(平成27年1月23日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、租税特別措置法第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》第1項の規定を適用し所得税の修正申告をしたが、同項による特別控除額の計算に誤りがあったとして更正の請求をしたところ、原処分庁が更正をすべき理由がない旨の通知処分等を行ったことから、請求人が同処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成24年分の所得税について、確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した(以下、この申告を「本件確定申告」という。)。
ロ 次いで、請求人は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)の調査を受け、平成24年分の所得税について、別表1の「修正申告」欄記載のとおりとする修正申告書を平成25年10月2日に提出した(以下、この修正申告を「本件修正申告」という。)。
ハ その後、請求人は、平成25年10月7日に、別表1の「更正の請求」欄記載のとおりとすべき旨の更正の請求をした。
ニ 原処分庁は、平成25年11月29日付で、請求人に対し、1別表1の「賦課決定処分」欄記載のとおり、本件修正申告に基づき過少申告加算税の賦課決定処分(○○○○号によるもの。以下「本件賦課決定処分」という。)をするとともに、2別表1の「通知処分」欄記載のとおり、更正をすべき理由がない旨の通知処分(○○○○号によるもの。以下「本件通知処分」という。)をした。また、原処分庁は、同日付で、請求人に対し、平成24年分の所得税について、別表1の「更正処分等」欄記載のとおり、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(いずれも○○○○号によるもの。以下、これらの更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を、それぞれ「本件更正処分」及び「本件再賦課決定処分」という。)をした。
ホ 請求人は、平成25年12月2日、別表1の「異議申立て1」欄記載のとおり、本件通知処分に不服があるとして、また、同月4日、別表1の「異議申立て2」欄記載のとおり、本件賦課決定処分に不服があるとして、それぞれ異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成26年1月30日付で、いずれも棄却する旨の異議決定をした。
ヘ 請求人は、異議決定を経た後の本件通知処分及び本件賦課決定処分に不服があるとして、平成26年2月10日に審査請求をした(以下「本件審査請求」という。)。
 なお、国税通則法(以下「通則法」という。)第104条《併合審理等》第2項及び第4項に基づき、本件更正処分及び本件再賦課決定処分についてもあわせ審理する。

(3) 関係法令等の要旨

別紙2のとおりである(なお、略称等は本文中の例による。)。

(4) 基礎事実

以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても、その事実が認められる。

イ 土地及び建物の譲渡に至るまでの経緯

(イ) 請求人の夫であるf(以下「夫f」といい、請求人と併せて「請求人夫妻」という。)は、昭和45年4月20日、別表2記載の番号1の土地(以下「甲土地」という。)に、別表3記載の番号1の建物(以下「本件居住用家屋」という。)を新築して取得した。請求人夫妻は、本件居住用家屋で居住を開始し、同家屋を譲渡するまで生活の本拠として居住していた。

(ロ) 請求人は、昭和59年2月○日、請求人の父であるg(以下「父g」という。)が死亡したため、甲土地、別表2記載の番号2の土地(以下「乙土地」という。)及び別表3記載の番号2から5までの各建物を相続により取得した。

(ハ) 夫fは、昭和60年12月16日、別表2記載の番号3の土地(以下「丙土地」といい、甲土地及び乙土地と併せて「本件各土地」という。)並びに別表3記載の番号6及び番号7の各建物を請求人の兄であるhから売買により取得した。

(ニ) 別表3記載の番号2から7までの各建物について、父gは、それぞれ貸家として使用していたが、請求人夫妻は、当該各建物を取得以降、いずれも物置として使用した(以下、別表3記載の番号2から7までの各建物を併せて「本件各空家」という。)。

(ホ) 請求人夫妻は、平成23年11月29日、i社との間で、本件各土地、本件居住用家屋及び本件各空家(以下、これら家屋を併せて「本件各建物」といい、本件各土地と本件各建物を併せて「本件譲渡物件」という。)について、本件各土地を○○○○円及び本件各建物を○○○○円で譲渡する旨の不動産売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し、同日、本件売買契約に基づく手付金として○○○○円を受領した。

