(平成25年3月1日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が自己を営業者とする匿名組合契約に基づく利益の分配の額の計算上当該匿名組合契約に係る事業の収益の額から控除した事業の損失の額等について、原処分庁が、当該損失の額は当該匿名組合契約とは別の匿名組合契約に係るものであり当該収益の額から控除することはできないなどとして、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分等を行ったのに対し、請求人が、同処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 原処分庁は、平成23年11月28日付で、別表1のとおり、源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)の納税告知処分(以下「本件納税告知処分」という。)及び不納付加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ロ 請求人は、これらの処分を不服として、平成24年1月25日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成24年4月25日付で棄却の異議決定をした。
ハ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成24年5月24日に審査請求をした。

(3) 関係法令の要旨

イ 所得税法第210条《源泉徴収義務》は、居住者に対し国内において匿名組合契約に基づく利益の分配につき支払をする者は、その支払の際、その利益の分配について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない旨規定している。
ロ 商法第538条《利益の配当の制限》は、出資が損失によって減少したときは、その損失を填補した後でなければ、匿名組合員は、利益の配当を請求することができない旨規定している。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、平成9年9月○日に、代表者をFとしてH社の商号で設立され、平成16年7月10日にJ社に組織変更し、平成18年9月1日に現在の商号に変更した。
 また、請求人は、平成18年12月26日付で、Fが代表者であったK社との間で、同月31日をもってK社が行う営業の全部を請求人が譲り受ける旨の営業譲渡契約を締結し、その後、平成20年4月○日に、請求人を存続会社としてK社を吸収合併した。
ロ K社は、平成16年12月頃、L、M及びN(以下、これらを併せて「Lら」という。)との間で、K社を営業者、Lら各人を匿名組合員とする匿名組合契約(以下、各匿名組合契約を「平成17年各K匿名組合契約」という。)をそれぞれ締結し、要旨次の内容が記載された契約書をそれぞれ取り交わした。
 なお、各契約書の内容は、基本的にはLら各人とも同様であるので、Lら各人により相違する部分のみ、当該各人の名を付して当該内容を記載した。
(イ) 本契約の当事者は、商法(この項においては平成17年法律第87号による改正前のものをいい、この項以外においては現行法をいう。)第535条から第542条までの規定に基づき、かつ、これに従って本契約により匿名組合を結成することに合意する。匿名組合員は、後記(ハ)の事業につき、営業者に対し出資することを約し、営業者は、本契約に従って、同事業から生じる利益を匿名組合員に配分することを約束するものとする(第1条)。
(ロ) 後記(ハ)の事業は、営業者であるK社の名の下で運営されるものとする(第2条第1項)。
(ハ) 匿名組合は、K社の情報収集力、相場分析力を基に主要通貨の外国為替取引を主体として行い、資金運用事業を営むことを目的とする。外国為替取引以外に、金先物、日経平均先物及びアメリカS&P株式先物の各取引を行う場合もある(第2条第2項)。
(ニ) 匿名組合は、上記(ハ)の事業を、平成17年1月1日から開始し、同年12月31日に終了するものとする(第4条第1項)。
(ホ) 本契約に従った匿名組合の終了に伴い、営業者は、当該終了の日付で上記(ハ)の事業の会計年度を終結し、当該会計年度についての報告書が配付される時までに、匿名組合員にその出資金及び当該会計年度の匿名組合員の損益分配金の残額を含む残額を送金するものとする。なお、報告書は、当該会計年度の日から20営業日以内に配付されるものとする(第4条第2項)。
(ヘ) 匿名組合員の上記(ハ)の事業に対する出資金は16,460,743円(Lの出資金の額であり、Mは18,251,487円及びNは7,500,000円である。)とする(第5条第2項)。
