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LPSから得た損益及び分配金
a国で出資・設立したリミテッド・パートナーシップ(LPS)を介して請求人が得た損益は、当該LPSが利益の処分として行ったものではないから配当所得に当たらず、また、当該LPSが不動産賃貸を目的とする民法上の組合ということができず、請求人が主体的に本件不動産を賃貸に供していたと認められないので不動産所得に当たらないとし、請求人が当該LPSから得た分配金は出資金に対する果実であるから、雑所得に当たるとした事例
請求人は、a国のリミテッド・パートナーシップ(以下「本件LPS」という。)を介して得た損益について、本件LPSは民法上の組合に類似するものであってそれが行う不動産賃貸事業に係る損益が請求人自身に帰属するから不動産所得に該当する旨主張し、原処分庁は本件LPSが法人に該当するから本件LPSからの利益の分配は配当所得となる旨主張する。
しかしながら、本件LPSは法律上の権利義務の帰属主体となり得るものの、本件LPSの活動から生じる損益は、本件LPS契約に基づいてパートナーである請求人に配分されているものであり、それは、本件LPSが利益の処分として行ったものではないから、請求人の得た所得は所得税法第24条が規定する配当所得に当たらない。本件LPSは不動産賃貸を目的とする民法上の組合ということができず、請求人が主体的に本件不動産を賃貸に供していたと認められないので、請求人の得た損益は不動産所得に該当せず、請求人が本件LPSから得た分配金は出資金に対する果実であるから、雑所得と認められる。
平成18年2月2日裁決
LPSから分配される収益金について、配当所得、不動産所得のいずれにも該当せず、雑所得に該当するとした事例
《ポイント》
本事例は、LPSから分配される収益金(LPS収益金)に係る所得について、LPSが、我が国の租税法上の法人に該当し、出資者の地位に基づいて分配を受ける剰余金であって、配当所得に該当するのか、又は我が国の民法上の組合と同様のものであって、不動産所得に該当するのかが争われ、その法律的経済実質的関係を個別具体的にみて、雑所得に該当するとしたものである。
《要旨》
原処分庁は、米国においてリミテッド・パートナーシップ契約(LPS契約)によって組成されるLPSは我が国の租税法上の法人に該当するから、請求人は出資者としての地位にあり、また、請求人がこの地位に基づいて分配を受けるLPS収益金は、本件各LPSの剰余金であるから、配当所得に該当する旨主張する。一方、請求人は、LPS収益金は、本件各LPSに帰属せず、民法上の組合と同様、損益分配割合に応じて配分され、請求人に直接帰属するから、不動産所得に該当する旨主張する。
しかしながら、配当所得とは、法人から受ける剰余金の配当、利益の配当及び剰余金の分配等に係る所得で、剰余金又は利益の処分として配当又は分配したものだけでなく、出資者に対しその出資者である地位に基づいて供与した経済的な利益も含まれると解され、法人に帰属する利益の処分としての性質を有するものである。これを本件についてみると、本件各LPS契約における収益金定義条項及び分配額保証条項によれば、その分配額は毎年所定の額となることを保証されており、計算上の分配可能な額が保証された金額に満たない場合にも、毎年所定の額の分配を受けられるものとされているところ、現に、請求人は、この分配額保証条項に基づいて毎年所定の額のLPS収益金の分配を受けているのであるから、LPS収益金に係る所得は、本件各LPSに帰属する利益の処分としての性質を有するものでないことが明らかであり、配当所得には該当しない。また、LPS収益金は、請求人が、本件各LPS契約における分配額保証条項に基づいて毎年所定の額の分配を受けているものであり、請求人が、自ら、又は本件各LPSないしオーナーLPSを自らの代理人として、主体的に本件各物件を賃借人に対して賃貸し、それによる収益の稼得や費用の負担を行っているということはできず、LPS収益金に係る所得は、請求人が、不動産所得を生ずべき業務(不動産等の貸付業務)の遂行により、あるいはそれに伴い得た所得とはいえないから、不動産所得には該当しない。したがって、LPS収益金は、本件各LPS契約における分配額保証条項に基づいて分配を受けているものであるから、LPS収益金に係る所得は、利子所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当せず、雑所得に該当する。
《参照条文等》
所得税法第2条第1項第6号、第7号、第24条、第26条、第35条
民法(平成18年法律第50号による改正前のもの)第33条、第43条