総則

納税義務者

  1. 納税義務者(7件)
  2. 課税取得の範囲
  3. 非課税所得
  4. 所得の帰属
  5. 所得の発生
  6. 収入金額

外国に住所の登録をしている者の生活の本拠が国内にあるとして、所得税法上の居住者に該当するとした事例

裁決事例集 No.26 - 25頁

 請求人の代表者は、外国に住所の登録をなし、同地を拠点として、市場調査、契約の確保等のため世界各地に出張していることから同人は所得税法上の居住者に該当しないと請求人は主張するが、所得税法第2条第1項第3号にいう国内に住所を有する個人とは国内の生活の本拠を有する個人をいい、生活の本拠については客観的事実によって判定されると解されるところ、同人は国内に、土地、建物を所有し、そこに妻子を居住させ、請求人の代表取締役としての職務に従事していること及び代表者が住所を登録している外国の滞在日数は年間を通じ10日程度にすぎないことから、同人は国内に住所を有するものであって、所得税法上の居住者に該当するというべきである。

トップに戻る

住所の推定規定によるまでもなく、前代表者の住所は国内にあるとして、所得税法上の居住者に該当するとした事例

裁決事例集 No.33 - 49頁

 請求人は、所得税法上国内に住所を有するかどうかは、所得税法施行令第14条第1項の継続1年以上の居住基準によってのみ判定すべきであり、請求人の前代表者は国内に継続して1年以上居住した事実がないから居住者に該当しないと主張するが、同項の規定は国内に住所を有するか否かが明確でない個人について適用される推定規定であって、国内に住所を有することが明らかな者についてまで適用されないことは明らかであるところ、請求人の前代表者は、国内に土地、家屋を有し、そこに妻が永年居住していること、関連企業の総帥として永年にわたり国内に居住することを必要とする職業に従事していること及び請求人はその本店所在地以外の場所における同人の勤務を出張扱いとして出張費用の内部処理をしていることなどの事情を考え併せると、同人は、同項各号の住所推定規定によるまでもなく国内に住所を有することとなり、所得税法上の居住者に該当する。

トップに戻る

日本法人及び国外に所在する外国法人の役員を務める請求人は、日本の居住者に当たり、また、請求人には租税回避の意図がなく、外国法人の課税対象留保金額に係る金員を現実に得ていないことはタックスヘイブン課税の適用除外要件に該当しないとしてタックスヘイブン課税を適用した事例

裁決事例集 No.71 - 97頁

 請求人は、F国その他諸外国を本店所在地とする内国法人の関係法人の代表取締役等の地位にあり、F国を拠点として相当期間国外に居住することが必要であっため、平成13年は194日間、同14年は122日間国外に滞在し、うちF国に滞在した日数は、平成13年は92日、同14年は71日であり、F国滞在中は同地にあるマンションに居住していたことなどから、請求人の住所はF国にあり日本の居住者には該当しない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、我が国においても内国法人の代表取締役の地位にあり、その職務を遂行するために我が国に居住する必要があり、実際に我が国において請求人が所有する自宅に配偶者とともに居住しているのであるから、我が国においても職業上及び私生活上居住する必要があったと認められる。請求人の日本国内滞在日数は、平成13年は171日、同14年は247日であり、F国に滞在した日数は、平成13年は29日、同14年は40日と、請求人が生活の本拠地であると主張するF国の滞在日数を我が国に滞在した日数が大幅に上回ることからすれば、相対的に見て我が国に滞在する職業上又は私生活上の必要性が優っていたと認められ、更に、生計を一にする配偶者が我が国に生活の本拠を有することや請求人が我が国に自宅及び賃貸用不動産を所有する一方、F国においては不動産を所有していないことなど客観的事実を総合的に勘案すれば、請求人は、我が国に生活の本拠を有しており、各年分において居住者であると認められる。
 また、請求人には、租税回避の意図はなく、原処分は正常な海外投資活動を阻害すること、課税対象留保金額に係る金員を現実に得ておらず、担税力もないことなどから、請求人は、G国を本店所在地とするH社に係るタックスヘイブン課税を適用されない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、租税特別措置法第40条の4第1項第1号の居住者に該当し、H社は、租税特別措置法第40条の4第2項第1号に規定する外国関係会社及び同法第40条の4第1項に規定する特定外国子会社等に該当すると認められる。また、H社は、株式保有を主たる事業としているからタックスヘイブン課税の適用除外規定の適用がないことは明らかであり、請求人の主張する事項は、租税特別措置法第40条の4第3項のいずれにも該当しないから、タックスヘイブン課税の適用に何ら影響を与えない。
 したがって、請求人の主張には理由がない。

