納付義務の確定

その他

  1. 納付すべき税額の確定方式
  2. 納税申告
  3. 更正の請求
  4. 更正又は決定
    1. 信義誠実の原則
    2. 調査の範囲、方法
    3. 処分の無効
    4. 更正決定通知
    5. その他(7件)

繰越控除の対象となる青色欠損金額は各事業年度の欠損金額であって、誤って記載された申告書別表一(一)の翌期繰越欠損金欄の金額を基に控除することはできないとした事例

裁決事例集 No.63 - 1頁

 請求人は、法人税申告書別表一(一)の翌期繰越欠損金欄の記載金額そのものが更正処分の対象となる純損失等の金額であるから、たとえ、誤って記載された金額であっても、それが更正されていなければ、翌期繰越欠損金として確定し、翌期以降の事業年度において、前期から繰り越された欠損金額として控除できる旨主張する。
 しかしながら、更正の対象となる純損失等の金額とは、法人税の場合、その事業年度以前の法人税申告書別表一(一)の欠損金額欄に記載された金額のうち、法人税法の規定により、翌事業年度以後の事業年度分の所得の計算上順次繰り越して控除できる金額であり、その金額は翌期繰越欠損金欄の記載金額に影響されるものではないから、誤って記載された金額を基に控除することはできず、請求人の主張には理由がない。
 なお、法人税法57条によれば、繰越控除の対象となる青色欠損金額を法人税申告書に記載することは、その適用要件とされておらず、当該金額は各事業年度の正当な欠損金額を基として算定されるものであり、翌期繰越欠損金欄の記載は以後の所得計算の便宜のものにすぎないと認められる。

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請求人は国税通則法第25条に規定する納税申告書を提出する義務があると認められる者には該当せず原処分庁は同条を根拠とする決定処分を行うことはできないとした事例

裁決事例集 No.63 - 11頁

 原処分庁は、本件決定処分は国税通則法第25条の規定に基づき行ったものである旨主張する。
 しかしながら、国税通則法第25条には、税務署長は納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかった場合には、当該申告書に係る課税標準等及び税額等を決定する旨規定されており、また、所得税法第121条には、その年中に支払を受けるべき給与等の額が2,000万円以下である給与所得を有する居住者で、一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について同法第183条及び同法第190条の規定による所得税を徴収された又はされるべきものは、同法第120条第1項に規定された申告書を提出することを要しない旨規定されているところ、請求人は、所得税法第121条に規定された確定申告書の提出を要しない場合に該当し、国税通則法第25条に規定する納税申告書を提出する義務があると認められる者には該当しないことから、原処分庁は同条を根拠とする決定処分を行うことはできないので原処分は取り消すのが相当である。

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前事業年度に係る更正処分について訴訟係属中であっても、当該更正処分が無効と認められる場合でない以上、当該更正処分の結果に基づきなされた本件更正処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.68 - 50頁

 一般に行政処分に重大かつ明白な瑕疵があり、そのため行政処分が無効と認められる場合であれば格別、そうでない以上、たとえ瑕疵があっても行政処分の安定を図る意味から、同処分が取消権限のある行政庁又は裁判所によって取り消されるまでは有効なものとして扱われると解されている。
 これを本件についてみると、前事業年度に係る更正処分については当審判所は裁決によって適法である旨の判断を既に示しているところであり、また、当該更正処分に係る訴訟は現在においても係属中で、当該更正処分の取消判決もなされていない。
 よって、原処分庁が前事業年度の更正処分の結果に基づき本件更正処分を行ったことに何ら違法はない。

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年末調整を受けた給与所得者が、扶養親族に該当しない親族を給与等の支払者に扶養親族として届出て扶養控除の適用を受けていた場合において、当該給与所得者は納税申告書を提出する義務のある者には該当しないから、扶養控除を否認する決定処分は違法であるとした事例

