(平成25年3月18日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、医療法人である審査請求人(以下「請求人」という。)が、請求人に勤務する職員で看護師等の資格取得のために看護専門学校に入学した者に対し奨学金として負担した金員を支出した各事業年度の損金の額に算入して申告したところ、原処分庁が、当該金員は債務免除条件付の貸付金であるため支出した各事業年度の損金の額に算入できないなどとして更正処分等を行ったのに対し、請求人が、当該金員は支出した各事業年度の損金の額に算入すべきであるなどとして同処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成18年4月1日から平成19年3月31日まで、平成20年4月1日から平成21年3月31日まで、平成21年4月1日から平成22年3月31日まで及び平成22年4月1日から平成23年3月31日までの各事業年度(以下、順次「平成19年3月期」、「平成21年3月期」、「平成22年3月期」及び「平成23年3月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、平成24年6月22日に審査請求をしたところ、それらに至る経緯は別表1記載のとおりである。
 なお、別表1の「更正処分等」欄記載の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を、それぞれ「本件各更正処分」及び「本件各賦課決定処分」といい、これらを併せて「本件各更正処分等」といい、同表の「異議決定」欄記載の異議決定を「本件異議決定」という。
ロ 原処分庁は、平成22年3月期及び平成23年3月期の法人税について、平成24年6月14日に別表1の「再更正処分等」欄記載のとおり各再更正処分(以下「本件各再更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下、「本件各再賦課決定処分」といい、本件各再更正処分と併せて「本件各再更正処分等」という。)をした。
ハ 本件各再更正処分等に対し、平成24年6月22日に原処分庁にされた異議申立てに係る異議申立書は、原処分庁から国税通則法(以下「通則法」という。)第90条《他の審査請求に伴うみなす審査請求》第1項及び第3項の規定に基づいて、平成24年6月28日に当審判所宛に送付され同日付で請求人から本件各再更正処分等に対する審査請求がされたものとみなすので、通則法第104条《併合審理等》第1項の規定に基づき、本件各更正処分等に対する審査請求と併合審理する。

(3) 関係法令

 関係法令の要旨は、別紙のとおりである。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人について
 請求人は、平成8年○月○日に設立された医療法人であり、L病院を経営している。
ロ 奨学金貸与規則について
 請求人は、「医療法人H会L病院奨学金貸与規則」(以下「本件貸与規則」という。)を作成しており、本件貸与規則には、以下の記載がある。
(趣旨)
第1条 この規則は医療法人H会L病院に勤務する職員で、看護婦(士)・准看護婦(士)の資格修得をめざして既に看護学校に在学し、あるいは看護学校に就学を希望して勉学に精励する者に対して、奨学金を貸与することを目的とする。
(貸与額)
第2条 奨学金の貸与額は、次表のとおりとする。ただし、物価の変動や、看護学校における諸費用の変動があったときは改訂することができる。

(単位:円)
項目 看護学科
(就学3年間)
看護婦(士)
准看護学科
(就学2年間)
准看護婦(士)
備考
1 毎月(定額)
(含 通学交通費)
11,000 11,000 通学交通費が1万円を超える時、3,000円を限度に追加貸与することができる。
2 入学時
(入学に伴う費用)
男) 150,000 男) 160,000 准看護学科には制服体育衣を含む
女) 150,000 女) 170,000
3 授業料 前期 78,000 前期 78,000  
後期 78,000 後期 78,000
合計 初年度 438,000 458,000 ただし、准看護学科男子のみ10,000減
2年度 288,000 288,000
3年度 288,000  
1,014,000 746,000

