納付義務の確定

更正決定通知

  1. 納付すべき税額の確定方式
  2. 納税申告
  3. 更正の請求
  4. 更正又は決定
    1. 信義誠実の原則
    2. 調査の範囲、方法
    3. 処分の無効
    4. 更正決定通知(5件)
    5. その他

更正通知書の相続税の総額の計算明細に係る更正額に誤記があることから更正を取り消すべきであるとした請求人の主張を退けた事例

裁決事例集 No.40 - 1頁

 請求人は、更正通知書の相続税の総額の計算明細に係る3年以内の贈与加算額の更正額に更正前の金額と同額を記載するという誤記があることから、更正を取り消すべきであると主張するが、本件更正通知書の、[1]納付税額の計算明細に係る課税価格及び納付税額の更正額は、正当な額が記載されていること、[2]相続税の総額の計算明細に係る課税価格の合計額及び相続税の総額の更正額は、正当な額が記載されていること、[3]農業投資価格に基づく相続税の総額の計算明細に係る3年以内の贈与加算額の更正額は、本件贈与加算額に対応するものであるところ、その金額は正当な額が記載されていること等から判断すると、本件更正通知書の誤記は、更正の手続上軽微なかしにとどまり、処分の効力に影響がないと認めるのが相当である。

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原処分庁が請求人の所得区分及び必要経費を否認して更正処分をした事案について、必要経費性を否認する支出を特定していない理由の提示に不備があると判断した事例(平成21年分〜平成23年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し・平成26年9月1日裁決)

平成26年9月1日裁決

《ポイント》
 本事例は、支出の必要経費性を否認して更正処分をする場合、更正通知書に記載する理由には、否認する支出を特定して記載しなければならないとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、更正通知書に記載された処分の理由は行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項本文の法の趣旨が求める程度に記載されていると認められるからその記載に不備はない旨主張する。
 しかしながら、更正通知書に記載された必要経費該当性の判断に係る理由のうち旅費交通費及び新聞図書費の一部の費用が必要経費に該当しない旨の理由の記載については、当該必要経費として認められない費用がどの費用(あるいは費用の一部)であるかが特定されておらず、当該費用の内容すら理解できないものであって、要件該当性をおよそ判断できないものであり、摘示された事実からは更正の理由を検証し、その適否について検討することはできない。そうすると、上記記載が行政手続法第14条第1項の法の趣旨目的を充足する程度に具体的に根拠を明示したとは評価できないから、これらの理由の記載には不備がある。

《参照条文等》
 行政手続法第14条

《参考判決・裁決》
 最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁)
 最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決(民集39巻3号850頁)
 最高裁昭和47年12月5日第三小法廷判決(民集26巻10号1795頁)

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請求人が主張していない行政手続法第14条に基づく理由の提示につき、審判所の調査の結果、理由の提示に不備があったと認定した事例(1平18.9.1〜平19.8.31までの事業年度以後の法人税の青色申告の承認の取消処分、2平19.9.1〜平20.8.31、平21.9.1〜平22.8.31、平23.9.1〜平24.8.31の各事業年度の法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、3平19.9.1〜平20.8.31、平21.9.1〜平22.8.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分、4平18.9.1〜平19.8.31、平20.9.1〜平21.8.31の各事業年度の法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、平22.9.1〜平23.8.31の事業年度の法人税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、5平18.9.1〜平19.8.31、平20.9.1〜平21.8.31、平23.9.1〜平24.8.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、平19.9.1〜平20.8.31、平21.9.1〜平22.8.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の各賦課決定処分、平22.9.1〜平23.8.31の課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・145棄却、23一部取消し・平成26年12月10日裁決)

平成26年12月10日裁決

《要旨》
 原処分庁は、所得の金額の計算上、法人税の確定申告書において損金の額に算入していた青色欠損金額(当期控除額)を加算されることが更正通知書(本件通知書)に示されていないことについて、当期控除額を加算する理由(本件理由)は、青色申告の承認の取消処分に伴うものであり、法文の規定上明らかであることから、請求人においても容易に認識でき、理由の提示不備の違法はない旨主張する。
 しかしながら、行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されることから、更正処分をする際は、当該更正通知書自体に法の要求する程度にその理由を示す必要がある。よって、本件通知書は、本件理由の提示がなく、本件通知書自体から当期控除額を所得金額に加算する旨を特定し得る程度の理由を示していないことは明らかであるから、本件理由の提示不備の違法があると判断するのが相当である。なお、本件通知書は、本件理由の提示のないことが更正処分全体の理由の提示を不備なものとする程度に至るとは認められず、また、他に更正処分に係る理由の提示に不備があるとも認められない。