(ト) 匿名組合員に配分された損失累計額が出資金の額を超過する場合であっても、匿名組合員は、出資金の額を超えていかなる責任も負わない(第6条前段)。
(チ) 匿名組合員の損失の上限は、年間、出資金の額の25%とし、損失が25%に達した時点で、本契約は自動的に解約されるものとする(第6条後段)。
(リ) 上記(ハ)の事業の純利益及び純損失の分配は、営業者と匿名組合員との間で、以下のように定めるものとする(第9条第1項)。
A 純利益及び純損失の分配は、匿名組合員の出資比率により比例的に決定する。
B 利益は、匿名組合員が70%、営業者が30%(ただし、Mとの契約においては、匿名組合員が75%、営業者が25%)を取得するものとする。
C 損失は、匿名組合員が出資比率に応じて比例的に負担するものとし、その上限は、年間、出資金の額の25%とする。
(ヌ) 営業者は、会計年度の終了後20営業日以内に、各会計年度の全ての純利益及び純損失の分配を行うものとする(第9条第2項)。
(ル) 年間管理費は、出資金の額の2%、出資金20,000,000円以上は1.5%とし、匿名組合員は、出資金とは別に営業者に支払うものとする(第10条)。
(ヲ) 営業者も匿名組合員も、本契約を譲渡すること、又はその他の方法により上記(ハ)の事業に関する各自の権益を売却、譲渡、移転その他処分する権利を有しないものとする。吸収合併、新設合併、清算又は類似の事項の結果としての法の実施による移転は可能とするが、当事者が書面によりその旨の通知を受領するまで、かかる移転は効力を有しないものとする(第13条)。
(ワ) 翌年度への繰越継続出資については、当該年11月末日までに年度末解約の書面若しくは電子メールによる通知がない場合、自動的に継続されるものとする(第19条)。
(カ) 中途解約は、上記(ハ)の事業が25%の損失を発生させた場合を除き、原則として認められないものとする。これに違反する場合は、匿名組合員は、違約金として出資金の額の2%を支払うものとする。匿名組合員は、各四半期末の10営業日以前に営業者に中途解約を通知するものとし、出金は、当該四半期末から10営業日以内に行うものとする(第20条)。
ハ K社は、平成18年1月1日付で、Lら各人との間で、K社を営業者、Lら各人を匿名組合員とする匿名組合契約(以下、各匿名組合契約を「平成18年各K匿名組合契約」といい、平成17年各K匿名組合契約と併せて「本件各K匿名組合契約」という。)をそれぞれ締結し、平成18年各K匿名組合契約に係る契約書をそれぞれ取り交わした。
 なお、各契約書の内容は、要旨次の(イ)ないし(ニ)の部分を除き、上記ロの平成17年各K匿名組合契約に係る各契約書の内容と同様であった。また、当該各契約書の内容は、基本的にはLら各人とも同様であるので、Lら各人により相違する部分のみ、当該各人の名を付して当該内容を記載した。
(イ) K社は、香港在籍のR社に組合員の投資額全てを運用委託するものとする(第2条第2項)。
(ロ) 匿名組合は、R社の情報収集力、相場分析力を基に主要通貨の外国為替取引を主体として行い、資金運用事業を営むことを目的とする。外国為替取引以外に、金先物取引を行う場合もある(第2条第3項)。
(ハ) 匿名組合は、上記(ロ)の事業を、平成18年1月1日から開始し、同年12月31日に終了するものとする(第4条第1項)。
(ニ) 匿名組合員の上記(ロ)の事業に対する出資金は70,000,000円(Lの出資金の額であり、Mは13,500,776円及びNは5,547,811円である。)とする(第5条第2項)。
ニ K社は、平成18年1月11日付で、Lを名宛人として、「2005年度ファンド全体成績」をマイナス87,056,888円、「2005年度投資額」を16,460,743円、「2005年度該当損失」をマイナス4,041,072円、「2005年度最終残高」を12,419,671円等と記載した「2005年度Kファンド運用結果報告」と題する書面を作成し、同人に通知した。
 なお、当該運用結果報告の欄外には、参考として「お客様にお返しする金額は、上記“2005年度最終残高”となります。」と記載されていた。
ホ K社は、平成18年12月31日付で、Lを名宛人として、「投資額」を70,000,000円、「最終累積損益」をマイナス9,444,545円、「最終残高」を60,555,455円等と記載した「2006年度Kファンド運用結果最終報告」と題する書面を作成し、同人に通知した。
ヘ 請求人は、平成19年1月1日付で、Lら各人との間で、請求人を営業者、Lら各人を匿名組合員とし、投資ファンドの名称を「P」とする匿名組合契約(以下「平成19年各P匿名組合契約」という。)をそれぞれ締結し、要旨次の内容が記載された契約書をそれぞれ取り交わした。
 なお、各契約書の内容は、基本的にはLら各人とも同様であるので、Lら各人により相違する部分のみ、当該各人の名を付して当該内容を記載した。
