別紙3

主張

(1) 争点1−1(本件更正処分等に、行政手続法第14条第1項及び第3項は適用されるか否か。)について

請求人 原処分庁
 税務署長の更正処分において理由付記について適用除外を定めた行政手続法第3条第1項第6号は、憲法第31条及び第32条に反し無効であり、また、更正の理由を更正通知書の記載事項としていない国税通則法(平成23年法律第114号による改正前のもの。)第28条第2項及び第74条の2も、上記各憲法条項に反し無効であるから、税務署長の更正処分については、行政手続法第14条第1項及び第3項が適用されると解すべきである。  国税不服審判所長には、法律が憲法に違反するか否かを判断する権限がないことからすれば、国税不服審判所長が違憲審査権を有することを前提とする請求人の主張は、その前提を欠き理由がない。

(2) 争点1−2(本件更正通知書等に更正の理由が具体的に付記されていないことは、行政手続法第14条第1項及び第3項に違反するか否か。)について

請求人 原処分庁
 行政手続法第14条の趣旨からすれば、税務署長は、更正処分をする場合には、その基因たる事実自体について、相手方が具体的に知り得る程度に特定して摘示しなければならないと解すべきである。
 しかし、本件更正通知書等に一部簡潔な理由の記載のみで具体的な理由の記載がなかったことは、行政手続法第14条第1項及び第3項に違反するので、本件更正処分等は違法である。
 国税通則法第74条の2において、国税の賦課徴収に関する処分については、行政手続法第2章及び第3章の規定は適用しない旨規定しており、国税通則法第28条第2項においても、更正の理由を更正通知書の記載事項としておらず、また、相続税法の更正処分を行うに際し、理由付記をなすべき旨を定めた規定はない。
 そうすると、相続税の更正通知書には理由の付記が法令により義務付けられてはいないというべきであるから、原処分庁が本件更正通知書等に具体的な理由を記載していないからといって、本件更正処分等が違法となるものではない。

(3) 争点2(本件各連帯保証債務は、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に当たるか否か。)について