(ヘ) 請求人夫妻は、平成24年1月6日、本件各土地の地積を別表2の「地積変更後の地積」欄記載のとおりとする地積変更登記をした。

(ト) 本件各建物は、平成24年2月15日にいずれも取り壊され、また、本件各土地については、同月28日、請求人夫妻からi社に所有権移転登記された。

(チ) 請求人夫妻は、平成24年2月28日、本件各土地に係る譲渡代金の残金○○○○円並びに本件譲渡物件に係る平成24年度固定資産税及び都市計画税の精算分○○○○円を受領した。

(リ) 本件譲渡物件の譲渡費用は、仲介手数料○○○○円と収入印紙代45,000円の合計額である○○○○円であった。

ロ 更正の請求に至るまでの経緯

(イ) 夫fは、平成25年2月7日、j税務署の確定申告相談会場を訪れ、同署の申告相談担当職員(以下「本件相談担当職員」という。)に対し、請求人夫妻の平成24年分の所得税の確定申告について相談した(以下「本件申告相談」という。)。

(ロ) 請求人は、甲土地及び乙土地(以下、これらを併せて「本件請求人譲渡土地」という。)に係る譲渡所得の金額の計算に当たり、租税特別措置法(以下「措置法」という。)第35条第1項の規定による特例(以下「本件特例」という。)を適用して、本件確定申告をした。

(ハ) 請求人は、本件調査担当職員から、本件確定申告には本件特例に係る特別控除額に誤りがある等の指摘を受け、平成25年10月2日、本件修正申告をした。

(ニ) 請求人は、平成25年10月7日、本件修正申告には本件特例に係る特別控除額に誤りがあったとして、平成24年分の所得税の更正の請求をした。

ハ 異議決定の理由等

異議審理庁は、本件各建物の間に塀や障壁等がなく、本件各土地の具体的な利用状況が明確ではないことから、本件請求人譲渡土地の本件特例の適用による特別控除額の算出については、本件各建物の合計建築面積に占める本件居住用家屋の建築面積の割合を計算し、当該割合を本件請求人譲渡土地に係る譲渡所得金額に乗じて算出することが合理的であるとして、本件通知処分を適法とし、棄却の異議決定をした。

ニ 本件各土地上の本件居住用家屋及び本件各空家の配置状況等

(イ) 請求人が本件審査請求において提出した、本件各土地における本件各建物の配置図(概要は別図のとおり。以下「本件建物配置図」という。)によれば、1本件居住用家屋は甲土地上に存しており、2本件各空家のうち別表3記載の番号2から5までの各建物は乙土地上に存しており、3本件各空家のうち別表3記載の番号6及び番号7の各建物は丙土地上に存しており、そして、4乙土地の一部には通路(別図の地点D、F、G、H、M、L、K、J、I、E、Dの各地点を順次直線で結んだ線で囲まれた範囲の部分の土地。以下「本件通路」という。)が開設されていた。
 また、平成21年度に撮影された本件各土地の航空写真によると、本件各土地上には建物が本件建物配置図のとおり存在し、本件各土地は、本件建物配置図のとおり甲土地、乙土地及び丙土地に区分して利用されており、本件売買契約時における本件各土地の利用状況は、本件建物配置図と同様であった。

(ロ) 本件通路は、昭和42年8月24日、建築基準法第42条《道路の定義》第1項第5号に規定する道路(以下「位置指定道路」という。)として位置の指定を受けていたが、平成24年○月○日付で位置指定道路廃止の公告がされた。

(5) 争点

イ 本件請求人譲渡土地のうち措置法第35条第1項に規定する居住用財産に該当するのは、どの範囲か。
ロ 本件確定申告が過少申告となったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるか否か。 