(イ) 本契約の当事者は、商法第535条《匿名組合契約》から第542条《匿名組合契約の終了に伴う出資の価額の返還》までの規定に基づき、かつ、これに従って本契約により匿名組合を結成することに合意する。匿名組合員は、後記(ハ)の事業につき、営業者に対し出資することを約し、営業者は、本契約に従って、同事業から生じる利益を匿名組合員に配分することを約束するものとする(第1条)。
(ロ) 後記(ハ)の事業は、営業者である請求人の名の下で運営される(第2条第1項)。
(ハ) Pは、請求人の情報収集力、相場分析力を基に主要通貨の外国為替取引を主体として行い、資金運用事業を営むことを目的とする。外国為替取引以外に、商品先物、金先物、株式先物及び株式現物の各取引を行う場合もある(第2条第3項)。
(ニ) Pは、上記(ハ)の事業について、平成19年1月1日を開始日とし、平成28年12月31日を終結日とする。同日までに解約の通知がない場合、自動的に継続の扱いとし、当該時点において、新規契約書を発行するものとする。Pは、請求人の会計年度に合わせて、毎年1月初から12月末までの損益を計算し、事業結果を報告する(第4条第1項)。
(ホ) 匿名組合員の上記(ハ)の事業に対する出資金は59,660,547円(Lの出資金の額であり、Mは11,450,220円及びNは4,614,597円である。)とする(第5条第2項)。
(ヘ) 匿名組合員に配分された損失累計額が出資金の額を超過する場合であっても、匿名組合員は、出資金の額を超えていかなる責任も負わない(第6条前段)。
(ト) 匿名組合員の損失額が当初の出資金の額の25%に達した時点で、営業者は直ちに匿名組合員に通知をしなければならず、この段階で匿名組合員は解約の意思がある場合、その意思を表明しなければならない(第6条後段)。
(チ) 上記(ハ)の事業の純利益及び純損失の分配は、営業者と匿名組合員との間で、以下のように定めるものとする(第9条第1項)。
A 純利益及び純損失の分配は、匿名組合員の出資比率により比例的に決定する。
B 利益は、匿名組合員が70%、営業者が30%(ただし、Mとの契約においては、匿名組合員が75%、営業者が25%)を取得するものとする。
C 損失は、匿名組合員が出資比率に応じて比例的に負担するものとする。
(リ) 営業者は、会計年度の終了後20営業日以内に、各会計年度の全ての純利益及び純損失の通知を行うものとする。Pは、分配金の途中分配を行わないことを基本とするが、分配金の受取を希望する匿名組合員とは、その都度匿名組合員と協議して決めるものとする(第9条第2項)。
(ヌ) 年間管理費は、出資金の額の2%、出資金20,000,000円以上は1.5%とし、匿名組合員は、出資金とは別に営業者に支払うものとする(第10条)。
(ル) 上記(ハ)の事業の会計年度は、毎年の初めから毎年の末日までとする(第11条第1項)。
(ヲ) 営業者も匿名組合員も、本契約を譲渡すること、又はその他の方法により上記(ハ)の事業に関する各自の権益を売却、譲渡、移転その他処分する権利を有しないものとする。吸収合併、新設合併、清算又は類似の事項の結果としての法の実施による移転は可能とするが、当事者が書面によりその旨の通知を受領するまで、かかる移転は効力を有しないものとする(第13条)。
(ワ) 継続については、後記(カ)の中途解約の定めに沿うものとする。申出がない場合、自動的に継続されるものとする(第19条)。
(カ) 本契約に基づく上記(ハ)の事業が開始されてからの中途解約は、申出のあった時点の四半期末の翌四半期末となる。ただし、翌四半期の成績は考慮されず、当四半期の成績は換算される。なお、出金は、当該四半期末から10営業日以内に行うものとする(第20条)。
ト 請求人は、平成21年1月1日、Lから平成19年各P匿名組合契約の追加の出資金として4,979,910円を受け入れ、これにより、Lの出資金の額は、上記ヘの(ホ)の当初の59,660,547円から64,640,457円となった。
チ 請求人は、平成22年1月1日付で、Qとの間で、請求人を営業者、Qを匿名組合員とし、投資ファンドの名称を「P」とする匿名組合契約(以下、当該匿名組合契約と平成19年各P匿名組合契約とを併せて、「本件各P匿名組合契約」といい、Q及びLらを併せて「P匿名組合員」という。)を締結し、事業期間を平成22年1月1日から平成28年12月31日までとすること、及び出資金を○○○○円とすることのほか、上記ヘと同じ内容が記載された契約書を取り交わした。
リ 請求人は、本件各P匿名組合契約に関し、次のP匿名組合員ごとに、次の各表の各欄のとおりの内容が記載された各会計年度の運用報告書を作成し、P匿名組合員にそれぞれ通知した。
(イ) L
A 平成19年12月31日付「2007年会計年度P運用報告」

