不服審査

不服申立てと国税の徴収

  1. 国税に関する法律に基づく処分(国税還付金の振込通知)
  2. 請求の利益
  3. 不服申立てと国税の徴収(3件)
  4. 異議申立ての手続
  5. 不服申立期間(異議申立期間の不遵守)
  6. 調査審理の範囲
  7. 裁決の拘束力

国税通則法第105条第1項にいう換価には債権の取立て及び配当を含まないものとした事例

裁決事例集 No.27 - 33頁

 請求人は、給料債権差押処分について不服申立て中であるにもかかわらず、それに続行する債権の取立て及び配当処分を強行したことは違法であると主張するが、国税通則法第105条第1項第1号の規定によれば滞納処分の手続の続行は、差し押さえた財産を換価する場合を除いては妨げられないとしており、この換価とは、公売、随意契約又は国による買入れにより差押財産を金銭化することであって、差押債権の取立て及び取り立てた金銭の配当は、上記法条の換価に当たらないと解されるから、原処分に違法はない。

トップに戻る

課税処分に対する審査請求中に行われた差押処分が適法であるとした事例

裁決事例集 No.64 - 126頁

 請求人は、滞納国税を徴収するために行われた不動産の差押処分に対して、[1]課税処分に対して審査請求中であること、[2]差押不動産は、農業者である請求人が所有する先祖伝来の土地であり、また、相続財産でない農地も含まれていること、[3]差押えに当たって事前に連絡がなかったことを理由として原処分が違法又は不当である旨主張する。
しかしながら、次のとおり、原処分を違法又は不当とする理由は認められない。
(1) 国税徴収法第47条第1項第1号は、滞納者が督促を受け、その督促された国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、徴収職員は、滞納者の財産を差し押さえなければならない旨規定しているところ、請求人は、督促日現在、本件滞納国税を完納していなかったのであるから、原処分は適法である。
なお、請求人が課税処分の取消しを求めた審査請求については、平成14年6月27日付で裁決がされているが、課税処分の一部が取り消されたにすぎないから、原処分の適法性に影響を及ぼすものではない。
(2) 国税通則法第105条第1項は、国税に関する法律の基づく処分に対する不服申立ては、その目的となった処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない旨規定しており、課税処分に係る審査請求中であっても、その課税処分の効力は妨げられないから、納付すべき税額は確定し、その国税が納期限までに完納されなければ、差押処分をすることは妨げられない。
(3) 農地については、国税徴収法第78条第1号において、滞納者がその国税の全額を徴収することができる財産で、換価が困難でなく、かつ、第三者の権利の目的となっていないものを提供したときは、その選択により、差押えをしないものとする旨規定されているが、請求人が、同条に規定する財産の提供を行った事実は認められない。
また、差押えの基礎となる滞納国税が相続税の場合に、相続財産以外の滞納者の所有財産を差し押さえてはならない旨を定めた法令の規定はない。
(4) 徴収職員が滞納者の財産を差し押さえるに当たり、滞納者に対し事前に連絡しなければならない旨を定めた法令の規定はない。

トップに戻る

新賃借人が旧賃借人の敷金を承継することを賃貸人が承諾した等の特段の事情がある場合、敷金返還請求権は新賃借人に承継され、新賃借人が目的物を明け渡した時に、新賃借人に対する被担保債権を控除した残額について発生するところ、原処分庁は敷金返還請求権の取立てを完了していることから、差押処分は消滅しているとした事例(各敷金返還請求権の各差押処分・却下・平成26年4月23日裁決)

平成26年4月23日裁決

《要旨》
 原処分庁が行った各敷金返還請求権(本件各敷金返還請求権)の各差押処分(本件各差押処分)について、本件各敷金返還請求権は、旧賃借人である滞納法人から新賃借人である請求人に承継することを賃貸人が承諾した等の特段の事情があることから、滞納法人から請求人に承継され、請求人が目的物を明け渡した時に、請求人の被担保債権を控除した残額につき発生するものである。そして、本件各敷金返還請求権は、既に原処分庁が取立てを完了していることが認められ、本件各差押処分はその目的を完了して消滅している。ところで、行政処分の取消しを求めるについて、その取消しを求める処分の効力が現に存在していることが必要であるところ、本件各差押処分は上述のとおりその目的を完了して消滅している。したがって、請求人には、本件各差押処分の取消しを求める法律上の利益はなく、本件各差押処分に対する審査請求は、請求の利益を欠く不適法なものである。

《参照条文等》
 国税通則法第75条

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和48年2月2日第二小法廷判決(民集27巻1号80頁)
 最高裁昭和53年12月22日第二小法廷判決(民集32巻9号1768頁)

トップに戻る