(平成25年6月5日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、原処分庁が、F社が会社法第2条《定義》第29号の吸収分割により、E社(旧商号はG社。以下「本件滞納会社」という。)から国税徴収法(以下「徴収法」という。)第38条《事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務》に規定する事業の譲渡を受けたとして、F社の包括承継人である審査請求人(以下「請求人」という。)に対して、第二次納税義務の納付告知処分をしたことに対し、請求人が、F社は同条に規定する特殊関係者に該当せず、包括承継人である請求人は同条の第二次納税義務を負わないと主張して、同処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯等

イ 本件滞納会社は、平成23年12月12日現在、別表1記載の国税(以下「本件滞納国税」という。)を滞納していた。
ロ 原処分庁は、平成23年12月12日付で、請求人に対し、請求人が、徴収法第38条の規定に基づき、本件滞納国税について別表2記載の各土地を限度とする第二次納税義務を負うとして、同法第32条《第二次納税義務の通則》第1項の規定に基づき、第二次納税義務の納付告知処分(以下「本件納付告知処分」という。)をした。
ハ 請求人は、平成24年2月9日、本件納付告知処分に不服があるとして、異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年5月9日付で棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、平成24年6月8日、異議決定を経た後の本件納付告知処分になお不服があるとして審査請求をした。

