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所得の種類

退職所得と認めなかった事例

  1. 利子所得
  2. 配当所得
  3. 不動産所得
  4. 事業所得
  5. 給与所得
  6. 退職所得
    1. 退職所得と認めた事例
    2. 退職所得と認めなかった事例(3件)
  7. 譲渡所得
  8. 一時所得
  9. 雑所得

使用人兼務役員として勤務する会社の適格退職年金制度の廃止に伴い、年金信託契約の受託者から受領した一時金は、所得税法第31条に規定する退職手当等とみなす一時金ではなく一時所得に該当するとした事例

裁決事例集 No.75 - 183頁

 60歳定年後も引き続き、使用人兼務役員として勤務していた請求人が、勤務先の適格退職年金制度が確定拠出年金(企業型年金)制度に移行する際、新制度に移換されなかった請求人に対して支給された本件一時金は、定年に達した後引き続き勤務する使用人に対し、その定年に達する前の勤務期間に係る退職手当等として支払われた給与であるから、所得税基本通達31-1の(3)が引用する同通達30-2の(4)に掲げる事由に該当し、所得税法第31条第3号に規定するみなし退職所得に該当すると主張する。
  しかしながら、所得税法第31条第3号は、みなし退職所得となる企業年金等から支給される一時金を「加入者の退職により支払われるものその他これに類する一時金として政令に定めるもの」に限定している。また、所得税基本通達31-1の(3)は、適格退職年金契約に基づいて支払われる退職一時金等のうち、同通達30-2の(2)及び(4)から(6)までに掲げる退職に準じた事実等が生じたことに伴い加入員としての資格を喪失したことを給付事由として支払われる一時金も、みなし退職所得となる旨定めている。これを本件についてみると、請求人は、本件一時金の支給後も本件労働契約に基づき使用人兼務役員として本件会社に勤務しており、退職の事実はなく、本件一時金は所得税法第31条第3号には該当しない。また、本件一時金は本件年金信託契約が解除されたことにより、本件旧年金規程第24条に基づき信託財産の残余金が分配されたものであって、加入者としての資格を喪失したことを給付事由として支払われたものではないから、所得税基本通達31-1の(3)にも該当しない。

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雇用関係のない従事員会から、退会せん別金の給付に関する事業を廃止することに伴い支給を受けた金員は、退職所得とは認められず、一時所得に該当するとした事例

裁決事例集 No.79

 請求人は、本件金員は、雇用主であるP市が全額を負担した労働の対価であること、勤務関係が終了したことによって初めて生じた給付であること及び一時金として支払われたことから、請求人が退職により一時に受ける給与であり、退職所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件金員が退職により一時に受ける給与に当たるというためには、それが、1退職すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されること、2従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有すること、3一時金として支払われること、との要件を備えることが必要であると解されるところ、本件金員は、従事員会が退会せん別金の給付に関する事業を廃止することに伴い従事員会から支払われたものであること、また、請求人と従事員会との間には雇用関係がないことからすれば、勤務関係の終了という事実によって初めて給付されるものと認められないから、退職所得には該当しない。
 本件金員のうち、1退会せん別金相当額は従事員会が退会せん別金の給付に関する事業を廃止することに伴い従事員会から一時に支払われた清算金であり、2特別加算額は早期希望離職者の募集に応じたことに伴い従事員会から一時に支払われた金員であると認められることから、1及び2から成る本件金員は、臨時的・偶発的な所得であり、一時所得に該当する。

《参照条文等》
所得税法第30条第1項、第34条

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請求人が在職中に勤務先の親会社から同社のリストリクテッド・シェア(譲渡等制限付株式)を付与されたことによる所得は、退職所得ではなく、給与所得に当たるとした事例

平成23年2月1日裁決

《ポイント》
 請求人に付与されたリストリクテッド・シェア(譲渡等制限付株式)とは、その付与日に議決権及び配当受領権を取得するものの、株券の受渡しは行われず、売却、名義書換、譲渡及び担保への差入れができないという譲渡等制限が付されたものであり、一定期間の勤務又は一定期間の勤務後退職し、かつ、勤務先グループの業務と競合する業務等を行わないという条件を満たした場合にその譲渡等制限が解除されるが、条件に反した場合には没収されるというものである。
 この事例は、在職中に上記リストリクテッド・シェアを付与された請求人が、その後退職し、譲渡等制限が解除されたという事実関係の下で、このリストリクテッド・シェアに係る所得の区分及び収入計上時期につき判断したものである。

《要旨》
 請求人は、勤務先の親会社から在職中に当該親会社のリストリクテッド・シェア(譲渡等制限付株式)を付与されたことによる本件所得について、まる1特別な退職に際してのみ株式を支給するものであるから、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったものであること、まる2勤務年数及び年齢を支給基準としており、永年の勤務に対する報奨としての意図が明白であること、及びまる3退職後は同業他社で働かないという条件を課すことで、実質的に引退することを強いており、請求人は現実に退職したことにより株式を支給されたのであるから、生活保障的な最後の所得でもあること等を理由として、退職後の年分の退職所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、請求人が付与されたリストリクテッド・シェアは、まる1退職の事実の有無にかかわらず請求人が在職期間中に付与されたものであり、請求人が、仮に退職しなかったとしても条件を満たせば、没収されることなく本件所得を得ることができたことからすると、本件所得は、退職という事実によって初めて給付されたものとは認められず、また、まる2親会社が、請求人の前年の業績に応じて賞与の一部として付与したものであり、請求人の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有するものとみることもできないから、本件所得は退職所得には該当せず、給与所得に該当する。
 なお、本件所得の収入計上時期については、親会社がリストリクテッド・シェアを没収しないことを決定してその権利を確定し、譲渡等制限を解除した日において、請求人の株主としてのすべての権利が確定するから、その日の属する年分となる。

《参照条文等》
 所得税法第28条第1項、第30条第1項、第36条第1項、第2項

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁)、最高裁昭和58年9月9日第二小法廷判決(民集37巻7号962頁)、最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁)

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