トップに戻る

外国船籍の船舶の乗組員であっても、住所は国内にあると認められるから居住者に該当するとした事例

裁決事例集 No.75 - 155頁

 請求人は、外国法人が運航する遠洋鮪漁船に1年を超えて乗り組む乗船員であり、所得税法施行令第15条の規定により非居住者である旨主張する。
  しかしながら、外国航路に就航している船舶の乗組員にとって、その乗船する船舶は単なる勤務場所にすぎないと解されることから、これらの者については、その生活の本拠はその者の配偶者その他生計を一にする親族の居住している地あるいはその者が勤務外の期間中通常滞在する地にあるところ、請求人の場合、配偶者が居住している地、勤務外の期間中通常滞在する地のいずれも国内であることから、請求人の住所は国内であると認められ、居住者に該当する。

トップに戻る

請求人が海外に在留して報酬を得ていた期間は、請求人は国内に生活の本拠を有していなかったから、当該期間の請求人は非居住者に該当するとした事例

裁決事例集 No.78 - 63頁

 平成16年9月13日から平成18年6月8日までの期間における請求人の日本への滞在は、月に1回程度の頻度、主として週末を含む1日間から5日間にすぎないものであり、P市S町(日本)に所在する家屋は、請求人の妻が勤務先から社宅として賃借していたものであって、生活用動産が運搬されていなかったのも、妻及び子らが同所での生活に必要であったためと推認されることなどを考慮すると、当該家屋の所在地が請求人の日本滞在中の生活拠点であったことは認められるものの、請求人の生活の本拠が当該所在地にあったものと直ちに判断することまではできない。
 また、各コンサルティング契約はコンサルティング業務を国外に所在する事務所内で常勤で提供することを内容とするものであったこと、請求人は契約期間の大部分を国外で過ごしていることからすると、請求人は、主として国外において当該コンサルティング契約に係る業務を提供していたものと認めるのが相当であり、請求人が対外的に上記家屋内に事業所を置くコンサルタントであり事業主であるとしていたことをもって直ちに、請求人の職業的基盤が日本にあったとまで認めることはできない。
 さらに、請求人と生計を一にする妻は勤務先を休業し、一定期間子らとともに国外に滞在し請求人と起居を共にしたが、妻らの国外滞在は一時的なものであったと認めるのが相当であるから、請求人は国内に生計を一にする親族を有していたというべきであるところ、妻が休業中においても上記家屋の貸与を受けそこに居住を続けたのは、飽くまで妻の従業員としての選択・判断であると認められ、その選択・判断が、上記期間における請求人の生活の本拠を確保することを目的としてなされたものと認められないから、妻らが日本国内に居住していたことが請求人の生活の本拠が当該家屋にあったことを裏付ける重要な事実であるとまでは認め難い。
 また、請求人は現金及び銀行口座の預金を除き、日本国内に資産を保有していなかったところ、通常、預金口座を管理するために日本国内に生活の本拠を置く必要性はないことから、日本国内の資産の所在をもって、直ちに請求人の生活の本拠が上記所在地にあったとまでは認められない。
 上記の各点を総合勘案すれば、上記期間において請求人の生活の本拠が上記家屋にあった、又は、当該家屋に相当期間継続して居住していたと認定するのは困難であり、請求人は、非居住者に該当するといわざるを得ない。