2007年 投資額 59,660,547円
2007年会計年度 ファンド累積収益率 +27.45%
2007年会計年度 L累積収益 +16,378,029円
当社成功報酬 30% 消費税込 5,159,079円
2008年会計年度 管理費用 1.5% 1,047,480円
2007年末 お預かり残高 69,832,016円

B 平成20年12月31日付「2008年会計年度P運用報告」

2007年 投資元本 59,660,547円
2008年会計年度 ファンド全般収益率 +41.68%
2008年会計年度 L収益 +29,102,819円
当社成功報酬 消費税込 9,167,388円
2009年会計年度 追加投資 4,979,910円
2009年会計年度 管理費用 1.5% 1,400,207円
2008年末 お預かり残高 93,347,151円

C 平成21年12月31日付「2009年会計年度P運用報告」

2007年 投資元本 59,660,547円
2009年会計年度 ファンド全般収益率 +16.54%
2009年会計年度 L収益 +15,441,619円
当社成功報酬 消費税込 4,864,110円
2010年会計年度 管理費用 1.5% 1,535,833円
2009年末 お預かり残高 102,388,827円

D 平成22年12月31日付「2010年会計年度P運用報告」

2007年 投資元本 59,660,547円
2009年 追加投資 4,979,910円
2010年会計年度 ファンド全体損益率 +○○.○○%
2010年会計年度 L損益 +○○○○円
当社成功報酬 消費税込 ○○○○円
2010年末 お預かり残高 ○○○○円

(ロ) M
A 平成19年12月31日付「2007年会計年度P運用報告」

2007年 投資額 11,450,220円
2007年会計年度 ファンド累積収益率 +27.45%
2007年会計年度 M累積収益 +3,143,317円
当社成功報酬 25% 消費税込 825,121円
2008年会計年度 管理費用 2% 269,969円
2007年末 お預かり残高 13,498,447円

B 平成20年12月31日付「2008年会計年度P運用報告」

2007年 投資元本 11,450,220円
2008年会計年度 ファンド全般収益率 +41.68%
2008年会計年度 M収益 +5,625,540円
当社成功報酬 消費税込 1,476,704円
2009年会計年度 管理費用 2% 346,025円
2008年末 お預かり残高 17,301,258円

C 平成21年12月31日付「2009年会計年度P運用報告」

2007年 投資元本 11,450,220円
2009年会計年度 ファンド全般収益率 +16.54%
2009年会計年度 M収益 +2,861,998円
当社成功報酬 消費税込 751,275円
2010年会計年度 管理費用 2% 380,627円
2009年末 お預かり残高 19,031,354円

D 平成22年12月31日付「2010年会計年度P運用報告」

2007年 投資元本 11,450,220円
2010年会計年度 ファンド全体損益率 +○○.○○%
2010年会計年度 M損益 +○○○○円
当社成功報酬 消費税込 ○○○○円
2010年末 お預かり残高 ○○○○円

(ハ) N
A 平成19年12月31日付「2007年会計年度P運用報告」

2007年 投資額 4,614,597円
2007年会計年度 ファンド累積収益率 +27.45%
2007年会計年度 N累積収益 +1,266,800円
当社成功報酬 30% 消費税込 399,042円
2008年会計年度 管理費用 2% 107,497円
2007年末 お預かり残高 5,374,858円

B 平成20年12月31日付「2008年会計年度P運用報告」

2007年 投資元本 4,614,597円
2008年会計年度 ファンド全般収益率 +41.68%
2008年会計年度 N収益 +2,239,997円
当社成功報酬 消費税込 705,599円
2009年会計年度 管理費用 2.0% 135,476円
2008年末 お預かり残高 6,773,780円

C 平成21年12月31日付「2009年会計年度P運用報告」

2007年 投資元本 4,614,597円
2009年会計年度 ファンド全般収益率 +16.54%
2009年会計年度 N収益 +1,120,528円
当社成功報酬 消費税込 352,966円
2010年会計年度 管理費用 2.0% 147,869円
2009年末 お預かり残高 7,393,473円

D 平成22年12月31日付「2010年会計年度P運用報告」

2007年 投資元本 4,614,597円
2010年会計年度 ファンド全体損益率 +○○.○○%
2010年会計年度 N損益 +○○○○円
当社成功報酬 消費税込 ○○○○円
2010年末 お預かり残高 ○○○○円

(ニ) Q
 平成22年12月31日付「2010年会計年度P運用報告」

2010年 投資元本 ○○○○円
2010年会計年度 ファンド全体損益率 +○○.○○%
2010年会計年度 Q損益 +○○○○円
当社成功報酬 消費税込 ○○○○円
2010年末 お預かり残高 ○○○○円

ヌ 請求人は、平成23年1月1日付で、P匿名組合員との間で、請求人を営業者、P匿名組合員を匿名組合員とし、投資ファンドの名称を「P」とする匿名組合契約(以下「平成23年各匿名組合契約」という。)をそれぞれ締結し、外国為替取引以外に行う事業に社債等債券取引を追加すること、事業期間を平成23年1月1日から同年12月31日までとすること、P匿名組合員の各人の出資金を次表のとおりとすること、並びに事業期間の変更に伴う事業結果の報告及び中途解約等に関し所要の整備を図ることのほか、上記ヘと同じ内容が記載された契約書をそれぞれ取り交わした。

L 85,200,000円
M 20,000,000円
N 7,800,000円
Q 30,000,000円

ル 請求人は、平成23年2月4日付で、本件各P匿名組合契約に関し、次のP匿名組合員ごとに、解約日を平成22年12月31日とする次の各表の各欄のとおりの内容が記載された「Pファンド解約報告書」と題する書面を作成し、P匿名組合員にそれぞれ通知した。
(イ) L

投資金まる1 ○○○○円
管理費まる2 ○○○○円
解約時総額まる3 ○○○○円
収益まる4(まる3まる1まる2) ○○○○円
源泉所得税額まる5(まる4×20%) ○○○○円
差し引き返金額(まる3まる5) 105,352,073円

(ロ) M

投資金まる1 ○○○○円
管理費まる2 ○○○○円
解約時総額まる3 ○○○○円
収益まる4(まる3まる1まる2) ○○○○円
源泉所得税額まる5(まる4×20%) ○○○○円
差し引き返金額(まる3まる5) 20,425,924円