2 主張

(1) 争点イ(本件請求人譲渡土地のうち措置法第35条第1項に規定する居住用財産に該当するのは、どの範囲か。)について

イ 請求人

本件調査担当職員から本件居住用家屋の敷地である甲土地の面積及び本件通路のうち4分の1に相当する面積が居住用財産に該当すると説明された。そして、請求人も、本件調査担当職員から説明された上記見解が最も妥当であると考えるから、本件請求人譲渡土地のうち居住用財産と認められる土地の範囲は、甲土地の面積及び本件通路のうち4分の1に相当する面積の部分である。

ロ 原処分庁

本件建物配置図によれば、甲土地は本件居住用家屋の敷地であったことが認められるから、甲土地は居住用財産に該当する。
 また、本件通路は、本件各土地の中央を通り、本件各建物の敷地それぞれに面していることが認められるから、本件通路のうち居住用財産に該当する範囲は、本件各建物の敷地面積の合計に占める本件居住用家屋の敷地面積の割合(以下「本件敷地面積割合」という。)に相当する部分とするのが妥当である。
 以上のとおり、本件請求人譲渡土地のうち居住用財産に該当する土地の範囲は、甲土地の面積及び本件通路のうち本件敷地面積割合に相当する面積の部分である。

(2) 争点ロ(本件確定申告が過少申告となったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるか否か。)について

イ 請求人

夫fは、本件申告相談において、本件建物配置図等の必要書類を提示して、本件譲渡物件の具体的な利用状況を説明したにもかかわらず、本件相談担当職員は、本件各土地の全体が居住用財産に該当するという誤った指導を行った。そして、請求人は、夫fに対する指導を信頼して本件確定申告をした。その結果、過少申告となったのであるから、請求人には「正当な理由」がある。

ロ 原処分庁

本件申告相談において、夫fと本件相談担当職員との間にどのようなやりとりがあったか明らかでなく、本件相談担当職員の誤指導が原因で本件確定申告が過少申告になったとは認められないから、請求人には「正当な理由」はない。

3 判断

(1) 争点イ(本件請求人譲渡土地のうち措置法第35条第1項に規定する居住用財産に該当するのは、どの範囲か。)について

イ 法令解釈

(イ) 措置法第35条第1項は、個人がその居住の用に供している家屋で政令で定めるものを譲渡し、又は当該家屋とともにその敷地の用に供されている土地等を譲渡した場合等には、譲渡所得の金額の計算上、3,000万円と当該資産の譲渡に係る譲渡所得の金額とのいずれか低い金額を控除する旨規定している。
 そして、上記政令で定める家屋について、租税特別措置法施行令第23条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》第1項で準用する同施行令第20条の3《居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例》第2項は、個人がその居住の用に供している家屋とし、その者がその居住の用に供している家屋を二以上有する場合には、これらの家屋のうち、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限る旨規定している。

(ロ) 措置法第35条第1項の規定は、個人が自ら居住の用に供している家屋や、その敷地の用に供されている土地等の居住用財産を譲渡する場合には、これに代わる居住用財産を取得するのが通常であることなどから、かかる譲渡は、一般の資産の譲渡に比してその担税力が弱いことなどを考慮して、居住用財産の譲渡者に対する課税につき、特別利益を付与する租税優遇措置を定めた特例である。

(ハ) 「租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)の取扱いについて」(昭和46年8月26日付直資4-5ほか国税庁長官通達。以下「措置法通達」という。)35-5《居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱いの準用》において準用する措置法通達31の3-12《居住用家屋の敷地の判定》は、譲渡した土地等が措置法第35条第1項に規定する居住の用に供している家屋の「敷地」に該当するかどうかは、社会通念に従い、当該土地等が当該家屋と一体として利用されている土地等であったかどうかにより判定すると定めているところ、この取扱いは、上記(ロ)の措置法第35条第1項の趣旨に合致するものであり、当審判所においても相当であると認める。

