(平成26年12月4日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、農業に基因する事業所得及び不動産所得を有する審査請求人(以下「請求人」という。)が、平成22年分の事業所得及び不動産所得の各金額の計算において、それぞれ固定資産税相当額等を必要経費に算入していなかったとして更正の請求をしたところ、原処分庁が、当該更正の請求に基づく調査の結果、請求人の当初の申告に係る事業所得の金額の計算上必要経費に算入されていた租税公課については請求人から帳簿書類等の提示がされなかったため支出の事実ないしその具体的内容を確認できないから必要経費とは認められず、当該金額相当額が増加した後の事業所得の金額に対して当該更正の請求に係る必要経費の額が減算されるべきであるとして、請求人の主張の一部のみを認める更正処分を行ったことに対し、請求人が、その全部の取消しを求めた事案であり、争点は、次の2点である。

  • 争点1 請求人からの必要経費の内容を確認するための書類の提出を待たずにされた原処分は、違法又は不当か否か。
  • 争点2 請求人の主張する金員は、事業所得の金額の計算上必要経費とされるか否か。

(2) 審査請求に至る経緯及び基礎事実

 審査請求に至る経緯及び基礎事実は、以下のとおりである。

イ 請求人は、平成23年3月15日付で、別表1の「確定申告」欄のとおり記載した平成22年分の所得税の確定申告書を原処分庁に提出した。
 なお、当該確定申告書に添付して原処分庁に提出された平成22年分収支内訳書(農業所得用)には、事業所得の必要経費となるべき租税公課の額が97,040円(以下「当初申告に係る租税公課」という。)及び土地改良費の額が41,520円である旨、また、平成22年分収支内訳書(不動産所得用)には、不動産所得の必要経費となるべき租税公課の額が555,684円である旨がそれぞれ記載されていた。
ロ 請求人は、平成23年5月6日、別表1の「修正申告」欄のとおり記載した平成22年分の所得税の修正申告書を、原処分庁に提出し、原処分庁は、同年5月24日付で、当該修正申告に係る過少申告加算税の賦課決定処分をした。
ハ 請求人は、平成24年3月7日付で、平成22年分の所得税の計算において医療費控除の適用があるとして、別表1の「先行更正の請求」欄のとおり記載した更正の請求書(以下、当該更正の請求を「先行更正の請求」という。)を提出した。
ニ 請求人は、平成24年3月13日付で、別表1の「本件更正の請求」欄のとおり記載した更正の請求書(以下、「本件更正の請求書」といい、当該更正の請求を「本件更正の請求」という。)を原処分庁に提出した。
 本件更正の請求書には、更正の請求をする理由として、経費の計上漏れがあることなどが記載されており、本件更正の請求書に添付して提出された平成22年分収支内訳書(農業所得用)には、事業所得の必要経費となる租税公課の額が134,548円及び土地改良費の額が49,320円である旨、また、平成22年分収支内訳書(不動産所得用)には、不動産所得の必要経費となる租税公課の額が804,378円である旨それぞれ記載されていた。
 一方、本件更正の請求書には、不動産の所在地、面積、評価額及び固定資産税相当額が記載された文書(以下「本件文書」という。)が添付されていたが、本件文書には、農業に係る固定資産税相当額が○○○○円及び不動産賃貸に係る固定資産税相当額が○○○○円である旨記載されていた。
 なお、請求人は、本件更正の請求書の提出に際し、国税通則法施行令(以下「通則法施行令」という。)第6条《更正の請求》第2項に規定する更正の請求の理由の基礎となる事実を証明する取引記録等を原処分庁に提出しなかった。
ホ 原処分庁は、平成24年3月30日付で、先行更正の請求に対して、別表1の「先行更正処分」欄のとおり、先行更正の請求の内容のとおりの更正処分及び平成23年5月24日付でされた過少申告加算税の賦課決定処分に係る変更決定処分を行った。
ヘ 原処分庁は、本件更正の請求に基づく調査(以下「原処分調査」という。)を行い、平成25年7月31日付で、請求人の本件更正の請求に対し、別表1の「本件更正処分」欄のとおり、当初申告に係る租税公課の額97,040円について、請求人が当初申告に係る租税公課の内容等を確認することができる資料等(以下「本件資料等」という。)を提示しなかったことから、請求人の事業所得を生ずべき業務について生じた費用であることを確認することができないためその全額を必要経費に算入することができないとした上で、事業所得について租税公課の額をXXXX円とし(原処分調査の結果、本件文書に記載されていた農業に係る固定資産税相当額○○○○円が請求人の計算誤りであったことが確認されたことによる。)、また、土地改良費の額を49,320円とし、不動産所得について租税公課の額を804,378円とする旨の更正処分(以下「本件更正処分」という。)を行った。
ト 請求人は、平成25年9月27日付で、本件更正処分に対し不服があるとして異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年12月18日付で異議申立てについて棄却の異議決定をした。
チ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成26年1月17日付で、審査請求をした。

