附帯税

請求人以外の行為

  1. 延滞税
  2. 過少申告加算税
  3. 無申告加算税
  4. 不納付加算税
  5. 重加算税
    1. 重加算税の意義
    2. 過少申告加算税との関係
    3. 重加算税の賦課
    4. 隠ぺい、仮装の認定
    5. 請求人以外の行為(17件)

税理士の使用人によって仮装隠ぺいに基づく納税申告書が提出されたものであり、請求人には事実の隠ぺい又は仮装の意思はなかったとの主張を排斥した事例

裁決事例集 No.20 - 9頁

 税理士の使用人が、独断で、事業所得の計算の基礎となる収入金額を圧縮したところにより決算書及び確定申告書を作成、提出したものであり、請求人本人は当該使用人からその内容説明を受けず、また、収入金額を記帳した帳簿との対査等も行っておらず、当該申告が所得金額を過少に申告したものであることを知らなかったから、請求人には仮装又は隠ぺいの意図がなかった上、そのような行為もしていない旨主張するが、その主張が信用できない状況では、請求人と申告書作成等の受任者との間にいかなる事情が存したにせよ、また、このことについて受任者がどこまで関与したかにかかわらず、請求人本人が記帳し、保存している帳簿に基づく収入金額を不正に操作し、これによって所得金額を過少に表示した決算書及び確定申告書を作成し、請求人が押印して最終的に完成させた上、提出したことは、国税の課税標準の計算の基礎となる事実の一部を隠ぺい又は仮装したところに基づいて納税申告書を提出したことに該当する。

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譲渡した土地の共有者である兄が売買契約書を仮装し、他の共有者である弟の譲渡所得について過少に申告したことは、弟にも仮装行為があったことになるとした事例

裁決事例集 No.21 - 13頁

 請求人は、譲渡した土地の共有者である兄に当該土地の売却先の決定、売買契約の締結及び売買代金の受領等の行為を依頼したこと、また、当該土地の譲渡所得に係る確定申告から納付行為までの一連の行為をすべて兄に行わせていたことが認められ、請求人としては兄が当該土地の譲渡に関して仮装行為をし、その所得を過少に申告した行為について否認できない関係にあったことが認められることから、請求人がこれを関知していなかったかどうかを判断するまでもなく、国税通則法第68条第1項の規定に該当するとして重加算税を賦課決定した原処分は相当である。

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請求人の常務取締役として経営に参画し、担当部門に係る取引全般を総括的に委任されている者の行った仕入金額の架空計上は、たとえそれを請求人の代表者が知らなかったとしても、請求人の隠ぺい又は仮装行為と同視すべきであり、重加算税の賦課決定は適法であるとした事例

裁決事例集 No.40 - 8頁

 請求人は仕入金額の架空計上は、請求人の常務取締役であるA男に全面的に任せている部門に係るものであり、しかもそれはA男が私欲に基づき行ったもので、請求人の代表者はその不正経理を知らなかったから、その架空計上は請求人の行為には当たらず、これに重加算税を賦課するのは違法であると主張するが、重加算税の賦課の目的は、隠ぺい又は仮装に基づく過少申告による納税義務違反の発生を防止し、申告納税制度の信用を維持するところにあることから、隠ぺい又は仮装の行為者が法人の代表者に限定されるものではなく、その役員及び家族等で経営に参画していると認められる者の行為は、法人の代表者がそれを知らなかった場合であっても当該法人の行為と同視されるべきものであり、A男は請求人の常務取締役として経営に参画し、担当部門に係る取引全般を総括的に委任されている者であることから、A男の行った仕入金額の架空計上は請求人の行為と同視すべきものであると認められ、これに重加算税を賦課したのは適法である。

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顧問契約を締結している税理士が、重加算税の課税要件を満たす過少申告をした場合、これを請求人が認識していたか否かにかかわらず、請求人は重加算税を負うとした事例

裁決事例集 No.42 - 13頁

 税理士が、請求人に代わって行った税務申告等の行為は、納税義務者である請求人が行ったと同様に扱われるべきであるから、これに付随する重加算税の責任も、請求人が本件確定申告について不適正であることを認識していたか否かにかかわらず、当然請求人が負うと解すべきである。