(3) 関係法令等の要旨

 別紙1記載のとおりである(なお、略称は本文中の例による。)。

(4) 基礎事実

 次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人について
 請求人は、昭和35年3月○日、H社の商号で、ゴルフ場の経営等を目的として設立された株式会社である。
 なお、請求人は、平成21年8月○日、商号をA社に変更した。
ロ 本件滞納会社について
(イ) 本件滞納会社は、平成元年4月○日、G社の商号で、ゴルフ場の経営等を目的として設立され、平成5年からRカントリー倶楽部の名称のゴルフ場を経営していた株式会社である。
(ロ) 本件滞納会社は、資金繰りの悪化により、平成16年2月○日、e地方裁判所に対して、民事再生法第21条《再生手続開始の申立て》の規定に基づく再生手続開始を申し立て、平成17年10月○日、同裁判所がした再生計画認可決定が確定した。
(ハ) その後、本件滞納会社は、平成18年11月30日、e地方裁判所に対して、上記認可確定に係る再生計画の変更を申し立て、平成19年3月○日、同裁判所がした再生計画変更決定が確定した。
(ニ) なお、本件滞納会社は、平成19年2月○日、商号をE社に変更した。
ハ J社について
 J社(旧商号はK社。)は、昭和56年9月○日、ゴルフ場の経営等を目的として設立され、ゴルフ場を経営している株式会社である。
ニ F社について
 F社は、平成18年6月○日、J社の全額出資により、ゴルフ場の経営等を目的として、資本金3,000,000円、発行済株式総数60株で設立された株式会社である。
ホ 本件滞納会社からJ社への事業承継に係る計画について
 J社は、まる1J社が全額出資する子会社を設立し、まる2当該子会社を吸収分割承継会社として本件滞納会社を吸収分割する方法により、本件滞納会社のゴルフ場(Rカントリー倶楽部)経営事業(以下「本件事業」という。)をいったん当該子会社に承継させ、まる3当該子会社の全株式を買収する方法により、本件事業を承継することを計画し、当該子会社として、上記ニのとおりF社を設立した。
ヘ 本件滞納会社とF社との吸収分割契約について
 本件滞納会社及びF社は、平成18年11月27日、本件滞納会社を吸収分割会社、F社を吸収分割承継株式会社として、要旨次のとおりの会社分割契約(以下「本件吸収分割契約」といい、本件吸収分割契約に係る会社分割を「本件吸収分割」という。)を締結した。
(イ) 本件滞納会社は、下記(ハ)の本件吸収分割の効力発生日の前日までに上記ロの(ロ)の認可確定に係る再生計画が上記ロの(ハ)のとおり変更され、当該変更の効力が発生していることを停止条件として、吸収分割の方法により、下記(ハ)の本件吸収分割の効力発生日において、本件滞納会社が本件事業に関する権利義務のうち本件吸収分割契約において定めるものを、F社に分割して承継させ、F社は、これを承継する。
 なお、上記承継の対象となる本件事業に関する権利義務は、別紙2のとおりである(略称は本文中の例による。)。
(ロ) F社は、本件滞納会社に対して、本件吸収分割に際して、F社が新たに発行する普通株式18,000株(以下「本件株式」という。)を表章する株券を交付する。
(ハ) 本件吸収分割の効力発生日は、平成19年2月1日とするが、必要があるときは本件滞納会社とF社との間で協議して変更することができる(なお、本件吸収分割の効力発生日は、平成19年1月30日に、同年4月1日と変更された。)。
ト 本件滞納会社とJ社との株式譲渡契約について
 本件滞納会社及びJ社は、平成18年11月27日、本件滞納会社を譲渡人、J社を譲受人、その他複数の第三者を保証人として、要旨次のとおりの株式譲渡契約(以下「本件株式譲渡契約」といい、本件株式譲渡契約に係る本件株式の譲渡を「本件株式譲渡」という。)を締結した。
(イ) 本件株式譲渡契約に定めるところに従い、本件滞納会社は、J社に対して、本件株式を譲り渡し、J社は、これを譲り受ける。
(ロ) 本件株式の譲渡価額は、1,199,000,000円から本件吸収分割によりF社が承継する負債の合計額(預託金債権等により調整した後のもの)を控除した金額とする。
(ハ) 本件株式譲渡は、所定の事項が充足されていることを条件として、下記(ニ)の本件株式譲渡の実行日において、まる1本件滞納会社がJ社に対して、本件株式の全部を表章する株券を交付することと、まる2J社が本件滞納会社に対して、本件株式の譲渡価額の一部として820,000,000円を指定口座に振込送金して支払うことを、同時履行する方法により行う。
(ニ) 本件株式譲渡の実行日は、所定の事項が充足されていることを条件として、平成19年2月1日とするが、必要があるときは本件滞納会社とJ社との間で協議して変更することができる(なお、本件株式譲渡の実行日は、平成19年3月30日に、同年4月1日と変更された。)。
(ホ) 本件滞納会社は、上記ヘの(ハ)の本件吸収分割の効力発生日から上記(ニ)の本件株式譲渡の実行日までの間、本件株式について、譲渡その他の一切の処分を行わない。
チ 本件吸収分割の承認について
 本件滞納会社及びF社は、平成18年12月15日、それぞれ臨時株主総会を開催し、当該各臨時株主総会の決議によって、本件吸収分割契約の承認を受けた。
リ 本件吸収分割の効力発生及び本件株式譲渡の実行について
 本件吸収分割は、平成19年4月1日にその効力が発生し、同日、まる1本件滞納会社は、F社に対して、吸収分割の方法により、別紙2記載の本件事業に関する権利義務を承継させ、まる2F社は、本件株式を新たに発行した。
 また、本件滞納会社は、平成19年4月1日、J社に対して、本件株式譲渡をした。
 なお、本件滞納会社は、平成19年4月1日、F社に対して、本件吸収分割契約に基づき、本件株式を表章する株券の発行を請求するとともに、当該株券を直接J社に引き渡すよう指図し、F社は、同日、J社に対して、当該株券を引き渡した。
ヌ 請求人とF社との関係について
 次の経緯により、請求人は、F社の権利義務の全部を包括承継した。
(イ) F社は、平成20年3月○日、L社に吸収合併され、解散した。
(ロ) L社は、平成21年3月○日、M社に吸収合併され、解散した。
(ハ) M社は、平成21年10月○日、請求人に吸収合併され、解散した。

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2 争点

 F社は、徴収法第38条に規定する「特殊関係者」に該当するか否か(国税徴収法施行令(以下「徴収法施行令」という。)第13条《納税者の特殊関係者の範囲》第1項第6号の「納税者を判定の基礎として同族会社に該当する会社」に該当するか否か。)。

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3 主張

(1) 原処分庁

イ 会社法第757条《吸収分割契約の締結》に規定する吸収分割による権利義務の承継は、徴収法第38条の事業譲渡に該当するものと解されるところ、会社法第759条《株式会社に権利義務を承継させる吸収分割の効力の発生等》第1項が「吸収分割承継株式会社は、効力発生日に、吸収分割契約の定めに従い、吸収分割会社の権利義務を承継する。」と規定していることからすると、吸収分割の場合においては、当該効力発生日に徴収法第38条の事業譲渡があったものと解するのが相当であり、本件においては、本件吸収分割の効力発生日である平成19年4月1日に徴収法第38条の事業譲渡があったものである。
 そして、徴収法第38条に規定する「特殊関係者」の判定時期は、納税者がその事業を譲渡した時の現況による(徴収法施行令第13条第2項)ところ、本件において、本件滞納会社は、平成19年4月1日にF社の株式18,000株の交付を受け、その結果、同日時点において、F社の発行済株式総数である18,060株の50%を超える株式を所有していたものである。
 したがって、F社は、本件滞納会社を判定の基礎として同族会社に該当する会社(徴収法施行令第13条第1項第6号、法人税法第2条《定義》第10号)であると認められるので、徴収法第38条に規定する「特殊関係者」に該当する。
ロ 請求人は、本件滞納会社はJ社の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意しているとして、F社が徴収法第38条に規定する「特殊関係者」に該当しない旨を主張するが、本件株式譲渡契約の定めをもって、本件滞納会社がF社の議決権の行使につきJ社の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意していたとみることはできない。