(貸与期間)
第3条 奨学金の貸与期間は、当該資格を修得するために必要な在学期間とする。
(申請の手続き)
第4条 奨学金の貸与を希望する者は、別に定める様式による「奨学金申請書」を理事長に申請し、承認を受けなければならない。
(連帯保証人)
第5条 前条の規定による申請書には、連帯保証人をつけるものとする。
2 連帯保証人は、奨学金の貸与を受けた者と連帯して、奨学金の返済債務を負うものとする。
(貸与の取消)
第6条 奨学金の貸与を受けている者が次の各号の一に該当するときは、理事長は、奨学金の貸与を取り消すことができる。
(1) 病院を退職したとき。
(2) 看護学校を退学したとき。
(3) 心身の故障のため就学の見込みがないと認められたとき。
(4) 勉学態度に熱意が認められないと理事長が判断したとき。
(5) 職場の内外を問わず、奨学生として相応しくない行状があると理事長が認めたとき。
(奨学金の返還)
第7条 奨学金の返還については、貸与を受けた者が本病院に勤務している期間中は、これを猶予する。
2 貸与を受けた者が退職するときは、本病院退職後2ヶ月以内に、また本病院を懲戒解雇されたときは、解雇時に貸与された奨学金の合計金額について、一括して返還するものとする。但し本病院は、貸与を受けた者の看護学校卒業後の勤務年数を考慮して、返還金額の全部または一部を免除することがありこの場合の概ねの基準は、以下のとおりとする。
まる1 卒業後の勤務年数が3年間を超える場合は、全額を免除する。
まる2 卒業後の勤務年数が2年間を超える場合は、半額を免除する。
(遅延損害金)
第8条 奨学金の貸与を受けたものが、正当な理由をなくして奨学金の返還を遅滞したときは、返還すべき日の翌日から完済するまで、年5%の割合で計算した遅延損害金を付加して支払わなければならない。
(細則)
第9条 この規則に定めるもののほか、必要な事項は別に定める。
付則
 この規則は、平成9年3月1日から施行する。
 この規則は、平成10年10月1日から施行する。
ハ 奨学金申請に関する手続等について
 請求人に勤務する別表2の「申請者」欄に記載の職員から請求人に提出された「奨学金申請書」(以下「本件各奨学金申請書」という。)には、それぞれ本件貸与規則に基づき奨学金の貸与を申請する旨、貸与された奨学金について本件貸与規則に従うことを誓約する旨記載され、同表の「申請者」及び「連帯保証人」欄に記載された者の署名押印がある。
ニ 本件各奨学金申請書に係る「稟議書」について
 請求人は、本件各奨学金申請書の申請者のうち、M及びNについて、それぞれ奨学金に関する「稟議書」(以下「本件各りん議書」という。)を作成しており、本件各りん議書には、要旨次のとおり記載され、その他の内容は別表3のとおりであり、「理事長、院長」及び「事務長」欄には、それぞれ請求人の理事長及び事務長の押印がある。
(イ) 卒業後の勤務年数が2年間を超える場合は、半額を免除する。
(ロ) 卒業後の勤務年数が3年間を超える場合は、全額を免除する。
(ハ) 学生期間の給与は8割支給を原則とする。
ホ 請求人が奨学金として支給した金額について
 請求人は、別表4の「職員名」欄に記載の職員に対し、奨学金として支給した金額(以下、その支給した金額を「本件奨学金」といい、本件奨学金のうち労務費勘定に計上し毎月定額で支給した11,000円を「本件定額奨学金」といい、本件各奨学金申請書に基づいて請求人から本件奨学金を受給した者を「本件各奨学金受給者」という。)を、同表の「福利厚生費」及び「労務費」欄に記載のとおり、本件各事業年度において損金経理し、その一部については、同表の「前払費用計上額」欄のとおり、前払費用として計上されている。
ヘ 退職に伴う奨学金の返還について
 請求人が、請求人を退職したPに平成19年9月30日付で交付した「奨学金返還調書」と題する書面(以下「本件返還調書」という。)には、要旨次のとおり記載されており、請求人は、同年10月25日に本件返還調書に記載された返済額550,000円をPの退職金支給額から差し引いて支払った。
 なお、本件各奨学金受給者のうち、請求人を退職した者はPの他にはいない。
(イ) 准看護学科(2年間)費用 1,115,505円の内訳
A 奨学金支給額 264,000円(内訳 月額11,000円×24月)
B 入学金 150,000円
C 教材、制服等の費用 101,505円
D 授業料 600,000円(内訳 年間300,000円×2年)
(ロ) 本件貸与規則第7条による返還額   全額
 ただし、同人のQ専門学校(以下「本件専門学校」という。)卒業後1年6か月間の勤務実績と請求人における勤務年数を考慮し、半額免除を適用して返済額を550,000円とした。
ト 本件各更正処分、本件異議決定及び本件各再更正処分の経緯等について
(イ) 本件各更正処分
 原処分庁が、本件各更正処分において、請求人が支出時に損金経理した本件奨学金のうち、別表5の「本件各更正処分」欄の「番号」欄のまる1ないしまる6の金額は、本件各事業年度において損金の額に算入されないとして所得金額に加算した金額であり、また、本件奨学金のうち、同表の「番号」欄のまる8ないしまる10の金額は、本件各事業年度において、本件貸与規則に基づき返還が免除されたとして損金の額に算入した金額である。
(ロ) 本件異議決定
 異議審理庁は、本件異議決定において、平成21年3月期の法人税の更正処分で、損金の額に算入されないとして所得金額に加算したN及びMに対する本件奨学金のうち、別表5の「本件異議決定」欄の「番号」欄のまる13及びまる14の金額は、別表4の平成21年3月期の「前払費用計上額」欄記載のとおり、前払費用に計上されていたことから、同金額を加算誤りとして所得金額から減算し、別表1の「異議決定」欄のとおり、平成21年3月期の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分の一部を取り消した。
(ハ) 本件各再更正処分
 原処分庁は、本件各再更正処分において、次のとおり原処分を行った。
A 平成22年3月期
 原処分庁が、本件各再更正処分において、N及びMに対する本件奨学金のうち損金の額に算入できないとして所得金額に加算した別表5の「本件各再更正処分」欄の「番号」欄のまる16及びまる17の合計金額○○○○円は、平成22年3月期の更正処分で所得金額に加算しなかった金額である。
 また、原処分庁は、本件各再更正処分において、本件各更正処分で損金の額に算入されないとして所得金額に加算したRに対する本件奨学金のうち、別表5の「平成22年3月期」欄の「番号」欄のまる18の金額○○○○円は、別表4の平成22年3月期の「前払費用計上額」欄記載のとおり、前払費用に計上されていたことから、同金額を加算誤りとして所得金額から減算した。
B 平成23年3月期
 原処分庁が、本件各再更正処分において、Rに対する本件奨学金のうち損金の額に算入されないとして所得金額に加算した別表5の「平成23年3月期」欄の「番号」欄のまる18の金額○○○○円は、平成23年3月期の更正処分で所得金額に加算しなかった金額である。