《参照条文等》
 行政手続法第14条

《参考判決・裁決》
 最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁)

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帳簿を作成していない青色申告事業者に対する更正処分の理由付記の程度について、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当することから、理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に記載すればよいとした事例(1平成17年分、平成19年分、平成22年分及び平成23年分の所得税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分、2平成18年分、平成20年分及び平成21年分の所得税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、3平20.1.1〜平20.12.31、平22.1.1〜平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・棄却・平成27年3月30日裁決)

平成27年3月30日裁決

《要旨》
 請求人は、青色申告者である請求人に対する所得税の更正処分(本件所得税更正処分)に係る通知書(本件更正通知書)には、調査による計数上の記載や処分の結果のみが記載されているだけで、原処分庁の判断根拠が全く記載されておらず、本件更正通知書の理由付記には、本件所得税更正処分を取り消すべき不備がある旨主張する。
 しかしながら、請求人は、請求人の事業所得を生ずべき業務について、集計表等を作成するだけで日々の取引を記録する帳簿を作成していないことから、本件所得税更正処分は、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当するところ、原処分庁は、本件更正通知書において、事業所得に係る総収入金額については取引先ごとに取引期間及び年間の売上金額を一覧表で明らかにしており、必要経費については計上漏れとして認定した仕入金額等の支払先及び年間の支払合計金額などを記載していることからすれば、本件更正通知書に記載された理由は、原処分庁の恣意抑制及び納税者の不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的な記載がされていると認められることから、本件所得税更正処分を取り消すべき不備はない。

《参照条文等》
所得税法第155条
国税通則法第24条

《参考判決・裁決》
最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決(民集39巻3号850頁)
最高裁昭和38年5月31日第二小法廷判決(民集17巻4号617頁)
最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁)
平成26年9月1日裁決(裁決事例集No.96)

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処分理由の提示が争われた事例(平成22年11月相続開始に係る相続税の更正処分・棄却・平成27年9月28日裁決)

平成27年9月28日裁決

《ポイント》
 本事例は、処分通知書に記載すべき理由は、行政庁の恣意の抑制及び処分の名宛人の不服申立ての便宜という理由提示の制度趣旨を充足する程度に記載すれば不備はないとしたものである。

《要旨》
 請求人は、相続税の更正処分に係る通知書(本件通知書)に記載された処分理由には、課税価格に加算される本件他の相続人らの相続時精算課税適用財産及び歴年課税分の贈与財産(本件贈与財産)の価額のそれぞれの合計額が記載されているものの、その明細が記載されておらず、かかる記載内容では、処分の基礎となる具体的な事実を知りえず、不服申立ての便宜を図った行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》の理由提示の趣旨に反することから、原処分を取り消すべき違法がある旨主張する。
 しかしながら、本件贈与財産の課税価格の合計額への加算に係る提示理由には、本件贈与財産について、それぞれ合計額が記載されているところ、本件贈与財産の合計額が分かれば、課税価格の合計額を算出することができるのであるから、当該記載により、原処分庁が相続税額を算出した過程を示したものといえる上に、そもそも、課税庁は、相続時精算課税適用財産の価額及び暦年課税分の贈与財産の価額を課税価格の合計額に加算するに当たっては、他の共同相続人等から提出された申告書の記載又は同人等に対する更正処分の内容等を基に相続税額の計算をするのであるから、この点に課税庁の恣意が入り込む余地は乏しく、合計額のみの記載であっても、行政庁の恣意抑制という見地から欠けるところはない。さらに、相続時精算課税適用財産の価額及び暦年課税分の贈与財産の価額については、それぞれの合計額が記載されていれば、納税者は課税価格の合計額を算出することが可能であり、記載された合計額と納税者が認識しているこれらの合計額とを比較して、不服申立ての要否を判断することが可能といえるから、処分の名宛人の不服申立ての便宜という見地からも欠けるところはない。したがって、本件通知書に記載された処分理由は、理由提示の趣旨目的を充足する程度に処分の理由を具体的に明示したものと認めることができ、行政手続法第14条第1項本文の要求する理由提示として不備はないから、原処分を取り消すべき違法はない。

《参照条文等》
行政手続法第14条

《参考判決・裁決》
最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁)
東京地裁昭和48年2月20日判決(税資69号461頁)

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