原処分庁 請求人
イ 「確実と認められるもの」の解釈
 連帯保証債務は、原則として「確実と認められるもの」には当たらないが、相続開始の時点を基準として、主たる債務者がその債務を弁済することができないため保証人がその債務を履行しなければならない場合で、主たる債務者に求償しても補填を受ける見込みがないことが客観的に認められる場合には、「確実と認められるもの」に当たるものと解するのが相当である。
 そして、債務者が弁済不能の状態にあるか否かは、一般に債務者が破産、民事再生法の規定による再生手続開始の決定、会社更生あるいは強制執行等の手続開始を受け、又は事業閉鎖、行方不明、刑の執行等により債務超過の状態が相当期間継続しながら、他からの融資を受ける見込みもなく、再起のめどが立たないなどの事情により事実上債権の回収ができない状況にあることが客観的に認められるか否かで決せられると解することが相当である。
イ 「確実と認められるもの」の解釈
 主たる債務者が弁済不能で保証債務の履行が必要であり、保証債務履行後の求償権の行使が不可能であるという条件が相続開始日に現実に存在しているだけでなく、相続開始日における主たる債務者の財産状態や信用能力を客観的に観察した結果、相続開始日に、当該条件に該当する事実が潜在的に存在する場合にも、当該保証債務は、「確実と認められるもの」に当たると解すべきである。
ロ 本件各連帯保証債務について ロ 本件各連帯保証債務について
(イ) 連帯保証債務1
 連帯保証債務1は、上記イの解釈を前提に、以下の事情を総合考慮すると、「確実と認められるもの」に当たらない。
(イ) 連帯保証債務1
 連帯保証債務1は、上記イの解釈を前提に、以下の事情を総合考慮すると、「確実と認められるもの」に当たる。
A 資産・負債の状況
 N社は、平成21年6月期における貸借対照表の期末純資産価額が△1XX,XXX千円であり、債務超過の状況を示してはいるが、N社へ平成21年10月23日にU生命保険株式会社から保険金が支払われているところ、当該保険金が、保険事故の発生によってその請求権がN社に生じているものと認められ、加えて、当該保険金の額が、N社の平成21年6月期における期末純資産価額を上回っていることから、本件相続開始日において債務超過であったとは認められない。
A 資産・負債の状況
 N社は、本件相続開始日において、著しい債務超過であり、これに対し法的手続による債務の整理を行ってもP銀行への弁済は不可能である。しかも、請求人所有の担保物件の競売による換価代金、又はその任意処分による売却代金での連帯保証債務1の履行以外にP銀行らへの債務弁済の方法がない状態である。
 なお、過去において、本件被相続人の亡父(本件被相続人及び請求人の父であり平成18年10月○日に死亡したV。以下同じ)及び本件被相続人が債権放棄(債務免除)したことも併せ考えると、N社の実質的な債務超過は相当な金額に上っていたといえる。なお、N社は不動産を何件か所有しているが、オーバーローンのものか、不動産担保設定のため譲渡も一体でないと不可能で、その不動産はほとんど資産価値のないものである。
 また、N社が本件相続開始日に当該保険金の支払請求権を有していたことは、以下の理由から、上記判断を左右するものではない。
(A) 当該保険金の一部は、保険金収入に係る事業年度の法人税等の納付に充てている。
(B) 当該保険金のうち8千万円ほどを借入金の返済に充当したが、借入金の大幅な減少には至っていない。
(C) 当該保険金の一部は退職金として支出しているが、本件更正処分等による税金の納付に充てており借入金の返済に充当できない。
(D) 現在、当該保険金の残金は2〜3千万円しかなく、この残金が底をつけば倒産は確実であり、経済的な再起のめどが立たないことは明らかである。
(E) 現在の営業利益をもってしても大幅に借入金の返済原資が不足する。
B 収入・支出状況 B 収入・支出状況
(A) 請求人の主張理由は、N社が本件相続開始日において、事業を継続し、売上高があること及び借入利息を支払っていた事実を示すに留まるものである。 (A) N社の売上高は、平成21年6月期に平成17年6月期の半分にまで落ち込み、その後も減少傾向にあり、また、N社は、支払利息が多額であり、売上高の減少に伴い人件費も減少していた。
(B) N社が経常損失を計上していることは、一つの判断要素にはなるものの、本件相続開始日において債務超過の状態になかったなどの諸状況を踏まえると、弁済不能の状態にあったことを強く推認させるものではない。 (B) N社は、平成21年6月期に経常損失を計上している。
(C) N社は、P銀行以外からの借入れが一切できず、資産の譲渡も不可能である旨の主張は、請求人の主観を述べているにすぎない。 (C) 本件各会社及び個人(本件被相続人及び請求人)の所有資産全てに対して、25,000万円口の根抵当権が設定されているため、N社は、P銀行以外からの借入れが一切できず、当該資産の譲渡も不可能である。
C 借入・弁済状況 C 借入・弁済状況
(A) N社に多額の長期借入金が存在しても、返済が順調に行われていれば、弁済不能の状態にあることを推認させるものではない。
 そうすると、多額の長期借入金の存在は、必ずしもN社が本件相続開始日において弁済不能の状態にあったことを推認させるものではない。
(A) N社には多額の長期借入金があった。
