(平成26年6月4日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人E、同G、同H及び同J(以下、順に「請求人E」、「請求人G」、「請求人H」及び「請求人J」といい、これら4名を併せて「請求人ら」という。)が、土地を譲渡した際に支払った金員の一部がコンサルタント料に該当するとして、土地の譲渡に係る分離長期譲渡所得の金額の計算上、譲渡の際に支払った金員を譲渡に要した費用(以下「譲渡費用」という。)に算入して所得税の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該金員は譲渡費用に当たらないとして更正処分等をしたことから、請求人らがその取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人らは、平成23年分の所得税について、各確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載していずれも法定申告期限までに申告した。
 次いで、請求人H及び請求人Gは、別表1の「修正申告」欄のとおりとする各修正申告書をそれぞれ平成24年4月4日及び同月24日に提出した。
ロ 原処分庁は、これに対し、平成25年4月24日付で別表1の「更正処分等」欄のとおりの各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下、「本件各賦課決定処分」といい、本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)をした。
ハ 請求人らは、平成25年6月14日に異議申立て(以下「本件各異議申立て」という。)をするとともに、請求人Eを総代として選任し、その旨を異議審理庁に届け出たところ、異議審理庁は、同年9月11日付で本件各更正処分について棄却の異議決定をした。
ニ 請求人らは、異議決定を経た後の本件各更正処分及び異議決定を経ていない本件各賦課決定処分に不服があるとして、平成25年10月7日に審査請求をするとともに、請求人Eを総代として選任し、その旨を当審判所に届け出た。

(3) 関係法令の要旨

イ 国税通則法(以下「通則法」という。)
(イ) 第65条《過少申告加算税》
 第4項は、第1項又は第2項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として所定の方法により計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する旨規定している。
(ロ) 第75条《国税に関する処分についての不服申立て》
 第1項第1号は、税務署長がした処分に不服がある者は、その処分をした税務署長に対する異議申立てをすることができる旨規定しており、第4項第3号は、第1項第1号の規定により税務署長に対する異議申立てをすることができる者は、異議申立てをしないで審査請求をすることにつき正当な理由があるときは、その選択により、異議申立てをしないで、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる旨規定している。
 また、第5項は、第1項第1号の規定により税務署長に対する異議申立てをしている者は、異議申立てをした日の翌日から起算して3月を経過しても異議申立てについての決定がないときは、当該異議申立てに係る処分について、決定を経ないで、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる旨規定している。
ロ 所得税法
(イ) 第33条《譲渡所得》
 第1項は、譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいう旨規定しており、第3項は、譲渡所得の金額は、資産の譲渡による所得につき、その年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする旨規定している。
(ロ) 第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》
 第1項は、譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする旨規定している。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人らと原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人Eは、平成17年12月○日に亡くなったKの妹であり、請求人G、請求人H及び請求人Jは、Kの子である。
ロ L社は、昭和60年3月○日に設立された、不動産の売買、賃貸借、仲介及び管理業等を業とする法人であり、請求人Eの弟であるMが代表取締役を務めている。
ハ 請求人E及びKは、平成10年12月○日に亡くなったNから賃借していたa市d町○−○所在の土地(以下「本件土地」という。)の上に、4棟の共同住宅(以下「本件各建物」という。)をそれぞれ2棟ずつ所有し、いずれも賃貸の用に供していた。
 なお、請求人Eの叔母で平成25年8月○日に亡くなったPは、平成17年3月まで、本件各建物にある二つの部屋に居住していた。
ニ 請求人E及びKは、平成11年3月23日、Nの相続人らとの間で、本件土地を62,666,000円で取得する旨の売買契約を締結し、同年6月16日、各2分の1の割合で本件土地を取得した。
ホ 請求人G、請求人H及び請求人Jは、平成17年12月○日、Kを被相続人とする相続により、Kが有していた本件土地の持分2分の1については、請求人G及び請求人Hが各8分の1並びに請求人Jが8分の2の割合でその持分を取得し、本件各建物のうちKが所有していた共同住宅2棟については、請求人Jがその全部を取得した。
ヘ 請求人らは、平成23年5月13日、Q社との間で、本件土地を○○○○円で譲渡する旨の売買契約を締結し、同日、当該売買契約に係る手付金として○○○○円をそれぞれの持分に応じて受領した。そして、請求人らは、本件各建物を取り壊した上、平成23年7月28日、本件土地をQ社に引き渡し、それぞれの持分に応じて譲渡代金の残額を受領した。
ト 請求人Eは、平成23年7月28日、L社に対して32,000,000円を支払い(以下、当該支払に係る32,000,000円を「本件金員」という。)、その後、本件金員に対してそれぞれが負担すべき金額として、請求人G及び請求人Hから各4,000,000円、請求人Jから8,000,000円の支払を受けた。
チ 請求人らは、平成25年6月14日付で各異議申立書(以下「本件各異議申立書」という。)を提出しているところ、本件各異議申立書の「異議申立てに係る処分〈原処分〉」欄の「原処分日等」欄には、請求人E、請求人G及び請求人Jについては平成25年4月24日付の原処分の通知書を同月25日に受領した旨、請求人Hについては同月24日付の原処分の通知書を同月26日に受領した旨がそれぞれ記載されている。
 また、「原処分名等」欄の「原処分名」欄には、「更正」及び「過少申告加算税の賦課決定」の項目にそれぞれ○印が記載されており、当該「更正」に係る「対象年分等」欄には「23年分」と記載されているが、当該「過少申告加算税の賦課決定」に係る「対象年分等」欄は空欄となっている。
 なお、本件各異議申立書には、「『対象年分等』欄は、『原処分名』ごとに記載してください。」と注記されている。
リ 請求人Eは、平成25年9月11日、総代として、異議審理庁所属の担当職員(以下「異議審理担当職員」という。)と面接し、本件各異議申立ての趣旨をいずれも「平成23年分所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分一部取消し」から「平成23年分所得税の更正処分の一部取消し」へと補正する旨の「異議申立書の補正について」と題する書面(以下「本件補正書」という。)を異議審理庁に提出した。
 そして、異議審理庁は、平成25年9月11日付で、本件各更正処分について棄却の異議決定をした。

