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借入金利子
土地取得のための借入金の利子のうち業務の用に供していなかった期間の支払利子は不動産所得の必要経費ではないとした事例
裁決事例集 No.8 - 12頁
請求人が不動産所得の基因となる土地を取得するために借り入れた資金の利子は、各年分の不動産所得の金額の計算上必要経費の額に算入するか、又は当該土地の取得価額に算入するかのいずれかによるべきであると解されるが、上記利子のうち当該土地がいまだ業務の用に供されていない期間に対応する支払利子については、当該期間における請求人の不動産所得の収入金額が皆無であるので必要経費の額に算入する余地はなく、当該土地の取得価額に算入するのが相当である。
したがって、当該土地を業務の用に供したその後の年分の不動産所得の金額の計算上、当該利子を必要経費に算入すべきであるとする請求人の主張は認められない。
昭和49年7月12日裁決
建築資金たる借入金の利子のうち賃貸に係る部分を分譲代金収入と賃貸料収入との合計額に対する賃貸料収入の割合によって算定した事例
裁決事例集 No.20 - 107頁
借入金によって建築した賃貸用ビル(マンション)の一部が前年までに分譲され、この分譲代金収入と賃貸料収入とをもって借入金の一部が返済されている場合において、分譲代金収入と賃貸料収入との合計額に対する分譲代金収入の割合を返済された元本額に乗じて得た金額が、前記返済元本額のうち分譲した部分の建築資金に係る借入金の額を超えているところから、分譲代金収入によって前記分譲した部分の建築資金に係る借入金は返済済みであると解しても不相当ではないので、当年分に残存する借入金はすべて賃貸用部分の建築資金に係るものと解することができ、当年分の借入金利子のうち、たまたま請求人の個人の用とした一室の建築資金に係るものを除き、賃貸料収入による不動産所得の必要経費と認めるのが相当であって、原処分の全部を取り消すべきである。
昭和55年6月28日裁決
居住用兼賃貸用資産の譲渡代金と借入金とをもって居住用兼賃貸用資産を取得した場合における借入金利子のうち、賃貸用部分に対応する金額は不動産所得の金額の計算上必要経費に該当するとした事例
裁決事例集 No.22 - 55頁
居住用兼賃貸用資産を譲渡し、その譲渡代金と借入金をもって居住用兼賃貸用(貸店舗)資産を取得した場合における当該借入金に係る支払利子については、請求人により特にその賃貸用部分の取得代金が借入金によって賄われたことが具体的に立証されない限り、その全額を不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできず、当該取得資産のうち賃貸用部分と居住用部分の占めるそれぞれの床面積の割合に基づいて支払利子をあん分し、そのうち賃貸用部分に対応する支払利子の金額のみを不動産所得の金額の計算上必要経費とするのが相当である。
昭和56年7月28日裁決
事業用資産の買換えの課税の特例を適用した買換資産を借入金で取得している場合に、その借入金の利子は買換資産に係る不動産所得の必要経費となるとした事例
裁決事例集 No.30 - 38頁
原処分庁は、租税特別措置法第37条の規定の適用に係る買換資産の取得資金はまず譲渡資産の譲渡代金が充てられたものとすべきであるから、当該買換資産を借入金により取得したとしても、その借入金の利子の全額を不動産所得の必要経費と認めることはできない旨主張するが、同条の適用に係る買換資産であるからといって、その取得資金には、まず譲渡代金が充てられたとみるべき理由はなく、買換資産の取得資金に借入金が充てられ、譲渡資金の譲渡代金が充てられないことが明らかな場合において、その買換資産を不動産所得の基因となる貸付けの業務の用に供しているときは、当該不動産所得の金額の計算上その借入金の利子は全額必要経費に算入すべきである。
昭和60年12月3日裁決
土地を貸付けし得る状態にあっても、それだけの理由でその土地に係る費用が必要経費とされるものではないとした事例
裁決事例集 No.32 - 44頁
請求人は、借入金で取得した土地のうち、未利用部分の土地は、貸付けし得る状態にあったものであるから、その部分に対応する借入金の利子は、必要経費に算入すべきであると主張するが、一般に、土地が貸付けし得る状態にあれば、それだけの理由でその土地の費用が必要経費となるものではないし、また、未利用部分の土地に隣接する部分の土地が現に貸農園として貸し付けられてはいるものの、その賃貸料は、固定資産税を賄う程度のものであること、貸農園としては、その土地に特別な施設等の設置を要しないものであることから、その貸付けは単なる空地利用の程度のものと認められるので、現に貸付けによる収入がない未利用地部分の土地の費用を必要経費に算入することは相当でない。
昭和61年12月22日裁決
本件土地等は、貸付けの用に供されることが客観的に明らかとは認められないから、不動産所得を生ずべき業務の用に供されている資産には該当せず、本件土地等の取得に要した借入金利子等の額は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとした事例
請求人は、請求人が取得した本件土地等に係る不動産取得税、登記費用、固定資産税、借入金利子及び保証料(以下、これらを併せて「本件借入金利子等」という。)の額については、不動産所得の金額の計算上必要経費の額に算入すべきである旨主張するが、請求人は、平成2年6月29日に本件土地等を取得して以来、これを利用するためにホテル等の建設を計画しその建物の設計図を作成するなど、本件土地を貸付けの用に供する意思を有していたことはうかがえるものの、いまだ計画した建物の建設着工がなされていないばかりか、本件土地の上に建物を建設するために必要な開発許可の申請や建物建設請負契約の締結、既存建物の取壊し等すら行われていないことからすれば、本件土地等については、貸付けの用に供されることが客観的に明らかであるとは認められない。
したがって、本件土地等は、不動産所得を生ずべき業務の用に供されている資産には該当しないものであり、本件借入金利子等の額は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
平成7年1月17日裁決