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請求人の代表取締役として実質的に経営の主宰者と認められる者の行った売上金額の除外、個人名義預金等への留保は、請求人の隠ぺい又は仮装行為と同視すべきであるとした事例

裁決事例集 No.46 - 15頁

 請求人は、売上金の一部除外、個人名義預金等への留保は、専ら専務取締役個人の背任行為であって、請求人の代表者は、関知さえしていなかったから、請求人に隠ぺい又は仮装の意思及び事実はなく、重加算税の賦課決定は違法であると主張するが、行為者は請求人の専務取締役であり、かつ、実質的に経営の主宰者と認められることから、本件事実は、代表者がそれを知っていたかどうかにかかわらず、請求人の行為と同視するのが相当であるから、重加算税の賦課決定処分は適法である。

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納税者本人の申告行為に重要な関係を有する部門(経理部門等)に所属し、相当な権限を有する地位(課長等)に就いている者の隠ぺい又は仮装の行為は、特段の事情がない限り、納税者本人の行為と同視すべきであり、重加算税の賦課決定処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.50 - 25頁

 請求人は、棚卸資産の減額は、請求人の経理課長が行ったものであり、請求人の代表取締役その他の役員は全く関知していないし、過少申告の事実も知らされていなかったとして、重加算税の賦課決定は違法であると主張するが、納税者本人の申告行為に重要な関係を有する部門(経理部門等)に所属し、相当な権限を有する地位(課長等)に就いている者の隠ぺい又は仮装の行為は、特段の事情がない限り、納税者本人の行為と同視すべきであるから、重加算税の賦課決定は適法である。

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請求人の取引先8社との16の取引について、本件事業年度中に納品あるいは役務の提供がなされておらず、また、請求人の各担当者は、その事実を承知した上で、経費等の根拠となる納品書、請求書等の発行を取引先に依頼し、これを提出させ、あたかも本件事業年度中に納品等を行ったごとく装ったものであり、当該担当者の積極的な行為によって故意に事実を仮装したものであるとした事例

裁決事例集 No.56 - 1頁

  1.  重加算税を課すには、課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい、仮装を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に申告に際し、納税者において過少申告を行うことの認識を有していることまでを必要とするものではないと解するのが相当である。
     本件各取引において、請求人の購買手続、納品書及び請求書の発行手続についての商慣行等に照らせば、当該担当者が行為の意味を認識していなかったとは到底認められず、むしろ、当該担当者の積極的な行為によって故意に事実を仮装したものと認めるのが相当である。
  2.  隠ぺい又は仮装の行為者については、納税者本人の行為に限定すべき理由はないから、広くその関係者の行為を含むとしても違法ではなく、従業員の自らの利得を目的として行われた隠ぺい又は仮装による過少申告のような場合はともかくとして、納税者の簿外資産等を蓄積するために売上金額を除外して仮名預金を設けたり、納税者の利益調整のために棚卸資産を仮装して簿外棚卸資産を作出するような従業員の行為については、納税者本人の行為と同視すべきであると解するのが相当である。
     本件各取引に係る隠ぺい、仮装行為は、納品書等を取引先に作成させる等の方法により、所得金額の計算上、架空の損金を作出して請求人の利益を調整する結果となっていることからすれば、各担当者の行為は請求人の行為と同視すべきであり、本件取引から生じた過少申告の責任は請求人が負うべきである。

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請求人が経営するパチンコ店のフロアー責任者及び経理責任者として実質的に経営に参画していた従業員が行った売上除外による隠ぺい行為について、それが横領目的であったとしても請求人の行為と同視すべきであるとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例

