳登録価格のない不動産に類似する不動産である本件f土地の台帳登録価格を基礎として本件土地の価額を求めたことに違法はない。

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4 判断

(1) 法令解釈

イ 不動産の登記の場合における登録免許税の課税標準たる不動産の価額については、登録免許税法第10条第1項で、当該登記の時における不動産の価額である旨規定され、当該登記の時における不動産の価額とは、当該登記の時における当該不動産の客観的交換価値、すなわち時価と解されるところ、同項の不動産の価額について、同法附則第7条は、当該課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該不動産の台帳登録価格を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定しており、これを受けた登録免許税法施行令附則第3項は、台帳登録価格のある不動産の場合は、台帳登録価格に100分の100を乗じて計算した金額に相当する価額とし、他方、台帳登録価格のない不動産の場合は、当該不動産の登記の申請の日(なお、本件では嘱託の日と読み替えることとなる。)において台帳登録価格のない不動産に類似する不動産の台帳登録価格を基礎として当該登記に係る登記機関が認定した価額とする旨規定している。
ロ このように、不動産の価額を台帳登録価格に基づいて求めることとしているのは、大量かつ回帰的に発生する不動産取引に関連して登録免許税を課税する場面において、登記の都度、登記官において個々の不動産の価額を評価することは実際的でないばかりか、評価が区々となるおそれがあることなどから、課税の公平及び納税者の便宜等を考慮したことによるものと解される。
 そして、台帳登録価格のない不動産について、これに類似する不動産の台帳登録価格を基礎としてその価額を認定することとしているのは、上記の登録免許税法附則第7条の趣旨を鑑みれば、台帳登録価格のある不動産と台帳登録価格のない不動産との間で不均衡が生じて課税の公平を欠くことがないようにするため、飽くまで台帳登録価格に依拠してその価額を求め、登録免許税の課税標準の額を決しようとする趣旨によるものと解される。
ハ そうすると、台帳登録価格のない不動産について登記機関が認定した価額が、「台帳登録価格のない不動産に類似する不動産の台帳登録価格を基礎として合理的に算定されたもの」であれば、当該認定に係る価額は、登録免許税の課税標準の額として適法であるというべきである。そして、台帳登録価格のない不動産に類似する不動産であると認められるかどうかは、不動産の所在地、間口、奥行き、形状、現況及び利用状況等の事情を総合比較して判断すべきであると解される。
ニ 一方、台帳登録価格のない不動産について類似する不動産が存在しない場合又は類似する不動産が把握できない場合には、他の方法により求めた登記の時の価額を課税標準たる不動産の価額(時価)とするものと解するのが相当と認められる。ただし、登録免許税における不動産の課税標準の額は、登録免許税法附則第7条及びこれを受けた登録免許税法施行令附則第3項に規定するとおり、不動産の台帳登録価格を基礎としているのであり、課税台帳には、固定資産評価基準(地方税法第388条《固定資産税に係る総務大臣の任務》第1項に規定する固定資産評価基準をいう。以下同じ。)によって決定された価格を登録するものとされていることからすると、台帳登録価格のない不動産について、固定資産評価基準によってその価額を算定し、その算定した価額が時価を上回らない限り、上記ハにいう「台帳登録価格のない不動産に類似する不動産の台帳登録価格を基礎として合理的に算定されたもの」と解するのも、上記ロで述べた、登録免許税の課税標準たる不動産の価額を台帳登録価格に基づいて求めることとしている理由にかなうものとして相当であると認められる。

