必要経費

その他

  1. 配当所得
  2. 不動産所得
    1. 租税公課
    2. 借入金利子
    3. 修繕費
    4. 立退料
    5. 資産損失
    6. 貸倒損失
    7. 和解金
    8. 青色事業専従者給与
    9. 不動産管理料
    10. 減価償却費
    11. 土地賃借料
    12. 資産の廃棄損失
    13. その他(6件)
  3. 事業所得
  4. 給与所得
  5. 山林所得
  6. 譲渡所得
  7. 一時所得
  8. 雑所得

不動産貸付業務遂行上、直接関連のないゴルフ接待費用は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとした事例

裁決事例集 No.79

 請求人は、請求人が不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した本件ゴルフ代の支出に関し、賃貸物件の補修の必要性や家主である請求人に対するクレーム等を把握し、これらに対応することで、賃貸物件を優良なテナントに長く貸し付けることができるよう、テナントの代表者等に対するゴルフ接待を行うとともに、種々の情報を得て不動産の購入を容易にし、また、購入資金の融資の点でも有利になるよう、かつての勤務先である銀行の後輩等に対するゴルフ接待を行っていた旨主張する。
しかしながら、本件ゴルフ代についてみると、請求人が接待の相手方であると主張する者のうち、1請求人の主宰法人が所有する不動産のテナントについては、請求人の不動産所得に係る業務の遂行とは直接関係がなく、2請求人が所有する不動産のテナントの関係者についても、請求人が賃貸物件の補修の必要性や家主である請求人に対するクレーム等を把握するために、これらの者とゴルフをする必要があったとは認め難く、3かつての勤務先である銀行の後輩については、間接的に、請求人の不動産貸付業に有益な情報が得られる場合があるとしても、これらの者とゴルフをすることが、業務の遂行上直接必要であったとまではいい難く、さらに、4請求人はゴルフクラブの会員として、本件各年分を通じて、毎年相当の回数のプレーをしており、その大半を女子プロゴルファーと2人でプレーしている上、請求人が接待交際費に該当すると主張する上記各相手先とのゴルフについても、いずれも上記女子プロゴルファーを同伴させていることからすれば、本件ゴルフ代は、結局のところ、請求人の趣味・し好としてのゴルフプレーのために支出された家事上の経費であると評価せざるを得ず、家事費に該当するから、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないというべきである。

《参照条文等》
所得税法第37条第1項、第45条第1項第1号
所得税法施行令第96条

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請求人は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した一部の経費について、不動産賃貸業の遂行上直接必要であった部分を明らかにしていないことから、当該経費を必要経費に算入することはできないとした事例

平成23年3月25日裁決

《ポイント》
この事例は、請求人が、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきと主張する経費について、必要経費についての立証責任は、原則として原処分庁にあるとした上で、原処分庁が具体的な証拠に基づき一定額の経費の存在を明らかにし、これが収入との間に合理的対応関係を有すると認められる場合には、請求人は、経費の具体的内容を明らかにし、ある程度これを合理的に裏付ける程度の立証をしなければならない旨を明示したものである。

《要旨》
必要経費についての立証責任は、原則として原処分庁にあると解すべきであるが、一般に必要経費は請求人にとって有利な事柄であり、請求人の支配領域内のこととして証拠資料を整えておくことが容易であるから、原処分庁が具体的な証拠に基づき一定額の経費の存在を明らかにし、これが収入との間に合理的対応関係を有すると認められる場合は、これを超える額の必要経費は存在しないものと事実上推定され、請求人は、経費の具体的内容を明らかにし、ある程度これを合理的に裏付ける程度の立証をしなければ、上記推定を覆すことはできないと解されるところ、請求人が、飲食代及び交通費が必要経費に当たることについて、経費の具体的内容を明らかにし、ある程度、これを合理的に裏付ける程度の立証をしたと認めることはできないから、必要経費に算入することはできない。

《参照条文等》
所得税法第26条第1項、第37条第1項、第45条第1項第1号、第57条第1項、第155条第2項

《参考判決・裁決》
東京地裁平成5年10月4日判決(税資199号1頁)