(ハ) N

投資金まる1 ○○○○円
管理費まる2 ○○○○円
解約時総額まる3 ○○○○円
収益まる4(まる3まる1まる2) ○○○○円
源泉所得税額まる5(まる4×20%) ○○○○円
差し引き返金額(まる3まる5) 7,977,924円

(ニ) Q

投資金まる1 ○○○○円
管理費まる2 ○○○○円
解約時総額まる3 ○○○○円
収益まる4(まる3まる1まる2) ○○○○円
源泉所得税額まる5(まる4×20%) ○○○○円
差し引き返金額(まる3まる5) 16,141,655円

ヲ 請求人は、P匿名組合員に対する本件各P匿名組合契約に基づく利益の分配の額(以下、本件各P匿名組合契約に基づく利益の分配の額を「本件利益分配額」という。)について、次表のとおり、「利益の額」欄記載の各金額を「請求人が取得する利益額」及び「P匿名組合員が取得する利益額」欄記載の各金額に区分し、「P匿名組合員が取得する利益額」欄記載の各金額から「損失の額」及び「管理費用の額」欄記載の各金額を控除して「利益の分配の額」欄記載の各金額を算出し、当該「利益の分配の額」欄記載の各金額に20%の税率を乗じて計算した「源泉所得税の額」欄記載の各金額の合計○○○○円を平成23年1月支払分として平成23年2月9日に納付した。
 なお、次表の、まる1「利益の額」欄記載の各金額は、平成19年ないし平成22年において本件各P匿名組合契約による事業から生じた利益の額につき、P匿名組合員の出資比率により比例的に各人に分配された額であり、まる2「請求人が取得する利益額」及び「P匿名組合員が取得する利益額」欄記載の各金額は、「利益の額」欄記載の各金額につき、本件各P匿名組合契約に定める分配割合により算出された請求人及びP匿名組合員がそれぞれ取得する額(以下、P匿名組合員がそれぞれ取得する利益の額を「本件各組合員利益額」という。)であり、まる3「損失の額」欄記載の各金額は、平成17年及び平成18年において本件各K匿名組合契約による事業から生じた損失の額につき、Lらの出資比率により比例的に各人に分配された額(以下「本件各損失額」という。)であり、まる4「管理費用の額」欄記載の各金額は、Lらが本件各K匿名組合契約に基づいて平成17年及び平成18年に営業者(K社)に対して支払うこととされていた年間管理費の額(以下「本件各K管理費用額」という。)並びにP匿名組合員が本件各P匿名組合契約に基づいて平成19年ないし平成22年に営業者(請求人)に対して支払うこととされていた年間管理費の額(以下「本件各P管理費用額」という。)の合計金額である。

項目 L M N Q
利益の額 1 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円
請求人が取得する利益額 2 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円
P匿名組合員が取得する利益額
(1−2)
3 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円
損失の額 4 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円
管理費用の額 5 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円
利益の分配の額
(3−4−5)
6 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円
源泉所得税の額 7 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円

ワ 原処分庁は、平成23年11月28日付で、本件利益分配額の計算上、本件各損失額、本件各K管理費用額及び本件各P管理費用額を控除することはできないとして、本件利益分配額の支払に係る源泉所得税の額を、上記ヲの表の「P匿名組合員が取得する利益額」欄記載の各金額(ただし、Lについては平成19年において生じた利益の額を含まない金額○○○○円)に20%の税率を乗じて計算した金額から請求人が既に納付した源泉所得税の金額を差し引いた額について、本件納税告知処分をした。

(5) 争点

  1. 争点1 本件利益分配額の計算上、本件各損失額及び本件各K管理費用額は本件各組合員利益額から控除できるか否か。
  2. 争点2 本件利益分配額の計算上、本件各P管理費用額は本件各組合員利益額から控除できるか否か。

