総則

資産の貸付けによる所得

  1. 納税義務者
  2. 課税取得の範囲
  3. 非課税所得
  4. 所得の帰属
    1. 実質所得者課税
    2. 所得の帰属者
      1. 資産の貸付けによる所得(4件)
      2. 資産の譲渡による所得
      3. 漁業補償金による所得
      4. 共有店舗の事業から生ずる所得
      5. 先物取引による所得
      6. 代理店手数料収入による所得
      7. LLCの事業に係る所得
      8. 人格のない社団
      9. その他
  5. 所得の発生
  6. 収入金額

未分割の相続財産の賃貸から生ずる不動産所得は相続分に応じて各共同相続人に帰属するとした事例

裁決事例集 No.26 - 31頁

 請求人は、相続財産の分割については現在係争中で所有権の帰すうは全体として不安定であるから、不動産所得の納税義務は発生していない旨主張するが、未分割の相続財産の賃貸から生ずる不動産所得は、年の経過とともに実現し、各共同相続人の法定相続分に応じて各相続人に帰属するものと解するのが相当である。

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請求人を代表取締役とする同族会社の収入として計上された不動産の賃貸料は請求人に帰属するとした事例

平成24年12月4日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人を代表取締役とする同族会社の収入として計上された不動産の賃貸料について、当該不動産の真実の所有者及び賃貸借契約における真実の賃貸人はいずれも請求人であると認められるから、請求人に帰属するとしたものである。

《要旨》
 請求人は、賃貸物件である各建物(本件各建物)の登記名義人及び賃貸借契約(本件各賃貸借契約)の賃貸名義人は請求人となっているが、本件各建物は請求人から請求人を代表取締役とする同族会社(本件法人)に譲渡したものであり、本件各建物の実質的な所有者は本件法人であるから、本件各賃貸借契約に基づく賃貸料収入(本件賃貸料収入)は本件法人に帰属する旨主張する。
 しかしながら、本件各建物の所有権の登記名義人を本件法人とすることができない特段の事情はなく、本件各建物の真実の所有者は請求人であるとの推定を覆す合理的な根拠も見当たらない上、本件各建物の本件法人への譲渡もその取引としての実態が存在しない。また、本件各賃貸借契約の賃貸名義人を本件法人とせず、請求人として締結しており、本件各賃貸借契約の賃貸人を本件法人に変更できない特段の事情も見当たらないことから、本件各賃貸借契約の真実の賃貸人は請求人であると認められる。したがって、本件各建物の真実の所有者及び本件各賃貸借契約における真実の賃貸人は、いずれも請求人であると認められるから、本件賃貸料収入は請求人に帰属する。

《参照条文等》
 所得税法第12条

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賃貸借契約の目的物は、賃貸借契約書に記載されている親所有の土地ではなく当該土地の上に存する子所有の建物であり、賃貸料収入は子に帰属するとした事例

平成25年4月19日裁決

《要旨》
 請求人は、請求人の父母が所有する土地(本件土地)及び本件土地上の請求人名義の建物(本件建物)に係る賃貸料収入について、平成16年までの賃貸借契約及び平成17年以降の賃貸借契約のいずれも賃貸借契約の目的物は本件土地であるから、当該各賃貸料収入は父母に帰属する旨主張する。
 しかしながら、まる1平成16年までの賃貸借契約においては、賃借人は、本件建物を店舗として使用し、本件土地は、商品の展示場又は来客用駐車場として建物の使用に必要な限度で一体として使用されていることからすると、当該契約の目的物は本件建物と解するのが相当であり、また、まる2平成17年以降の賃貸借契約においては、本件土地に借地権を設定する旨記載されているものの、賃借人は、本件建物を改装して使用する一方、本件土地上の建物を所有していないことからすると、当該契約は、借地権の設定契約と解するのは相当ではなく、賃借人が、本件建物を事務所等として使用し、本件土地は、来客用駐車場として建物の使用に必要な限度で一体として使用されていることからすると、賃借人は、本件建物の使用を目的として賃借していると解するのが相当であり、当該賃貸借契約の目的物は本件建物となる。そうすると、本件建物の所有者は請求人であることから、本件建物に係る賃貸料収入は請求人に帰属する。

《参考判決・裁決》
 平成23年6月7日裁決(裁決事例集No.83)

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請求人が不動産を実体的に所有するとともに、その利得を支配管理し、自己のために享受していると認められるから、当該不動産の賃貸に基因する所得は請求人に帰属するとした事例(平成21年分の所得税の更正処分及び無申告加算税の賦課決定処分並びに平成22年分及び平成23年分の所得税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し・平成26年5月14日裁決)

平成26年5月14日裁決

《要旨》
 請求人は、各不動産の賃貸に基因する所得は実父に帰属する旨主張する。
 しかしながら、請求人は、まる1各不動産のうち一部を夫と持分2分の1ずつで共有しているほかはその余の不動産を単独で所有し、登記に係る所有名義もその所有の実態に即していること、まる2各不動産の賃借人は、請求人が所有する口座等に賃借料を振り込む方法で支払っていること、まる3建物の管理費のほか、不動産に係る固定資産税や管理費などの経費と認められる金額を請求人名義の口座から振替により支払っていること、まる4請求人の実父は、同人名義で賃貸借契約が締結されている事情を知らず、請求人らから各不動産の賃貸に係る収支又は損益に係る説明を受けていないこと、加えて、まる5結局、請求人の実父は、請求人から各不動産の賃貸に基因する所得の分配を受けたことがなく各不動産の賃貸業に何ら関係していないことが認められる。以上のことから、請求人が各不動産(ただし、夫と共有のものについては、その2分の1)を実体的に所有するとともに、本件各年分において、現に、実父名義等で賃貸借契約がされたものを含めてその利得を支配管理し、自己のためにそれを享受していると優に認めることができるから、本件各年分の各不動産の賃貸に基因する所得は、請求人に帰属すると認めるのが相当である。

《参照条文等》
 所得税法第12条
 所得税基本通達12−1

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