(B) 上記(A)と同様に変更契約の事実も、必ずしもN社が本件相続開始日において弁済不能の状態にあったことを推認させるものではない。かえって、N社が金融機関への弁済を行う意思を有していたと評価されるものであり、また、金融機関においても直ちに債権取立てを行う意思がなかったものと推認される。 (B) N社は、P銀行との間で、変更契約を何度も繰り返し、その結果、債務償還期間が異常な年数となっていた。特に、別表3−1記載の各借入れについては、数回にわたり変更契約を行っており、一回当たりの返済額が少なくなったものの、会社の通常の資金繰りからの返済は難しく、異常あるいは突発的な収入である生命保険金を意識した回収となっていた。さらに、現在の借入状況は元金の弁済だけでも70年ないし80年を要するという異常な状態であり、金利は減らないので、赤字要素が解消されないばかりか弁済原資が不足するのが確実な状況であった。
(C) 複数回の返済が滞った事実は、上記(A)及び(B)を踏まえると、N社が本件相続開始日において弁済不能の状態にあったことを強く推認させるものではない。 (C) N社は、本件被相続人が死亡した前後も、一部の借入金について返済が滞っていた。
(D) N社は、平成23年6月30日には、25,000万円口を除く借入金について、全額弁済している。 (D) N社は、25,000万円口を除く借入金については、平成23年6月30日に全額弁済しているが、これは経営に余裕が生じて通常の資金繰りから捻出した資金で弁済したわけではない。
D P銀行の対応
 P銀行g支店の支店長、副支店長及び融資係員は、別表3−1及び別表3−2に記載されている各借入れについて、本件各会社に対して、繰上げ弁済を請求したことはなく、返済が滞った分について返済の督促を書面で行ったことも、本件被相続人に対して代位弁済を求めたこともない旨申述している。
D P銀行の対応
 本件被相続人が死亡した前後も、一部の借入金について返済が滞っていたので、本件被相続人が死亡した後に、P銀行の本店や支店の担当者から、リスケ・経営改善計画を提案されたこともあったところ、P銀行g支店の前担当者は、引落し不能の場合、請求をしないことはない旨申述している。さらに、P銀行g支店の現担当者も、本件各会社に対し、返済が滞った分の支払はいつでも良いなどとは発言しておらず、別途金利計算書を本件各会社に渡して入金してもらっている旨申述している。また、P銀行は、実際に、返済が滞った分を請求してまとめて回収している。
 なお、連帯保証債務1の履行について、P銀行から正式な書面による催告を受けていないが、少なくとも過去の弁済条件変更の際には、連帯保証債務1の履行の催告の話が出ていた。
E 営業
 N社は、本件相続開始日後も営業を継続している。
E 営業
 N社は、P銀行から新規の融資を受けられないばかりか、25,000万円口も本件保険金を全部使い果たしても全額弁済できずに1億数千万円の借入れが残り、即座に強制執行される可能性が大である。また、借入金の弁済元金をゼロにしない限り金利も払っていけない状態にあったこと、及び、実質の債務超過が多額となることからすれば、N社は、通常の状態で事業を継続していたとはいえない。
 原処分庁は、上述の事情を踏まえると、外見だけでN社を判断している。
F 平成24年10月31日現在の保証債務残高
 請求人の主張する事実については不知であるが、仮に事実であったとしても、本件の判断に当たっては、本件相続開始日を基準として判断すべきものであることから、当該事実のいかんが本件における判断に何ら影響を与えるものではない。
F 平成24年10月31日現在の保証債務残高
 請求人が本件相続により承継した連帯保証債務1及び連帯保証債務2の残高の合計は、192,136,051円もある。
G 破産等の手続開始を受けた事実
 N社において、破産、会社更生あるいは強制執行等の手続開始を受けた事実は認められない。
G 破産等の手続開始を受けた事実
 N社は、破産手続開始決定、民事再生手続開始決定、会社更生手続開始決定、強制執行、担保権の実行、仮差押え・仮処分を受けたことはないが、いつ受けてもおかしくない状況にあった。
(ロ) 連帯保証債務2
 連帯保証債務2は、上記イの解釈を前提に、以下の事情を総合考慮すると、「確実と認められるもの」に当たらない。
(ロ) 連帯保証債務2
 連帯保証債務2は、上記イの解釈を前提に、以下の事情を総合考慮すると、「確実と認められるもの」に当たる。
A 資産状況
 Q社は、平成20年9月期の資産・負債の財務諸表における期末純資産価額が2XX千円であり、本件相続開始日も債務超過の状況にないと推認される。
A 資産状況
 Q社は、近年の決算推移を考慮すると、債務超過であったことは明らかである。
B 収入状況・支出状況
 Q社は、経常利益を計上している。
B 収入状況・支出状況
 Q社は、経常利益を計上しているが、僅少である。
C 借入状況・弁済状況
 Q社の平成20年9月期の借入金債務のうち、約6割を占める本件被相続人からの借入金債務(貸付金1)については、弁済期間が定められていたという事実や本件被相続人から具体的に弁済を求められていたという事実は窺われない。
C 借入状況・弁済状況
 Q社は、P銀行及びR銀行からの借入金の返済に、亡父や本件被相続人からの代表者借入金を充てていた。
D P銀行の対応
 上記(イ)のDと同様。
D P銀行の対応
 上記(イ)のDと同様。
E 営業
 Q社は、本件相続開始日後も営業を継続している。
E 営業
 Q社は、営業を今も継続しているが、不動産賃貸業なので家賃が入ってくるのを管理するくらいである。
F 破産等の手続開始を受けた事実
 Q社において、破産、会社更生あるいは強制執行等の手続開始を受けた事実は認められない。
F 破産等の手続開始を受けた事実
 Q社は、破産手続開始決定、民事再生手続開始決定、会社更生手続開始決定、強制執行、担保権の実行、仮差押え・仮処分を受けたことはないが、いつ受けてもおかしくない状況にあった。
(ハ) 連帯保証債務3
 上記(ロ)と同様。
(ハ) 連帯保証債務3
 上記(ロ)と同様。

