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所得の種類

新株予約権の行使に伴い生じた経済的利益

  1. 利子所得
  2. 配当所得
  3. 不動産所得
  4. 事業所得
  5. 給与所得
  6. 退職所得
  7. 譲渡所得
  8. 一時所得
  9. 雑所得
    1. 金銭の貸付けによる所得
    2. 還付加算金
    3. 有価証券の継続的売買による所得
    4. 先物取引による所得
    5. 不動産の継続的譲渡による所得
    6. 競走馬の保有による所得
    7. 航空機等のリースによる所得
    8. 覚醒剤の密輸、密売に係る所得
    9. 謝礼金等
    10. 適格退職者年金
    11. 個人保証の対価
    12. LPSから得た損益及び分配金
    13. 新株予約権の行使に伴い生じた経済的利益(2件)
    14. 職務発明報奨和解金
    15. 社債の換金による所得

請求人と雇用関係にない会社から付与された新株予約権の行使に係る経済的利益は、一時所得ではなく雑所得と認めた事例

裁決事例集 No.75 - 229頁

 請求人は、請求人と雇用関係がないA社から付与された本件新株予約権の行使に係る本件権利行使益は、役務その他の労務の対価ではなく、一時的、偶発的な所得であるから、一時所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件新株予約権の付与に当たって、具体的な役務の提供が明示的に合意されていたとはいえないとしても、請求人は、A社に対する社外協力者として同社の必要に応じて協力し、仮に、将来転職する場合には同社への入社を優先するなどの義務を負う社外協力者としての地位にあり、同社は、このような義務を伴う地位に就いていることを継続することの見返りとして本件各新株予約権を付与ないし割り当てたものということができる。
 そして、本件新株予約権については、その権利を譲渡し又は処分等することはできないものとされており、請求人は、これを行使することによって、初めて経済的利益を受けることができるものとされているのであるから、A社は、請求人に対し、本件新株予約権に係る付与契約により本件新株予約権を付与し、その約定に従って所定の権利行使価格である株式を取得させたことによって、本件権利行使益を得させたものということができる。
 したがって、本件権利行使益は、A社から請求人に与えられた給付に当たるものというべきで、本件各新株予約権を行使して得た本件権利行使益は、労務その他の役務の提供の対価としての性質を有するというべきである。
 以上によると、本件権利行使益は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得のいずれにも該当せず、また、労務その他の役務の対価として供与されたものであるから、一時所得には該当せず、雑所得に該当する。

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新株予約権の行使に伴い生じた経済的利益は雑所得に該当し、また、新株予約権の取得についての情報提供者に支出した手数料は雑所得の金額の計算上必要経費に算入されるとした事例

裁決事例集 No.76 - 136頁

 請求人は、民法上の組合を通じて取得した新株予約権の行使による経済的利益は一時所得に該当する旨主張する。しかしながら、新株予約権を有利発行した法人は、その新株予約権の発行に当たり、事業拡大等のための資金調達のほか、投資家による新規事業への支援も計画し、これらの確実な実現を図るために本件組合を引受先とし、また、本件組合の出資者の投資リスク等も考慮して有利発行したものと認められることから、当該経済的利益は出資の対価としての性質を有しているといえる。したがって、当該経済的利益は、対価性が認められることから一時所得には当たらないことになり、また、請求人は、当該法人の役員等でもないことから給与所得にも当たらず、営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではないから事業所得にも当たらず、さらには利子所得、配当所得、不動産所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得のいずれにも当たらないので、雑所得となる。
 また、原処分庁は、請求人が本件組合を通じた新株予約権の取得についての情報提供者に支出した手数料は、株式の譲渡と密接に関連した費用であり、上場株式等の譲渡所得の金額の計算上、譲渡費用となる旨主張する。しかしながら、請求人が本件手数料を支払わなければ、当該株式の売却ができなかったわけではなく、また、情報提供者において、当該株式の売却に関与した事実も認められないことから、本件手数料は、請求人にもたらされた投資情報に基づき、当該組合に対する出資により、結果的に、請求人が得た経済的利益について生じた費用であると解するのが相当である。そして、当該経済的利益は雑所得に区分されるから、本件手数料は、雑所得の金額の計算上必要経費に算入される。

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