(平成25年11月27日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、旅行業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、海外の旅行者向けの訪日旅行を主催する海外の旅行会社に対し、当該訪日旅行のうち国内旅行部分をパッケージツアーとして提供した取引は、輸出免税取引に該当し、当該取引の対価の額の全額は輸出免税取引の対価の額に該当するなどとして更正の請求及び更正の申出をしたのに対し、原処分庁が、更正の請求については更正をすべき理由がない旨の通知処分を行い、更正の申出については更正をする理由がない旨のお知らせを送付したことから、請求人が、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 更正をすべき理由がない旨の通知処分
(イ) 請求人は、平成22年6月1日から平成23年5月31日までの課税期間(以下「平成23年5月課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
(ロ) その後、請求人は、平成24年1月23日に、平成23年5月課税期間の消費税等について、別表1の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をしたところ、原処分庁は、これに対し、平成24年6月27日付で、更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
ロ 更正をする理由がない旨のお知らせの送付
(イ) 請求人は、平成20年6月1日から平成21年5月31日までの課税期間(以下「平成21年5月課税期間」という。)及び平成21年6月1日から平成22年5月31日までの課税期間(以下「平成22年5月課税期間」という。)の消費税等について、法定申告期限内に確定申告をした。
(ロ) その後、請求人は、平成24年1月23日に、平成21年5月課税期間及び平成22年5月課税期間の消費税等について、各更正の申出をしたところ、原処分庁は、これらに対し、平成24年7月31日付で、その更正をする理由がない旨の各お知らせ(以下「本件各お知らせ」という。)を請求人に送付した。
ハ 異議申立てと審査請求
(イ) 請求人は、本件通知処分及び本件各お知らせを不服として、平成24年8月8日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成24年11月6日付で、本件通知処分については棄却の、本件各お知らせについては却下の異議決定をした。
 なお、異議決定書の謄本の請求人への送達日は、平成24年11月7日である。
(ロ) 請求人は、異議決定を経た後の本件通知処分及び本件各お知らせに不服があるとして、平成24年12月7日に審査請求をした。

(3) 関係法令等の要旨

イ 消費税法第4条《課税の対象》第1項は、国内において事業者が行った資産の譲渡等には、消費税を課する旨規定し、同法第2条《定義》第1項第8号は、資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう旨規定しており、さらに、同項第9号は、資産の譲渡等のうち、同法第6条《非課税》第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものを課税資産の譲渡等という旨規定している。
ロ 消費税法第7条《輸出免税等》第1項は、事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、同項第1号から第5号までに掲げるものについては消費税を免除する旨規定し、同項第5号は、前各号に掲げる資産の譲渡等に類するものとして政令で定めるものを掲げている(以下、消費税法第7条第1項各号に掲げる取引を「輸出免税取引」という。)。
ハ 上記ロの消費税法第7条第1項第5号を受け、消費税法施行令(以下「施行令」という。)第17条《輸出取引等の範囲》第2項第7号は、非居住者に対して行われる役務の提供で次に掲げるもの以外のものを規定している。
(イ) 国内に所在する資産に係る運送又は保管
(ロ) 国内における飲食又は宿泊
(ハ) 上記(イ)及び(ロ)に掲げるものに準ずるもので、国内において直接便益を享受するもの
ニ 消費税法第28条《課税標準》第1項は、課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は課税資産の譲渡等の対価の額とする旨規定している。