(4) 争点3−1(本件社員責任は、本件相続開始日において発生していたか否か。)について

原処分庁 請求人
 上記(3)での主張のとおり、本件各会社は、本件相続開始日において債務超過の状態であったとは認められないため、本件被相続人に本件相続開始日における本件社員責任が発生していたとは言い難い。  上記(3)での主張のとおり、本件各会社の本件相続開始日の資産状況等からすれば、本件被相続人に、本件相続開始日で両社の債務の全額に対して本件社員責任は、発生していたといえる。

(5) 争点3−2(本件社員責任は、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に当たるか否か。)について

原処分庁 請求人
イ 仮に、本件被相続人に本件相続開始日における本件社員責任が発生していたとしても、本件社員責任が「確実と認められるもの」に当たるか否かは、保証債務と同様に、上記(3)のイで述べた解釈により判断することが相当である。 イ 本件被相続人に本件相続開始日における本件社員責任が発生しており、本件社員責任が「確実と認められるもの」に当たるか否かは、保証債務と同様に上記(3)のイで述べた解釈により判断すべきである。
ロ そうすると、本件社員責任は、「確実と認められるもの」に当たらない。 ロ したがって、本件社員責任は、「確実と認められるもの」に当たる。

(6) 争点4(本件各貸付金は、財産評価基本通達205で定める「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」に当たるか否か。)について

原処分庁 請求人
 本件各貸付金は、以下の理由から、「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」に当たらない。  本件各貸付金の本件相続に係る相続財産の評価は、保証債務と同様に上記(3)のイで述べた解釈により判断すべきで、本件各貸付金は、以下の理由から、「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」に当たる。
イ Q社
 上記(3)のロの(ロ)と同様。
イ Q社
 上記(3)のロの(ロ)と同様。
ロ T社
 T社は、本件相続開始日前後において営業実態は認められないものの、本件相続開始日において解散しておらず、清算手続を行っていない。
ロ T社
 T社は、過去から営業収入のない状況が継続し、かつ、宅地建物取引業法に基づく取引主任者の資格を有する本件被相続人の死亡時点から営業できないことは明らかであり、その後、廃業届けをh県に提出済であることからも、貸付金の回収は不可能である。

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