(2) 請求人

イ 徴収法第38条に規定する「特殊関係者」の判定時期は、納税者がその事業を譲渡した時の現況による(徴収法施行令第13条第2項)ところ、徴収法の個別通達である昭和52年6月7日付徴徴2−9ほか6課共同(例規)第二次納税義務関係事務提要(以下「第二次納税義務関係事務提要」という。)第7章《事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務》第2節《第二次納税義務を負う者》98《親族その他の特殊関係者の判定時期》の定めによると、徴収法施行令第13条第2項に規定する「事業を譲渡した時」とは、主たる納税者が法人である場合には、事業譲渡についての株主総会等の特別決議等があった時をいうものと解される。
 そうすると、本件においては、本件滞納会社が臨時株主総会を開催し、本件吸収分割についての承認決議がされた平成18年12月15日が「事業を譲渡した時」であり、この時点では、J社がF社の発行済株式の全部を所有していたから、F社は徴収法第38条に規定する「特殊関係者」に該当しない。
ロ 仮に、徴収法施行令第13条第2項に規定する「事業を譲渡した時」が平成19年4月1日であるとしても、次の理由から、F社は徴収法第38条に規定する「特殊関係者」に該当しない。
 すなわち、まる1本件株式譲渡契約からすると、本件滞納会社は、本件吸収分割の効力発生日である平成19年4月1日以降、F社の株式について譲渡その他の一切の処分を行うことができず、まる2連結納税基本通達(平成22年6月30日付課法2−1ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」による改正前のもの。以下同じ。)1−2−3《完全支配関係を有することとなった日の意義》の定めによると、平成22年10月1日前に締結された株式の購入に係る契約については、完全支配関係を有することとなった日とは契約成立時であるため、本件株式譲渡契約の締結日である平成18年11月27日以降、J社がF社を支配していることになる。
 そうすると、本件滞納会社は、実質的にJ社の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者であると解され、法人税法施行令第4条《同族関係者の範囲》第6項の規定により、J社がF社の議決権総数の全てを保有していたとみることができるので、本件滞納会社をF社の同族判定株主の範囲に含める合理的根拠はない。

