収入金額

譲渡所得

  1. 資産の譲渡
  2. 収入すべき時期
    1. 配当所得
    2. 不動産所得
    3. 事業所得
    4. 給与所得
    5. 譲渡所得(14件)
    6. 一時所得
    7. 雑所得
  3. 収入金額の計算

未分割遺産の譲渡に係る収入金額が譲渡時において確定していなかった旨の主張を退けた事例

裁決事例集 No.20 - 79頁

 一般に相続財産は、相続人が数人いる場合には相続開始と共にその共有に属し、かつ、その共有持分は法定相続分によるものとされており、また、分割前の相続財産の処分については、他の相続人の同意が必要とされ、かつ、その同意を得て特定物を処分したときは、当該物件に対するそれぞれの法定相続分につきこれがなされたものと解されるところ、請求人は、本件処分の対象となった山林所得及び譲渡所得は未分割の相続財産の売却によるものであるから、その売却時においては請求人のこれらの所得に係る収入金額は確定していないと主張するが、請求人ら共同相続人が本件未分割財産を第三者に対して適法に売り渡している以上、請求人の法定相続分により、その売却時の年分において、これらの所得金額計算上の収入金額が確定しているものといわざるを得ない。

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売買契約をした土地のうち一部の引渡しが不能になった場合において、引き渡した部分についてのみ譲渡があったものと認定した事例

裁決事例集 No.20 - 80頁

 契約対象物件の全部の引渡しが完了していない場合における譲渡所得の課税に当たって、[1]契約対象物件の大部分の引渡しが行われていること、[2]引渡物件に見合う対価を収受し、請求人の事業資金等に使用されていること、[3]引渡未了物件は第三者所有の物件で、請求人がそれを取得して契約の相手方に引き渡すことは事実上不能であること、[4]契約対象物件の一部を引き渡さなかったことを原因とする当該契約の解除がなされた事実はないことからみると、本件売買契約は、黙示の合意による変更がなされ、当事者双方が履行をなしたところをもって契約の部分的完結がなされたものと認められるので、一部の引渡しを了していないので課税適状にはないという請求人の主張は相当でなく、また、引渡未了分を含めた売買契約書に基づき譲渡所得の金額を算定した原処分も相当でない。

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二つの物件の譲渡に関し、一つは覚書に基づき翌年に所有権移転の登記をしても、その譲渡所得の帰属年分は他の一つの物件を譲渡した年分であるとした事例

裁決事例集 No.20 - 90頁

 二つの物件について、譲受人から一括しての買申込みがあったことに対し、請求人としてはその代金を一時に入手する必要がなく、かつ、税負担の考慮から譲渡年分を変えることとして、一つの物件については売買契約を締結し、他の一つ物件については売買予約の覚書を作成し、同覚書に基づき売買予約の仮登記をした場合に、請求人と譲受人との間においては、当該覚書作成の時において、既に、他の一つの物件の売買代金の額について合意が成立していて、譲受人は請求人からの要求に基づき、当該覚書作成の日の翌日にその売買代金の全額を支払うことによって買主としての義務を完全に履行しているから、本件土地に関する所有権移転の登記手続を翌年1月以降に行ったとしても、請求人には、前記目的以外にその所有権移転を直ちにすることができないとする事情は認められず、したがって、売買当事者間においては、譲受人が実質的にその売買代金の全額を請求人に支払った日において、その譲渡があったものと認定するのが相当である。

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分筆して譲渡した農地に係る課税年分はそれぞれ分筆後の農地の所有権が移転した日の属する年分であるとした事例