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2 争点

(1) 争点1 本件各賦課決定処分に係る審査請求は適法であるか否か。
(2) 争点2 本件金員は本件土地の取得費又は譲渡費用に該当するか否か。

3 主張

 当事者双方の主張は、別紙2のとおりである。

4 判断

(1) 争点1(本件各賦課決定処分に係る審査請求は適法であるか否か)について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 平成25年7月11日における異議審理担当職員との面接
 異議審理担当職員は、平成25年7月11日、請求人Eと面接した際、請求人Eが本件金員を本件土地の譲渡費用として認めてほしい旨申述していたことから、請求人Eに対して、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があると認められる場合について、具体例を挙げて説明した上、本件各賦課決定処分の取消しを求める理由として正当な理由を主張するのか、それとも、本件金員が譲渡費用に当たると認められれば過少申告加算税は賦課されないとして譲渡費用に当たる旨の理由のみを主張するのか質問した。
 これに対して、請求人Eが、本件金員が譲渡費用に当たるという主張である旨回答したことから、異議審理担当職員は、請求人Eが本件各賦課決定処分を異議申立ての対象としていないと考えた。
 この際、請求人Eが、本件金員が譲渡費用と認められれば自動的に本件各賦課決定処分も取り消されることになるのではないかと確認したところ、異議審理担当職員はそうですと回答した。
(ロ) 平成25年9月11日における異議審理担当職員との面接等
 異議審理担当職員は、平成25年9月11日、請求人Eと面接した際、請求人Eに対して、再度本件各異議申立てにおいて争う処分の対象を尋ねたところ、請求人Eが譲渡費用についてのみ争う旨申述したことから、本件各賦課決定処分を異議申立ての対象としていないと判断し、請求人Eに本件補正書の提出を求めた。
 これに対して、請求人Eは、上記(イ)のとおり、本件金員が譲渡費用と認められれば自動的に本件各賦課決定処分も取り消される旨を確認していたことから、本件金員が譲渡費用と認められれば、本件各賦課決定処分は本件各異議申立ての対象にはならないと考えて本件補正書を提出した。
 そして、異議審理担当職員は、本件補正書の受領後、直ちに本件各更正処分のみについての判断を示した請求人らに対する異議決定書を請求人Eに交付した。
ロ 検討
 まず、本件各賦課決定処分に係る審査請求の適法性を判断する前提として、請求人らが、本件各異議申立書の提出によって、本件各賦課決定処分に係る異議申立てを行ったものといえるか否かを検討する。
 この点、通則法第81条《異議申立書の記載事項等》第1項第1号は、異議申立ては、異議申立てに係る処分に関する事項を記載した書面を提出してしなければならない旨規定しているところ、その趣旨は、異議申立ての対象となる処分を特定する点にあると解され、かかる趣旨に鑑みれば、本件各異議申立書に、本件各賦課決定処分が本件各異議申立ての対象となっていると特定するに足りる記載がなされている場合には、本件各異議申立書の提出により、本件各賦課決定処分に係る異議申立てを行ったものと認めるのが相当である。
 そして、前記1の(4)のチのとおり、本件各異議申立書においては、「過少申告加算税の賦課決定」に係る「対象年分等」欄が空欄であり、「『対象年分等』欄は、『原処分名』ごとに記載してください。」と注記されていたものの、「異議申立てに係る処分〈原処分〉」欄の「原処分日等」欄には、請求人らが、平成25年4月24日付の原処分の通知書を同月25日又は同月26日に受領した旨記載されているとともに、「原処分名」欄の「更正」及び「過少申告加算税の賦課決定」の項目にそれぞれ○印が記載されていること、さらに、「更正」に係る「対象年分等」欄には「23年分」と記載されていることが認められるところ、まる1請求人らに係る「平成25年4月24日付」の「過少申告加算税の賦課決定」は本件各賦課決定処分のみであること、まる2過少申告加算税は更正等に基づき課される附帯税であり、本件各異議申立書の「過少申告加算税の賦課決定」も本件各異議申立書において異議申立ての対象とされた「23年分」の「更正」に附帯するものとみるのが合理的であることからすると、本件各異議申立書には、本件各賦課決定処分が本件各異議申立ての対象となっていると特定するに足りる記載がなされていたものといえる。
 したがって、請求人らは、本件各異議申立書の提出によって、本件各賦課決定処分に係る異議申立てを行ったものと認められる。
 そうすると、請求人らが本件各賦課決定処分に係る異議申立てをした日の翌日から起算して3月を経過しても当該異議申立てについての決定がないのであるから、通則法第75条第4項第3号に規定する「正当な理由があるとき」に該当するか否かの判断をするまでもなく、通則法第75条第5項に基づき、請求人らが行った本件各賦課決定処分に係る審査請求は適法である。    
ハ 原処分庁の主張について
 原処分庁は、別紙2の1の「原処分庁」欄の(1)のとおり、まる1本件各異議申立書において「過少申告加算税の賦課決定」に係る対象年分が記載されていないこと、まる2請求人Eの異議調査における申述によれば、異議申立ての対象は本件各更正処分のみであること、及びまる3請求人Eが異議申立ての対象を特定するために本件補正書を提出したことから、請求人らが本件各賦課決定処分に係る異議申立てをしていない旨主張する。
 しかしながら、上記まる1については、上記ロのとおり、本件各異議申立書には、本件各賦課決定処分が本件各異議申立ての対象となっていると特定するに足りる記載がなされていたことからすると、本件各異議申立書において「『対象年分等』欄は、『原処分名』ごとに記載してください。」と注記されていたことを考慮しても、対象年分が記載されていないことのみから、本件各賦課決定処分について異議申立てがされていなかったということはできない。
 また、上記まる2及びまる3についても、本件各異議申立書の提出によって、本件各賦課決定処分に係る異議申立てを行ったといえる以上、異議審理担当職員は、請求人Eの申述から請求人らが本件各賦課決定処分を本件各異議申立ての対象としていないと判断したのであれば、請求人ら全員に対して本件各賦課決定処分に係る異議申立ての取下げを求めるべきであって、このような手続によることなく、請求人Eの申述及び本件補正書の提出を根拠として、本件各賦課決定処分に係る異議申立てがなかったということはできない。
 よって、原処分庁の主張には理由がない。