裁決事例集 No.58 - 9頁

 重加算税の賦課要件たる隠ぺい又は仮装の行為者は、納税義務者たる法人の代表者に限定されるものではなく、その役員又は従業員等で経営に参画していると認められる者が隠ぺい又は仮装をし、かつ、代表者がそれに基づき過少申告した場合は、当該法人が重加算税の負担を受けるべきであり、このことは、当該法人の代表者が納税申告するに当たり、隠ぺい又は仮装行為を知っていたか否かによって左右されるものではない。
 ところで、売上データを改ざんし、売上金の除外をした本件従業員は、請求人が経営するパチンコ店のフロアー責任者として、同店のコンピュータの操作、台の入替え、景品の管理、従業員の採用及び給与の計算等の一切を任され、確定申告書等の「経理責任者自署押印」欄に記名・押印していること、請求人の代表者はP市内在住の医師であって、パチンコ業については全くの素人であり、同店所在のQ市には年に1ないし2回程度しか来ていないことが認められる。
 以上のことから、本件従業員は経理責任者等として請求人の経営に参画していたものと認められ、このような地位にあった従業員が売上金等の管理を担当し、故意に売上金の一部を除外したものである以上、それが同人の私的利益を図るために行われたものであり、また、それを代表者が知らなかったとしても、当該従業員の行為は、請求人の行為と同一視すべきであって、請求人に対して重加算税を賦課した原処分は適法である。

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代理人である税理士の行った不正な申告行為の効果が請求人に及ぶとして重加算税等を賦課したことが適法と判断した事例

裁決事例集 No.60 - 85頁

 国税通則法第68条第1項は、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したときは、過少申告加算税に代え、重加算税を課する旨規定している。
 そして、重加算税は、納税義務違反の発生を防止し、徴税の実を挙げるため違反者に対して課される行政上の処置(措置)であり、代理人等の第三者を利用することによって利益を享受する者は、それによる不利益をも甘受すべきであるとの原則が適用されるべきであるから、第三者に申告を一任した場合には、その者の申告行為は納税者自身がしたものと取り扱われ、その者が国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部の隠ぺい又は仮装を行った場合には、納税者本人にもその効果が及ぶと解される。
 これを本件についてみると、代理人である税理士の行為は、平成7年分の不動産所得について、本件青色決算書に架空の必要経費を多額に計上することにより、不動産所得に多額の損失があったごとくに見せかけ、その結果として不正に所得税を免れていたと認められることから、税理士に申告手続等を一任した請求人が、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したというべきである。

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請求人の申告行為に重要な関係のある相当な権限を有する地位に就いている従業員の行った売上除外について、請求人の行為と同一視すべきであるとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例

裁決事例集 No.66 - 49頁

 重加算税制度の趣旨からすれば、隠ぺい又は仮装行為については、その行為者は納税者たる法人の代表者に限定されるものではなく、法人の代表者がその事実を知らなかったとしても、役員や従業員等で経営に参画していると認められる者及び納税者の申告行為に重要な関係のある相当な権限を有する地位に就いている者が事実を隠ぺいし又は仮装し、かつ、代表者がそれに基づき過少申告した場合は、当該法人の代表者が納税申告をするに当たり、隠ぺい又は仮装行為を知っていたか否かに左右されることなく、当該法人の行為と同一視されると解される。
 本件について判断すると、請求人の経理業務を任され、広範な経理業務に従事していた従業員Nは、売上げ及び売掛金については、「売掛残高一覧表」に真実の売上げを記載していたにもかかわらず、売上代金として受け取った手形の一部をNが開設した請求人名義の預金口座で取り立て着服する一方で、取引先に係る売上げ及び売掛金の入金の各金額を過少に記載し、経理帳簿を仮装していたことが認められる。
 そして、Nは、請求人の印鑑、通帳だけでなく、請求人の代表者の私印についても預けられるなど、その信頼は厚かったのであり、請求人の経理業務全般について任された上、決算や確定申告に関わる経理帳簿等の作成等に従事するとともに、請求人の確定申告書の「経理責任者自署押印」欄に自分の氏名を記名、押印し、これを提出していることからすると、請求人の申告行為に重要な関係のある相当な権限を有する地位に就いている従業員であると認められる。
 そうすると、Nは、請求人の申告行為に重要な関係のある相当な権限を有する地位に就いている従業員であり、同人の行為は請求人の行為と同一視すべきであるといわざるを得ない。

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帳簿の記帳を委託されていた者の仮装行為について、請求人の指示又は依頼に基づき架空計上を行ったものと認めることができると判断した事例