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2 主張

(1) 争点1(本件利益分配額の計算上、本件各損失額及び本件各K管理費用額は本件各組合員利益額から控除できるか否か。)について

原処分庁 請求人
 平成19年各P匿名組合契約は、本件各K匿名組合契約が自動更新されたものではなく、両契約は別個の匿名組合契約であるところ、本件各損失額及び本件各K管理費用額は、平成17年12月31日及び平成18年12月31日に、それぞれ確定し、精算されているものと認められる。
 また、両契約が別個の匿名組合契約である以上、平成19年各P匿名組合契約において、利益の分配につき支払をする際に、本件各損失額を控除する旨の定めはなく、また、利益の分配の計算上、本件各K管理費用額を控除する定めはないから、本件各損失額及び本件各K管理費用額は、本件利益分配額の計算上、本件各組合員利益額から控除することはできない。
 平成19年各P匿名組合契約は、本件各K匿名組合契約の自動更新条項に従って更新されたものであり、単にその更新の際に名称が変わったにすぎず、両契約は実質的には同一の匿名組合契約である。
 そして、両契約が同一の匿名組合契約である以上、本件各損失額については、商法第538条によれば、出資の価額が損失の分担により減少した場合、その後の会計年度に利益が生じても、当該利益で出資の欠損額を填補し、なお余りがあるのでなければ、匿名組合員は、利益の分配を請求することはできないのであるから(平成18年1月27日付個人課税課情報第2号「平成17年度税制改正及び有限責任事業組合契約に関する法律の施行に伴う任意組合等の組合事業に係る利益等の課税の取扱いについて(情報)」(国税庁個人課税課)の32(1)問23参照)、本件利益分配額の計算上、本件各組合員利益額から控除すべきである。
 また、本件各K管理費用額については、営業者の必要経費として匿名組合員から徴収しているものであることからすれば、当該管理費用額を控除した上で最終的に分配すべき利益の額を算定することは、両契約の契約書の合理的解釈として導かれるものであり、さらに、所得税法第210条が利益の分配の額の計算方法について何ら規定しておらず、当該管理費用額を控除することはできないという法律上の規定もないから、本件利益分配額の計算上、本件各組合員利益額から控除すべきである。

(2) 争点2(本件利益分配額の計算上、本件各P管理費用額は本件各組合員利益額から控除できるか否か。)について

原処分庁 請求人
 所得税法第210条は、匿名組合契約に基づく利益の分配につき支払をする際の規定であるから、本件利益分配額は、本件各P匿名組合契約の契約書の定めに従って計算されることが相当であるところ、本件各P管理費用額については、当該契約書において、各匿名組合員の出資金の額に対応する一定の割合の金額を匿名組合員が出資金とは別に営業者に支払う旨の定めがあるものの、本件利益分配額の計算上、当該管理費用額を控除する旨の定めはないから、本件各組合員利益額から控除することはできない。  本件各P管理費用額については、営業者の必要経費として匿名組合員から徴収しているものであることからすれば、当該管理費用額を控除した上で最終的に分配すべき利益の額を算定することは、本件各P匿名組合契約の契約書の合理的解釈として導かれるものであり、また、所得税法第210条が利益の分配の額の計算方法について何ら規定しておらず、当該管理費用額を控除することはできないという法律上の規定もないから、本件利益分配額の計算上、本件各組合員利益額から控除すべきである。