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土地の賃貸に当たって行われた造成工事等の費用を不動産所得の必要経費に算入することはできないとの原処分庁の主張を排斥した事例(平成24年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成28年3月3日裁決)

平成28年3月3日裁決

《ポイント》
 本事例は、賃貸用土地の造成等の工事に係る費用が、当該土地の改良費として取得費に算入されるか、当該土地の賃貸業務に係る費用として必要経費に算入されるかについては、当該造成等の工事の具体的な内容に従って判断する必要があるとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人の所有する賃貸用土地(本件土地)に関して行われた造成等の工事(本件造成等工事)に係る費用は、その全てが改良費に該当し本件土地の取得費に算入すべきものであるから、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないと主張する。
 しかしながら、本件造成等工事の具体的な内容は、1外構造成工事(掘削、埋戻し、整地等)、2土留め工事(隣接地との境界ブロックの撤去及び積み直し)、3乗入側溝改修工事(本件土地に接する県道の歩道部分の切下げ、復旧等)、4境界等整備(隣地との境界の明確化等)、5土壌汚染調査(土壌内の有毒物質の有無の調査)に区分されるところ、それぞれについて検討すると次のとおりである。1外構造成工事は、本件土地の形質を変更し改良する工事であるから改良費に該当する。2土留め工事、4境界等整備及び5土壌汚染調査は、いずれも本件土地を改良したり、その価値を増加させるものではないから改良費には該当せず、不動産所得の必要経費に算入される。3乗入側溝改修工事は、請求人の所有する土地に係る工事ではないが、請求人は当該工事により便益を受け、その効果が費用の支出後1年以上に及ぶので、繰延資産に該当し、所定の償却費の額が必要経費に算入される。

《参照条文等》
 所得税法第37条、第38条

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請求人が不動産所得の必要経費として主張する各支出に係る証拠書類等の提出は十分ではなかったものの、審判所の調査により追加で認容すべき必要経費の額を認めた事例(1平成23年分及び平成24年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、2平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・12一部取消し・平成28年11月1日裁決)

平成28年11月1日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が、原処分に係る調査においてそれを裏付ける証拠書類等の提示及び説明を行わず、審査請求においても証拠書類等の提出がほとんどなく、具体的な説明も行わなかったため、審判所において調査・審理を行ったところ、原処分において認定された金額のほかに追加認容すべき必要経費の額を認めたものである。

《要旨》
 請求人は、修繕費等及び旅費・交通費等の各支出は、それぞれ不動産所得の金額及び雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである旨主張する。
 しかしながら、請求人は、不動産所得について、主張を裏付ける証拠書類等の提示及び説明を原処分調査時及び異議調査時にもしておらず、また、当審判所の再三の求めにも応じず、主張を裏付ける証拠書類等をほとんど提出しなかった。このような状況の下、当審判所としては、修繕費等及び旅費・交通費等について各支出の事実の有無、当該各支出が請求人の不動産所得を生ずべき業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要なものであるか否か、その他必要経費に算入すべき支出の有無について主に原処分関係資料に基づいてその適否を判断するほかないところ、これらの資料等を調査した結果、請求人の主張する各支出は、原処分額算定において誤りがあった一部を除き、必要経費に算入できない。また、雑所得の必要経費についても原処分庁認定額を不相当とする理由はない。

《参照条文等》
 所得税法第37条第1項

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請求人らが賃貸の用に供していた土地の上に存する当該土地の賃借人所有の建物収去のための請求人らの支出は、客観的にみて、請求人らの不動産所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、業務の遂行上必要なものであったといえるから、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することができるとした事例(平成28年分所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し・令和元年9月20日裁決)