ロ 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(イ) 本件通路の地積等について
 本件通路の距離及び形状は別図のとおりであるから、本件通路の地積は210.94uであったと認められる。
 なお、本件通路の東側は行き止まりになっているため、通り抜けることができなかった。

(ロ) 本件各建物の敷地の面積について
 本件居住用家屋の敷地は甲土地、本件各空家のうち別表3記載の番号2から5までの各建物の敷地は本件通路を除く乙土地、本件各空家のうち別表3記載の番号6及び番号7の各建物の敷地は丙土地とそれぞれ認められるところ、別表2の「地積変更後の地積」欄記載の本件各土地の地積及び上記(イ)の本件通路の地積を基に算出した本件各建物の合計敷地面積は、745.94u(189.10u+572.04u+195.74u-210.94u)であった。

ハ 当てはめ

甲土地が本件特例の居住用財産に当たることについては、原処分庁及び請求人ともに争いがなく、また、当審判所においても、甲土地は本件居住用家屋の敷地であったと認められる。
 次に、居住用財産である甲土地が面する本件通路への本件特例の適用に当たり、居住用財産に該当することとなる部分の面積について争いがあることから、以下、この点について審理する。

(イ) 本件通路について
A 本件通路は、別図のとおり、本件各建物の敷地に面している道路であるところ、上記1(4)イ(イ)及び(ニ)によれば、本件各建物及びそれぞれの敷地の出入りに必要な土地であり、その出入りに利用されていたものと推認されることから、本件各建物と一体で利用されていた土地であると認められる。そうすると、社会通念上、本件通路のうち本件居住用家屋と一体として利用され、措置法第35条第1項に規定する居住の用に供している家屋の敷地に該当していた部分は、本件通路を本件居住用家屋と本件各空家に対応する部分であん分した本件居住用家屋に対応する部分とすることが合理的と認められる。
 そして、上記あん分に当たっては、本件通路は、上記のとおり利用されていた土地であるから、本件敷地面積割合に基づきあん分することが合理的であるところ、1上記ロ(イ)のとおり、本件通路の地積が210.94uであること、2甲土地の地積が189.10uであること、及び、3上記ロ(ロ)のとおり、本件各建物の敷地面積の合計が745.94uであることから、これらを基に本件敷地面積割合を算出すると約25.35%(189.10u÷745.94u)となり、本件通路に係る居住用財産の範囲は、53.47u(210.94u×189.10u÷745.94u)(小数第3位以下切捨て)となる。
B この点について、請求人は、本件通路の面積のうち4分の1に相当する部分を居住用財産として認めるべきである旨主張するが、この点についての算出根拠は明らかではなく、当審判所の調査の結果によっても、請求人の主張を裏付ける証拠は存在しないから、請求人の主張は採用できない。

(ロ) 居住用財産の範囲について
 以上のことから、本件請求人譲渡土地のうち居住用財産と認められる土地は、甲土地(189.10u)及び本件通路のうち本件敷地面積割合に相当する部分(53.47u)を合計した242.57uとなる(以下、甲土地及び本件通路のうち本件敷地面積割合に相当する部分を併せて「本件居住用土地」という。)。

ニ 分離長期譲渡所得等の金額の算出

(イ) 収入金額
 上記1(4)イ(ホ)及び(チ)のとおり、本件譲渡物件の譲渡に係る収入金額は○○○○円となるから、本件各土地(956.88u)に占める本件請求人譲渡土地(761.14u)の割合に基づき、本件請求人譲渡土地の譲渡に係る収入金額を算出すると、○○○○円(○○○○円×761.14u÷956.88u)となる。

(ロ) 取得費等
A 本件請求人譲渡土地の取得費について、当審判所が措置法第31条の4第1項の規定及び措置法通達31の4-1の定めによって算出した概算取得費は○○○○円(○○○○円×0.05)となる。
B 本件譲渡物件の譲渡費用は、上記1(4)イ(リ)のとおり、○○○○円であり、本件譲渡物件の収入金額に占める上記(イ)の収入金額の割合を基にして、本件請求人譲渡土地に係る譲渡費用を算出すると、○○○○円となる。