(2) 認定事実

 原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件土地、本件f土地及び本件e土地の所在地並びに地積の状況等
 本件土地の所在地及び地積は上記1の(2)のイの表のとおり、本件f土地の所在地及び地積は上記1の(4)のハの表のとおり、本件e土地の所在地及び地積は上記3の(1)のイの表のとおりである。
 また、本件土地、本件f土地及び本件e土地の位置関係は、おおむね別紙2のとおりである。
ロ 本件土地、本件f土地及び本件e土地の形状等
 本件土地は、間口が著しく狭小(約0.74メートル)で、本件土地が僅かに接すると認められる道路から本件土地の最も遠い地点までの奥行距離が100メートルを超える三角形状の細長い不整形地である(別紙3のとおり)。
 本件f土地は、道路から約0.5メートルから約0.75メートル離れて位置する、道路に沿っての長さが約11.5メートル、奥行距離が約11メートル(道路からの奥行距離が約11.5メートルから約11.75メートル)のほぼ正方形の整形地である。
 本件e土地は、道路から約5メートルから約7.5メートル離れて位置する、道路に沿っての長さが約49メートル、最長の奥行距離が約19メートル(道路からの最長の奥行距離が約25メートル)の奥行きの短い三角形の不整形地である。
 なお、本件土地の周辺には、本件土地と形状、間口、奥行き及び接道状況等が類似する土地の存在は認められない。
ハ 本件土地、本件f土地及び本件e土地の現況並びに利用状況等
 本件土地は、市街化区域内の用途地域が第一種住居地域である区域に所在し、周辺の土地はアパートや戸建住宅が立ち並ぶ住宅地や駐車場として利用されている。
 本件土地については、本件登記の日である平成23年3月2日の時点において、登記上の地目は畑であったが、現況地目は雑種地であり、平成23年11月に当審判所が現況確認調査を行った時点においても、隣接地との境界や道路と接する状況の見分けがつかないほど雑草が繁茂した肥培管理のされていない耕作が放棄された状態であった。
 本件f土地は、市街化区域内の用途地域が商業地域である区域に所在し、本件登記の日である平成23年3月2日の時点において、N社の送電線用鉄塔の敷地として利用されていて、現況地目は雑種地であり、周辺の土地には商業ビル等が林立している。
 本件e土地は、h鉄道i線を挟んだ反対側の市街化調整区域内に所在し、駐車場として利用されており、周辺の土地は、駐車場又は農地として利用されている。
ニ d市長は、本件土地について近傍地比準方式(付近の他の地目の土地の価額に比準して、評価対象地の価額を求める方法をいう。以下同じ。)により、平成24年1月1日の台帳登録価格である平成24年度の固定資産税評価額を決定しているところ、当該評価額は別表2のとおり算定されている。