裁決事例集 No.66 - 69頁

 請求人は、請求人から帳簿の記帳を委託されていた者(以下「記帳担当者」という。)に仮装行為を指示した事実はなく、仮装行為を容易に発見できる専門的知識もないから、請求人の行為と同一視すべきではない旨主張するが、記帳担当者は、実際の現金及び預貯金の出し入れには一切関与しておらず、仕入等の架空計上による利益はもっぱら請求人が受けるものであって、記帳担当者には何らのメリットもないこと、請求人の収入金額は、年々減少していたが、平成11年分は一転して増額に転じていること、記帳担当者の申述は、具体的内容を持つものであり、他の事実から検証しても真実性の高いものであるといえることからすると、記帳担当者は、請求人の指示又は依頼に基づき本件架空計上を行ったものと認めることができる。
 したがって、請求人が国税通則法第68条第1項に規定する「事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装した」ということができる。

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請求人以外の共同相続人が行った相続財産の隠ぺい行為に基づく相続税の過少申告について、請求人に重加算税を賦課決定することができると判断した事例

裁決事例集 No.67 - 91頁

 納税者が、第三者に申告手続を委任した場合、第三者が同委任に基づいて行った行為の効果は納税者に帰属するものであり、自己責任の原則からしても、第三者を利用することによって得られる利益とともに、それによる不利益も当然納税者が享受すべきであり、また、その第三者の行為の結果、不正な申告が行われた場合に申告納税制度の適正な確保を困難ならしめる可能性があることからすると、納税者から委任を受けて第三者が不正な申告を行った場合には、納税者本人がその不正な申告について具体的な認識を欠いていたとしても、納税者が行った行為と同一視し、その責任を負うと解するのが相当である。
 請求人らは本件相続に係る相続財産の調査及び本件相続税の申告手続を共同相続人であるFに委任したと認められることから、同委任を受けたFの相続財産の隠ぺい行為に基づく過少申告の結果は請求人らに帰し、また、Fの当該隠ぺい行為は請求人らの行為と同一視され、本件申告に係る過少申告の責任は請求人らも負うべきであることから、請求人らに国税通則法第68条第1項の規定に基づき重加算税を賦課することは相当であると認められる。

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納税者が納税申告を第三者に委任した場合において、当該納税者は当該第三者に対する選任、監督上の注意義務を尽くしていないとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例

裁決事例集 No.70 - 20頁

 請求人は、源泉徴収票を交付して、第三者に申告手続の代行を委任したものの、当該第三者が作成した確定申告書、収支内訳書及び報酬・料金等の支払調書は、請求人の了解を得ず、不正な還付請求申告をするために作成されたものであるので、請求人の意思に基づかず、当該確定申告書は無効であり、当該第三者がした隠ぺい・仮装行為の効果は請求人には及ばないので、重加算税の賦課決定処分は取り消されるべきである旨主張する。
 しかしながら、納税者自らの判断と責任で自主的に申告納税する申告納税制度の下において、納税者の判断とその責任において、申告手続の代行を第三者に一任し、その者が納税者に代わって申告した場合には、その申告は、そのまま申告名義人である納税者が行った申告として取り扱うべきものと解されるところ、請求人は、友人を介して、申告手続の代行を当該第三者に一任しているので、請求人が申告内容を承知しているか否かにかかわらず、当該確定申告は、申告名義人である請求人の行った申告として取り扱うべきであって、その効果は請求人に及ぶ。
 また、納税者が納税申告を第三者に委任した場合において、当該第三者がした隠ぺい・仮装行為に基づく申告について、納税者がどこまで責任を負うべきかについては、納税者と当該第三者との関係、当該行為に対する納税者の認識及びその可能性、納税者の黙認の有無、納税者が払った注意の程度等に照らして、個別的、具体的に判断されるべきものであり、納税者が当該第三者に対する選任、監督上の注意義務を尽くすことにより、当該第三者の隠ぺい・仮装行為を防止することできた場合には、当該第三者の不正行為を納税者の行為と同一視し得るものとして、その防止を怠った当該納税者に対し、重加算税を賦課することができると解すべきであるところ、請求人は、当該第三者に対する選任、監督上の注意義務を尽くさなかったと認められることから、当該第三者による隠ぺい・仮装行為は、請求人の行為と同一視し得るものとして、請求人に対し重加算税を賦課することができる。
 したがって、請求人の主張にはいずれも理由がない。