(3) 関係法令

 別紙2のとおりである。

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2 主張

  • 争点1 請求人からの必要経費の内容を確認するための書類の提出を待たずにされた原処分は、違法又は不当か否か。
    請求人 原処分庁
      本件更正の請求に関して、原処分庁から提出を求められた本件資料等の提出が遅くなった要因は、当初に、原処分庁所属の調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)に本件資料等の提出期限を確認した際に、提出期限について法的な期限はないと説明を受けたことによるものであり、加えて、請求人が多忙であり、かつ資料の取寄せが必要であったため、提出が遅れていたものであるにもかかわらず、事前の説明もなく、本件資料等の未提出を理由に一方的に原処分がされたことは、当初の説明と相違している。
     請求人は、平成24年分の所得税の申告の際に持参した書類(以下「本件後続文書」という。)が、原処分庁が求めているものと違ったため、改めて、求めに応じた書類を平成25年分の所得税の申告の時期に提出する旨を伝えていた。
     以上のことから、請求人の書類の提出を待たずに行った原処分は違法又は不当である。
      更正の請求に係る書類の提出については、法律等に定められた期限はないものの、税務署長が更正をするに当たり行う調査の手続については、税務官庁に広汎な裁量権が認められており、原処分庁が本件資料等の提出期限を設けたこと及びその提出期限までに請求人が本件資料等を提出しなかったことをもって原処分を行ったことに違法はない。
     また、更正の請求については、更正の請求をしようとする者において、その申告内容が真実に反するものであることの主張立証をすべきであるところ、請求人は、原処分庁が本件資料等を提出するように最初に依頼した平成24年5月から、原処分が行われるまでの1年以上もの間にわたり本件資料等を提出しなかったものであり、当初申告に係る租税公課については、事業所得に係る総収入金額を得るため直接に要した費用の額又は事業所得を生ずべき業務について生じた費用であることの主張立証をしていないのであるから、所得金額の計算において総収入金額から控除する必要経費とは認められない。
  • 争点2 請求人の主張する金員は、事業所得の金額の計算上必要経費とされるか否か。
    請求人 原処分庁
      請求人が、審査請求書に添付して提出した書類に係る町費等の○○○○円は、請求人の事業所得の必要経費である。   請求人は、町費等の支払を求める旨が記載された書類を提出しただけで、当該町費等が、事業所得に係る総収入金額を得るため直接に要した費用の額又は事業所得を生ずべき業務について生じた費用であることについて具体的に立証しておらず、請求人の事業所得の必要経費に該当するとは認められない。