令和元年9月20日裁決

《ポイント》
 本事例は、賃貸の用に供していた土地の上に存する当該土地の賃借人所有の建物収去のための請求人らの支出について、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できると判断したものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人らが賃貸していた土地(本件土地)は、賃貸借契約により請求人らの事業の用に供されていない資産であるから、本件土地の上に存する本件土地賃借人所有の各建物(本件各建物)を収去するため請求人らが支出した費用(本件各建物収去費)は、所得税法第45条《家事関連費等の必要経費不算入等》第1項の家事上の経費に該当し、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できない旨主張する。
 しかしながら、請求人らは、一連の法的手続を執ることにより賃料を支払わない賃借人から本件土地の明渡しを受け、それと並行して新たな賃借人への貸付けに取り掛かり、また、この間、本件土地を賃貸業務以外の用途に転用したことをうかがわせる事情も認められないことからすれば、本件土地の貸付けに係る業務は、賃貸借契約終了後、本件各建物の収去に至るまで継続していたものと認められる。加えて、請求人らは、本件土地から収益を得る業務を遂行するには、本件各建物を収去する必要があり、その費用について自らが負担することを想定して上記法的手続を遂行し、本件各建物収去費を支出したところ、実際にも、賃借人は無資力であり、当該支出の時点において、請求又は事後的に求償しても、およそ回収が見込めない状況にあったのであり、客観的にみても、本件各建物収去費は、請求人らにおいて、自ら負担するほかなかったものと認められる。そうすると、本件各建物収去費の支出は、客観的にみて、請求人らの不動産所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、業務の遂行上必要なものであったといえるから、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することができる。

《参照条文等》
 所得税法第37条

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貸金返済債務の遅延損害金支払債務は、弁済期を経過した日以後、日々経過するごとに必要経費に算入すべき金額が確定するとした事例(1平成28年分及び平成29年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分、2平成30年分及び令和元年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・1一部取消し、2棄却)

令和5年3月23日裁決

《ポイント》
 本事例は、貸金返還債務が約定に従って弁済されない場合に生じる遅延損害金支払債務は、遅滞が生じた日以後、日々経過するごとに所得税基本通達37−2《必要経費に算入すべき費用の債務確定の判定》が定める要件の全てを満たすものと解するのが相当であり、約定に従った弁済がなされない日からその元本の弁済がされる日までの日数に応じて、約定に従った弁済がなされない貸金返還債務の金額に約定で定められた遅延損害金利率を乗じて計算した金額が、その年に債務が確定した遅延損害金支払債務の金額となるとした事例である。

《要旨》
 請求人は、貸金返還債務の遅延損害金支払債務は、その弁済の時期や金額等の借主と貸主との合意内容によってその確定時期が左右され、分割払の合意がされた場合は、所得税基本通達37−2の2《損害賠償金の必要経費算入の時期》の注書や法人税基本通達2−1−43《損害賠償金等の帰属の時期》の趣旨に基づき、遅延損害金の必要経費算入時期は、支払った日の属する年となることから、未払遅延損害金の分割払の合意に基づき支払った金額は、当該年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額である旨主張する。
 しかしながら、貸金返還債務の遅延損害金支払債務は、1その本質が債務不履行(履行遅滞)に基づく損害賠償債務であるから、債務自体は弁済期を経過した時点で成立するものの、2その元本の弁済がされるまで遅滞が積み重なることで日々給付の金額が増加することから、各日ごとに具体的な給付をすべき原因となる事実が発生しており、3遅延損害金利率と弁済期からの経過日数によりその金額が算出することができるから、遅滞が生じた日以後、日々経過するごとに所得税基本通達37−2《必要経費に算入すべき費用の債務確定の判定》の要件を全て満たすと解するのが相当である。したがって、約定に従った弁済がなされない日からその元本の弁済がされる日までの日数に応じて、約定に従った弁済がなされない貸金返還債務の金額に約定で定められた遅延損害金利率を乗じて計算した金額が、その年に債務が確定した遅延損害金支払債務の金額となり、当該年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額となるのであって、過年分に発生した遅延損害金支払債務について、弁済時期等の合意がされても、その確定時期は左右されず、弁済した年分の必要経費に算入することはできない。

《参照条文等》
 所得税法第26条第1項、第37条第1項
 所得税基本通達37−2

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