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3 判断

(1) 争点1(本件利益分配額の計算上、本件各損失額及び本件各K管理費用額は本件各組合員利益額から控除できるか否か。)について

イ 本件各K匿名組合契約及び平成19年各P匿名組合契約が実質的に同一の匿名組合契約であったか否かについて検討すると、次のとおりである。
(イ) 本件各K匿名組合契約及び平成19年各P匿名組合契約の各契約内容についてみると、まる1営業者は、上記1の(4)のロ及びハのとおり、本件各K匿名組合契約においてはK社であった(なお、同イのとおり、請求人が、K社の営業の全部を譲り受けたのは平成18年各K匿名組合契約の終了日とされていた平成18年12月31日であり、また、請求人がK社を吸収合併したのは、平成19年各P匿名組合契約を締結した後であった。)のに対し、同ヘのとおり、平成19年各P匿名組合契約においては請求人であったこと、まる2同ハの(イ)のとおり、平成18年各K匿名組合契約においてのみ香港在籍のR社を資金運用事業の運用委託先としていたこと、まる3各匿名組合は、外国為替取引を主体とした資金運用事業のほか、同ロの(ハ)のとおり、平成17年各K匿名組合契約においては金先物、日経平均先物及びアメリカS&P株式先物の各取引を、同ハの(ロ)のとおり、平成18年各K匿名組合契約においては金先物取引のみを、同ヘの(ハ)のとおり、平成19年各P匿名組合契約においては商品先物、金先物、株式先物及び株式現物の各取引をそれぞれ行うこととされており、各匿名組合によってその事業内容が相異していたこと、まる4同ロの(ヘ)、同ハの(ニ)及び同ヘの(ホ)のとおり、Lらの各匿名組合に対する出資金の額は、匿名組合契約ごとに異なっていたこと、並びにまる5損失の負担に係る匿名組合契約の解約については、同ロの(チ)及び同ハのとおり、本件各K匿名組合契約にあっては、年間の損失額が出資金の額の25%に達した時点で自動的に解約されることとされていたのに対し、同ヘの(ト)のとおり、平成19年各P匿名組合契約にあっては、損失額が当初の出資金の額の25%に達した時点で、匿名組合員が解約の意思を表明しなければならないこととされていたことを総合すれば、本件各K匿名組合契約及び平成19年各P匿名組合契約の各契約内容が同一であったと認めることはできない。
(ロ) そして、まる1上記1の(4)のロの(ニ)のとおり、平成17年各K匿名組合契約に係る事業は、その期間が平成17年1月1日に開始し同年12月31日に終了するものとされ、同(ホ)のとおり、営業者は、平成17年各K匿名組合契約に従った匿名組合の終了に伴い、当該期間(会計年度)についての報告書を匿名組合員に配付するものとされていたところ、同ニのとおり、K社は、Lに対して平成17年各K匿名組合契約に基づく当該期間(会計年度)の運用結果の通知に併せて、Lに返金する金額は「2005年度最終残高」である旨を通知したこと、まる2同ハの(ハ)のとおり、平成18年各K匿名組合契約に係る事業は、その期間が平成18年1月1日から開始し同年12月31日に終了するものとされ、同ハ及び同ロの(ホ)のとおり、営業者は、平成18年各K匿名組合契約に従った匿名組合の終了に伴い、当該期間(会計年度)についての報告書を匿名組合員に配付するものとされていたところ、同ホのとおり、K社は、Lに対して平成18年各K匿名組合契約に基づく当該期間(会計年度)の運用結果について「2006年度Kファンド運用結果最終報告」と題した書面により「最終累積損益」及び「最終残高」を通知したこと、まる3同ヘのとおり、平成19年各P匿名組合契約は、請求人と本件各K匿名組合契約における匿名組合員であったLらとの間で締結されているものの、同ヘの(ニ)のとおり、平成19年各P匿名組合契約に係る事業は、その期間が平成19年1月1日から開始し平成28年12月31日に終了するものとされ、同(リ)のとおり、営業者は、各会計年度の純利益等の通知を行うものとするが、当該期間における分配金の途中分配は原則として行わないこととされていたところ、本件各P匿名組合契約が同ルの平成22年12月31日をもって中途解約されるまでの間、同リのとおり、Lらに対して平成19年分ないし平成22年分の各会計年度の運用報告がされており、当該運用報告によれば、本件各組合員利益額は、同ヘの(ホ)の本件各P匿名組合契約に基づくLらの出資金の額を基礎に計算されており、また、当該各会計年度における利益は、当該各会計年度に分配されることなく、上記の中途解約によって分配されたこと、及びまる4同ヌのとおり、本件各P匿名組合契約における投資ファンドの名称と同じ「P」を使用し、事業期間、出資金の額等の一部の事項は異なるものの、本件各P匿名組合契約と同様の契約内容である平成23年各匿名組合契約という別個の匿名組合契約が存在することの各事実が認められ、これらの各事実を総合すれば、平成17年各K匿名組合契約は平成17年12月31日、平成18年各K匿名組合契約は平成18年12月31日にそれぞれ終了し、それぞれの匿名組合契約に従って行われた運用結果報告により返還される出資金の額の通知がされ、また、平成19年各P匿名組合契約は平成22年12月31日をもって終了し、中途解約による利益の分配が行われたと認めるのが相当である。
(ハ) 以上のことからすると、本件各K匿名組合契約と平成19年各P匿名組合契約とは、形式的にも実質的にも別個の匿名組合契約としてそれぞれ締結され、終了したものと認めるのが相当であり、この認定に反する証拠はない。
ロ そうすると、本件各損失額及び本件各K管理費用額は、上記1の(4)のヲのまる3及びまる4のとおり、本件各K匿名組合契約に係るものであるから、Lらの本件利益分配額の計算上、Lらの本件各組合員利益額から控除することはできないというべきである。
ハ 請求人は、上記2の(1)の「請求人」欄のとおり主張する。
 しかしながら、上記イの(ハ)のとおり、本件各K匿名組合契約と平成19年各P匿名組合契約とは、形式的にも実質的にも別個の匿名組合契約としてそれぞれ締結され、終了したものと認めるのが相当であり、同ロのとおり、本件各損失額及び本件各K管理費用額は、Lらの本件利益分配額の計算上、Lらの本件各組合員利益額から控除することはできないのであるから、これらの点に関する請求人の主張には理由がない。
 また、請求人が主張する商法第538条の規定及び国税庁個人課税課による平成18年1月27日付個人課税課情報第2号の記載内容は、いずれも匿名組合契約が継続している場合の当該契約期間内における利益の分配についてのものと解されるところ、上記のとおり、本件各K匿名組合契約と平成19年各P匿名組合契約とは、形式的にも実質的にも別個の匿名組合契約としてそれぞれ締結され、終了したものと認めるのが相当であるから、請求人の主張は、その前提を欠くものであり採用できない。