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請求人が業務及び管理の委託契約をした関連同族会社の取締役の隠ぺい行為は請求人の隠ぺい行為と同視することができるとした事例

裁決事例集 No.79

 請求人は、請求人が業務及び管理を委託したD社の取締役であるEが行った車両売却による横領行為をその事実を了知していない請求人の行為と同視することはできない旨主張する。
 しかしながら、Eは、請求人の代表取締役であるXと遠縁に当たり、D社の株主の中においては、Xに準ずる株式数を有し、D社の取締役として新車購入の見積りや車両売却処理などを含め車両に関する業務に従事していたことからすると、D社と密接な関係にあり、業務の運営上、D社において重要な地位・権限を有し、重要な役割を果たしていたものと認められる。
 また、請求人は、その業務の大部分をD社に委託し、それにより経済活動を行っていたと認められるところ、Xは、売却される車両の車種や売却額などの内容を把握せずにEに処理を任せていた。
 また、当該車両売却処理のほかには原始資料なしに起票するような経理処理は一切行われていない中で、D社の経理担当者らの間で同経理処理について疑問や注意が提起され、話題に上がっていたのであるから、D社の代表取締役であり請求人の代表取締役でもあるXにおいて、直接、Eや売却の相手方に具体的な売却額を聞き、確認を取れば容易に横領行為が発覚するものであり、請求人においてEが隠ぺい仮装行為を行ったことを容易に認識することができ、申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたにもかかわらず、かかる横領行為を防止するための措置を講じた事実も認められない。
 以上の各事実に照らし合わせると、Eによる隠ぺい行為は、D社の行為と同視できることはもちろん、業務の大部分をD社が行うことで経済活動を行っていた請求人の行為とも同視できるものと認めるのが相当である。

《参照条文等》
国税通則法第68条第1項

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使用人の詐取行為における隠ぺい、仮装行為について、請求人自身の行為と同視することはできないとした事例

平成23年7月6日裁決

《ポイント》
 この事例は、1使用人の詐取行為に係る損害賠償請求権は損失発生と同時に益金算入されるが(法法22)、2同人の隠ぺい、仮装行為は請求人の行為と同視できず、国税通則法第68条の適用はないとし、他方、3同人の行為は同法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為に該当することから同項が適用されるとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人の使用人が行った詐取行為における隠ぺい、仮装行為については、1当該使用人は勤務する工場の所属課において仕入先から発行される納品伝票の事務処理を事実上一任され、その事務処理をチェックする者が他におらず、当該使用人の指示に基づき仕入先から発行された虚偽の納品伝票の処理が請求人の会計処理として反映される状況にあったこと、2当該工場において、仕入先に対して購入した品名と異なる品名を記載した納品伝票を発行させるなど不適切な経理処理が慣行的に行われており、当該使用人による事務処理を請求人自身による処理としてみなさざるを得ない状況にあったものといえることから、当該使用人の隠ぺい、仮装行為は請求人の隠ぺい、仮装行為と同視することができる旨主張する。
 しかしながら、1当該使用人は、当該工場の所属課に配属されて以後、退社するまで同課において職制上の重要な地位に従事したことがなかったこと及び請求人の経理帳簿の作成等に携わる職務に従事したこともなかったこと等から単に資材の調達業務を分担する一使用人であったと認められること、2当該詐取行為は、当該使用人の私的費用を請求人から詐取するために同人が独断で取引先に依頼して行ったものであることを総合考慮すると、請求人が取引内容の管理を怠り、請求人から隠ぺい仮装するための当該使用人の仮装行為を発見できなかったことをもって、仮装行為を請求人自身の行為と同視することは相当ではない。

《参照条文等》
 国税通則法第68条、第70条第5項
 法人税法第22条
 法人税基本通達2−1−43

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和62年5月8日第二小法廷判決(集民151号35頁)
 東京高裁平成21年2月18日判決(訟月56巻5号1644頁)