裁決事例集 No.21 - 54頁

 農地を2筆に分筆して同一人に対し昭和52年8月と昭和53年2月に売買契約を締結し、それぞれの売買契約が成立した日に譲渡があったかどうかについて、原処分庁は、農地の所有権の移転に係る農地転用届出の効力は他の財産上の手続に対し特別の地位にあることを理由に、その届出の効力が生じた昭和52年8月に本件農地が一の取引に基づいて一括して譲渡されたものと認定しているが、農地転用届出の受理は農地の所有権を移転する私法上の行為を補充してその法律上の効力を完成させるにすぎない行政行為であり、私法上の行為そのものの効力を確定させるものではないところ、本件土地及び隣接地の各売買契約は、[1]売買約書の内容、[2]譲渡代金の授受の状況、[3]不動産業者、司法書士等に対する仲介手数料、報酬の支払状況等の事実に照らし、昭和52年8月と昭和53年2月にそれぞれ時期を異にして別個独立に締結されたものと認められるから、原処分の一部を取り消すのが相当である。

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収用裁決につき争訟が提起されている場合でも、当該収用に係る補償金は当該裁決の権利取得日の属する年分の譲渡所得の収入金額に当たるとした事例

裁決事例集 No.28 - 10頁

 請求人は、収用裁決は不当であるから、当該裁決は、所得税法施行令第95条に規定する「契約が成立しない場合に法令によりこれに代わる効果を認められる行政処分」に当たらないと主張するが、収用裁決が適法な手続によってなされている以上、たとえ収用裁決の取消しを求める訴訟が提起され、これが係属中であるとしても本件補償金は当該裁決の権利取得日の属する年分の譲渡所得の収入金額に当たる。

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当初売買契約の対象物件である土地の一部を分筆して引き渡した土地に係る課税年分は、当初売買契約対象物件の引渡しが完了した日の属する年分ではなく、当該引渡しがあった日の属する年分であるとした事例

裁決事例集 No.29 - 20頁

 原処分庁は、本件土地は当初契約に基づき一括して譲渡されたものであり、その譲渡対価の額はその引渡しの全部が完了した日の属する昭和56年分の譲渡所得の総収入金額とすべきものであって、昭和55年中における本件土地の一部(本件転売部分の土地)の引渡しは、当初契約による引渡義務の一部の履行としてみなされたものであると主張するが、本件転売部分の土地については、本件土地の売買代金の総額の支払がなければその所有権は移転しないという当初契約を買主の要望によって一部変更し、本件土地の一部を分筆してその引渡しと代金の受領がなされていることから、その譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、その引渡しがあった日とするのが相当である。

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譲渡所得の帰属年分は、甲契約を締結した日の属する年分ではなく、甲契約を締結して代金全額を受領するとともに、所有権移転登記を了した日の属する年分であるとした事例

裁決事例集 No.36 - 11頁

 請求人は、昭和54年に譲渡契約を締結し、手付金を受領しているので、本件譲渡所得は昭和54年分であると主張するが、[1]昭和54年の作成日付の契約書は信用できず、昭和60年の日付の契約書が真正なものと認められること、[2]昭和60年に譲渡代金を受領し、所有権移転の登記を了していること、[3]昭和54年以降も本件土地をF社に賃貸して、不動産所得の申告をしていること、[4]昭和54年分所得税の確定申告に当たり、本件譲渡所得について総収入金額に算入していないことなどから、本件譲渡所得は昭和60年分に帰属するとした原処分は相当である。

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不動産の譲渡所得が譲渡に関する契約の効力発生の日の属する年に帰属するとした事例

裁決事例集 No.43 - 96頁

 請求人は、本件不動産を譲渡契約の相手方A女に引き渡したのは平成2年3月末日であるから、本件譲渡所得は平成2年分に帰属する旨主張し、本件譲渡所得を平成元年分の所得としていた確定申告について更正の請求をしたのであるが、本件においては、[1]本件売買契約は平成元年6月16日に締結され、本件土地建物の所有権移転登記の手続は、同年6月29日に完了していること、[2]請求人は、平成元年中に本件譲渡代金のうち約77パーセントに相当する32,300,000円を受領していること、[3]譲渡の相手方であるA女は、本件不動産を平成元年6月29日に保証委託取引による債権の担保として提供していること及び[4]請求人は、本件不動産に係る平成元年7月から12月までの家賃相当額を事業所得の必要経費に算入していることを併せ考えると、本件不動産の所有権は平成元年中にA女に移転し、また、本件売買契約に基づく経済的利益も、同年中に発生しているというべきであって、このような場合に、請求人自身が譲渡に関する契約の効力発生の日を本件譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期と認識し、本件譲渡所得を平成元年分の所得として申告している以上、これを認めるのが相当であり、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期が資産の引渡しの日であるという理由に基づく本件更正の請求は認められない。