ホ 施行令第1条《定義》第2項第2号は、非居住者とは外国為替及び外国貿易法第6条《定義》第1項第6号に規定する非居住者をいう旨規定しており、同法第6条第1項第6号は、非居住者とは居住者以外の自然人及び法人をいう旨、同項第5号は、居住者とは本邦内に住所又は居所を有する自然人及び本邦内に主たる事務所を有する法人をいい、非居住者の本邦内の支店、出張所その他の事務所は、法律上代理権があると否とにかかわらず、その主たる事務所が外国にある場合においても居住者とみなす旨規定している。
ヘ 消費税法基本通達7−2−16《非居住者に対する役務の提供で免税とならないものの範囲》は、施行令第17条第2項第7号において輸出免税の対象となるものから除かれる非居住者に対する役務の提供の例として、「電車、バス、タクシー等による旅客の輸送」や「劇場、映画館等の興行場における観劇等の役務の提供」などを掲げている。
ト 国税通則法(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下同じ。)第23条《更正の請求》第1項は、納税申告書を提出した者は、同項各号の一に該当する場合には、当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができる旨規定し、同項第1号は、当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときを掲げている。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 取引の概要
(イ) 請求人は、平成12年7月○日に設立された法人で、主に旅行業等を営むものである。
(ロ) 請求人は、フィリピンやインドネシア等の旅行会社(以下「本件海外旅行会社」という。)が主催する訪日旅行(以下「本件訪日ツアー」という。)のうち国内旅行部分(以下「本件国内旅行部分」という。)の発注を、本件海外旅行会社から受けて、本件国内旅行部分の行程を構成する飲食、宿泊、輸送等のサービス(以下「本件各種サービス」という。)の企画立案をし、本件訪日ツアーに参加する海外の旅行者(以下「本件旅行者」という。)に対してサービスを提供するレストラン、ホテル、バス会社及びガイド等(以下「本件各種サービス提供機関」という。)の手配をするなど、これらをパッケージツアーとして本件海外旅行会社に提供している(以下、請求人が本件海外旅行会社との間で行っている上記取引を「本件取引」という。)。
(ハ) 本件海外旅行会社は、請求人から提供を受けた本件国内旅行部分に、訪日のための交通手段(航空券)等を組み合わせ、本件訪日ツアーとして、海外で旅行者を募集し、販売している。
 なお、本件海外旅行会社は、国内に支店、出張所その他の事務所を有しない外国法人であり、本件旅行者とともに施行令第1条第2項第2号にいう非居住者に該当する。
ロ 本件更正の請求について
 請求人は、平成23年5月課税期間の消費税等の確定申告において、本件取引の対価(以下「本件取引対価」という。)の額と本件取引に関して本件各種サービス提供機関に支払った対価(以下「本件支払対価」という。)の額との差額を受取手数料とし、輸出免税取引の対価の額に該当するものとしていたが、その後、請求人は、本件取引対価の額及び本件支払対価の額の各総額が、それぞれ輸出免税取引の対価の額及び課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものであったなどとして、本件更正の請求をした。
 原処分庁は、これに対し、本件取引対価の額のうち、本件支払対価の額に相当する金額については輸出免税取引の対価の額に該当せず、国税通則法第23条第1項に規定する更正の請求ができる場合に該当しないとして本件通知処分をした。

(5) 争点

 本件取引対価の額のうち本件支払対価の額に相当する金額は、輸出免税取引の対価の額に該当するか否か。

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2 主張

請求人 原処分庁
 以下のとおり、本件支払対価の額に相当する金額を含む本件取引対価の全額が輸出免税取引の対価の額に該当する。  以下のとおり、本件取引対価の額のうち本件支払対価の額に相当する金額は、輸出免税取引の対価の額に該当しない。
(1) 請求人は、本件海外旅行会社に対し て、情報の収集、旅行の手配、企画、情報提供等を行うとともに、当該旅行期間中に、本件旅行者が本件各種サービス提供機関から国内での飲食、宿泊、輸送等の各種サービスを受けることができる地位を設定するという包括的な役務を提供しているだけなのであって、当該包括的な役務提供の対価である本件取引対価の額の中には、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供の対価に相当する金額は含まれていない。