裁決事例集 No.72 - 25頁

 請求人は、請求人の母親は請求人とは同居していないが、請求人が母親に住宅を提供し、費用を負担していることは、請求人が母親に対して月額約10万円程度の家賃相当額を援助していることになり、母親は請求人の扶養親族として認められるべきであるから、本件決定処分は違法である旨主張する。
 一方、原処分庁は、1請求人は、住宅の固定資産税及び火災保険料の負担はしているものの、生活費の送金は行っていないことから、請求人と母親とは生計を一にするものとは認められず、母親は請求人の扶養親族に該当しないこと、また、2請求人は平成17年2月にA社を退職しており、各年分の扶養控除誤りをA社において是正し、徴収不足税額を徴収することができず、この場合には所得税基本通達194〜198共−2のただし書により、A社に徴収不足税額の徴収を強いて追求しないものと考えられることから、請求人は、国税通則法第25条に規定する「納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかった場合」に該当し、本件決定処分は適法である旨主張する。
 しかしながら、所得税法第121条第1項には、その年中に支払を受けるべき給与等の額が2,000万円以下である給与所得を有する居住者で、一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について同法第183条又は同法第190条の規定による所得税を徴収された又はされるべき場合において、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であるときは、同法第120条第1項の規定にかかわらず同項の規定による申告書を提出することを要しない旨規定されている。
 また、源泉所得税と申告所得税との各租税債権の間には同一性がなく、源泉所得税の納税に関しては、国と法律関係を有するのは支払者であって、国と受給者との間には直接の法律関係は生じないものとされており(最高裁平成4年2月18日判決)、源泉所得税の徴収、納付に不足がある場合には、税務署長は、所得税法第221条の規定に基づき源泉徴収義務者たる支払者からその不足分を徴収することになる。
 なお、所得税基本通達194〜198共−2のただし書の取扱いは、あくまでも扶養控除等申告書等の記載事項に誤りがあったことによる徴収不足額の強制徴収に関するものであって、同取扱いの適用を受けることをもって、上記の給与所得者について確定申告を要しない場合の規定が排除され、所得税法第120条の規定が代替的に適用されるものではない。
 したがって、もともと所得税法第121条第1項の規定の適用を受ける者について国税通則法第25条を適用する余地はない。
 これを本件についてみると、請求人の各年分における所得税については、所得税法第121条第1項に規定する確定申告を要しない場合に該当することから、請求人につき国税通則法第25条に規定する納税申告書を提出する義務があるとは認められず、同条を根拠とする決定処分を行うことはできない。以上のことから、請求人の母親が請求人の扶養親族に該当するか否かについて判断するまでもなく、本件決定処分は違法であり、いずれもその全部を取り消すべきである。

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免税事業者が控除不足額の記載をして提出した還付申告書は、国税通則法第24条に規定する納税申告書に該当し、かつ、課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったときに該当するものであるから、仕入れに係る消費税額の控除不足額がないものとしてされた更正処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.79

 請求人は、課税事業者選択届出特例承認申請の却下通知処分が取り消されないのであれば、請求人は免税事業者であることになるから、申告そのものが認められないはずであり、本件更正処分がされること自体が誤りである旨主張する。
 しかしながら、国税通則法第24条は、納税申告書(還付金の還付を受けるための申告書を含む。以下同じ。)の提出があった場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったときは、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する旨規定している。
 そして、免税事業者については、消費税法第30条第1項及び同法第52条第1項の規定の適用はなく、課税仕入れに係る消費税額を控除することはできないから、当該申告書に仕入れに係る消費税額の控除不足額の記載があっても、当該不足額に相当する消費税額の還付を受けることはできないところ、請求人が提出した本件還付申告書は、国税通則法第24条に規定する納税申告書に該当し、かつ、課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったときに該当するものであるから、仕入れに係る消費税額の控除不足額がないものとしてされた本件更正処分は適法である。

《参照条文等》
国税通則法第24条
消費税法第30条第1項

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原処分は適法な調査手続に基づいて行われたものであり、違法は認められないとした事例