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土地の売買契約の締結日において、前受金等として売買代金の3分の2に相当する金額が授受され、所有権移転登記に必要な書類の全てが引き渡されるとともに、同日所有権移転登記もなされている本件において、土地の引渡しは同日になされているものと認められ、当該土地の譲渡所得は、同日に発生するとした事例

裁決事例集 No.47 - 148頁

 請求人は、[1]売買契約締結日である平成2年11月28日に受領した金員は、売買代金15億円のうちの手付金3億円、前受金7億円の合計10億円で、取引の完了を表すものではなく、譲渡の日の判断要素にはならないこと、[2]本件契約書、収益の帰属、費用の負担及び危険負担に関する約定があるが、これは、残金を受領するまでは土地の引渡しをしないことを意味するものであること、[3]本件契約書に所有権移転の時期及び引渡しの日の約定があるが、相続人間で相続争いがあり訴訟となっていることから、訴訟遂行上のテクニックで表示したものにすぎないことを挙げ、残金を受領した平成3年3月29日が本件土地の引渡し日であると主張する。
 ところで、譲渡所得に係る総収入金額の収入すべき時期は、引渡しの日とするのが合理的である。これを本件についてみると、[1]請求人は、約定に基づき、前渡金等と引換えに所有権移転登記に必要な書類を引き渡し、[2]買主は、同日所有権移転登記を了し、[3]買受人との間で引渡日を平成2年11月28日とする旨の合意が成立していると認められることから、平成2年11月28日が引渡しの日と認めるのが相当である。本件契約の上記約定が、請求人の訴訟上のテクニックによるものとしても、本件契約は当事者間で定められたものであるから、合意に影響するものではなく、また、危険負担等に関する約定をもって引渡し日に係る判断を左右するものではない。

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代物弁済により譲渡された農地につき、農地法による許可等の日付にかかわらず、引渡しがあったと認定される日をもって譲渡の時期とした事例

裁決事例集 No.48 - 36頁

 原処分庁は、農地等の譲渡については、農地法の許可等のあった日又は農地等の引渡しのあった日のいずれか遅い日を譲渡の日と主張し、本件土地の譲渡所得の帰属年分について、代物弁済予約の完結権を行使したことによる所有権移転登記の原因日付が平成3年4月23日であり、本件土地の農地法第3条の規定による許可申請は平成3年3月30日にされ、同年4月23日付で許可を受けていることから、平成3年分であると主張する。
 しかしながら、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日によるものと解されているところ、本件土地は和解により代物弁済として債権者委員会へ引き渡されたものであり、[1]債権者委員会は昭和61年11月7日に代物弁済予約仮登記をしていること、[2]請求人は、和解による1,200万円の支払期日である昭和61年12月31日までに当該金員を返済できず、翌日から本件土地を引き渡したと認識していたこと、[3]債権者委員会は、平成元年8月ごろに本件土地を譲渡していること等から、本件土地の支配管理は昭和62年1月1日請求人から債権者委員会へ移転したものと認められるので、同日が本件土地の引渡しの日と認められる。
 譲渡所得に係る総収入金額の収入すべき時期は、農地法所定の手続にかかわらず、本件土地の実体的支配の移転があった時期(引渡しの日)によることを相当とする。
 したがって、所得の帰属年分に誤りがあり、その他について判断するまでもなく、課税処分の全部を取り消すべきである。

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一団の土地を取得し、順次、同一人に譲渡する旨の契約に基づき土地を譲渡した場合で、約定土地のすべてを譲渡できないときは買主の要請により買戻義務が生ずる旨の特約があっても、棚卸資産である土地の譲渡に係る収入金額を計上すべき時期は、上記特約にかかわらず、当該土地の引渡しがあった日であるとした事例

