収入金額

一時所得

  1. 資産の譲渡
  2. 収入すべき時期
  3. 収入金額の計算
    1. 配当所得
    2. 不動産所得
    3. 事業所得
    4. 給与所得
    5. 譲渡所得
    6. 一時所得(4件)
    7. 雑所得

配当還元方式により評価する新株の価額を増資前の著しく高い配当率によらず増資後の安定した配当率を基として算定した事例

裁決事例集 No.22 - 49頁

 請求人が株主たる地位に基づかないで増資新株の割当てを受けたことについては、当該新株につき額面金額による買戻しの約定又は譲渡制限があったとしても有利な発行価額による経済的利益の享受があったとみるべきであり、当該経済的利益の額の計算の基礎となる新株の価額については、本件株式の所有の実態からみて利益配当がどの程度期待できるかということが主要な価値的判断要素となるから、配当金を一定の利率で還元して元本たる株式の価額を求める配当還元方式により評価するのが客観的で合理的であると認められるところ、その配当率については、増資前2年間の平均175パーセントという高い配当率は、増資後もそのまま継続するという保証のないものであって適当でなく、増資後4年間の平均20パーセントという一般的で将来も期待し得る配当率によるのが相当である。

トップに戻る

店舗を立ち退く際に受領した立退料について、その支払者に精神的損害を補償する意思は認められず、また、資産損失を補償するものとは認められないことから、その全額が一時所得に係る収入金額に該当するとした事例

裁決事例集 No.44 - 97頁

 請求人は、店舗を立ち退くに当たって受領した立退料の一部について、[1]所得税法施行令第30条第3号に規定する精神的慰謝料に該当するから非課税所得である、[2]顧客に係る営業権の滅失に伴い受け取ったものであり、所得税法第51条第1項の資産損失を補償するものであるから所得は生じない旨主張するが、当該立退料は総額で合意したものであり、[1]については、家主が請求人に対し精神的な損害を補償する意思を有していたものとは認められず、[2]については、有償で取得した営業権の存在は認められず資産損失の対象となる資産はないことになるので、請求人の受領した立退料の全部が一時所得に係る収入金額に該当する。

トップに戻る

請求人が時効取得した旧国有地の時価(一時所得の収入金額)は、国有財産評価基準に基づき評価した価額とするのが相当であるとした事例

平成25年7月24日裁決

《要旨》
 原処分庁は、請求人が時効取得した各土地(本件各旧国有地)が譲渡されていることからすれば、本件各旧国有地を含む売買物件の各売買代金を基に面積按分により算出した金額が一時所得の収入金額(本件各旧国有地の時価)である旨主張する。
 しかしながら、本件各旧国有地は公共用財産たる里道・水路等のうち、その機能を喪失したもの(旧法定外公共物)で、単独利用が困難な土地であるから、当該土地をその隣接所有者が時効取得した場合の時価については、当該土地を含む一団の土地としての価額を基礎として面積按分するだけでは十分な評価をしているとはいえず、また、単独利用が困難な旧法定外公共物については、原則として、隣接土地所有者に対してのみ随意契約により売却され、その売却価額が適正な対価(時価)を求めるための基準である国有財産評価基準に従って評価されることからすれば、私人間での取引事例が一般にほとんど見受けられないことに照らしても、本件各旧国有地の価額も同基準に準じて評価するのが相当であり、同基準に基づき評価した本件各旧国有地の価額が一時所得の収入金額と認められる。

《参照条文等》
 所得税法第36条第1項、第2項

トップに戻る

請求人がふるさと納税を行ったことにより各地方公共団体から送付を受けた各返礼品に係る経済的利益の価額は、当該各地方公共団体の評価額によるのが相当であるとした事例(1平成29年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、2平成30年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・1棄却、2一部取消し、棄却)

令和4年2月7日裁決

《ポイント》
 本件は、ふるさと納税に係る経済的利益の額は、地方公共団体が謝礼として供与する経済的利益の額であるから、地方公共団体が謝礼のために支出した金額(返礼品調達価格)をその算定の基礎とすることが相当であるとしたものである。

《要旨》
 請求人は、請求人の受けたふるさと納税の返礼品(本件各返礼品)について原処分庁が算定した経済的利益の価額(原処分庁認定額)は適正な金額ではなく、その収入すべき時期にも誤りが認められる旨、また、仮に一時所得の金額を計算するとしても、その経済的利益の価額は、事業の広告宣伝のための賞金を受けた場合の評価に関する課税実務上の取扱いに基づき原処分庁認定額に60%を乗じた価額とすべき旨主張する。
 しかしながら、ふるさと納税をした個人は地方公共団体からの贈与により返礼品を取得すること、ふるさと納税制度における返礼品の提供が当該個人に対する謝礼であることからすれば、本件各返礼品に係る経済的利益の価額は、地方公共団体が謝礼(返礼品の調達・提供)のために支出した金額(返礼品調達価格)をその算定の基礎とすることが相当である。そして、通常、地方公共団体が返礼品等をその調達時における時価を超えて調達することはないと考えられ、また、本件において、本件各返礼品が不当に高額又は低額で取引されたといった事情は認められない。
 これらのことからすると、返礼品調達価格は、地方公共団体が本件各返礼品を調達した時における返礼品の客観的交換価値を示すものと評価できるから、請求人は、本件各返礼品を取得することにより、本件各返礼品につき返礼品調達価格に相当する経済的利益を得たことになる。したがって、本件各返礼品に係る経済的利益の価額は、本件各返礼品の返礼品調達価格によるのが相当である。
 この点、原処分庁認定額については、その価額及び収入すべき時期の認定に一部誤りがあると認められたものの、返礼品調達価格を基にして算定されたものであるから、原処分庁認定額が適正でない点に関する請求人の主張は理由がない。また、本件各返礼品はそもそも事業の広告宣伝のための賞品ではないから、当該賞品の評価に関する課税実務上の取扱いに基づいて本件各返礼品を評価すべき旨の請求人の主張を採用することはできない。

《参照条文等》
 所得税法第36条

トップに戻る