(3) 当てはめ

イ 争点1について
(イ) まず、本件f土地が、登録免許税法施行令附則第3項に規定されている、台帳登録価格のない本件土地に「類似する不動産」であると認められるか否かについて検討する。
(ロ) 確かに、本件f土地と本件土地はいずれも現況地目が雑種地ではあるが、本件f土地は市街化区域内の用途地域が商業地域の区域に所在し、その周辺の土地にはビル等が林立しているのに対し、本件土地は市街化区域内の用途地域が第一種住居地域の区域に所在し、その周辺の土地はアパートや戸建住宅が立ち並ぶ住宅地や駐車場として利用されており、土地の所在する用途地域の区分及び周辺の土地の状況は明らかに異なっている。
 また、本件f土地は道路から約0.5メートルから約0.75メートル離れて位置する、道路に沿っての長さが約11.5メートル、奥行距離が約11メートル(道路からの奥行距離が約11.5メートルから約11.75メートル)のほぼ正方形の整形地であるのに対し、本件土地は間口が著しく狭小(約0.74メートル)で、接する道路からの奥行距離が最も遠い地点で100メートルを超える三角形状の細長い不整形地であり、間口や奥行き、土地の形状が大きく異なっているし、さらに、本件f土地は、送電線用鉄塔の敷地として利用されている土地であるのに対し、本件土地は、雑草が繁茂した肥培管理のされていない耕作が放棄された土地であり、土地の利用状況も大きく異なっている。
 このような本件f土地と本件土地との相違点を踏まえると、本件f土地は台帳登録価格のない本件土地に「類似する不動産」であると認めることはできない。
 したがって、本件f土地の台帳登録価格を基礎として算定された本件土地の価額は、登録免許税法施行令附則第3項の規定に従って算定されたものということはできない。
(ハ) なお、請求人は、上記3の(1)のイの(ロ)のとおり、本件e土地を台帳登録価格のない不動産に類似する不動産として選定すべきである旨主張する。
 しかしながら、確かに、本件e土地と本件土地はいずれも現況地目が雑種地ではあるが、本件e土地は市街化調整区域内に所在し、その周辺の土地は農地や駐車場として利用されているのに対し、本件土地は市街化区域内の用途地域が第一種住居地域の区域に所在し、その周辺の土地はアパートや戸建住宅が立ち並ぶ住宅地や駐車場として利用されており、土地の所在する用途地域の区分及び周辺の土地の状況は明らかに異なっている。
 また、一般に、市街化調整区域内に所在する土地と市街化区域内に所在する土地とでは、単位面積当たりの固定資産税評価額に大きな開差があるから、市街化区域内に所在する土地の価額の決定に当たり、市街化調整区域内に所在する土地の台帳登録価格(固定資産税評価額)を基礎とした場合には、市街化区域内に所在する土地の価額は著しく低額に算定されることとなる。
 以上に照らすと、本件e土地は、台帳登録価格のない本件土地に「類似する不動産」であるとは認められず、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ロ 固定資産評価基準によって算定した本件土地の価額
(イ) 上記イの(ロ)及び(ハ)のとおり、本件土地の価額についての原処分庁の主張及び請求人の主張には、いずれも理由がない。また、当審判所において調査した結果によれば、上記(2)のロのとおり、本件土地の周辺には、本件土地と形状、間口、奥行き及び接道状況等が類似する土地が存在しない。このような場合、上記(1)のニのただし書のとおり、固定資産評価基準によってその価額を算定することも、その価額が時価を上回らない限りにおいて相当であると認められることから、請求人が主張する本件精通者評価額(争点2)について検討する前に、当審判所において固定資産評価基準によって本件土地の価額を算定すると次のとおりである。
(ロ) 固定資産評価基準では、土地評価上の地目は、現況の地目によるとしている(固定資産評価基準第1章第1節)。そして、市街化区域内の雑種地の評価については、売買実例地比準方式(売買実例地の売買価額から求めた正常価格に比準して、評価対象地の価額を求める方法)又は近傍地比準方式により求めるとしている(固定資産評価基準第2章第10節)。
(ハ) 本件土地は、本件登記の日において、上記(2)のハのとおり、市街化区域内に所在する現況雑種地であり、同ニのとおり、d市長は、平成24年度の本件土地の固定資産税評価額を近傍地比準方式により算定していることから、本件登記の時における本件土地の価額は、同方式により算定することが相当と認められる。
(ニ) そうすると、本件土地の価額は、具体的には、別表3のとおり、まる1別紙2のとおりの本件土地の接する路線の平成21年度(注:本件登記の嘱託の日の前年12月31日現在における台帳登録価格である平成22年度の固定資産税評価額に係る固定資産税の基準年度)の固定資産税の路線価を基として、固定資産評価基準及び本件土地の所在するd市の固定資産評価事務取扱要領(総則・土地編)に定める不整形地等の各種補正率等を適用して本件土地の価額を試算し、まる2その試算した本件土地の価額に、固定資産評価基準に定める基準年度における価格の修正及び地方税法(平成24年法律第69号による改正前のもの)附則第17条の2《平成22年度又は平成23年度における土地の価格の特例》第1項に規定する価格の修正を行うことにより求めるのが相当と認められるから、当審判所において、上記方法により本件土地の価額を算定すると、その額は、別表3の「(11)」欄のとおり、○○○○円となる。
ハ 争点2について
 請求人は、上記3の(2)のイのとおり、本件土地については、その周辺に本件土地の時価と同水準の土地が見当たらないから、台帳登録価格のない不動産に類似する不動産の台帳登録価格を基礎として本件土地の価額を認定することはできず、登録免許税法第10条第1項の規定により、登記の時における時価によるべきであって、具体的には、本件登記に係る登録免許税の課税標準の額は、上記1の(2)のイの本件土地の売払いに際してL局長が依頼した民間精通者による評価額(本件精通者評価額)とすべきである旨主張する。
 しかしながら、本件登記に係る登録免許税の課税標準の額たる本件土地の価額は、上記ロの(イ)のとおり、本件土地と類似する土地が存在しない場合にあっては、固定資産評価基準によって算定した価額が時価を上回らない限りにおいて、その価額は相当と認められるところ、上記ロの(ニ)のとおり、固定資産評価基準によって算定した本件土地の価額(○○○○円)は、仮に本件精通者評価額(○○○○円)が時価として相当と認められるとしても、本件精通者評価額を下回るものであること及び他に固定資産評価基準によって算定した価額が時価を上回ることを認めるに足る証拠もないことから、本件登記に係る登録免許税の課税標準の額たる本件土地の価額として相当なものと認められる。したがって、本件登記に係る登録免許税の課税標準の額は、固定資産評価基準によって算定した本件土地の価額とするのが相当であるから、請求人の主張を採用することはできない。

(4) 本件通知処分について

 本件土地の価額は、上記(3)のロの(ニ)のとおり、○○○○円(別表3の「(11)」欄の額)となることから、これにより本件登記に係る登録免許税の課税標準の額及び登録免許税の額を計算すると、その額は、それぞれ別表3の「(12)」欄及び「(13)」欄のとおり、課税標準の額は○○○○円、登録免許税の額は○○○○円となる。
 そうすると、請求人が既に納付した○○○○円と上記○○○○円との差額○○○○円は過大に納付されたことになるので、本件通知処分のうち、課税標準の額○○○○円及び登録免許税の額○○○○円を超える部分を取り消すべきである。

(5) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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