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3 判断

(1) 争点1 請求人からの必要経費の内容を確認するための書類の提出を待たずにされた原処分は、違法又は不当か否か。

イ 法令解釈
(イ) 更正の請求の手続に関する法令の規定をみると、請求者において、更正の請求書に、納税申告に係る課税標準等又は税額等、その更正の請求をする理由、更正の請求をするに至った事情の詳細その他参考となるべき事項を記載すべきものとされ(通則法第23条第3項)、更正の請求をする理由が課税標準たる所得が過大であることその他その理由の基礎となる事実が一定期間の取引に関するものであるときは、その取引の記録等に基づいてその理由の基礎となる事実を証明する書類を更正の請求書に添付すべきものとされている(通則法施行令第6条第2項)。すなわち、請求者側でまずその申告内容の過誤の存在を明らかにすることが要求されているのであるが、他方で、当該更正の請求を受けた税務署長は、その請求に係る課税標準等又は税額等を調査し、更正をし、又は更正をすべき理由がない旨をその請求者に通知することとされている(通則法第23条第4項)。ここでいう調査とは、課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切、すなわち、課税庁の証拠資料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て更正をし、又は更正をすべき理由がない旨を請求者に通知するに至るまでの思考、判断を含む極めて包括的な概念であると解される。
 更正の請求を端緒として税務調査をする場合においても、結局その課税標準たる所得の金額に帰着するものであるから、その調査の範囲は、更正の請求をした者の主張に限定されるものではなく、調査の客観的な必要があり、かつ社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられていると解すべきである。
(ロ) そして、調査の方法、時期等の具体的手続について定めた法律の規定はないことからすると、どの段階で調査を打ち切って課税処分を行うかについても、制度の趣旨、目的に反しない限りにおいて、課税庁に広範な裁量権が認められているものと解される。
ロ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 調査担当職員は、平成24年4月19日午前10時頃、請求人に対する本件更正の請求に係る調査のため、請求人に電話連絡を行ったが、請求人による電話応答がなかった。その後、同日午前11時50分頃、請求人から調査担当職員に電話連絡があったため、調査担当職員は、請求人に対し、本件更正の請求の内容を確認するため調査を行うことを告げ、請求人と面談したい旨申し入れたが、請求人は、土曜日若しくは日曜日又は平日の午後8時以降でないと面談できない旨の回答をした。
 そのため、調査担当職員は、請求人に対して、本件資料等並びに本件更正の請求により経費に追加計上する租税公課及び土地改良費の各内容が分かる通知書等の書類を郵送してくれるよう依頼した。
(ロ) 調査担当職員は、平成24年5月23日午前10時45分頃、請求人に電話連絡を行い、いまだ提出されていない本件資料等を含む原始記録等の提出を求めたところ、請求人から具体的に何が必要なのかを明示した文書の送付の要望を受けたため、請求人に対して原処分庁に提出すべき具体的な帳簿書類等の名称等を記載した文書を送付することを約した。
 その際、調査担当職員は、請求人に対して、当該原始記録等を1週間以内に提出してほしい旨依頼したところ、請求人は、調査担当職員に当該原始記録の提出期限に係る法律上の規定の有無を問い質し、調査担当職員が当該提出期限について法律上の規定がない旨の回答をすると、法律に規定のないことを勝手に決めるな等と言い、調査担当職員の説明の途中で一方的に電話を切った。
 その後、調査担当職員は、当該原始記録等を平成24年5月31日までに同封の返信用封筒で提出してほしい旨記載した同月23日付の「添付書類等の提出のお願い」と題する文書を請求人に送付したが、請求人は、本件資料等をはじめとする当該原始記録等を原処分庁に提出しなかった。
(ハ) 調査担当職員は、平成24年6月4日、同月18日、同月19日、同年11月5日及び同年12月14日、請求人にいずれも電話連絡を行い、本件資料等を提出してくれるよう依頼したが、請求人は、調査担当職員に対し、本件資料等の提出には時間がかかる、本件更正の請求書に添付している本件文書が帳簿である、確定申告に係る書類は毎年3月にしか出せない等と言ったり、一方的に電話を切る等して本件資料等の提出を行わなかった。
 また、調査担当職員は、本件資料等を平成24年12月12日までに提出してほしい旨記載した同月4日付の「添付書類等提出のお願い」と題する文書を請求人に送付したが、請求人は、本件資料等を提出しなかった。
(ニ) 請求人は、平成25年3月12日、E税務署を訪れ、同庁舎内に設置された確定申告会場において応対に出た調査担当職員に対し、平成24年5月23日付の「添付書類等の提出のお願い」と題する文書に記載されていた本件資料等に該当するものであるとして、本件後続文書を提出したが、本件後続文書に記載されている内容は、本件文書の記載内容とほぼ同様のものであった。