(2) 争点2(本件金員は本件土地の取得費又は譲渡費用に該当するか否か)について

イ 法令解釈
(イ) 取得費
 前記1の(3)のロのとおり、所得税法第33条第3項は、譲渡所得の金額について、総収入金額から資産の取得費及び譲渡費用を控除する旨規定し、同法第38条第1項は、上記資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、当該資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする旨規定している。
 そして、譲渡所得に対する課税は、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のものであるところ、上記のとおり、所得税法第33条第3項が、総収入金額から控除し得るものとして、当該資産の客観的価格を構成すべき金額のみに限定せず、「取得費」と並んで「譲渡に要した費用」をも掲げていることに鑑みると、「資産の取得に要した金額」には、当該資産の客観的価格を構成すべき取得代金の額のほか、登録免許税、仲介手数料等当該資産を取得するための付随費用の額も含まれるものと解される。
(ロ) 譲渡費用
 譲渡所得に対する課税の趣旨は上記(イ)のとおりであるが、所得税法上、抽象的に発生している資産の増加益そのものが課税の対象となっているわけではなく、原則として、資産の譲渡により実現した所得が課税の対象となっているものである。
 そうすると、資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法第33条第3項にいう譲渡費用に当たるかどうかは、一般的、抽象的に当該資産を譲渡するために当該費用が必要であるかどうかによって判断するのではなく、現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきものであると解するのが相当である。
ロ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件土地の取得の経緯
 請求人E及びKは、平成11年1月、Nの相続人らから、不動産業者を通して、本件土地を1坪当たり200,000円で購入してほしい旨の提案を受けたが、本件土地の代金が高すぎるとしてその提案を断った。
 その後、Mは、知人であった上記不動産業者から、請求人E及びKが本件土地の取得を断った旨の話を聞き、Nには父の代から世話になっていた上、本件土地を取得しても損をすることはないと考え、請求人E及びKに対し、本件土地を取得するよう説得した。
 また、Mは、本件土地の取得に反対していた請求人Eの夫及びKの夫に対し、L社が本件土地のコンサルティングを行い、損をしたらL社が負担するなどと話して、請求人E及びKが本件土地を取得することに賛成するよう説得した。
 そして、以上の説得の結果、請求人E及びKは、それぞれの夫の賛成も得て、本件土地を取得することを決め、前記1の(4)のニのとおり、平成11年6月16日、本件土地を取得した。
 なお、Mは、Kに対して、上記不動産業者との間で直接本件土地の譲渡の話を進めるよう伝えており、本件土地の売買契約に立ち会うことはなかった。
(ロ) 本件金員の支払等に関する合意
 請求人E及びKは、本件土地を取得する際、Mとの間で、本件土地を譲渡するまでの間、L社が本件各建物及び本件土地に係る面倒をみること並びに請求人E及びKが本件土地を譲渡したときにその譲渡による利益の半分をL社に支払うことを合意した。
(ハ) 本件各建物のペンキ塗り等
 Mは、平成2年頃から賃借人らが立ち退くまでの間、おおむね月に1、2回の頻度で、本件各建物に対して、次のAないしDの行為等を行った。
A 本件各建物のトタンの壁が錆びた際に、ペンキ塗り作業を行った。
B 本件各建物に取り付けられていた排水のためのU字溝が土で詰まった際に、スコップを利用してその詰まりを解消した。
C 本件各建物の扉の鍵を交換した。
D 本件各建物に取り付けられていた引き戸が歪んで開きづらくなった際に、木づちで引き戸をたたいて、歪みを補正した。
(ニ) 賃借人に係る対応
 Mは、Kから本件各建物の賃借人の一人が本件各建物において亡くなった旨の連絡を受けた際、警察に連絡するよう伝えるとともに、請求人E及びKに対して、風評によって本件土地の価値が低下するのを防ぐため、賃借人が本件各建物内で亡くなったことを他人に話さないよう助言した。