 また、本件海外旅行会社は、国外において当該地位の設定を受け、それにより国外において本件訪日ツアーを販売することができるのであるから、上記役務の便益を国外において享受している。
 したがって、本件取引において、請求人が行う上記役務の提供は、国内における飲食、宿泊及びこれらに準ずるもので国内において直接便益を享受するものではないことから、施行令第17条第2項第7号イないしハのいずれにも該当せず、輸出免税取引に該当する。
(1) 請求人は、本件海外旅行会社からの依頼により、本件訪日ツアーに係る国内における飲食、宿泊、輸送等の各種サービスを本件旅行者に提供する役割を担い、その役割を果たすため、本件各種サービス提供機関を確保し、当該機関をして、請求人が提供すべき本件各種サービスを本件旅行者に提供させている(その意味で、本件各種サービス提供機関は請求人の履行補助者的立場にある。)。つまり、請求人は、本件海外旅行会社から対価を得て、非居住者である本件旅行者に対し、国内における飲食、宿泊、輸送等の役務の提供を行っており、対価を支払う者と役務の提供を受ける者とが同一ではないところ、消費税の課税対象とされる役務の提供は、必ずしも両者が同一である必要はない。
 したがって、本件取引のうち、請求人が行う上記役務の提供は、それによってもたらされる便益を本件旅行者が国内で直接享受するものであるから、施行令第17条第2項第7号ロ又はハに該当し、輸出免税取引に該当しない。
 なお、上記役務の提供に係る対価の額は、少なくとも本件各種サービス提供機関へ支払った本件支払対価の額と同額と認められる。
(2) 施行令第17条第2項第7号イないしハの規定に該当するか否かについては取引ごとに判断すべきであるところ、本件海外旅行会社は、請求人から提供を受けた本件国内旅行部分を組み込んだ本件訪日ツアーを非居住者たる本件旅行者に提供し、本件旅行者は訪日中、国内において本件各種サービス提供機関から本件各種サービスの提供を受けるが、そのことは、請求人と本件海外旅行会社との間の本件取引とは別の当事者間の取引に基づくものであり、請求人と本件旅行者との間に何ら契約関係はなく、役務を提供する義務も負っていないことから、本件取引が上記規定に該当するか否かの判断には無関係である。
 また、請求人が本件海外旅行会社に対して行っている上記(1)の役務の提供は、請求人が本件国内旅行部分の手配を完了した時点で終了するものであって、請求人は、国内で本件各種サービスが提供される場面においては何ら関与するものではない。
(2) 請求人が本件旅行者に対して行う上記(1)の役務の提供は、本件海外旅行会社からの依頼に応えて、請求人が担っている役割を果たすという意味において、本件海外旅行会社に対する役務提供とも評価できる。
 この評価によっても、本件海外旅行会社は、請求人が行う役務の提供により本件国内旅行部分の行程を実行、実現することができるという便益を、国内で直接享受するものであるといえることから、施行令第17条第2項第7号ロ又はハに該当する。

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3 判断

(1) 法令解釈等
イ 消費税は、国内において事業者が行った資産の譲渡等に対して課されるものであり、国内において消費される物品やサービスについて負担を求めるものであるから、輸出取引及び輸出類似取引については消費税が免除されており、非居住者に対する役務提供についても、原則として消費税が免除されている。
 ただし、非居住者に対する役務の提供であっても、国内において直接その便益が享受されるものについては、輸出免税取引に該当しないこととされている。
ロ 消費税法第7条第1項は、事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、輸出等に係る資産の譲渡等に類するものとして政令で定めるものについては消費税を免除することとしている。
 そして、施行令第17条第2項第7号は、非居住者に対して行われる役務の提供については原則として輸出免税取引としているが、同号イないしハにおいて、国内に所在する資産に係る運送又は保管、国内における飲食又は宿泊及びこれらに掲げるものに準ずるもので、非居住者が国内において直接便益を享受するものは、輸出免税取引の対象とならないことを規定している。この規定は、非居住者に対して行われる役務の提供の内容(便益の享受つまり消費が国内で完結する性質)に着目した規定であると解される。
ハ 消費税法基本通達7−2−16には、施行令第17条第2項第7号において非居住者に対する役務の提供であっても輸出免税取引に該当しないものの例として、「電車、バス、タクシー等による旅客の輸送」や「劇場、映画館等の興行場における観劇等の役務の提供」などを掲げているが、これらは、非居住者に対して行われる役務の提供で国内において直接便益を享受するものを例示したものであり、本通達の取扱いは当審判所においても相当であると認められる。