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4 判断

(1) 法令解釈

イ 吸収分割の方法により事業譲渡がされた場合における事業譲渡の時期について
 徴収法は事業譲渡について定義規定を置いていないから、徴収法第38条に規定する事業譲渡とは、私法上の事業譲渡と同義と解されるところ、私法上の事業譲渡とは、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部又は重要な一部を譲渡し、これによって、譲渡会社がその財産によって営んでいた営業的活動の全部又は重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に、平成17年法律第87号による改正前の商法第25条ないし現在の会社法第21条《譲渡会社の競業の禁止》に定める競業避止義務を負う結果を伴うものをいうものと解するのが相当である(最高裁昭和40年9月22日大法廷判決・民集第19巻第6号1600頁参照)。
 ところで、会社分割は、事業部門の分離・独立など経営効率化のための組織再編手段として用いられるほか、事業の売却や提携の手段としても活用されるものであり、法形式においては事業譲渡と異なるが、その実質においては事業譲渡と同様の効果を目的とするものということができるから、会社分割によって事業譲渡が行われた場合についても、徴収法第38条に規定する事業譲渡に該当するものと解すべきであり、吸収分割の方法により事業譲渡がされる場合、吸収分割の効力は吸収分割契約に定められた効力発生日に生ずるものである(会社法第759条第1項)から、吸収分割の方法により事業譲渡がされる場合における事業譲渡の時期とは、その吸収分割の効力発生日というべきである。
ロ 吸収分割の方法により事業譲渡がされた場合における徴収法第38条に規定する「特殊関係者」該当性の判定時期について
 徴収法施行令第13条第2項は、徴収法第38条の規定を適用する場合において、「特殊関係者」に該当するかどうかの判定は、納税者がその事業を譲渡した時の現況による旨規定しているところ、上記イのとおり、吸収分割の方法により事業譲渡がされた場合、吸収分割契約に定められた当該吸収分割の効力発生日に事業譲渡がされたものというべきであるから、吸収分割の方法により事業譲渡がされた場合における「特殊関係者」に該当するかどうかの判定は、吸収分割契約に定められた当該吸収分割の効力発生日の現況によることとなる。
 また、吸収分割契約において、吸収分割承継株式会社が吸収分割に際して吸収分割会社に対してその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる吸収分割承継株式会社の株式を交付するときの当該株式の数等に関する事項についての定めがある場合(会社法第758条《株式会社に権利義務を承継させる吸収分割契約》第4号イ)、吸収分割会社は、当該吸収分割の効力発生日に吸収分割承継株式会社の株式の株主となる(会社法第759条第4項第1号)ことからすると、吸収分割の方法により事業譲渡がされ、かつ、会社法第758条第4号イの定めがある場合には、当該吸収分割の効力発生日に、当該事業譲渡がされるのと同時に、吸収分割会社が吸収分割承継株式会社の株式の株主となると解される。したがって、この場合に徴収法第38条に規定する「特殊関係者」の範囲について規定する徴収法施行令第13条第1項のうち、第6号の「納税者を判定の基礎として同族会社に該当する会社」に該当するか否かを判定するには、当該吸収分割の効力発生日の現況、すなわち、吸収分割会社が吸収分割承継株式会社の株式の株主となった株主構成により判定することとなる。

(2) 認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 請求人は、本件納付告知処分時において、本件滞納会社から承継したRカントリー倶楽部の経営事業を、本件滞納会社が営んでいたのと同一の場所において営んでいた。
ロ 本件滞納会社は、本件納付告知処分時において、本件滞納国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足する(以下「徴収不足」という。)状態であった。
ハ 本件納付告知処分において請求人が負うべき第二次納税義務の限度とされる別表2記載の各土地は、本件滞納会社からの譲受財産である。

(3) 当てはめ

イ 上記1の(4)のヘの(イ)及び同リのとおり、F社は、本件吸収分割契約に基づき、吸収分割の方法により、本件滞納会社から、別紙2のとおりの本件事業に関する権利義務を承継しているところ、上記1の(4)のホのとおり、当該承継は、本件滞納会社からJ社への事業承継に係る計画の一環として行われたものであるから、その実質においては事業譲渡と同様の効果を目的とするものである。そして、上記(1)のイで述べたとおり、会社分割によって事業譲渡が行われた場合についても、徴収法第38条に規定する事業譲渡に該当するものと解すべきであるから、本件吸収分割は、会社分割により事業譲渡が行われた場合として、徴収法第38条の事業譲渡に該当するものである。
 そして、上記(1)のイのとおり、吸収分割の方法により事業譲渡がされた場合、吸収分割契約に定められた当該吸収分割の効力発生日に事業譲渡がされたものというべきであるところ、上記1の(4)のヘの(ハ)のとおり、本件吸収分割契約において定められた効力発生日(変更後のもの)は平成19年4月1日であるから、F社が、本件吸収分割により、本件滞納会社から事業を譲り受けたのは、平成19年4月1日である。
ロ また、上記1の(4)のヘの(ロ)のとおり、本件吸収分割契約において、F社が本件吸収分割に際して本件滞納会社に対して本件株式を表章する株券を交付する旨が定められるとともに、本件株式が、F社が新たに発行する普通株式18,000株であることについても定められている(会社法第758条第4号イ)ところ、上記(1)のロのとおり、吸収分割の方法により事業譲渡がされ、かつ、吸収分割契約において会社法第758条第4号イの定めがある場合には、当該吸収分割の効力発生日に、当該事業譲渡がされるのと同時に、吸収分割会社が吸収分割承継株式会社の株式の株主となると解されるから、本件の場合、本件吸収分割の効力発生日である平成19年4月1日に、本件吸収分割により本件滞納会社からF社に事業譲渡がされたのと同時に、本件滞納会社が本件株式(F社の普通株式18,000株)の株主となったものである。
 そして、F社が徴収法施行令第13条第1項第6号の「納税者を判定の基礎として同族会社に該当する会社」に該当するか否かを判定するには、上記(1)のロのとおり、本件吸収分割の効力発生日の株主構成によることとなるところ、本件滞納会社は、本件吸収分割の効力発生日である平成19年4月1日において、単独でF社の発行済株式総数(18,060株)の約99.6%に相当する18,000株を保有する株主であるから、F社は、法人税法第2条第10号が規定する同族会社に該当し、徴収法施行令第13条第1項第6号の「納税者を判定の基礎として同族会社に該当する会社」にも該当する。
ハ 以上から、F社は、本件滞納会社がF社に事業譲渡をした時の現況(徴収法施行令第13条第2項)において、本件滞納会社を判定の基礎として同族会社に該当する会社(徴収法施行令第13条第1項第6号)に該当し、徴収法第38条に規定する「特殊関係者」に該当する。

