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不動産管理料
同族会社に対する本件委託業務は、不動産賃貸業の遂行上必要な業務とは認められず、かつ、同族会社が当該業務を履行したとする客観的な資料も認められないことから、請求人が本件契約に基づき不動産管理料を支払ったとしても、必要経費には算入されないとした事例
本件契約業務の具体的内容を検討すると、[1]当初から不動産管理業務を委託している不動産管理会社との交渉業務等を含む経営全般に関する知的判断業務は、請求人個人の責任と判断において行うべき性質のものであり、同族会社であるH社が当該業務を履行したとする客観的な資料がないこと、[2]その他の業務については、不動産管理会社への委託業務において十分可能であり、当該業務をH社に委託する必要性があるとは認められず、また、H社においてこれらの業務を行ったと認めるに足りる証拠がなく、当該業務を履行するために要した費用の計上も認められないことから判断すると、H社との本件契約業務は本件不動産賃貸業の遂行上必要な業務とは認められず、かつ、履行したとする客観的な資料も認められないことから、請求人が本件契約に基づき本件管理料を支払ったとしても所得税法第37条第1項に規定する必要経費には算入されない。
平成10年2月26日裁決
同族会社に支払った不動産の管理料について、所得税法第157条《同族会社等の行為又は計算の否認》を適用せず、同族会社は管理行為を行っていないとして、所得税法第37条《必要経費》により、その全額の必要経費算入を認めなかった事例
請求人は、所得税法第157条第1項の適用に当たっては、経済的合理性を欠く行為や異常な取引形式に基づき、所得税の負担を不当に減少させる結果となることが要件となるが、請求人が不動産の管理を本件不動産管理会社に委託した行為は経済的合理性を欠く行為でも異常な取引形式でもなく、また、本件管理料は、本件不動産管理会社に委託した管理業務の内容及び事業規模並びに収益の状況等個々の実態に応じて算定しており、恣意性が介入する余地はなく、不動産収入を得る上での役務の対価として相当な金額であるから、本件管理料は不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるべきである旨主張する。
これに対し、原処分庁は、請求人が本件不動産管理会社に管理を委託しているアパート及びマンション(以下「本件賃貸不動産」という。)に係る管理料は、委託する管理業務の程度が異なるにもかかわらず、全ての不動産に一律に不動産年間賃貸料の10%としているが、その算定根拠は明らかでなく、通常の商取引においては考えられない異常な取引形式であり、また、本件賃貸不動産については、M社等に管理を委託しているにもかかわらず、さらに本件不動産管理会社にも管理を委託する行為は、同社が同族会社であるがゆえになし得る行為であり、純経済人の行動としては極めて合理性を欠く行為であるから、所得税法第157条第1項が適用される旨主張する。
しかしながら、本件賃貸不動産については、[1]本件不動産管理会社の管理業務とされる定期的な清掃業務等は、別途、M社等の不動産管理会社に委託している管理業務と同一のものであり、M社等において本来の業務として行われていることから、当該管理業務を本件不動産管理会社に委託する客観的必要性は認められないこと、[2]本件賃貸不動産の敷地内の看板には、M社等の社名が明示されており、本件不動産管理会社が賃借人及び第三者の窓口等となっている事実は認められないこと、[3]本件不動産管理会社においては、管理業務を実施した記録がなく、同社が管理業務を実施したことを客観的に認めるに足る証拠は認められないことなどからすれば、同社が本件賃貸不動産に係る管理業務を行ったことを認めることはできない。
したがって、請求人が本件不動産管理会社に委託した業務は、いずれも請求人の不動産所得を生ずべき業務遂行上の必要性が認められず、また、本件不動産管理会社が管理委託契約に基づく業務について履行したことを客観的に認めるに足る証拠も認められないことから、本件管理料のうち、請求人の所得税法第37条第1項に規定する不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、○○○○円とすることが相当であり、所得税法第157条第1項の規定を適用する余地はなく、当事者双方の主張を採用することはできない。
平成18年6月13日裁決
請求人の子が代表取締役を務める法人は、賃貸の目的物に係る管理業務を行っているから、同法人に対して支払った管理費は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるとした事例
《ポイント》
この事例は、請求人の子が代表取締役を務める法人の業務を認定し、請求人が当該法人に対して支払った管理料相当額の必要経費算入及び課税仕入れを認めたものである。
《要旨》
原処分庁は、店舗用建物たる本件建物及びその敷地たる本件各土地を併せた本件各土地建物に係る管理全般についてN社が行っており、請求人の子が代表取締役を務める本件法人は、請求人ら及びN社に対する金銭の支払行為を行っているものの、本件建物に係る共有持分(本件建物持分)及び本件各土地の一部である本件土地の管理業務を行っているとはいえないため、本件法人に請求人が支払った管理費相当額(本件管理費)は請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できない旨主張する。