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2 争点

(1) 争点1 本件各更正処分等は、重大かつ明白な瑕疵があり無効であるか否か。
(2) 争点2 本件各再更正処分等は、調査手続が違法又は不当な処分に当たるか否か。
(3) 争点3 本件奨学金は、支出した各事業年度の損金の額に算入すべきか否か。

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3 主張

(1) 争点1 本件各更正処分等は、重大かつ明白な瑕疵があり無効であるか否か。

請求人 原処分庁
 本件各更正処分等は、次のとおり、重大かつ明白な瑕疵があり無効である。  本件各更正処分等は、次のとおり、重大かつ明白な瑕疵はなく有効である。
イ 本件貸与規則第7条第2項には、退職又は懲戒解雇の事由が発生したときに返還義務が具体的に発生する旨、同項ただし書では、返還免除の基準が「概ね」とする旨記載されており、具体的な返還額の有無又は返還額は、本件各奨学金受給者が退職する際に、請求人が勤務年数を考慮して確定される。この点、原処分庁は、民法第519条が規定する「債務を免除する意思」を表示した事実を立証すべきところ、何らの根拠を示すことなく、本件専門学校卒業後の勤務年数が2年を経過した場合は本件奨学金の返還額の半額が免除され、3年経過するとその残額が免除されると認定し処分しており、事実誤認が明白である。 イ 請求人は、本件貸与規則及び本件各りん議書により、本件各奨学金受給者に対する本件奨学金の制度の適用及び予算等について承認していると認められ、実際の貸与に際しては、返還免除の基準を「概ね」とすることなく、本件専門学校卒業後の勤務年数が2年を経過した時点で本件奨学金の半額を免除し、3年を経過した時点で残額を免除するとしており、返還免除の基準を曖昧なものではなく明確にしていると認められることから、原処分庁の認定には事実誤認はない。
ロ 原処分庁が、本件定額奨学金を給与ではなく貸付金であると認定し処分するなら、請求人が既に納付している源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)を職権で還付すべきところ、いまだに還付しないという不作為の状態が継続している。 ロ 原処分庁が請求人に対し源泉所得税を還付したか否かは、本件各更正処分等の効力に影響を及ぼすものではない。
 なお、請求人からは源泉所得税の誤納額を確認できる資料が提出されていない。
ハ 本件異議決定による本件各更正処分等の一部取消しの原因は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)が、本件各更正処分等に係る調査において、総勘定元帳等により損金の額に算入された金額を確認すべきであったにもかかわらず、この点の調査をおろそかにしたことにある。 ハ 最高裁判所の判決によれば、処分が当然無効であるというためには、処分に重大かつ明白な瑕疵がなければならないところ、行政庁が怠慢により調査すべき資料を見落としたかどうかは、処分に外形上、客観的に明白な瑕疵があるかどうかの判定に直接関係を有するものではないと判示されており、本件各更正処分等に係る調査において、経理処理の確認がされていなかったことについては、処分に重大かつ明白な瑕疵があったとは認められない。