(ホ) P宅への訪問等
 Mは、請求人E及びKが本件土地を取得した後、叔母であるP宅を何度も訪ね、世間話等をしていたほか、Pに対して、請求人E及びKが本件土地を取得し、将来譲渡しようと考えているのでその際には立ち退いてもらう必要がある旨話した。
 これに対して、Pは、同人の住む本件各建物の二つの部屋は親からもらったものだから、立退料又は代替の家の提供を受けない限り立ち退かない旨返答していた。
 その後、Mは、継続的にPを訪ねていたが、Pは、平成17年3月7日、県外に住む娘と暮らすため、請求人E及びKに立退料を求めることもなく本件各建物から退去した。
(ヘ) 本件各建物の新たな賃貸
 請求人Eは、平成17年8月3日、新たな賃借人にPが居住していた部屋の一つを賃貸した。
(ト) 本件各建物の賃借人らの立退きのための助言
 Mは、請求人E及びKに対して、本件各建物が老朽化していることを日頃から本件各建物の賃借人らに伝えておくと、立退きに応じてもらいやすくなる旨助言し、請求人Eは、当該助言を受けて、台風や大雨等の後に本件各建物の賃借人らを訪ねるなどして「ここは古いから大丈夫でしたか。」などと話しかけていた。
(チ) 賃借人らの立退き
 平成20年頃、請求人Eが本件土地を譲渡したいと考えてMに相談したところ、Mは、請求人Eに対して、本件各建物の当時の賃借人ら(以下、平成20年頃の本件各建物の賃借人らを併せて「本件賃借人ら」という。)に本件各建物から立ち退いてもらうため、立退きを求める1年から1年半程前には立退きの話をしておく必要があることや、賃借人の立退きに関するセミナーがあるので、そのセミナーに行って成功例を聞いてみるとよいと助言した。
 また、その後、請求人Eは、Mから、本件賃借人らに事前に立退きの話をした上で内容証明郵便を送付して立退きを求めるとよいとの助言を受け、平成21年12月、請求人Jとともに、本件賃借人らを訪ねて1年を目途に本件各建物から立ち退いてほしいと話した。そして、請求人E及び請求人Jは、本件賃借人らに立退きを求める旨の内容証明郵便の文面を作成して、Mにその内容を確認してもらった上、平成22年1月頃、本件賃借人らに本件各建物から立退きを求める旨の内容証明郵便を送付した。
 その結果、本件賃借人らは、平成23年1月頃までに、立退料を求めることなく、本件各建物から立ち退いた。
(リ) 本件土地の譲渡及び本件金員の支払
 Mは、本件賃借人らの立退き後、請求人Eに対し、本件土地の譲渡の交渉に当たって用意すべき書類を教えるとともに、譲渡先の候補として複数の不動産業者を挙げてこれらの不動産業者に連絡するよう助言をし、請求人Eは、当該助言に基づき、不動産業者に本件土地の譲渡の話を持ちかけた。
 その結果、請求人らは、最も高い買取価格を提示した不動産業者に対して本件土地を譲渡するべく交渉していたが、Q社が、請求人Eに対し、上記買取価格より高い価格で本件土地を買い取りたい旨申し出たことから、請求人らは、前記1の(4)のヘのとおり、平成23年5月13日、Q社との間で本件土地を譲渡する旨の売買契約を締結した。
 そして、請求人らは、上記(ロ)のとおり、請求人E及びKが本件土地を譲渡したときにその譲渡による利益の半分をL社に支払うことを合意していたことから、前記1の(4)のトのとおり、L社に本件金員を支払った。
ハ Mの当審判所に対する答述
 Mは、当審判所に対して、Pへ金員を提供したとして、要旨次のとおり答述した。
(イ) Mは、Pを訪ねるたびに、水道代を立て替えたり、10,000円か20,000円を渡したりしていた。また、一度に100,000円以上渡すこともあり、Pに渡した金額は、7年間で合計約12,000,000円になっていた。
(ロ) Mは、Pに対し、金員を渡す理由を明確に伝えていなかったが、本件各建物からの立退きの話をしていたことから、立退きのために金員を渡していることを理解していると考えていた。
(ハ) Mは、Pに渡した金額をメモしていたが、Pが本件各建物から退去し、請求人らの確定申告書の提出も済んだことから、必要がないと思い、当該メモを処分した。
ニ 当てはめ及び請求人の主張の当否
 請求人らは、本件金員が、本件合意に基づく、L社によるまる1本件土地の取得の説得、まる2本件各建物の改良行為並びにまる3本件各建物の賃借人の対応及び立退き並びに本件土地の譲渡先探しに関するコンサルティング業務等に関する対価である旨主張するため、以下、これらの点について本件金員が本件土地の取得費又は譲渡費用に該当するか検討する。