 そのため、調査担当職員は、請求人に対し、本件後続文書では当初申告に係る租税公課の内容を確認することができないため、本件資料等を提出してほしい旨依頼したが、請求人は、調査担当職員の提出依頼に対して、来年提出する、覚えていたら出すなどと述べた。
(ホ) 調査担当職員は、請求人に対し、本件資料等の提出期限を平成25年4月4日とする旨記載した同年3月27日付、同期限を同年4月16日とする旨記載した同月8日付、及び、同期限を同月26日とする旨記載した同月18日付の「書類の提出について」と題する文書をそれぞれ送付して、本件資料等の提出を依頼したが、請求人は、当該各文書による依頼に応じることなく、本件資料等を原処分庁に提出しなかった。
ハ 判断
(イ) 請求人は、原処分庁が本件資料等の提出を求めたのに対して提出できなかったのは、調査担当職員から本件資料等の提出について法的な期限はないと説明を受けたことによるものであり、加えて、請求人が多忙であり、かつ資料の取寄せが必要であったことによるものであって、本件資料等の未提出を理由に一方的に原処分がされたことは、当初の調査担当職員の説明内容と相違するものであって、違法又は不当な処分である旨主張する。
 上記イの(イ)及び(ロ)のとおり、更正の請求を端緒とする場合においても、課税庁においては、社会通念上相当な限度にとどまる限り、当該請求をした者の主張を確認するのみならず、その課税標準たる所得の金額の認定に客観的に必要な調査を行い得るものであるが、ここでいう調査とは、課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切をいい、調査の際、どの段階で調査を打ち切って課税処分を行うかについては、制度の趣旨、目的に反しない限りにおいて、課税庁に広い裁量が認められていると解される。
 本件についてみると、上記ロのとおり、調査担当職員は、請求人に対し、当初申告に係る租税公課の内容を確認できなかったため、これを確認するため、平成24年4月19日から平成25年4月18日までの約1年間、電話ないし文書により再三にわたり本件資料等の提出を求め、さらに、本件資料等の具体的名称等について文書で特定するなどしてそれらの提出を依頼したにもかかわらず、請求人からは、当初申告に係る租税公課の内容等を確認し得るような書類等は提出されなかったことが認められる。そして、この間、請求人が、資料の取寄せの進行状況等を説明するなどしていたという事情も認められない。
 これらの経緯等からすれば、原処分庁は、請求人に対し、繁忙であったことや資料の取寄せの必要等を考慮しても十分な資料提出の機会及び準備期間を与えたものと評価できる。本件資料等の提出に法的な期限がないといっても、原処分庁において請求人の提出を際限なく待たなければならないものでもないし、上記で認定したとおり原処分庁は請求人に対して早期の提出を求めていたのであって、原処分庁が、法的な提出期限がない旨説明した趣旨が、資料の提出がいつでもよいというものでないことは客観的にみて明らかであったというべきである。加えて、原処分庁が提出を求めたのは、請求人が必要経費として計上した租税公課の内容を明らかにする資料であって、一般的に納税者に提出困難なものとも言い難いことなどの事情に照らしてみれば、原処分庁が請求人に対する7回の電話連絡及び5回の提出依頼文書の送付をもって調査を打ち切り、当該租税公課は存在しないものと推定して原処分をしたことが、原処分庁の裁量権を逸脱ないし濫用するものとは認められない。
(ロ) 請求人は、本件後続文書が、原処分庁が求めている本件資料等と違ったため、改めて、平成25年分の所得税の確定申告の時期に提出する旨を伝えており、本件資料等を提出する意思を示していたにもかかわらず、原処分庁が本件資料等の提出を待たずに行った原処分は違法又は不当である旨主張する。
 確かに、上記ロの(ニ)のとおり、請求人は、平成24年分の所得税の申告の際に、調査担当職員に対して本件資料等を平成25年分の所得税の申告の時期に提出する旨伝えたことが認められる。
 しかしながら、原処分庁が最初に請求人に対して本件資料等の提出を求めた時点から平成24年分の所得税の申告時までに10か月以上が経過しているのであり、本件資料等について更に1年後でなければ原処分庁に提出できないような特段の事情が当時の請求人にあったとは認められない。加えて、同申告時の後も、上記(イ)で認定説示したとおり、調査担当職員が、請求人に対し、期限を定めて繰り返し本件資料等の提出を求めたにもかかわらず、請求人がこれに応じなかったことからすれば、請求人に本件資料等を提出する意思がなく、当初申告に係る租税公課として計上した必要経費自体が存在しないと推定し、請求人から平成25年分の所得税の確定申告の際に本件資料等の提出を行う旨の申出があった後に同提出を待たずに原処分をしたことが、原処分庁の合理的な裁量の範囲を超えているということはできないから、原処分が、この点に関して違法又は不当であるとは認められない。
(ハ) 以上のとおりであり、原処分庁が請求人による書類の提出を待たずに原処分を行ったことに違法又は不当な点があるとは認められず、この点に関する請求人の主張はいずれも採用することはできない。