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請求人の従業員が、架空の請求書を作成して請求人に交付した一連の行為は、請求人による行為と同視できないとした事例(1平成27年4月1日から平成28年3月31日まで及び平成28年4月1日から平成29年3月31日までの各事業年度の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分、2平成27年4月1日から平成28年3月31日までの課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の賦課決定処分、3平成28年4月1日から平成29年3月31日までの課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の賦課決定処分、4平成27年4月1日から平成28年3月31日まで及び平成28年4月1日から平成29年3月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分・2全部取消し、134一部取消し・令和元年10月4日裁決)

令和元年10月4日裁決

《ポイント》
 本事例は、従業員による行為は仮装行為に該当し、請求人による当該従業員への管理・監督が十分ではなかったものと認定したものの、当該従業員の地位・権限や行為態様等からは請求人の行為と同視できないと認定したものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人の従業員(本件従業員)が行った金員の詐取を目的とした仮装行為(本件仮装行為)について、法人の従業員の業務に関連する行為は、当該法人の活動領域内の行為として自己の行為の一部分とみることができるから、従業員の行為が納税者である法人の行為と同視できないといえるような特段の事情がない限り、請求人に国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実がある旨主張する。
 しかしながら、1本件従業員は、請求人の経営に参画することや、経理業務に関与することのない一使用人であったと認められ、2本件仮装行為は、請求人の業務の一環として行われたものではなく、本件従業員が私的費用に充てるための金員を請求人から詐取するために独断で行ったものであると認められる。一方、3請求人においては、一定の管理体制が整えられていたものの、本件仮装行為のような詐取行為を防止するという点では、管理・監督が十分であったとは認められない。もっとも、職制上の重要な地位に従事せず、限られた権限のみを有する一使用人が、独断で請求人の金員を詐取したという事件の事情に鑑みれば、本件従業員に対する請求人の管理・監督が十分ではなく、本件仮装行為を発覚できなかったことをもって、本件仮装行為を請求人の行為と同視することは相当ではない。したがって、以上の点を総合考慮すれば、本件従業員による本件仮装行為を納税者たる請求人の行為と同視することはできないと判断するのが相当であり、同項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があるとは認められない。

《参照条文等》
 国税通則法第68条第1項

請求人の取締役が、外注先に対して架空の請求書を発行するよう依頼した行為は、請求人による行為と同視できるとした事例

令和元年6月20日裁決

《ポイント》
 本事例は、代表取締役以外の取締役による行為を、当該取締役の業務内容、地位・権限等から請求人の仮装行為と認定した事例である。

《要旨》
 請求人は、国税通則法第68条《重加算税》第1項は、隠蔽又は仮装の主体を納税者と規定していることから、専務取締役(本件専務)が外注先業者に対して架空の請求書を発行するよう依頼した行為(本件仮装)を請求人の行為と同視できないのであるから、同項の規定は適用できない旨主張する。
 しかしながら、法人が納税義務者である場合、代表者自身が隠蔽又は仮装した場合に限らず、法人内部において相応の地位と権限を有する者が、その権限に基づき、法人の業務として行った隠蔽又は仮装であって、全体として納税者たる法人の行為と評価できるものについては、納税者自身による行為と同視されると解するのが相当である。本件専務は、常務取締役又は専務取締役として対外的な営業業務を行っていたこと、請求人の他の営業担当者に対して営業方法を指導する立場にあったこと、請求人の営業利益の大部分を占める業績があり、代表者に次ぐ報酬を得ていたことから、大きな影響力を有する地位にあったと認められ、また、代表者は取引先との取引の詳細な内容まで把握しておらず、本件専務は、代表者から取引先との交渉を一任されていたことからすると、本件専務は、取引先の選定及び取引内容を確定する権限があったと認められる。そうすると、本件仮装は、上記のような地位及び権限に基づき、請求人の業務として行われた行為であると認められ、請求人において本件仮装を防止するための措置を講じたとも認められず、全体として請求人の行為と評価できる。したがって、本件仮装は納税者である請求人による行為と同視でき、請求人が事実を仮装したものと認められる。

《参照条文等》
国税通則法第68条第1項

《参考判決・裁決》
広島高裁平成26年1月29日判決(税資264号順号12401)

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