(2) 認定事実
 原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、本件取引に関し請求人が行う具体的な業務等は以下のとおりと認められる。
イ 本件海外旅行会社に対するカタログの配付
 請求人は、年に1回程度、国内旅行のパッケージツアーを記載した「○○○○」等と題するカタログを作成して本件海外旅行会社に配付する。当該カタログには、国内旅行の各日における観光先、宿泊ホテルの等級、食事の有無、交通手段、同行するガイドの条件(会話可能な言語等)等、国内旅行で提供される各種サービスの基本的内容とともに、その旅行代金として、参加人数に応じた一人当たりの金額が記載される。
ロ 本件海外旅行会社からの申込み及びこれに対する見積り
 本件海外旅行会社は、上記イのカタログを参考として、本件国内旅行部分に係る日時及び参加人数のほか、観光先、宿泊ホテル、食事の有無、交通手段及び同行するガイドの条件等、希望するサービスの内容を主に電子メールにより請求人に伝え、その旅行代金の見積りを依頼する。
 本件海外旅行会社から依頼を受けた請求人は、本件海外旅行会社の要望する旅行内容に沿って、請求人の利益を見込んだ各サービスの見積金額をそれぞれ計算し、これを合計することにより全体の見積金額を算定し、本件海外旅行会社に対してその金額及び旅行行程等が記載された見積書を発行する。
ハ 本件海外旅行会社との合意等
 請求人は、請求人が見積もった本件国内旅行部分の内容、旅行代金等に基づき、本件海外旅行会社との間で旅行内容の細部に係る調整、金額等の条件に係る交渉を経て、請求人が提案した本件国内旅行部分の内容が本件海外旅行会社と折り合えば、本件取引の合意に至ることとなる。当該合意は電子メール又は電話連絡により行われ、通常、契約書等の書面は取り交わされない。
 なお、請求人は、通常、本件国内旅行部分が実施された後に、本件海外旅行会社に請求書を発行して、本件取引対価の額を受領する。
ニ 本件各種サービス提供機関の手配
 請求人は、上記ハで合意した本件国内旅行部分の行程等に基づき、レストラン、ホテル、バス会社等の本件各種サービス提供機関に連絡し、利用の予約等の手配を行う。その際、請求人は、本件各種サービス提供機関に対して、請求人の名称及び団体番号(本件国内旅行部分の受注1件ごとに請求人が付した番号)を伝えるとともに、併せて「○○団体手配書」と題する書面を作成し、請求人が手配した本件各種サービス提供機関の名称や合意した利用料金等を記載して、手配の進行状況を管理する。
ホ 本件各種サービスの利用代金の支払
 本件各種サービス提供機関に対する利用代金の支払は、請求人からの銀行振込のほか、本件国内旅行部分の実施に当たって請求人がガイドに仮払金として預けた現金から支払わせる等の方法により行われる。
 なお、ガイドが仮払金からの支払を行うに当たっては、その支払先である本件各種サービス提供機関から、請求人の名称又は請求人が指定した団体番号を宛名とした領収証の発行を受けており、当該領収証については、後日、仮払金の精算時にガイドから請求人に提出させる。
ヘ 本件国内旅行部分の実施
 本件国内旅行部分の実施に当たっては、通常、請求人が外注したガイドが本件旅行者に同行して、本件国内旅行部分の進行管理を行う。具体的には、飲食、宿泊等のサービスの提供については、ガイドがレストラン、ホテル等の本件各種サービス提供機関に本件旅行者を引率して行き、予約時に通知してある団体番号を伝えることにより、飲食、宿泊等のサービスが本件各種サービス提供機関から本件旅行者に提供される。
 また、請求人は、本件国内旅行部分の進行中、ガイドと頻繁に連絡を取り合い、本件国内旅行部分の進行状況を確認しているほか、本件旅行者からガイドに対して、提供するサービス内容について変更の要望があった場合には、ガイドから請求人にその旨の連絡がされ、請求人が本件海外旅行会社に連絡した上で、本件海外旅行会社がその対応について判断する。
(3) 本件取引への当てはめ
イ 上記1の(4)のイの(ロ)のとおり、請求人は、本件海外旅行会社に対して本件国内旅行部分を提供しているところ、まる1上記(2)のイないしハのとおり、本件取引対価の額は、本件各種サービスの提供に係る対価の額を含む本件国内旅行部分に要する費用の額を積み上げた金額に請求人の利益の額を上乗せした金額を基に決定されていること、まる2上記(2)のニ及びホのとおり、本件国内旅行部分における本件旅行者の国内における本件各種サービスの提供に係る対価が請求人によって実際に本件各種サービス提供機関に支払われていること等を考慮すると、請求人が本件海外旅行会社から受領する本件取引対価の額の中には、非居住者である本件旅行者が本件各種サービス提供機関から直接便益を享受する本件各種サービスの提供の対価に相当する金額が含まれているものと認められる。
