ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例要旨 >> 所得税法関係 >> 減価償却費
減価償却費
本件建物は、その一部を居住の用に供した事実はなく、そのすべてが事業の用に供されていると認定した事例
裁決事例集 No.28 - 62頁
請求人所有の本件建物の一部は居住の用に供されているとして、その部分に係る固定資産税及び減価償却費の額は必要経費に算入することができないとした原処分について、本件建物は、その利用状況からみて請求人及びその家族の居住を主目的として利用された事実はなく、請求人の歯科診療所として利用されているので、当該建物全部に係る固定資産税及び減価償却費の額は事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
昭和59年9月12日裁決
海苔養殖業を営む請求人が事業の用に供する全自動乾海苔製造装置等は、耐用年数省令別表第二の「食料品製造業用設備(耐用年数10年)」ではなく「水産養殖業用設備(耐用年数5年)」に該当するとした事例
《ポイント》
本事例は、耐用年数省令別表第二の機械・装置の業用設備の判定は、請求人の業種ではなく、資産の使用状況等から社会通念に照らし、これが日本標準産業分類によるいずれの業種用として通常使用されているかにより判定すべきとしたものである。
《要旨》
原処分庁は、海苔養殖業を営む請求人が使用する「全自動乾海苔製造装置」等の設備(本件償却資産)について、耐用年数の適用等に関する取扱通達1−4−2《いずれの「設備の種類」に該当するかの判定》及び同1−4−3《最終製品に基づく判定》の定めに従い、本件償却資産が製造する最終製品は乾海苔であり、乾海苔は水産食料品に該当することは明らかであるとして、本件償却資産は、日本標準産業分類の中分類「09−食料品製造業」の業種用に通常使用されていると認められるから、減価償却資産の耐用年数に関する省令の別表第二《機械及び装置の耐用年数表》の番号1「食料品製造業用設備」に該当する旨主張する。
しかしながら、本件償却資産は、請求人が自家取得した原藻を自宅敷地内作業場において、乾燥させて漁業協同組合へ出荷できる乾海苔にするために、海苔養殖業従事者のみに通常使用されていると認めるのが相当である。そして、海苔養殖業者が漁業協同組合へ出荷する乾海苔は直ちに食用に供されるものではなく、食用に加工し流通させるのは漁業協同組合から乾海苔を購入した流通業者であることからすれば、乾海苔が水産食料品であることが明らかであるとして、本件償却資産が食料品製造業用として通常使用されていると認めることは困難である。したがって、本件償却資産は、日本標準産業分類の大分類「B−漁業」の中分類「04−水産養殖業」の業種用として通常使用されていると認められるから、別表第二の番号28「水産養殖業用設備」に該当する。
《参照条文等》
減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第二
耐用年数の適用等に関する取扱通達1−4−2、1−4−3