(イ) 本件土地の取得の説得について
 請求人らは、別紙2の2の「請求人ら」欄の(2)のとおり、L社の説得は本件土地の取得のために必要不可欠なものであったことから、本件金員が本件土地の取得費に該当する旨主張する。
 この点、上記ロの(イ)のとおり、Mが、本件土地の取得に当たり、当初これを断っていた請求人E及びK、並びに本件土地の取得に反対していたそれぞれの夫を説得したことが認められ、Mによる説得がなければ、請求人E及びKが本件土地を取得することはなかったといえる。
 しかしながら、上記ロの(ロ)のとおり、そもそも、請求人E及びKとMとの間で、本件土地の取得の説得に係る対価として本件金員を支払う旨の合意があったとまでは認められない。
 また、上記イの(イ)のとおり、「取得に要した費用」には、当該資産の客観的価格を構成すべき取得代金の額のほか、登録免許税、仲介手数料等資産を取得するための付随費用の額が含まれるものと解されるところ、仮に、本件金員の中に本件土地の取得の説得に係る対価又は謝礼が含まれていたとしても、これらが本件土地の客観的価格を構成すべき取得代金に当たらないことは明らかである上、本件土地の取得の説得は、本件土地の取得を決意するに当たっての事前の働きかけにすぎず、本件土地の取得自体に必要なものであったということはできないから、その対価又は謝礼は、登録免許税、仲介手数料のように本件土地を取得するために支払われたものとはいえず、本件土地を取得するための付随費用とはいえない。
 以上のとおり、本件土地の取得の説得に係る対価又は謝礼は、本件土地の客観的価格を構成すべき取得代金にも、本件土地を取得するための付随費用にも当たらないため、本件金員の中に当該説得に係る対価又は謝礼が含まれていたとしても、本件金員は、取得費に該当しない。
 したがって、請求人らの主張には理由がない。
(ロ) 本件各建物の改良行為について
 請求人らは、別紙2の2の「請求人ら」欄の(3)のとおり、L社が本件建物の改良行為を行っており、その対価は改良費であるとした上で、本件各建物を取り壊したことにより、当該改良費を含めた本件各建物の価値が滅失したのだから、当該改良費に当たる対価も本件土地の譲渡費用に該当する旨主張する。
 この点、Mは、本件各建物について、上記ロの(ハ)の各行為を行ったことが認められる。
 しかしながら、これらの行為は、いずれも本件各建物を通常使用した場合に必要となる一般の修繕又は維持管理であり、本件各建物の価値を高めるものとは認められず、本件各建物の改良行為には該当しない。
 そして、ある資産の保有期間中に支出した一般の修繕又は維持管理に要した費用は、当該資産の使用収益によって生ずる所得に対応する費用であるから、上記ロの(ハ)の行為のために要した費用があったとしても、それは、本件各建物の使用収益によって生ずる所得に対応する費用、すなわち、不動産所得に係る必要経費といえ、客観的にみて本件土地の譲渡を実現するために必要な費用に該当するということはできない。
 したがって、本件金員の中に上記ロの(ハ)の行為に係る対価が含まれていたとしても、本件金員は、譲渡費用には該当せず、請求人らの主張には理由がない。
(ハ) コンサルティング業務等について
A 賃借人が亡くなった際の助言
 請求人らは、別紙2の2の「請求人ら」欄の(4)のイのとおり、L社は、本件各建物の賃借人が亡くなった際に助言をしており、当該助言が本件土地の譲渡価額を増加させるものであったことから譲渡費用に該当する旨主張する。
 この点、Mは、本件各建物の賃借人の一人が亡くなった際、上記ロの(ニ)のとおり助言したことが認められる。
 しかしながら、本件土地を譲渡した際には既に本件各建物は取り壊されて存在していないことからすると、Mの上記助言と本件土地の譲渡価額との間には関連性は認められず、その他にMの上記助言が本件土地の譲渡価額に影響を与えたことをうかがわせる事情もないから、Mの上記助言が本件土地の譲渡価額を増加させるものであったとはいえない。そして、Mの上記助言は、本件土地の譲渡のために行われたものではなく、本件各建物を賃貸したことによって通常必要となる本件各建物及び賃借人の管理に関してなされたものにすぎないといえるから、Mの上記助言を受けるために要した費用があったとしても、それは、上記ニの(ロ)と同様に本件各建物の賃貸借に基づく不動産所得に係る必要経費といえ、客観的にみて本件土地の譲渡を実現するために必要な費用には該当しない。
