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弁護士費用
協議離婚無効確認請求訴訟に係る弁護士費用として支払った金員は、当該訴訟に関してなされた和解に基づいて、妻と共有する土地から分割して取得した土地の譲渡による所得金額の計算上控除すべき取得費に当たらないとした事例
裁決事例集 No.37 - 80頁
請求人は、本件土地は請求人の提起した協議離婚無効確認請求訴訟に係る和解に基づいて妻との共有土地から分割し、請求人固有の財産となったものであるから、当該訴訟に係る弁護士費用として支払った金員は、本件土地の譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費に該当すると主張するが、当該訴訟の本来の目的は、協議離婚を前提とした上で妻の提起した財産分与請求に対抗して自己の財産を防御するにあったというべきであるところ、共有土地の請求人の持分も財産分与の請求の対象とされ、請求人の持分を妻に財産分与しなければならない可能性があったこと、また、当該訴訟において、財産分与の請求の対象となった財産をどのように分与するかといった紛争があったことは否定できないとしても共有土地の所有権等の帰属に関する紛争はなかったことが明らかであり、請求人は、当該和解に基づいて共有土地を分割し、請求人の持分に対応する本件土地を確保したにすぎないものというべきで、請求人は何ら資産を取得したものとはいえないので、本件弁護士費用は取得に関し争いのある資産につき所有権等を確保するために直接要した訴訟費用等とはいえず、したがって、本件弁護士費用は譲渡所得の金額の計算上控除すべき資産の取得費には該当しない。
平成元年6月19日裁決
遺産分割の際に支出した弁護士費用は、所得税法第38条に規定する「資産の取得に要した金額」には該当しないとした事例
所得税法第38条第1項に規定する「資産の取得に要した金額」には、当該資産の客観的価格を構成すべき取得代金の額のほか、登録免許税、仲介手数料等の当該資産を取得するために通常必要と認められる付随費用の額も含まれると解するのが相当であり、当該資産の維持管理に要する費用その他日常的な生活費ないし家事費に属するものはこれに含まれないと解するのが相当である。
そして、居住者が相続により取得した資産を譲渡したことにより、所得税法第60条第1項を適用して譲渡所得の金額を計算する場合において、相続人が当該資産を取得するために通常必要と認められる費用、例えば、相続の場合の被相続人から相続人への名義変更に係る不動産登記費用も、同法第38条第1項に規定する「資産の取得に要した金額」に該当すると解される。
もっとも、遺産分割の際に支出した訴訟費用、弁護士費用等は、一般には相続人間の紛争を解決するための費用であることから、相続人が当該資産を取得するために通常必要と認められる費用とはいえない。したがって、遺産分割の際に支出した訴訟費用、弁護士費用等は、所得税法第38条第1項に規定する「資産の取得に要した金額」に含まれる付随費用には該当しない。
本件弁護士費用は、本件共同相続人が本件相続に係る遺産分割を求めて申し立てた本件各遺産分割事件において、被相続人の代理人を務めた弁護士に対し、委任契約の報酬として支払われたものの一部である。
そうすると、本件弁護士費用は、遺産分割の際に支出した弁護士費用であるから、被相続人が本件土地を取得するために通常必要と認められる費用とはいえず、所得税法第38条第1項に規定する「資産の取得に要した金額」には該当しない。
平成21年2月13日裁決