ロ 上記(2)のヘのとおり、本件旅行者が本件各種サービスについて国内において直接便益を享受しているところ、これらは施行令第17条第2項第7号ロ又はハに該当し、また、上記(1)のハの消費税法基本通達7−2−16の非居住者に対する「電車、バス、タクシー等による旅客の輸送」等に該当するから、本件国内旅行部分に含まれる本件各種サービスの提供は輸出免税取引に該当しないと判断するのが相当である。
ハ そうすると、本件取引対価の額のうち請求人が支払った本件旅行者の本件各種サービス提供機関から受けた本件各種サービスの提供に係る対価の額に相当する金額、すなわち、本件支払対価の額に相当する金額については輸出免税取引の対価の額に該当しないこととなる。
(4) 請求人の主張について
イ 請求人は、上記2の「請求人」欄の(1)のとおり、本件海外旅行会社に対して提供している包括的な役務は本件海外旅行会社が国外においてその便益を享受するものであり、当該包括的な役務の提供は国内において直接便益を享受するものではない旨主張する。
 しかしながら、仮に、本件海外旅行会社が請求人から提供を受ける包括的な役務というものを考えるとしても、その内容については、本件取引の課税関係の判断において次のとおり評価することが適当であり、当該包括的な役務の提供に含まれる本件各種サービスの提供については、本件海外旅行会社が国内において直接便益を享受していると評価されることになるから、請求人の主張には理由がない。
(イ) 請求人は、上記(2)のとおり、本件海外旅行会社に対し、本件国内旅行部分の企画立案及び本件各種サービス提供機関への予約等の手配を行うほか、本来、本件海外旅行会社が本件訪日ツアーの主催者として本件旅行者に提供すべき本件国内旅行部分の実施を、請求人が自己の名称で本件各種サービス提供機関と取引をして、本件旅行者に本件各種サービスを提供させるという役務の提供をしていることが認められる。つまり、請求人が、これらの役務を本件海外旅行会社に提供することで本件取引対価の額を受領しているとすると、請求人が本件海外旅行会社に対して行う包括的な役務の提供の内容には、請求人が本件海外旅行会社に代わって、本件海外旅行会社の顧客である本件旅行者に本件各種サービス提供機関をして本件各種サービスを提供させるという役務の提供が含まれていると考えられる。
(ロ) そうすると、本件各種サービスの提供自体は本件各種サービス提供機関から本件旅行者に対して行われているものの、これは、請求人が、本件海外旅行会社の指示に従い、本件海外旅行会社の顧客である本件旅行者に対して、請求人自身の役務の提供の履行のために、請求人が確保した本件各種サービス提供機関により提供させるものであることから、請求人が本件海外旅行会社に対して本件各種サービスの提供を国内で行ったものと評価するのが適当である。
ロ 請求人は、本件旅行者が、国内で本件各種サービス提供機関から本件各種サービスの提供を受けるが、それは、請求人と本件海外旅行会社との間の本件取引とは別の当事者間の取引に基づくものであり、本件取引が施行令第17条第2項第7号イないしハに該当するか否かの判断には無関係である旨主張する。
 しかしながら、上記イのとおり、請求人が本件海外旅行会社に対して行う包括的な役務の提供というものを考えても、そこに含まれる本件各種サービスの提供は、本件海外旅行会社が国内において直接便益を享受していると評価されるのであるから、請求人の主張には理由がない。
ハ また、請求人は、請求人が本件海外旅行会社に対して行っている役務提供は、請求人が本件国内旅行部分の手配を完了した時点で終了するものであって、請求人は、国内で本件各種サービスが提供される場面においては何ら関与するものではない旨主張する。
 しかしながら、上記(2)のとおり、本件取引において請求人が手配している本件各種サービスは、飲食、宿泊、輸送等の提供であるところ、これらの役務の提供は、請求人が手配をした時点においては単に予約をしただけにすぎず、本件各種サービス提供機関において実際にこれらの役務を提供した時点において、取引相手に対して提供が行われたこととなるものであるから、本件国内旅行部分の手配を完了した時点で当該役務提供が完了するものであると認めることはできず、請求人の主張には理由がない。
(5) 本件通知処分に対する審査請求について