(2) 争点2 本件各再更正処分等は、調査手続が違法又は不当な処分に当たるか否か。

請求人 原処分庁
 本件各再更正処分等は、次のとおり、調査手続が違法又は不当な処分に当たる。  本件各再更正処分等は、次のとおり、調査手続が違法又は不当な処分に当たらない。
イ 本件異議決定により、本件各更正処分等の一部取消しがあったにもかかわらず、本件異議決定の翌日に本件各再更正処分等が行われたことは、通則法第83条第3項の規定の趣旨を逸脱している。 イ 本件各再更正処分等と本件異議決定は、手続的に別々の独立した処分であることに加え、通則法第83条第3項は異議審理庁の決定に対する制度規定であり、税務署長が行う再更正に直接適用されるものではない。
ロ 本件各再更正処分等は、異議審理庁が飽くまでも異議申立てに係る調査に基づき行ったものであり、原処分庁が通則法第26条に規定する「その調査により」又は法人税法第130条第1項に規定する「帳簿書類を調査し、その調査により」行われたことが見えておらず、また、原処分庁から請求人に対し本件各再更正処分の内容について説明されない処分であり、少なくとも異議調査に係る調査担当職員を代えて調査手続を経たものでない限り、上記条文の「その調査により」行われたことに該当しない。 ロ 通則法第26条に規定する「調査」に関し、調査の方法、時期などその具体的手続については、何ら規定されておらず、課税庁に広範な裁量権が認められているものと解され、課税庁が内部において既に収集した資料を検討して正当な課税標準を認定することも、この裁量の範囲内である。
 また、法人税法第130条第1項に規定する「帳簿書類を調査し、その調査により」に関しては、本件各更正処分等の調査において収集した資料並びに平成21年3月期及び平成22年3月期の確定申告書に添付された「仮払金の内訳書」の内容から再検討し本件各再更正処分等を行っている。
 さらに、本件奨学金の損金算入時期について、異議申立てに係る調査担当者とは別の調査担当者を担当者と定め、当該資料の再検討を行ったところ、再更正を行う必要が認められたため本件各再更正処分を行ったものである。

(3) 争点3 本件奨学金は、支出した各事業年度の損金の額に算入すべきか否か。

原処分庁 請求人
 本件奨学金は、次のことから、支出した各事業年度の損金の額に算入すべきではない。  本件奨学金は、争点1の主張のとおり事実誤認があり、また、次のことから、支出した各事業年度の損金に算入することも認められるべきである。
イ 請求人は、まる1本件貸与規則において本件奨学金の貸与及び返還について定めている。まる2本件奨学金の申請者に対し、連帯保証人とともに署名押印させた本件各奨学金申請書を提出させている。まる3本件奨学金を貸与するに当たって、請求人の理事長及び事務長が承認した本件各りん議書を作成している。まる4本件貸与規則に基づき本件奨学金の貸与を実行している。まる5本件各奨学金受給者別に本件奨学金の貸与額等を記載した帳簿を作成することにより貸与額を管理している。まる6Pに対しては、退職金支給額から本件奨学金の返還額を差し引いて支払っている。
 また、Pは、異議審理庁の調査担当職員に対して、請求人から本件貸与規則を受領したこと及び請求人の経理担当者から本件貸与規則の内容に関し説明を受けた旨申述している。
 したがって、本件奨学金は貸付金であると認められる。
イ 請求人は、本件貸与規則において本件奨学金の返還を規定しているが、それは、職員に長期間勤務して欲しいという願望しかなく、本件専門学校を卒業し資格取得後直ぐの離職を防止するために規則化しているもので、拘束力を有さないいわゆる紳士協定にすぎず、本件貸与規則どおりに運用されている実態もなく、返還を目的としていない。現に、退職時に本件奨学金の返還免除が発生したのは、レアケースのPの事例だけである。
 仮に、本件貸与規則が貸付金を定めた金銭消費貸借等の証拠と考えているのであれば、10年以上入学金や授業料を改訂しないなどずさんなことはしない。
ロ 上記のとおり、本件奨学金は貸付金であり、法人税法第22条第3項第1号に規定する「売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額」には該当しない。「原価」とは、収益獲得のために費消された財貨及び役務の対価のうち、収益に直接かつ個別的に対応するものをいうと判示されているところ、本件奨学金は、請求人の従業員が准看護師又は看護師の資格修得をめざして本件専門学校に就学するために貸与されたものであることから、従業員が本件専門学校に就学している時期において、請求人の収益に直接かつ個別的に対応するもの、すなわち「原価」には該当しない。 ロ 本件奨学金の経済的実質は、日々の医業収益に直接対応する給与関連費であり、法人税法第22条第3項第1号に規定する「売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額」に該当するものであり、仮に、看護師等から紳士協定を破ったとして返還金が生じた場合には「雑収入(過年度損益修正益)」として益金の額に算入している。
 また、過去の実績を参考にして、勤務年数3年超は継続勤務してくれるであろうとの見積もりに基づき、本件奨学金を支給しているのであり、本件貸与規則により退職事由が発生したときの精算(返還・免除)とは別個の取引として会計・税務処理してきた。
 このような処理も、法人税法第22条第4項に規定する「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算され」た範疇に入るものと考える。
ハ 本件定額奨学金は、まる1本件貸与規則において「貸与」と定められ、まる2本件各奨学金申請書に貸与を申請する旨記載があり、まる3本件各奨学金受給者別の管理簿により管理され、まる4本件返還調書において本件定額奨学金を含めたところで返済額が計算されていることから、本件奨学金は貸付金であって、給与と認めることはできない。 ハ 請求人は、本件各奨学金受給者に対し本件定額奨学金を毎月給与として支払う一方、本件各奨学金受給者も同じく給与と認識して受領していることから、請求人及び本件各奨学金受給者の双方が、いずれも本件定額奨学金を貸付金ではなく給与として認識している。
 以上のことから、本件奨学金は、本件専門学校卒業後一定期間勤務した場合に返還を免除する旨の条件を付した上で貸与された金銭、すなわち債務免除条件付の貸付金に該当し、請求人が本件奨学金を貸与した時点においては貸付金として経理処理し、本件貸与規則第7条の条件を満たし本件奨学金の返還が免除された時点で損金の額に算入すべきである。  以上のことから、本件奨学金は、貸付金ではなく、支出した各事業年度の損金の額として算入することも認められるべきである。