(ハ) 特別控除前の譲渡所得金額
 特別控除前の譲渡所得金額は、上記(イ)の金額から上記(ロ)A及びBの金額を控除した○○○○円となる。

(ニ) 特別控除額
 本件特例の規定による居住用財産の譲渡所得金額については、3,000万円を限度として特別控除が認められるところ、上記1(4)イ(ホ)のとおり、本件居住用家屋は譲渡価額が○○○○円であり譲渡益は発生していないから、本件居住用家屋に係る譲渡所得金額から控除できる特別控除額はない。一方、上記1(4)イ(イ)のとおり、請求人は昭和45年頃から夫fと生計を一にして本件居住用家屋に居住しており、更に、上記1(4)イ(ホ)のとおり、本件請求人譲渡土地が本件居住用家屋とともに一括して譲渡されていることから、措置法通達35-4の定めにより、本件居住用土地の譲渡に係る譲渡所得金額について、本件特例を適用することができる。
 したがって、上記ハ(ロ)のとおり、本件居住用土地の面積は242.57uであるから、本件特例の適用による特別控除額を算出すると、○○○○円(○○○○円×242.57u÷761.14u)となる。

(ホ) 分離長期譲渡所得の金額
 上記(ハ)及び(ニ)の各金額に基づき請求人の分離長期譲渡所得の金額を算出すると、○○○○円となる。

(ヘ) 納付すべき税額
 以上に基づき、措置法第31条第1項の規定を適用して請求人の納付すべき税額を算出すると、○○○○円となる。

(2) 争点ロ(本件確定申告が過少申告となったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるか否か。)について

イ 法令解釈

過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対して課されるものであり、これによって、当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置であるから、通則法第65条第4項にいう「正当な理由があると認められる」場合とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である。

ロ 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(イ) 請求人は、平成25年6月10日、本件調査担当職員に対し、「譲渡税申告にあたっての確認事項」と書かれたメモ(以下「本件メモ書き」という。)を提示した。

(ロ) 本件メモ書きには、「敷地は妻名義であるが自宅を建てる為に2筆になってはいるが、敷地は2筆共、妻名義の為、実際は一筆の敷地上に自宅は建っている。家屋は物置きとして使用、敷地は庭として使用。野菜や花等を植えて使用している。」と記載がされている。

ハ 夫fの申述及び答述

(イ) 本件調査担当職員に対する申述
 夫fは、平成25年6月10日、本件調査担当職員に対し、本件申告相談の際に、土地の謄本、住民票除票、売買契約書及び本件メモ書きを持参し、本件相談担当職員に提示した旨申述した。

(ロ) 異議審理庁所属の担当職員に対する申述
 夫fは、平成26年1月7日、異議審理庁所属の担当職員に対し、本件申告相談の際、手書きの図面を自分で作成し、甲土地及び丙土地の測量図とともに本件申告相談に持参して提示したが、本件申告相談後にその図面は廃棄した旨申述した。

(ハ) 当審判所に対する答述
 夫fは、当審判所に対し、本件申告相談の状況について、要旨次のとおり答述した。
A 本件申告相談に際し、本件メモ書きを持参した。
B 本件申告相談において、本件相談担当職員に対し、本件建物配置図、地積測量図、登記事項証明書、住民票除票、売買契約書及び手書きで作成した図面を提示して、本件各建物及び本件通路の存在について説明をした。
C 手書きで作成した図面には、本件各土地における本件各建物及び本件通路の位置が記載されていた。
D 本件相談担当職員は、本件各土地についての私の説明を聞き、持参した書類等を確認した上で、本件各土地の全体が本件特例の対象となる旨を回答した。