(4) 請求人の主張について

イ 請求人は、上記3の(2)のイのとおり、第二次納税義務関係事務提要第7章第2節98の定めを根拠として、本件滞納会社の臨時株主総会において本件吸収分割についての承認決議がされた平成18年12月15日が「事業を譲渡した時」であり、この時点では、J社がF社の発行済株式(60株)の全部を保有していたから、F社は徴収法第38条に規定する「特殊関係者」に該当しない旨主張する。
 しかしながら、会社法第759条第1項は、吸収分割承継株式会社が当該吸収分割の効力発生時に吸収分割会社の権利義務を承継する旨を定めているのであるから、吸収分割の方法により吸収分割承継株式会社が吸収分割会社の事業を譲り受けた場合には、上記(1)のイのとおり解するのが相当であり、これに反する請求人の主張を採用することはできない。
ロ また、請求人は、上記3の(2)のロのとおり、まる1本件株式譲渡契約上、本件滞納会社は、平成19年4月1日以降、F社の株式について譲渡その他の一切の処分を行うことができず、まる2連結納税基本通達1−2−3の定めによると、本件株式譲渡契約の締結日である平成18年11月27日以降、J社がF社を支配していることになるので、本件滞納会社は、実質的にJ社の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者であると解され、法人税法施行令第4条第6項の規定により、J社がF社の議決権総数の全てを保有していたとみることができるので、本件滞納会社をF社の同族判定株主の範囲に含める合理的根拠はないとして、F社は徴収法第38条に規定する「特殊関係者」に該当しない旨主張する。
 しかしながら、連結納税基本通達1−2−3の定めは、連結納税を選択した納税者において完全支配関係を有することとなった日の意義を定めたものにすぎず、また、上記まる1の事実及び上記まる2の連結納税基本通達の定めが存在する事実によって、本件滞納会社がJ社と同一の内容の議決権を行使することに同意している者(法人税法施行令第4条第6項)であると認めることはできないから、請求人の主張は前提を欠くものであって、理由がない。

(5) 本件納付告知処分の適法性

 上記(3)のとおり、F社は、本件滞納会社がF社に事業譲渡をした時の現況において、徴収法第38条に規定する「特殊関係者」に該当するから、本件滞納会社は、平成19年4月1日に、特殊関係者であるF社に事業を譲渡したものであり、かつ、上記(2)のイのとおり、本件納付告知処分の時点において、F社は、本件滞納会社と同一の場所において同一の事業を営んでいたものである。また、上記(2)のロのとおり、本件納付告知処分の時点において、本件滞納会社は、本件滞納国税について徴収不足の状態であったと認められ、上記(2)のハのとおり、本件納付告知処分により請求人が負うべき第二次納税義務は譲受財産を限度とするものである。さらに、上記事業譲渡は、別表1の本件滞納国税の法定納期限より1年以上前にされたものではない。そして、上記1の(4)のヌのとおり、請求人は、F社の権利義務の全部を包括承継しているから、請求人に対してされた本件納付告知処分は適法である。
 なお、上記1の(4)のリのとおり、本件滞納会社は、平成19年4月1日、まる1F社に対して、本件株式を表章する株券の発行を請求するとともに、当該株券を直接J社に引き渡すよう指図し、また、まる2J社に対して、本件株式譲渡をしている。しかしながら、徴収法第38条の第二次納税義務が成立した後に吸収分割会社である本件滞納会社(事業譲渡人)が吸収分割承継株式会社であるF社(事業譲受人)の株式を他に譲渡して株主構成が変動したことにより、F社が徴収法第38条に規定する「特殊関係者」に該当しなくなったとしても、そのことによって一旦成立した徴収法第38条の第二次納税義務が消滅する旨の法令の規定は存しないから、同条の適用が否定されることとなるものではない。

(6) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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