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4 判断

(1) 争点1(本件各更正処分等は、重大かつ明白な瑕疵があり無効であるか否か。)について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、本件調査担当職員は、平成23年8月8日、同月9日及び10日に請求人に臨場し、その後も請求人の関与税理士と面接等の上、請求人に係る帳簿書類及び事実関係を確認し、その調査結果に基づき、原処分庁は、本件奨学金を貸付金であると認定した上で、本件奨学金は支出した時点では損金の額に算入すべきではなく、また、本件貸与規則に定める所定の年限が経過した時点で本件奨学金の返還が免除され、損金の額に算入されるとして、本件各更正処分等を行ったと認められる。
ロ 判断
 請求人は、原処分庁が本件各更正処分等において、本件奨学金が所定の時点で半額又は全額免除されるとした認定には明白な事実誤認があり、また、同処分に伴って源泉所得税を職権で還付していないこと及び本件異議決定における一部取消し処分は本件調査担当職員が調査をおろそかにしたことによるものだから、本件各更正処分等は、重大かつ明白な瑕疵があり無効である旨主張するので、これらについて検討したところ、以下のとおりである。
(イ) 本件奨学金の免除の認定及び本件異議決定について
 課税処分が無効というためには、当該処分に重大かつ明白な瑕疵がなければならず、ここにいう重大かつ明白な瑕疵とは、課税処分の要件の存在を肯定する原処分庁の認定に重大かつ明白な瑕疵が存することを要し、また、明白な瑕疵とは、課税処分の成立の当初から、誤認であることが外形上、客観的に明白である場合を指すものと解される。
 これを本件についてみると、原処分庁は、本件各更正処分等をするに当たって、上記イのとおり、本件調査担当職員が本件奨学金に係る事実関係を確認した上で、その調査結果に基づき、本件貸与規則に定めるとおり所定の年限が経過した時点で本件奨学金の返還の免除条件が満たされたものと評価したことからすると、原処分庁は、把握した事実関係を前提に課税要件が充足するかどうか評価を行った上で、本件各更正処分等に至ったものであるから、課税処分の成立の当初から、誤認であることが外形上、客観的に明白であるとはいえず、そもそも事実誤認の余地はないというべきである。
 また、本件異議決定により一部を取り消したことの原因が、本件調査担当職員が調査すべき事項を見落としたことにあったとしても、そのことは課税処分に外形上、客観的に明白な瑕疵があるかどうかの判定に直接関係を有するものではない。
(ロ) 源泉所得税の職権還付について
 原処分庁が源泉所得税を職権で還付するかどうかは、本件各更正処分等の適否に何ら影響を与えない。
(ハ) 以上のことから、請求人の主張はいずれも理由がなく、本件各更正処分等は無効とはいえない。