 したがって、本件金員の中にMの上記助言に係る対価が含まれていたとしても、本件金員は、譲渡費用には該当せず、請求人らの主張には理由がない。
B Pの立退きに関する行為
 請求人らは、別紙2の2の「請求人ら」欄の(4)のロの(イ)のとおり、L社は、100回以上Pを訪ねるとともに、合計約12,000,000円を提供しており、当該業務の対価は本件土地の譲渡費用に該当する旨主張する。
 しかしながら、Pが退去したのは、上記ロの(ホ)のとおり平成17年3月頃のことであるところ、これは請求人らが実際に本件土地を譲渡する6年以上も前のことであるとともに、請求人Eは、上記ロの(ヘ)のとおり、Pが退去した後、Pが居住していた本件各建物の部屋の一つを新たに貸し付けていたことからすれば、Pの本件各建物からの退去は、本件土地の譲渡のためのものであったとは認められない。
 そうすると、Mが上記ロの(ホ)のとおりP宅を訪ねて立退きの話をしたと認められることに加えて、仮にMの上記ハの答述どおり、Pに金員が提供されていたとしても、それらのために要した費用は、本件土地の譲渡のためとはいえないPの退去に関する費用であるから、客観的にみて本件土地の譲渡を実現するために必要な費用であったとは認められない。
 したがって、本件金員の中にPを訪ねたことなどに係る対価が含まれていたとしても、本件金員は、譲渡費用には該当せず、請求人らの主張には理由がない。
C 本件賃借人らの立退きに関する助言等
 請求人らは、別紙2の2の「請求人ら」欄の(4)のロの(ロ)のとおり、L社は、本件賃借人らの立退きに関する助言をしており、当該助言は本件土地を譲渡するために必要なものであるから、これに関する対価は本件土地の譲渡費用に該当する旨主張する。
 この点、Mは、上記ロの(ト)及び(チ)のとおり、まる1請求人E及びKに対して、本件各建物が老朽化していることを日頃から本件賃借人らに伝えておくと、立退きに応じてもらいやすくなる旨助言したほか、まる2請求人Eに対して、本件賃借人らと話をした上で内容証明郵便を送付して立退きを求めるとよいと助言し、請求人E及び請求人Jが作成した内容証明郵便の文章の内容を確認したことが認められる。
 しかしながら、Mの行為は、本件賃借人らとの立退交渉でもなければ、内容証明郵便の文章の作成でもなく、上記まる1及びまる2にとどまるものであって、いずれも本件賃借人らの立退きを実行するために必要なものであったとはいえず、上記まる1及びまる2の行為の対価は、客観的にみて本件土地の譲渡を実現するために必要な費用であったとは認められない。
 したがって、本件金員の中に上記まる1及びまる2の行為の対価が含まれていたとしても、本件金員は、譲渡費用には該当せず、請求人らの主張には理由がない。
D 譲渡先探しに関する助言
 請求人らは、別紙2の2の「請求人ら」欄の(4)のハのとおり、L社は、本件土地の譲渡の交渉先を複数紹介するなどの助言をしており、当該助言は本件土地を譲渡するために必要であったといえるから、上記助言に関する対価は本件土地の譲渡費用に該当する旨主張する。
 この点、Mは、上記ロの(リ)のとおり、請求人Eに対して、本件土地の譲渡の交渉に当たって用意すべき書類を教えたり、譲渡先の候補として複数の不動産業者を挙げたりしたことが認められる。
 しかしながら、請求人らは、結局、Mの挙げた不動産業者ではないQ社に本件土地を譲渡したというのであるから、Mが不動産業者を挙げたこと等と本件土地の実際の譲渡との間には関連性が認められず、客観的にみて本件土地の譲渡を実現するために必要な費用であったとは認められない。
 したがって、本件金員の中に上記助言の対価が含まれていたとしても、本件金員は、譲渡費用には該当せず、請求人らの主張には理由がない。
(ニ) 結論
 以上によれば、MがL社の代表取締役の立場において、まる1本件土地の取得の説得、まる2本件各建物の維持管理等、並びにまる3本件各建物の賃借人の対応及び立退き並びに本件土地の譲渡先探しに関するコンサルティング業務等を行い、また、本件金員がこれらに関する対価であったとしても、そのために要した費用は取得費又は譲渡費用に該当しないのであるから、本件金員は、本件土地の取得費又は譲渡費用に該当しない。