(2) 争点2 請求人の主張する金員は、事業所得の金額の計算上必要経費とされるか否か。

 当審判所が、事業所得に係る必要経費について審理した結果によれば、請求人の平成22年分の事業所得に係る必要経費の額は別表2の各「審判所認定額」欄のとおりである。
 このうち、争点に関して上記のとおり認定、判断した理由は以下のとおりである。
 なお、後記ロの(イ)ないし(ホ)の必要経費の合計額は○○○○円となるところ、これと当初申告に係る租税公課のうちの差額○○○○円は、後記ロの(ニ)のd町区の地価割の額○○○○円及び後記ロの(ホ)のF自治会の賦課金の額○○○○円を二重計上していたものであり、当初申告に係る租税公課のうち、本件において請求人が事業所得の必要経費として主張する額は○○○○円である。
イ 法令解釈
 所得税法第37条第1項は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年分の事業所得の総収入金額に係る売上原価その他その総収入金額を得るために直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他事業所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする旨規定している。
ロ 認定事実
 請求人が当審判所に対して提出した資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) b町区について
A 請求人は、当審判所に対し、宛先を請求人とし、請求者がb町区長名義、日付が平成22年11月21日、請求額が土木費として合計○○○○円及び○○費として○○○○円を請求する旨の「平成22年b町町費徴収票」と題する文書の写しを提出した。
B 地縁団体であるb町区は、平成22年当時、地区の協議に基づき、町内の農地所有者から農道・水路等の管理及び補修工事等に関する費用を土木費及び○○費名目で徴収しており、請求人は、b町内に農地等を有しているところ、上記Aの「平成22年b町町費徴収票」と題する文書に記載する土木費及び○○費は、いずれも同農地等の面積を基礎として算定されたものである。
(ロ) e町区について
A 請求人は、当審判所に対し、宛先を請求人とし、請求者がe町区長名義の1 日付が平成22年7月24日、納付すべき金額が○○○○円である旨記載された「平成22年上半期掛金納付依頼について」と題する文書及び2日付が平成22年11月23日、納付すべき金額が○○○○円である旨記載された「平成22年下半期掛金納付依頼について」と題する文書の各写しを提出した。
B 請求人は、平成22年当時、e町内に農地等を所有していたところ、当該各文書に記載された、納付すべき金額は、それぞれe町協議費徴収細則に基づいて、町内の共用部分に係る整備、修繕及び負担金の支払に関する費用に充てることを目的として、町区内に農地等を所有している町外在住者から徴収することとされたものであり、請求人の所有する同農地等に係る面積を基準として算出された。
(ハ) f町区について
A 請求人は、当審判所に対し、宛先を請求人とし、請求者がf町区長名義の1 日付が平成22年7月3日、徴収項目が見付割、納付すべき金額が○○○○円である旨記載された「平成22年前期f町費割」と題する文書及び2日付が平成22年11月9日、徴収項目がG経常経費、納付すべき金額が○○○○円である旨記載された「平成22年後期f町費割」と題する文書の各写しを提出した。
B 地縁団体であるf町区は、地権者協議に基づき、町内の共用費用として運営費に充てることを目的として、その町区内に農地等を所有している町外在住者から、農地等の面積を基準として算定された金額を徴収しており、また、ほ場整備賦課金として町一括でg土地改良区に納入する費用に充てることを目的として、所有する農地等の面積に応じて決定された一定の基準によりG経常経費を徴収しているところ、上記Aの1 及び2の金額は、請求人がf町区内に所有する農地等について所定の基準に従い算出されたものである。
(ニ) d町区について
A 請求人は、当審判所に対し、宛先(納付者)を請求人とし、請求者をd町区長名義、日付を平成22年7月25日、請求額が地価割として○○○○円である旨記載された「平成22年度(全期)○○費納付明細書」と題する文書の写しを提出した。
B 地縁団体であるd町区は、同町の行政全般の費用の一部として、共用部分の整備、修繕等に充てることを目的として、町区内に農地等を所有している町外在住者から、所有する農地面積を基準として算定された金額を徴収しているところ、上記Aに記載された金額は、請求人がd町区内に有している農地等について、同基準により算定されたものである。
(ホ) F自治会について
A 請求人は、当審判所に対して、請求者をF自治会長名義、日付が平成23年4月15日、請求額が賦課金として○○○○円である旨の「平成22年度協議費通知書」と題する文書の写しを提出した。
B F自治会においては、町内規約に基づき、町内の共用部分の整備、修繕等の費用及び負担金の支払に充てることを目的として、町区内に農地を所有している者に対して、所有する農地面積を基準として算定された賦課金を徴収している。請求人は、h市i町内に土地を有し、上記A記載の金額は、同賦課金として算出されたものである。
ハ 判断
 上記のとおり、請求人は、審査請求後になって、当審判所に対して当初申告に係る租税公課に係る資料を提出したため、これを踏まえて検討するに、これら資料は、請求人が所有する農地等の所在する町区の区長又は自治会の会長が発行したものであって、それらに示されている金員は町区又は自治会において農地等の面積を賦課基準として徴収され、その用途は主に農地等の保全に係るものであると認められる。そして、同資料によれば平成22年中に納付すべきことが確定したと認められる金額の合計は○○○○円であるところ、かかる金員の支払は、上記イにいうその年における販売費、一般管理費その他請求人が事業所得を生ずべき業務について生じた費用の額に該当すると認められ、請求人の平成22年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入されるべきである。

(3) 本件更正処分について

 上記(2)のとおり、請求人の平成22年分の事業所得の金額は、別表2の「審判所認定額」の「事業所得の金額」欄のとおりとなり、本件更正処分に係る額を下回るから、本件更正処分は、その一部を別紙1のとおり取り消すべきである。

(4) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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