裁決事例集 No.49 - 145頁

  1.  一団の土地を取得し、順次、同一人に譲渡する旨の契約に基づき土地を譲渡した場合で、約定土地のすべてを譲渡できないときは買主の要請により買戻義務が生ずる旨の特約があっても、棚卸資産である土地の譲渡に係る収入金額を計上すべき時期は、当該土地の引渡しがあった日であり、その引渡しの日がいつであるかは、売買代金の受領状況や移転登記時期等の諸事情を総合勘案して判断するのが相当である。
  2.  土地を購入する契約を締結して支払った本件手付金に係る損失については、請求人が契約の支払期日までに残金債務を履行しなかったため、本件手付金を没収されたものと認められるから、残金債務の支払期日である昭和63年12月7日ないし売主から契約破棄等の意思表示のされた同月9日に確定したものとするのが相当である。
  3.  本件株式の評価損については、本件株式の発行会社である各社が請求人の事業に係る取引先であることを認めるに足りる証拠はなく、本件株式が請求人の事業の用に供されたとはいえないから、本件株式の評価損が生じたとしても、それを必要経費に算入することはできない。
  4.  請求人は、事業廃止後の費用発生額を必要経費に算入すべき旨主張するが、所得税法第63条(事業を廃止した場合の必要経費の特例)の規定に該当する事実が発生した場合には、所得税法第152条の規定により、更正の請求をすることができる旨定められているのであるから、事業廃止後の費用発生額は、所得税法第152条の規定による更正の請求により処理すべきであると解するのが相当であり、更正の請求を経ていない本件においては、これを必要経費に算入することはできない。

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調停に基づく離婚慰謝料として譲渡することとなったマンションの譲渡時期は、所有権移転登記のときではなく、当該マンションから請求人の資産を搬出し、当該マンションを相手方に引き渡したときであるとした事例

裁決事例集 No.51 - 113頁

 昭和62年5月の調停に基づき離婚慰謝料として先妻にマンションを引き渡すこととなった請求人は、住所も1年以上前から他所に転出しており、翌6月中旬ころに同マンションの請求人の資産を搬出していたことが認められるので、そのころに同マンションを相手方に引き渡したものと認められるから、その時が同マンションの譲渡の時期であると解すべきである。
 当該マンションの所有権移転登記が平成5年になされたのは、子供の成人を待つなどの事情があったからと認められ、かつ、請求人が当該譲渡所得について、平成5年分として申告したのは、原処分庁からの申告しょうように単純に応じたものと認められるから、いずれも当該譲渡所得が平成5年分として生じたことの理由とはならない。

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1. 借地権利金の全額を年内に受領している場合のその借地権利金を譲渡所得の収入金額にみなされるときにおける譲渡所得の収入すべき時期は、借地権利金の全額を受領した年分であるとした事例2. 同族会社に支払った6億円の立退料は、譲渡費用に該当しないとした事例3. 審査請求中に義務的修正申告書を提出しなかったことが国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」に該当するとした事例