(3) 本件各更正処分について

イ 請求人Eの分離長期譲渡所得の金額
(イ) 総収入金額
 本件土地の譲渡に係る総収入金額は、別表2の請求人「E」欄の「まる1総収入金額」欄の「審判所認定額」欄のとおり、○○○○円となる。
(ロ) 取得費
 本件土地の取得費は、別表2の請求人「E」欄の「取得費」欄の「審判所認定額」欄のとおり、32,899,650円となる。
 なお、請求人Eは、確定申告において、平成11年6月16日に本件土地を取得した際の登録免許税(登録に要する費用を含む。)、不動産取得税及び印紙税(以下、これらを併せて「本件登録免許税等」という。)の額に本件土地の持分である2分の1を乗じた金額を取得費に算入していたところ、本件土地の上に存した本件各建物は賃貸の用に供されていたことから、本件登録免許税等は、不動産所得に係る必要経費といえ、本件土地の譲渡所得に係る取得費に当たらないため、別表2の請求人「E」欄の「登録免許税等」欄の「審判所認定額」欄のとおり、取得費としての登録免許税等の金額は、零円となる。
(ハ) 譲渡費用
 本件土地の譲渡費用は、別表2の請求人「E」欄の「譲渡費用」欄の「審判所認定額」欄のとおり、2,627,991円となる。
 なお、本件各建物のうち請求人Eが所有していた部分については、本件各建物の取壊しの時点において、減価償却資産としての未償却残高があり、当該未償却残高は、請求人Eの確定申告において、譲渡費用に算入されていないが、本件各建物は本件土地の譲渡のために取り壊されたことからすると、当該未償却残高は譲渡費用に当たるため、別表2の請求人「E」欄の「未償却残高」欄の「審判所認定額」欄のとおり、106,062円を譲渡費用に算入する。
(ニ) 分離長期譲渡所得の金額
 分離長期譲渡所得の金額は、上記(イ)の総収入金額から上記(ロ)の取得費及び上記(ハ)の譲渡費用の額を控除した金額である別表2の請求人「E」欄の「まる3分離長期譲渡所得の譲渡益(まる1まる2)」欄の「審判所認定額」欄の○○○○円から、「まる4分離短期譲渡所得の損失の金額」欄の「審判所認定額」欄の○○○○円を控除した金額であり、「まる5分離長期譲渡所得の金額(まる3まる4)」欄の「審判所認定額」欄のとおり、○○○○円となる。
ロ 請求人Gの分離長期譲渡所得の金額
(イ) 総収入金額
 本件土地の譲渡に係る総収入金額は、別表2の請求人「G」欄の「まる1総収入金額」欄の「審判所認定額」欄のとおり、○○○○円となる。
(ロ) 取得費
 本件土地の取得費は、別表2の請求人「G」欄の「取得費」欄の「審判所認定額」欄のとおり、8,246,735円となる。
 なお、請求人Gは、確定申告及び修正申告において、本件登録免許税等の額に本件土地の持分である8分の1を乗じた金額を取得費に算入していたところ、この点については上記イの(ロ)と同様であるから、別表2の請求人「G」欄の「登録免許税等」欄の「審判所認定額」欄のとおり、取得費としての登録免許税等の金額は、零円となる。
(ハ) 譲渡費用
 本件土地の譲渡費用は、別表2の請求人「G」欄の「譲渡費用」欄の「審判所認定額」欄のとおり、628,985円となる。
(ニ) 分離長期譲渡所得の金額
 分離長期譲渡所得の金額は、上記(イ)の総収入金額から上記(ロ)の取得費及び上記(ハ)の譲渡費用の額を控除した金額であり、別表2の請求人「G」欄の「まる3分離長期譲渡所得の金額(まる1まる2)」欄の「審判所認定額」欄のとおり、○○○○円となる。
ハ 請求人Hの分離長期譲渡所得の金額
(イ) 総収入金額
 本件土地の譲渡に係る総収入金額は、別表2の請求人「H」欄の「まる1総収入金額」欄の「審判所認定額」欄のとおり、○○○○円となる。
(ロ) 取得費