(2) 争点2(本件各再更正処分等は、調査手続が違法又は不当な処分に当たるか否か。)について

イ 法令解釈
(イ) 法人税法第130条第1項にいう帳簿書類の調査は、青色申告法人の有する帳簿及び伝票、契約書等の書類について突き合わせ分析等をすることのほか、取引先等の裏付調査など帳簿に記載された経費等が真実かつ正確であるかどうかを確認するための調査を含み、また、この調査は、資料収集のみならず、既に収集済みの帳簿等の資料の検討をも含むものというべきである。
 また、通則法第26条に規定する調査とは、課税標準等又は税額等を認定するに至る判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠資料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈を経て更正処分に至るまでの思考、判断を含む極めて包括的な概念であって、その調査の方法、範囲、程度など具体的手続については、実定法上何ら規定されておらず、課税庁に広範な裁量権が認められており、帳簿及び伝票、契約書等の書類について突き合わせ分析や資料収集をすることのほか、既に収集済みの帳簿等の資料の検討をも含むものと解するのが相当である。
(ロ) 通則法第83条第3項は、異議審理庁の決定に関する規定であり、この規定の趣旨は、異議決定手続内において増額決定をすることを禁止するもので、改めて別個の手続で再更正処分をすることまで禁止する趣旨ではないと解するのが相当である。
ロ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、本件各再更正処分等に係る原処分庁所属の担当職員(以下「本件再調査担当職員」という。)は、請求人に臨場せず、本件各更正処分等及び本件異議決定に係る調査時において既に収集済みであった証拠資料等を確認したところ、本件奨学金の一部が福利厚生費として損金の額に算入すべき時期が誤っていたことが判明したので、本件各再更正処分等をしたことが認められる。
ハ 判断
(イ) これを本件についてみると、上記ロのとおり、本件再調査担当職員は、本件各更正処分等及び本件異議決定に係る調査時において既に収集済みの資料等を確認し、本件奨学金の一部が福利厚生費として損金の額に算入すべき時期が誤っていたと評価していることが認められるから、本件再調査担当職員は、法人税法第130条第1項及び通則法第26条に基づく調査を行ったというべきである。
(ロ) なお、上記イの(ロ)のとおり、通則法第83条第3項は異議審理庁の決定に関する規定であり、税務署長が行う再更正又は決定に適用されるものではないことから、本件各再更正処分等は通則法第83条第3項にも反しない。
(ハ) そうすると、請求人が主張するように、本件各再更正処分等に係る調査が請求人に見えず、また、本件各再更正処分に係る内容について説明がなかったとしても、上記(イ)及び(ロ)のとおり、本件再調査担当職員は各法令に規定する調査を行っており、本件再更正処分等には当該各規定に反する違反はないのであるから、この点に関する請求人の主張はいずれも理由がない。