裁決事例集 No.53 - 129頁

  1.  本件は、借地権利金が譲渡所得の収入金額にみなされる場合に該当するものであるところ、請求人は、A土地については、平成2年7月31日に賃貸借契約が成立しているが、B土地については、他社が使用収益中のため賃貸借契約が成立していないのであるから、同土地に係る借地権利金の収入すべき時期は、平成3年であると主張する。
     しかしながら、[1]請求人は、平成2年7月31日までに両土地の借地権利金の97.5パーセントに相当する金員を受領し、同年8月10日までにはその全額を受領していること、[2]請求人及び賃借人の双方において両土地を一体のものとして取り扱っていること、[3]B土地に係る賃貸借契約が別途取り交わされていないこと、[4]B土地を使用している他社も平成2年7月31日の時点において平成3年3月31日に立ち退くことが確定していたことなどから、B土地についても平成2年7月31日の時点で賃貸借契約が成立しており、資産の増加益の利得が確定的に発生しているものと認められるから、同土地に係る借地権利金の収入すべき時期は、平成2年であると認めるのが相当である。
  2.  請求人は、同族会社との土地の賃貸借契約の解除に際して支払った6億円の立退料は当該土地の譲渡費用に該当すると主張するが、[1]当該土地は、当該同族会社の転貸先が建物、構築物のない状態で駐車場として使用していたこと、[2]当該同族会社から当該転貸先への立退料の支払がないこと、[3]当該同族会社に対する賃貸料の額が固定資産税相当額に近い額であり、実質的には使用貸借に近いものと認められることから、請求人が当該同族会社に対して立退料を支払う必要性は認められず、当該6億円全額を譲渡費用として控除することはできない。
  3.  租税特別措置法第37条の2(特定の事業用資産の買換えの場合の更正の請求、修正申告等)に規定するいわゆる義務的修正申告書を提出する場合に該当する本件の場合、当該修正申告書を提出すれば、納付すべき税額は増額された部分を含む全額が即時確定し、その限りで先になされた更正処分(原処分)は、当該修正申告に吸収されて消滅し、その存在意義を失うと解されていることから、更正処分について審査請求等の不服申立てをしている場合において、当該義務的修正申告書の提出を予定することは、法が不服申立てを認めた趣旨を結果的に没却することとなる。
     したがって、このような場合において、当該義務的修正申告書を提出しなかったことについては、やむを得ない事由があったものと認められ、かかる理由は、国税通則法第65条(過少申告加算税)第4項に規定する正当な理由に該当するから、過少申告加算税の賦課決定処分はその一部を取り消すべきである。

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本件土地は、本件契約書に記載された引渡しの時期に関する条項の文言にかかわらず、本件契約の締結時に引渡しがあったと認定した事例

裁決事例集 No.74 - 78頁

 請求人は、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、その資産の支配の移転の事実に基づいて判定した当該資産の引渡しの時により判定すべきところ、1請求人は所有権移転登記に必要な書類を引き渡していないこと、2契約書上、売買代金の全額の支払いと同時に所有権移転及び引渡しを行うこととなっており、また、違約条項があることから契約破棄が理論上可能であることなどから、本件土地に係る譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は平成17年ではないと主張する。
 しかしながら、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、その年において収入すべき金額とされているところ、譲渡者による資産の引渡しがあれば、通常、所有権も移転しているものと考えられ、かつ、譲渡者が資産を引き渡した時には、相手方に対してその譲渡代金を請求できることが確定的となり、譲渡代金相当額を収入すべき金額と認識し得る状態とみることができるから、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、原則として、その所得の基因となる資産の引渡しがあった日によるものと解するのが相当である。
 そして、その引渡しがあった日の判定に当たっては、必ずしも売買契約書上の引渡しの時期に関する文言にとらわれることなく、本件契約と別件契約はもともと一括の契約であるか否かなどの取引諸事情、契約内容及び買主がその資産の使用を開始した時期などを総合的にみて、実質的にその資産に対する支配管理の変動があった時期がいつかという観点から判断するのが相当である。
 本件買受会社は、本件土地及び別件土地を一括して買い受け、本件開発区域の一団の土地の一部として、宅地造成をすることを予定していたと認められる。また、請求人は、本件買受会社の開発行為に全面的に協力する旨を約した上で契約し、本件契約の直後に同社に開発行為施行同意書を提出していること、仮登記以後の本件土地の危険負担等は、同社が負うことになっていることからすると、請求人と本件買受会社の間では、本件契約の締結時に本件土地の支配管理が請求人から本件買受会社に移転する旨の合意があり、本件買受会社は本件土地の使用収益が可能となったものと認められる。そして、本件開発区域の造成工事は、平成17年10月初旬に着工された上、請求人ら地権者の立ち入りもできなかったことから、本件買受会社が現実に使用収益を開始し、実質的に支配管理の移転があったと認められる。
 以上のことからすると本件土地の譲渡の時期は平成17年10月初旬とするのが相当である。

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