(2) 争点2(本件利益分配額の計算上、本件各P管理費用額は本件各組合員利益額から控除できるか否か。)について

イ 上記1の(4)のヘの(ヌ)及び同チのとおり、本件各P管理費用額は、本件各P匿名組合契約において、P匿名組合員が出資金の額に一定割合を乗じて計算した金額を、出資金とは別に営業者(請求人)に支払うこととされており、これによれば、P匿名組合員は、本件各P匿名組合契約に基づく事業により利益が生じるか否かに関わらず、本件各P管理費用額を出資金とは別に営業者(請求人)に支払う約定を交わしたものと認めるのが相当である。
 なお、Pファンド解約報告書において本件各P管理費用額が本件各組合員利益額から控除されているが、これは、本来P匿名組合員に対して分配されるべき利益の額の一部を、P匿名組合員が支払うべき本件各P管理費用額に充当することを示しているにすぎないというべきである。
 そして、当審判所の調査の結果によっても、他に本件各P匿名組合契約に基づく事業による利益の額から本件各P管理費用額を控除すべきであることを認めるに足りる証拠もないことからすると、P匿名組合員の本件利益分配額の計算上、本件各P管理費用額は本件各組合員利益額から控除することはできないというべきである。
ロ 請求人は、上記2の(2)の「請求人」欄のとおり主張する。
 しかしながら、上記イのとおり、本件利益分配額の計算上、本件各P管理費用額は本件各組合員利益額から控除することはできないのであるから、請求人の主張には理由がない。

(3) 本件納税告知処分等について

イ 本件利益分配額について
 本件各P匿名組合契約に基づく事業による利益のうちP匿名組合員が取得する利益の額について、請求人は本件各組合員利益額であるとしているところ、原処分庁はこれについて争わず、当審判所の調査の結果によっても相当と認められる。
 そして、上記1の(4)のヲのとおり、請求人は、本件各組合員利益額から本件各損失額、本件各K管理費用額及び本件各P管理費用額を控除した後の額を本件利益分配額に相当する額として源泉所得税の額を算定しているところ、上記(1)のロのとおり、Lらの本件利益分配額の計算上、本件各損失額及び本件各K管理費用額を本件各組合員利益額から控除することはできず、また、同(2)のイのとおり、P匿名組合員の本件利益分配額の計算上、本件各P管理費用額を本件各組合員利益額から控除することはできないのであるから、P匿名組合員の本件利益分配額に相当する額は本件各組合員利益額とするのが相当である。
ロ 本件利益分配額の支払時期及び支払金額について
(イ) 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、請求人は、まる1平成23年1月に、P匿名組合員の各人につき、上記1の(4)のルの各表の、本件利益分配額(本件各組合員利益額)を含む「解約時総額まる3」欄記載の各金額から同ヲの表の「源泉所得税の額」欄記載の各金額を控除した残額を平成23年各匿名組合契約に係る出資金(同ヌのP匿名組合員の各人の出資金)及び当該出資金に対する年間管理費に充当(以下「本件各充当」という。)するとともに、まる2本件各充当後においても残額があるLらに対し、次表の「送金日」欄記載の各日に、同表の「送金額」欄記載の各金額を送金していた事実が認められる。なお、Qについては、本件各充当をした結果、平成23年各匿名組合契約に係る出資金の額に対する不足額14,308,345円が生じたことから、請求人は、平成24年2月7日に、Qから当該不足額の支払を受けていた。

氏名 送金日 送金額
L 平成23年2月9日 18,874,073円
M 平成23年2月8日 125,924円
N 平成23年2月10日 21,924円

(ロ) ところで、所得税法第210条に規定する「支払の際」の支払には、現実に金銭の交付をする行為のほか、元本に繰り入れ又は預金口座に振り替えるなどその支払の債務が消滅する一切の行為が含まれると解されるところ、上記(イ)のまる2のLらに送金された各金額を除く部分のP匿名組合員に対する本件利益分配額は、平成23年1月の本件各充当によりその支払の債務が消滅したことになるから、いずれも同月に支払がされたと認めるのが相当であり、他方、同(イ)のまる2のLらに送金された各金額は、それぞれの送金日である平成23年2月8日ないし同月10日に、Lらに対して支払がされたと認めるのが相当である。
ハ 本件納税告知処分について
 上記1の(4)のワのとおり、本件納税告知処分は、平成23年1月分の本件利益分配額の支払に係るものであるとしてされているところ、上記ロの(ロ)のとおり、本件利益分配額に係る支払は、平成23年1月又は同年2月にされたものと認めるのが相当であるから、これらの事実に基づいて、平成23年1月支払分の本件利益分配額につき源泉所得税の額を計算すると、別表2の「まる31月支払分の源泉所得税の額(まる2×20%)」の「計」欄記載の金額○○○○円となり、当該金額から請求人が納付した源泉所得税の額○○○○円を差し引いた金額○○○○円は、本件納税告知処分の源泉所得税の額○○○○円を下回るから、本件納税告知処分は、別紙「取消額等計算書」のとおり、その一部を取り消すべきである。

(4) 本件賦課決定処分について

 上記(3)のとおり、本件納税告知処分はその一部を取り消すべきであるところ、その一部の取消し後の税額を法定納期限までに納付しなかったことについて、国税通則法第67条《不納付加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないから、不納付加算税の額を計算すると、別表2の「不納付加算税の額」欄記載の金額○○○○円となり、この金額は、本件賦課決定処分の金額○○○○円を下回るから、本件賦課決定処分は、別紙「取消額等計算書」のとおり、その一部を取り消すべきである。

(5) 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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