トップに戻る

非永住者の判定上、過去に外交官として日本に派遣されていた期間は、「国内に住所又は居所を有していた期間」に該当するとした事例

裁決事例集 No.78 - 87頁

 請求人は、在日A国大使館において外交官として勤務した期間中、専らA国において所得税を課せられ、日本において課税されていなかったこと、日○租税条約第○条及びウィーン条約第34条は、双方居住者としての二重課税を防止するために、派遣先国における居住者としての税務上の地位を排除していると解されることを理由に、所得税法第2条第1項第4号の「国内に住所又は居所を有していた期間」の判定に際し、当該期間を算入することは認められない旨主張する。
 しかしながら、所得税法においては、外交官について、我が国の居住者として扱わない旨の規定はなく、所得税法第9条第1項第8号の規定及び所得税基本通達9−11の定めは、外交官がそれぞれの国の主権を代表する者である点を考慮し、国際慣例に従い、所得税の課税を免除する趣旨であり、外交官として本邦に赴任している期間中、これを居住者としないことまでを定めたものではない。
 また、ウィーン条約第34条及び日○租税条約第○条は、外交官に対して、派遣先国内に源泉がある個人的所得等の特定の租税、賦課金を除き、派遣先国においてすべての賦課金及び租税を免除することを定めているにすぎず、外交官が派遣先国において居住者として扱われないことまで定めたものではない。
 日本国籍を有しない居住者が非永住者に該当するか否かは、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下であるか否かにより決するものであるところ、請求人は、本件勤務期間中、本邦に住所を有していたと認められ、当該期間は5年を上回るから、本件期間においては、非永住者以外の居住者と認められる。

トップに戻る

請求人の生活の本拠はG国の居宅ではなく日本の居宅にあったとした事例

平成23年10月24日裁決

《ポイント》
 この事例は、1年間に延べ半年近くにわたりG国に滞在し取締役社長として業務を行うなどしていた請求人の生活の本拠について、請求人の国内外でのまる1滞在日数、まる2生活場所及び同所での生活状況、まる3職業及び業務の内容・従事状況、まる4生計を一にする親族の居住地、まる5資産の所在、まる6生活に関わる各種届出状況等を総合的に勘案し、日本の居宅にあったと判断したものである。

《要旨》
 請求人は、G国に設立されたH社の取締役社長として同国に長期間滞在し同社の業務に従事しているから、平成21年においては、請求人がG国で起居していたd居宅が生活の本拠である旨主張する。
 しかしながら、まる1請求人は、平成21年中はほぼ毎月日本に入国し、その都度、半月程度又は1か月程度滞在し、年間の日本での滞在日数はG国での滞在日数を上回っている。まる2請求人の生活場所及び同所での生活状況を比較すると、請求人が日本での滞在中に起居していた請求人所有のb町居宅は、請求人が日本へ入国した際のH社の業務や通院のために滞在する場所であるとともに、生計を一にする妻と同居して過ごす家庭生活を営む唯一の場所でもあり、請求人の全生活との関連が深い場所であるのに対し、G国のd居宅は、請求人が同国で業務を行う都合上滞在する場所であり、b町居宅と比べて請求人の全生活との関係は希薄である。まる3請求人は、平成21年中延べ半年以上も日本に滞在しH社の業務を行っており、請求人のH社での業務はG国及び日本の双方で行っていたものである。まる4請求人の妻は継続してb町居宅に居住し同所を住民登録地としている。まる5請求人は、日本において居住用資産であるb町居宅を所有しているが、G国には不動産は所有していない。まる6請求人は住民登録地をb町居宅の所在地とし、自身の公的年金等の各支払者に対して自己の住所を同所在地として届け出ているほか、日本国内で生活する上で有用な健康保険の被保険者の資格を保有し続けている。
 以上の諸事情を総合すると、客観的に請求人の平成21年中の生活の本拠(全生活の中心)たる実体を具備していたのは、G国にあるd居宅ではなく日本のb町居宅であったと認定するのが相当である。

《参照条文等》
 所得税法第2条第1項第3号、第5号、第5条第1項
 民法第22条

《参考判決、裁決》
 最高裁昭和29年10月20日大法廷判決(民集8巻10号1907頁)
 最高裁昭和32年9月13日第二小法廷判決(裁Web、最高裁判所裁判集民事27号801頁)
 最高裁昭和35年3月22日第三小法廷判決(民集14巻4号551頁)
 最高裁平成23年2月18日第二小法廷判決(判時2111号3頁)

トップに戻る