イ 本件更正の請求は、上記1の(4)のロのとおり、本件取引対価の額及び本件支払対価の額の各総額が輸出免税取引の対価の額及び課税仕入れに係る支払対価の額に該当するなどの理由によるものであったところ、上記(3)のとおり、本件取引対価の額のうち本件支払対価の額に相当する金額は、輸出免税取引の対価の額に該当しないことから、当該金額を消費税の課税標準額に含めることとなり、また、本件支払対価の額が課税仕入れに係る支払対価の額に含まれることについては請求人と原処分庁の間に争いはなく、当審判所の調査の結果においても相当と認められる。
ロ そして、本件取引に係る平成23年5月課税期間の売上金額の集計表及び月別仕入明細等によれば、本件取引対価の額は○○○○円(消費税等込み)、本件支払対価の額は○○○○円(消費税等込み)と認められることから、これらの金額を基に同課税期間の課税標準額、課税売上割合及び控除対象仕入税額を計算すると、以下のとおりとなる。
(イ) 課税標準額
 確定申告書付表2に記載された課税売上額(消費税等抜き)○○○○円に、輸出免税取引の対価の額に該当しない本件支払対価の額に相当する金額○○○○円(上記本件支払対価の額に105分の100を乗じた金額)を加算し、国税通則法第118条《国税の課税標準の端数計算等》第1項の規定により1,000円未満の端数金額を切り捨てた金額○○○○円となる。
(ロ) 課税売上割合
 下記Aの金額を下記Bの金額で除した割合0.○○○○(○○○○分の○○○○)となる。
A 課税資産の譲渡等の対価の額
 確定申告書付表2に記載された課税売上額(消費税等抜き)○○○○円に、まる1本件支払対価の額に相当する金額(消費税等抜き)○○○○円と、まる2本件取引対価の額(消費税等込み)○○○○円から本件支払対価の額(消費税等込み)○○○○円を差し引いた残額○○○○円を加算した金額○○○○円となる。
B 資産の譲渡等の対価の額
 上記Aの金額に、確定申告書付表2に記載された非課税売上額○○○○円を加算した金額○○○○円となる。
(ハ) 控除対象仕入税額
 課税売上割合が95%未満であり、確定申告において適用された消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項第1号に規定する方法(個別対応方式)により計算すると、下記Dの金額に、下記Cの金額に上記(ロ)の課税売上割合を乗じた金額○○○○円を加算した金額○○○○円となる。
A 課税仕入れに係る支払対価の額
 確定申告書付表2に記載された課税仕入れに係る支払対価の額(消費税等込み)○○○○円に、本件支払対価の額○○○○円(消費税等込み)を加算した金額○○○○円となる。
B 課税仕入れに係る消費税額
 上記Aの金額に、消費税法第30条第1項の規定により105分の4を乗じて計算した金額○○○○円となる。
C 上記Bの金額のうち課税売上げと非課税売上げに共通して要するものに係る金額
 確定申告書付表2に記載された金額○○○○円である。
D 上記Bの金額のうち課税売上げにのみ要するものに係る金額
 上記Bの金額から上記Cの金額を差し引いた金額○○○○円となる。
ハ 上記ロに基づき平成23年5月課税期間の納付すべき 消費税等の額を計算すると、別表2の「納付すべき消費税額」及び「納付すべき地方消費税額」欄記載の各金額となり、これらの金額は、いずれも平成23年5月課税期間に係る確定申告の額を下回る。
ニ したがって、本件更正の請求は、国税通則法第23条第1項第1号に掲げる「当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるとき」に該当するから、本件通知処分は違法なものであり、その一部を別紙「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
(6) 本件各お知らせに対する審査請求について
 請求人は、本件審査請求において、本件各お知らせについても取消しを求めている。
 しかしながら、更正の申出の手続は、更正の請求とは異なり、法令上の根拠に基づくものではないから、更正の申出に対するお知らせは、直接納税者の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではなく、単に、納税者からの減額更正を求める申出を契機として、税務署長が当該納税者の納税申告書に記載された課税標準等又は税額等を更正する理由がない旨を知らせるものにすぎない。
 したがって、更正の申出に対するお知らせは、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項に規定する「国税に関する法律に基づく処分」に該当せず、本件各お知らせに対する審査請求は不適法である。
(7) その他
 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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