別紙3

当事者の主張

争点1 本件各売買物件の譲渡は、所得税法第64条第2項に規定する「保証債務を履行するため」の資産の譲渡に該当するか否か。

請求人 原処分庁
 次のとおり、本件各売買物件の譲渡は、所得税法第64条第2項に規定する「保証債務を履行するため」の資産の譲渡に該当する。  次のとおり、本件各売買物件の譲渡は、所得税法第64条第2項に規定する「保証債務を履行するため」の資産の譲渡に該当しない。
1 所得税法第64条第2項に規定する保証債務の特例の適用を受けるための実体的要件は、納税者が、まる1債権者に対して債務者の債務を保証したこと、まる2上記まる1の保証債務を履行するために資産を譲渡したこと、まる3上記まる1の保証債務を履行したこと、まる4上記まる3の保証債務の履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったことが必要であり、かつ、これで足りると解される。
 なお、保証債務の特例は、他人の債務を担保するため抵当権を設定した者がその債務を弁済した場合にも適用されるものと解される。
1 所得税法第64条第2項に規定する保証債務の特例の適用を受けるための実体的要件は、納税者が、まる1債権者に対して債務者の債務を保証したこと、まる2上記まる1の保証債務を履行するために資産を譲渡したこと、まる3上記まる1の保証債務を履行したこと、まる4上記まる3の保証債務の履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができなくなったことである。
 そして、保証債務の特例の趣旨に照らせば、保証債務の特例における「保証債務」といえるためには、少なくとも、まず、法律上他人に帰属する債務について、これを履行すべき法律上の義務ないし責任を負担するものでなければならないと解される。
2 本件をみると、まる1本件各担保物件について、K国税局長が平成9年8月6日にした差押えは、抵当権の設定とは異なり、民法上の保証契約等の法律関係は存在しないが、J社の租税債権を回収するために、当該各土地の所有者である請求人の同意を得ることなく一方的にされたものであり、実質的には、請求人がJ社に支払能力がないと判断して債務保証をしたくないと考えても許されない状態での債務保証と同じであるから、保証債務の特例の趣旨から救済されるべきである。また、まる2本件各売買物件については、請求人がE社に対して譲渡したこと、まる3請求人が、平成23年9月30日にJ社の租税債務を代位弁済したこと、まる4請求人は、同年10月6日にJ社に対し当該代位弁済に係る金員の弁済を求めたが、連絡がなかったため資力がないものと考え、同年12月26日に当該金員の求償権を放棄したことの各事実が認められる。
 以上からすると、本件については、上記1のまる1ないしまる4の要件を全て充たしている。
2 本件をみると、請求人は本件各売買物件の譲渡に係る譲渡代金の一部をJ社の租税債務の納付に充てているものの、それは、請求人が任意にJ社の租税債務を代位弁済したものにすぎず、請求人とJ社との間には保証契約が存在していなかったと認められるから、請求人は、法律上他人に帰属する債務について、これを履行すべき法律上の義務ないし責任を負担したものとは認められない。
 以上からすると、本件については、上記1のまる1の要件を充たさない。
3 なお、差押えがされている以上、将来確実に滞納処分として競売が実行されることとなり、その場合、請求人は、J社の租税債務を強制的に代位弁済させられるから、請求人がJ社の代わりにJ社の租税債務を納付しなければならない法律上の義務や責任が存在しない旨の原処分庁の主張は誤りである。 3 なお、K国税局長が平成9年8月6日にした差押え(本件各担保物件についてされたもの)は、K国税局長がJ社に係る租税債権を確保する目的で、当時当該土地の登記上の所有者がJ社であることを前提に行ったものであり、当該各土地の所有者が請求人であることを前提に、請求人に対してJ社の租税債務の代位弁済を求めたものではなく、当該差押えによって、請求人にJ社の租税債務を代位弁済すべき法律上の義務ないし責任が生じるわけではないから、当該差押えという行為自体をもって、保証債務の特例における「保証債務」が成立する余地はなく、当該差押えが実質的には債務保証と同じである旨の請求人の主張には根拠がない。

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争点2 本件相談料は、所得税法第33条第3項に規定する譲渡所得の基因となった資産の譲渡費用に該当するか否か。

原処分庁 請求人
 次のとおり、本件相談料は、所得税法第33条第3項に規定する譲渡所得の基因となった資産の譲渡費用に該当しない。  次のとおり、本件相談料は、所得税法第33条第3項に規定する譲渡所得の基因となった資産の譲渡費用に該当する。
1 所得税法第33条第3項に規定する譲渡所得の基因となった資産の譲渡費用とは、資産の譲渡のために直接要した費用のほか、当該資産の譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用をいうものと解される。 1 資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法第33条第3項にいう譲渡費用に当たるかどうかは、一般的、抽象的に当該資産を譲渡するために当該費用が必要であるかどうかによって判断するのではなく、現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的にみてその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきものである。
2 本件相談料は、本件税理士が、請求人の依頼により、請求人及びJ社の租税債務を整理(納付)するための一環として、請求人及びJ社の租税債務の額を知るために国税局等の職員との交渉を請求人に代わり行ったことの対価であり、当該交渉の結果、請求人が本件各売買物件を売却することとしたものと考えられるが、本件売買契約書には本件税理士に関する記載はなく、本件税理士が本件売買契約に直接関係しているような事実も見当たらない。
 そうすると、本件相談料は、本件各売買物件の譲渡のために直接要した費用とはいえず、その他本件各売買物件の譲渡価額を増加させるために本件売買契約に際して支出したものともいえない。
 なお、上記事実関係からすると、本件相談料が、本件仲介手数料と同質のものであるとはいえない。
2 本件において、請求人は、本件税理士から、まる1請求人が任意譲渡をして請求人及びJ社の租税債務を支払うのか、国税局による滞納処分(公売)に委ねるかの判断をするための調査・確認、及びまる2不動産を高く譲渡するための不動産業者の選定・交渉に関して、役務の提供を受けているところ、本件税理士が国税局の担当者からJ社に係る租税債務の発生時期及び税額の調査・確認をしない限り、本件各売買物件の任意譲渡は実現しなかったのであり、本件相談料の大半はJ社の租税債務の確認の対価であるから、本件相談料は、客観的にみて当該譲渡を実現するために必要な費用であるといえる。
 なお、原処分庁は、本件仲介手数料を譲渡費用として認めているところ、本件相談料と本件仲介手数料とは、まる1契約に基づく支払であること、まる2必要に応じた任意による支払であること及びまる3譲渡に直接必要な支払であることという点で同質のものである。

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