(3) 争点3(本件奨学金は、支出した各事業年度の損金の額に算入すべきか否か。)について

イ 法令解釈
 法人税法第22条第3項は、内国法人の各事業年度における所得の金額の計算上、当該事業年度の損金の額に算入される金額を明らかにしており、損金の額に算入される金額とは、別段の定めがあるものを除き、まる1当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額(同項第1号)、まる2当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用の額(同項第2号)及びまる3当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの(同項第3号)とされ、ここにいう損金とは、純資産の減少の原因となる支出その他経済的価値の減少をいうものと解される。
 そして、まる1収益に係る売上原価等の額(同項第1号)とは、収益獲得のために費消された財貨及び役務の提供の対価のうち、収益に直接かつ個別的に関連した費用の額(費消された財貨及び役務の提供の対価の額)が該当し、まる2販売費、一般管理費その他の費用の額(同項第2号)とは、収益に個別的には関連しないが、当該事業年度の収益獲得のために費消された財貨及び役務の対価をいうものであり、いわゆる期間損益に属する費用の額が該当し、まる3損失の額(同項第3号)とは、偶発的ないしは特殊の損失をいい、災害、盗難等通常の事業活動とは無関係な偶発的要因により発生する資産の減少の額が該当すると解される。
 さらに、企業会計上、販売費、一般管理費等については、いわゆる期間対応により発生した事業年度で計上されることになるが、法人税法上の損金の額とされるためには、「債務の確定」していることを要件としており、これは法人税法が特に認める場合を除き、引当金や見越費用等の計上を認めない趣旨と解されている。
ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件奨学金について
A 上記1の(4)のロ及びハのとおり、本件各奨学金受給者は、本件奨学金を受けるに当たって、本件各奨学金申請書を提出しており、同申請書には、本件貸与規則に従うことを誓約する旨記載されていることから、本件各奨学金受給者と請求人との間には本件貸与規則が規定する内容に従う旨の合意があると認められる。
B 本件貸与規則について
(A) まず、上記1の(4)のハのとおり、本件奨学金を支給するに当たって、請求人が、本件各奨学金申請書を本件各奨学金受給者から提出させており、その中には連帯保証人の署名押印があることから、本件貸与規則第4条及び第5条に従って支給していることが認められる。
(B) そして、本件奨学金は、上記1の(4)のホのとおり支給され、その金額は本件貸与規則第2条に従って支給したことが認められる。
(C) さらに、本件奨学金支給後、請求人を退職したPに対しては、上記1の(4)のヘのとおり、本件奨学金の一部の返還を免除し一部を返還させたことからすると、本件貸与規則第7条に基づき返還させたことが認められる。
C 請求人が、Pを除く他の本件各奨学金受給者に対して、本件奨学金の返還を免除する旨の意思表示を示した証拠は存在せず、また、原処分庁から本件奨学金の返還の免除がなされたことを裏付ける証拠の提出もない。
(ロ) 本件奨学金の支払方法について
A 本件奨学金のうち、本件定額奨学金、教科書代及び制服費等については、請求人から本件各奨学金受給者に対し直接支給され、本件各奨学金受給者が負担すべき入学金及び授業料については、請求人が本件各奨学金受給者に代わって、請求人から本件専門学校に対し直接支払われている。
B 請求人は、本件定額奨学金について、本件各奨学金受給者の毎月の給与支給明細の支給欄に「『奨学』11,000円」と記載して源泉所得税の課税対象額として税額を計算し、給与、手当等とともに本件各奨学金受給者の預金口座に振り込んで支払っている。
ハ 判断
(イ) これを本件についてみると、上記1の(4)のロのとおり、本件貸与規則には返還義務が定められており、上記ロの(イ)のAのとおり、請求人と本件各奨学金受給者との間では、本件奨学金の支給に当たり、同規則に基づいて支給されることの合意があると認められるから、本件貸与規則は、民法第587条の規定する金銭消費貸借を定めたものと評価できる。
 また、上記ロの(イ)のBのとおり、請求人は、本件貸与規則第4条及び第5条に従い、本件各奨学金受給者から本件各奨学金申請書を提出させ連帯保証人の署名押印を求め、本件奨学金は同第2条に従った金額とし、退職した際には同第7条に基づき本件奨学金の一部を免除し、残りを返還させていることからすると、本件貸与規則は、その規定どおり運用していると認めることが相当である。
 さらに、上記ロの(ロ)のAのとおり、本件奨学金のうち、本件定額奨学金及び教科書代等については請求人から本件各奨学金受給者に直接支給され、入学金等については請求人から本件専門学校へ直接支払われているが、本件専門学校からの合格通知書等は本件各奨学金受給者個人宛に送付されていることから、実質は本件奨学金が請求人から本件各奨学金受給者に対して支給されたと判断することができる。
 そうすると、請求人は、本件貸与規則に基づき、本件各奨学金申請書を提出した者に対し本件奨学金を支給していることが認められる。また、本件奨学金の返還については、本件貸与規則第7条第2項が定めるとおり、一定期間の勤務を条件に免除されることが予定されていることから、本件奨学金は債務免除の条件が付された貸付金であると解するのが相当である。よって、本件奨学金は、支給時点においては貸付金であることから、損金の額に算入される余地はない。
 一方、本件奨学金を法人税法第22条第3項第2号及び第3号の規定により損金の額に算入するためには、上記イのとおり、その返還免除の意思表示がなされ、債務が確定するか偶発的ないしは特殊の損失が発生する必要があるところ、上記ロの(イ)のBの(C)及びCのとおり、請求人は、既に退職したPを除く他の本件各奨学金受給者に対し、本件奨学金の返還を免除する旨の意思表示を示した証拠は存在せず、返還免除をした事実が認められないことからすると、本件各事業年度終了の日までに本件奨学金を損金の額に算入することはできない。
 以上のことから、本件奨学金は、支給時点においては貸付金であり損金の額に算入することはできず、また、本件各事業年度終了の日までに、その返還免除の意思表示もなされていないことから、本件各事業年度において損金の額に算入することはできない。
(ロ) 請求人の主張について
A 請求人は、本件貸与規則は拘束力を有さないいわゆる紳士協定にすぎず、本件貸与規則どおりに運用されている実態もない旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)のとおり、本件貸与規則は、その規定どおり運用されている実態は明らかである一方で、本件貸与規則が実態を有さない紳士協定であるという請求人の主張を認めるに足る証拠はない。
B 請求人は、退職時に本件奨学金の返還免除が発生したのはPの事例だけであり、これはレアケースにすぎない旨主張する。
 しかしながら、たとえ請求人を退職した本件各奨学金受給者がPだけであったとしても、上記1の(4)のヘ及びロの(イ)のBの(C)のとおり、Pについては、本件貸与規則に基づき、退職を契機に本件奨学金の約半額が返還された事実は否定できず、むしろこのことは、当該事実が本件奨学金を債務免除条件付貸付金と請求人が解していることに他ならない。
C 請求人は、本件貸与規則が貸付金を定めた金銭消費貸借等の証拠と考えているのであれば、10年以上入学金や授業料を改訂しないなどずさんなことはしていない旨主張する。
 しかしながら、本件貸与規則を10年以上改定していないことが、本件貸与規則が金銭消費貸借を定めたものでないとする根拠にはならない。
D 請求人は、本件奨学金の経済的実質は、日々の医業収益に直接対応する給与関連費であり、法人税法第22条第3項第1号が規定する売上原価等の額に該当する旨主張する。
 しかしながら、上記イに照らしてみると、法人税法第22条第3項第1号に規定する収益に係る売上原価等の額とは、収益獲得のために費消された財貨及び役務の提供の対価のうち、収益に直接かつ個別的に関連した費用の額とされ、本件奨学金は、請求人が本件各奨学金受給者に対し支給した時点において貸し付けたこととなり、その時点では、収益に直接かつ個別的に関連した費用の額にはならず、法人税法第22条第3項第1号に規定する売上原価等の額になり得ないものである。
E 請求人は、本件奨学金は、本件貸与規則により退職事由が発生したときの精算(返還・免除)とは別個の取引として会計・税務処理してきており、法人税法第22条第4項に規定する「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算され」たものである旨主張する。
 しかしながら、法人税法第22条第4項が収益の額及び損金の額についての規定であることからすると、上記(イ)のとおり、本件奨学金は債務免除条件付貸付金であり、たとえ請求人が主張するような会計処理をしていたとしても、返還されることにより益金の額に算入されることはなく、また、免除されるまでは損金の額に算入されないのであるから、本件奨学金について当該規定を適用する余地はない。
F 請求人は、本件各奨学金受給者に対し本件定額奨学金を毎月給与として支払う一方、本件各奨学金受給者も同じく給与と認識して受領していることから、そのいずれもが本件定額奨学金を貸付金ではなく給与として認識している旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)のとおり、本件奨学金の一部である本件定額奨学金については、その支給時点においては、請求人が本件各奨学金受給者に対し貸与したものであり、また、本件定額奨学金の支給名目が「給与」であったとしても、そのことをもってその返還義務を免除したとする意思表示をしたことにはならず、返還を予定しない給与と解することはできない。また、このことは、上記1の(4)のヘのとおり、Pが本件定額奨学金を含む本件奨学金の一部を請求人に対して返還している事実からも明らかである。
G 以上のとおり、これらの点に関する請求人の主張にはいずれも理由がない。