 本件土地の取得費は、別表2の請求人「H」欄の「取得費」欄の「審判所認定額」欄のとおり、8,246,735円となる。
 なお、請求人Hは、確定申告及び修正申告において、本件登録免許税等の額に本件土地の持分である8分の1を乗じた金額を取得費に算入していたところ、この点については上記イの(ロ)と同様であるから、別表2の請求人「H」欄の「登録免許税等」欄の「審判所認定額」欄のとおり、取得費としての登録免許税等の金額は、零円となる。
(ハ) 譲渡費用
 本件土地の譲渡費用は、別表2の請求人「H」欄の「譲渡費用」欄の「審判所認定額」欄のとおり、628,985円となる。
(ニ) 分離長期譲渡所得の金額
 分離長期譲渡所得の金額は、上記(イ)の総収入金額から上記(ロ)の取得費及び上記(ハ)の譲渡費用の額を控除した金額であり、別表2の請求人「H」欄の「まる3分離長期譲渡所得の金額(まる1まる2)」欄の「審判所認定額」欄のとおり、○○○○円となる。
ニ 請求人Jの分離長期譲渡所得の金額
(イ) 総収入金額
 本件土地の譲渡に係る総収入金額は、別表2の請求人「J」欄の「まる1総収入金額」欄の「審判所認定額」欄のとおり、○○○○円となる。
(ロ) 取得費
 本件土地の取得費は、別表2の請求人「J」欄の「取得費」欄の「審判所認定額」欄のとおり、16,493,471円となる。
 なお、請求人Jは、確定申告において、本件登録免許税等の額に本件土地の持分である4分の1を乗じた金額を取得費に算入していたところ、この点については上記イの(ロ)と同様であるから、別表2の請求人「J」欄の「登録免許税等」欄の「審判所認定額」欄のとおり、取得費としての登録免許税等の金額は、零円となる。
(ハ) 譲渡費用
 本件土地の譲渡費用は、別表2の請求人「J」欄の「譲渡費用」欄の「審判所認定額」欄のとおり、1,257,980円となる。
(ニ) 分離長期譲渡所得の金額
 分離長期譲渡所得の金額は、上記(イ)の総収入金額から上記(ロ)の取得費及び上記(ハ)の譲渡費用の額を控除した金額であり、別表2の請求人「J」欄の「まる3分離長期譲渡所得の金額(まる1まる2)」欄の「審判所認定額」欄のとおり、○○○○円となる。
ホ 小括
 請求人らの分離長期譲渡所得の金額を基に計算した納付すべき税額は、請求人Eについては ○○○○円、請求人Gについては ○○○○円、請求人Hについては ○○○○円及び請求人Jについては ○○○○円となり、いずれも別表1の「更正処分等」欄のそれぞれの「納付すべき税額」欄の金額を上回るから、本件各更正処分は適法である。

(4) 本件各賦課決定処分について

 請求人らの本件各賦課決定処分に係る審査請求は、上記(1)のロのとおり、適法であるところ、原処分庁は、本件各賦課決定処分に係る審査請求が適法と判断された場合には、いずれも棄却するとの裁決を求めるとしているため、以下、本件各賦課決定処分の適法性について判断する。
 この点、本件各更正処分は上記(3)のとおり適法であり、また、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件各更正処分の前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいてなされた本件各賦課決定処分は適法である。

(5) その他

 原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所の調査の結果によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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