しかしながら、ある支出が不動産所得における必要経費に該当するためには、業務関連性がなければならないとともに、その必要性の判断においても、単に事業主の主観的判断のみによるものではなく、客観的に必要経費として認識できるものでなければならないと解されるところ、請求人の不動産所得の総収入金額に算入すべき金額は、賃借人をK社として本件建物を賃貸する旨の本件契約に係る賃料であることから、必要経費に算入すべき金額も本件契約に関して支出された費用に限られることとなる。そして、本件法人は、請求人らから本件建物持分及び本件土地の管理業務を受託し、本件契約の更新及び補修工事等に係る各種連絡を受けてK社及びN社と協議し、本件法人名議で本件契約に係る各種の支払を行うなどしてこれらに対処している事実が認められることから、本件建物持分及び本件土地に対する管理業務を行っているものと認められる。
そうすると、請求人から本件法人に対して支払われた本件管理費は、請求人のN社に対する本件建物持分の賃貸業務の遂行上必要な支出であると認められることから、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されるものと認められる。
《参照条文等》
所得税法第37条第1項
請求人が管理業務を委託した同族会社は、請求人が必要経費に算入すべきと主張する管理費の額に見合う管理業務を行っていたと認められることから、その全額を必要経費に算入すべきであるとした事例
《ポイント》
この事例は、請求人が同族会社に委託した管理業務のうち、当該同族会社が他社に再委託した業務以外の部分について、当該同族会社が行っていたことを認定し、必要経費に算入すべき金額の範囲を判断したものである。
《要旨》
原処分庁は、請求人が賃貸及び事業の用に供している建物等について、請求人らが役員を務める本件同族会社が管理業務を行っていたとする証拠がなく、仮に行っていたとしても請求人が主張する行為は管理業務とは評価できないから、請求人の不動産所得及び事業所得の必要経費に算入すべき管理費の額は、本件同族会社が再委託先に支払った再委託料の額の一部に限られる旨主張する。
しかしながら、本件同族会社は、自ら当該建物等の管理業務を行っていたと認められることから、請求人が本件同族会社に支払った管理費の額うち、必要経費に算入すべきと主張する額(請求人主張管理費額)は、その全額が、請求人の不動産所得及び事業所得に係る業務と直接の関係を持つ費用であり、かつ、本件同族会社の行った管理業務の内容からみて、各業務の遂行上必要な費用であると認められる。したがって、請求人主張管理費額は、請求人の不動産所得の金額及び事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
《参照条文等》
所得税法第37条
請求人が代表取締役を務める同族会社に対し不動産の管理費として支払った金員は、証拠によれば、当該同族会社が行った管理業務の対価であると認められるとした事例
《要旨》
原処分庁は、請求人の賃貸している建物等(本件各物件)の管理業務を、請求人が代表取締役を務める法人(本件同族会社)に委任する旨の契約(本件契約)を締結しているが、他に同管理業務を網羅的に委託している法人があるから、同じ業務を本件同族会社に重複して委託する必要性がないこと、また、原処分に係る調査段階では、請求人から、本件同族会社が本件各物件の管理業務を行ったことを示す資料が一切提示されなかったことなどからすれば、本件同族会社による本件各物件の管理業務が日常的に行われていたとはいえないから、請求人が本件各物件の管理委託料として本件同族会社に支払った金額(本件金員)は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきではない旨主張する。
しかしながら、証拠によれば、本件同族会社は、請求人から本件各物件の管理業務の委託を受けて、当該各物件に係る消防・防災設備の点検業務並びに給湯設備の修理及び取替工事の発注を行うなどした事実、また、本件同族会社は、当該工事等を委託又は依頼した各業者と連絡を取り合い、工事等の実施内容や状況等の報告を受けていた事実が認められる。さらに、本件同族会社の取締役であった請求人の亡妻が、同社の業務に係る出来事をノートに記載しており、そのノートによれば、同社は随時、上記の各業者等からの連絡等を受け付け、必要な対応等を行っていたものと認められる。以上を総合すれば、本件同族会社は、本件契約に基づき、請求人から委託を受けた本件各物件の管理業務を行っていたと認めるのが相当である。したがって、本件金員は、本件同族会社が行った本件各物件の管理業務の対価であると認められるから、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
《参照条文等》
所得税法第37条
《参考判決・裁決》
平成23年6月7日裁決(裁決事例集No.83)
平成23年9月2日裁決(裁決事例集No.84)