ニ 当てはめ

請求人は、夫fが、本件申告相談において、本件建物配置図等の必要書類を提示して、本件譲渡物件の具体的な利用状況を説明したにもかかわらず、本件相談担当職員が、本件各土地の全体が居住用財産に該当するという誤った指導を行い、請求人は、夫fに対する指導を信頼して確定申告書を原処分庁に提出し、過少申告となったのであるから、請求人には「正当な理由」がある旨主張するので、以下審理する。
 夫fが本件申告相談に持参したとする本件メモ書きは、上記ロ(ロ)のとおりであるところ、その内容からすると本件特例の適用を前提としたものであることがうかがえるが、建物の配置や本件通路については記載されていないことから、本件相談担当職員が、本件譲渡物件の全体に本件特例が適用されるか否かを適切に判定するのに十分な記載がされていたとまではいえない。本件相談担当職員による誤指導があったというためには、本件メモ書きに基づき本件譲渡物件の全体に本件特例が適用されるか否かを適切に判定するための資料、すなわち、夫fが作成したと申述している図面や本件建物配置図を本件相談担当職員に提示していたことが必要であるというべきである。
 この点、夫fは、上記ハ(ロ)のとおり、異議審理庁所属の担当職員に対し、自身が手書きで作成したとする図面を本件申告相談に持参したと申述しているが、上記ハ(イ)のとおり、本件調査担当職員に対しては、当該図面を持参したとは申述していない。他方で、夫fは、当審判所に対しては、本件建物配置図を本件申告相談に持参したと答述しているが、上記ハ(イ)及び(ロ)のとおり、本件調査担当職員及び異議審理庁所属の担当職員のいずれに対しても本件建物配置図を本件申告相談に持参したとは申述しておらず、夫fの申述及び答述は、本件申告相談の際に持参したとする資料について変遷している。また、夫fが手書きで作成したとする図面については、当審判所の調査によっても、その図面の内容や存在を確認することはできないことからも、当該図面や本件建物配置図を本件申告相談に持参したとする夫fの申述及び答述については、直ちに信用することはできず、当審判所の調査によっても、夫fが本件申告相談に手書きで作成した図面及び本件建物配置図を持参したと認めるに足りる証拠はないことから、夫fが、本件申告相談の際に、手書きで作成したとする図面や本件建物配置図を持参したと認めることはできない。
 そうすると、本件建物配置図等の必要書類を提示して具体的な利用状況を本件相談担当職員に説明したとする請求人の主張はその前提を欠き、採用できない。
 以上のとおり、仮に、請求人の主張するとおり、本件相談担当職員が本件各土地の全体が居住用財産に当たるという説明をしたとしても、当該説明は、夫fが本件建物配置図等の必要書類を提示して具体的な利用状況の説明をした上でなされたものとは認められない以上、本件相談担当職員による誤指導があったとまでは認められず、本件確定申告が過少申告になったことについて、真に請求人の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお請求人に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷となる場合とはいえないから、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があると認めることはできない。

(3) 本件更正処分及び本件通知処分について

以上審理したところによれば、請求人の平成24年分の分離長期譲渡所得の金額は、上記(1)ニ(ホ)のとおり○○○○円であり、請求人の当該年分における納付すべき税額は上記(1)ニ(ヘ)のとおり○○○○円となるから、本件更正処分及び本件通知処分は、別紙1の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(4) 本件賦課決定処分及び本件再賦課決定処分について

イ 過少申告加算税の額

本件更正処分及び本件通知処分が上記(3)のとおり取り消されることに伴い、過少申告加算税の基礎となる税額は○○○○円となる。
そして、上記(2)ニのとおり、本件確定申告が過少申告となったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいて過少申告加算税の額を計算すると○○○○円となる。

ロ 結論

以上によると、上記イの過少申告加算税の額は本件賦課決定処分の額を下回るので、本件賦課決定処分に係る金額○○○○円のうち○○○○円を超える部分の○○○○円については、別紙1の「取消額等計算書」のとおりその一部を取り消し、本件再賦課決定処分に係る金額○○○○円は、その全部を取り消すべきである。

(5) その他

原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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