平成23年2月14日裁決

《ポイント》
 この事例は、法人税の更正処分及び源泉所得税の納税告知処分が調査手続を欠く違法なものか否かが争われたところ、適法な調査手続に基づいて行われた処分であり違法はないと判断したものである。
 なお、本件処分にはホステス報酬に係る納税告知処分が含まれており、ホステス報酬に係る源泉所得税額の計算については、最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決が、所得税法施行令第322条《支払金額から控除する金額》にいう「当該支払金額の計算期間の日数」は当該期間に含まれるすべての日数を指すものと判断し、ホステスの実際の稼働日数を指すという課税庁の主張を退けたことから、この事例でも、これに従ってホステス報酬に係る源泉徴収税額を再計算し、納税告知処分の一部を取り消している。

《要旨》
 請求人は、原処分庁が本件査察調査をもって請求人に対し調査をしたとし、改めて調査を行わなかったのであるから、調査をすることなく行った本件各告知処分等及び本件各再更正処分は、適正な手続を欠く違法なものである旨、また、一度減額したものをいかなる理由があろうとも再度増額の処分をすることは権利の濫用である旨主張する。
 しかしながら、課税庁が内部において既に収集した資料を基礎として正当な課税標準を求めることも「調査」の範囲に含まれるものと解されるところ、本件各告知処分等及び本件各更正処分は、まる1請求人の源泉所得税について、当初告知処分に係る請求人の源泉徴収簿等の関係資料及び源泉所得税の納付事績等の既に収集した資料等を改めて照合及び検討した上で、また、まる2請求人の法人税について、当初減額更正処分の関係資料、法人税の確定申告書及び同付属書類等の既に収集した資料等を改めて照合及び検討した上で行われたものであるから調査手続を欠く違法な処分とは認められない。また、課税庁は、自ら行った処分に瑕疵を発見したときは、その瑕疵が実体的なものであれ、手続的なものであれ、適正な課税の確保実現を図るため、これを取り消して新たな処分をなし得るとものと解すべきであるから、原処分庁が国税通則法第36条《納税の告知》第1項第2号の規定に基づき請求人に対して本件各告知処分等を行ったことに違法は認められない。

《参照条文等》
 国税通則法第24条、第26条、第36条

《参考判決・裁決》
 新潟地裁平成11年7月15日判決(税資256号12頁)
 最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決(民集64巻2号420頁)

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更正処分の理由の提示について不備がないと判断した事例(平成22年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・平成27年6月1日裁決)

平成27年6月1日裁決

《要旨》
 請求人は、所得税の更正処分に係る通知書(本件更正通知書)には、請求人が匿名組合契約の出資者である外国法人(本件外国法人)との間で締結した参加利益契約(本件参加利益契約)は配当を受ける旨を約す契約であり、請求人と本件外国法人との間の本件買戻合意(本件参加利益契約に基づく匿名組合契約に係る利益の分配を受ける権利を本件外国法人が買い戻すことなどの合意)は本件参加利益契約を解除する契約であると認定した根拠となる具体的な事実が摘示されておらず、また、原処分庁においてその法的評価の判断に至った過程自体を明示したものではないから、本件更正通知書に附記された理由は、更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨から著しく逸脱した違法なものである旨主張する。
 しかしながら、本件更正通知書には、更正処分の理由として、1本件参加利益契約は、請求人が本件外国法人に対して出資を行い、当該出資額に応じた配当を受ける契約であったと認められること、2本件買戻合意は、本件参加利益契約を解除するものであったと認められるとして、原処分庁において当該合意を権利の譲渡ではないと捉えていることが明らかであり、また、3請求人が本件参加利益契約に基づき支払った拠出金と本件買戻合意に基づき受領した金員との差額である損失額は、資産の譲渡により生じたものではないことが示されており、本件更正通知書には原処分庁の判断の過程が明示されており、同通知書に附記された更正処分の理由に不備はない。

《参照条文等》
 国税通則法第74条の14第1項
 行政手続法第14条

《参考判決・裁決》
 最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁)

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