(4) 原処分庁が行った本件奨学金の損金算入について

 原処分庁は、上記1の(4)のトの(イ)のとおり、本件各更正処分のうち、本件奨学金に関して、本件各奨学金受給者の本件専門学校卒業後の勤続年数が2年を超える場合にその半額、3年を超える場合にはその残額の免除を認め所得金額から減算した。
 しかしながら、上記(3)のハの(イ)のとおり、貸付金たる本件奨学金を法人税法第22条第3項の規定により損金の額に算入するためには、返還免除の意思表示がなされていることが必要であるところ、上記1の(4)のロのとおり、本件貸与規則第7条の返還免除の基準は、返還免除の可能性があることと、おおむねの目安を定めたにすぎず、これをもって確定的な返還免除があったとすることはできない。
 また、上記1の(4)のニによれば、本件各りん議書には、本件奨学金を免除する基準が記載されているようにも認められるが、このことは、請求人内部における本件奨学金承認のための書類上の確認事項にすぎず、これをもって請求人が本件各奨学金受給者と合意したものではないから、本件各りん議書を根拠として本件奨学金の返還免除の意思表示がされたとは認められない。
 さらに、上記(3)のハの(イ)のとおり、請求人が、本件奨学金の返還を免除する旨の意思表示をした事実も認められない。
 以上のことからすると、本件奨学金のうち、原処分庁が所得金額から減算した金額については、本件各事業年度においていずれも貸付金であり、損金の額に算入することは認められないといわざるを得ない。

(5) 本件各更正処分等及び本件各再更正処分等について

イ 本件各更正処分及び本件各再更正処分の適法性
 上記(1)ないし(3)のとおり、本件各更正処分(本件異議決定により一部が取り消された後のもの。以下同じ。)及び本件各再更正処分には、いずれも取り消すべき理由はなく、また、上記(4)のとおり、本件奨学金の一部について、原処分庁が返還を免除されたとして本件各事業年度の所得金額から減算したことは認められず、これを前提に別表5の「番号」欄のまる8ないしまる10のとおり、所得金額から減算した金額を所得金額に加算し、対応する未納事業税の額を翌事業年度の所得金額から減算したとしても、請求人の本件各事業年度における所得金額及び納付すべき税額を算定すると、本件各事業年度における所得金額は、それぞれ○○○○円、○○○○円、○○○○円、○○○○円となり、また、本件各事業年度における納付すべき税額は、それぞれ○○○○円、○○○○円、○○○○円、○○○○円となり、いずれの額も本件各更正処分及び本件各再更正処分の金額と同額となるか又はこれを上回るから、本件各更正処分及び本件各再更正処分はいずれも適法である。
ロ 本件各賦課決定処分及び本件各再賦課決定処分の適法性
 本件各更正処分及び本件各再更正処分は、上記イのとおりいずれも適法であり、また、それぞれの更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定により行った本件各賦課決定処分及び本件各再賦課決定処分はいずれも適法である。

(6) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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